かんぴょう戦記 ~地球防衛艦隊2200~   作:EF12 1

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予定を変更し、幕間です。



4.5 出航前夜

土方 竜は、コールを鳴らす事すら省き、その部屋のドアノブに手をかけた。

 

施錠されていない事は手に伝わる感触でわかった。

 

(相変わらず不用心なやつだ‥‥)

「入るぞ」

 

部屋の内心で嘆息しつつ、そのままドアを開く。

その先、土方に背を向ける形で、部屋の主たる沖田十三は、スーツケースに私物を入れていた。

土方のぞんざい極まる来訪にも関わらず、沖田が咎めもしないのは、互いへの信頼のさせる業だろうか。

 

「‥‥用件は察しがついている」

「ならば(説明の)手間が省けていい」

 

沖田は土方を一瞥することなく、来意を推察し、土方もまた好都合と返して来訪の理由を口にする。

 

「どうしても行くのか?」

「‥‥‥‥」

「そんな(ボロボロの)身体でか?」

「‥‥‥‥」

 

自分の身体の事に土方が触れた時、一瞬だけ沖田の手が止まったが、すぐ何事もなかったかのように荷支度を続ける。

 

(‥‥まったく、こいつは!)

 

沖田が翻意しないだろうとわかってはいても、割り切れない思いはある。

だから、ついつい語気が強くなってしまう。

 

「俺の目は節穴じゃないぞ。‥‥一体何年の付き合いだ!?」

 

――沖田と土方は、自衛隊の宇宙戦士訓練生から、かれこれ30余年続く。

 

「‥‥だから俺に任せろ。退くのも勇気だ」

 

あの艦に課された任務は、人類存亡に直結する前代未聞・空前絶後の壮挙だから、艦長に課された責任の重さは正に無限大。

そんな重圧に耐えて任務を遂行できるのは、沖田と自分しかいない。

自分は健康に大きな問題は抱えていないが、沖田の身体は悲鳴を上げ始めており、このままでは長くても余命5年がいいところ。

 

ましてや、あの星へは片道14万8000光年・往復29万6000光年で、かつ1年以内に戻らなければならない。

そんな長丁場、かつ無限大な重圧のかかる航海では、5年どころか1年で沖田の命は尽きてしまうだろう。

軍人である以上は仕方ないかも知れないが、それでも死んでもやれ、とは言えない。

ましてや沖田は、部下に『死に急ぐな』と強く言ってきた。

なのにお前自身は死に急ぐのか?

口にこそ出さなかったが、土方が沖田に向ける視線にはそんな問いかけも含んでいた。

 

「‥‥イスカンダルへの旅は、俺の命を奪うかも知れん。

だが、俺は必ず帰る。放射能を除去する術を携えてな。途中でくたばるようなヘマはせんよ」

「‥‥そうか」

 

自分をしっかり見据えて言う沖田に、土方は、もはやこれ以上の引き留めは無駄だと悟った。

 

「留守を頼む。土方」

「‥‥ああ」

 

やはり沖田の意思は揺らがない。

土方も腹をくくった。

 

沖田の部屋を後にした土方は、振り返らず歩いていく。

友の覚悟を確認した以上、自分にできるのは『ヤマト』の出航を見届ける以外になかった。

 

――それと、

 

「‥‥佐渡先生に念押ししておくか」

 

独り言と共に、土方は歩を速めた。




こちらでは、沖田は自分を『わし』ではなく『俺』と言うようにしました。
同期の僚友なら、互いに『俺』『お前』でしょうから。

次回、惑星間弾道ミサイルに土方と嶋津が立ち向かいます。
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