かんぴょう戦記 ~地球防衛艦隊2200~   作:EF12 1

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5.やれる事は全てやる

     ――『ヤマト』発進直前――

 

金剛級宇宙戦艦の数少ない残存艦である『フソウ』は、地球から2万キロの宙域で、人類の希望を打ち砕く脅威と相対しようとしていた。

 

「惑星間弾道弾との接触まで残り10分!」

「ん」

 

艦橋の中央で腕組みしながら仁王立ちする男、土方 竜は観測士の報告に頷き、指示を下す。

 

「近藤、第3戦速で(ふね)を弾道ミサイルの正面に出せ」

「了解。面舵30、第3戦速!」

「嶋津、艦首砲発射準備だ」

「了解、艦首砲発射準備!」

 

近藤と呼ばれた壮年の男は、スロットルを開きながら舵を右に切り、嶋津と呼ばれた妙齢の女性は、目の前のコンソールを操作し、艦首軸線に装備されている35.6センチ陽電子衝撃砲(ショックカノン)の発射準備作業に入る。

他の艦橋クルーも各々の作業に取りかかっているが、その表情は一様に緊張が走っていた。

 

戦闘指揮席で嶋津――嶋津冴子――は、本来この『フソウ』の乗り組みではなく、駆逐艦『カミカゼ』の艦長だ。

否、『フソウ』の正規乗組員よりも『カミカゼ』等の他の艦や、乗るべき艦がなく、地上勤務だった者等の“部外者”乗組員の方が多かった。

寄り合い所帯もいいところだが、これには、文字通り崖っぷちに立たされた国連宇宙軍と極東軍管区の切迫した事情があった。

 

 

‥‥事の始めは半日前。

 

月面基地への補給を終えて新横須賀基地に帰還した駆逐艦『カミカゼ』は、再び月面の友軍――イギリス王立宇宙陸軍の駐屯地――への補給と負傷者の後送任務に備えて整備と補給を受けていた。

 

当然ながら、イギリス基地への補給はヨーロッパ管区の役割だが、その時点で極東管区以外での残存艦が全て稼働不可能だったので、『カミカゼ』にお鉢が回ってきた。

 

だが、その直後に行われた月面に対するガミラスの遊星爆撃で、目的地のイギリス基地との交信が途絶した事に加え、前日にその存在と任務が公表された宇宙戦艦『ヤマト』の出撃が優先されたため、『カミカゼ』の出撃は延期され、そのまま待機状態になっていた。

 

特に『ヤマト』は、艦の規模・能力だけでも前代未聞なのに加え、その任務が他の銀河にある惑星まで赴いて放射能除去システムを持ち帰るという、ある意味狂気の沙汰だったので、日本を含む各国で大規模な暴動が発生した。

それやこれやで『カミカゼ』は新横須賀基地に繋がれ、乗組員は別命あるまで待機を命じられていたのだが、この日の朝、嶋津冴子に緊急呼集がかけられた。

『空間護衛総隊司令官・土方 竜』の名で。

 

「‥‥ったく!発令から期限まで3時間て、どんだけせっかちだあのオヤジ!!」

 

アラームで叩き起こされた彼女は、無人タクシーを呼ぶ時間も惜しみ、まる12年ぶりにパンをくわえ、紙パック入りの豆乳を手に早朝の道を疾走する羽目になったが、よく見ると嶋津と同様、切羽詰まった表情で同じ方向に走る者がここかしこにいた。

思わず苦笑してしまう。

 

「‥‥おたくも呼ばれた口かね!?」

「‥‥のようですな!」

 

そんな会話を交わしながら駈けに駈け、息急き切って辿り着いた集合場所では、10人ばかりの同行者とともに待機していたトラックの荷台に乗せられ、連れていかれたのは、地下港の一角に繋がれた金剛級戦艦『フソウ』の前だった。

急ごしらえの『本部』での点呼が終わる頃、乗用車がやってきた。

降り立ったのは、案の定鬼竜(土方)本人だ。

 

「総員、気ヲー付ケー!」

 

号令が響くや、ざわついていた一同は静まり、土方はいつの間にか設置されていた、いかにも急ごしらえの演壇の上に立つ。

 

「皆、よく集まってくれた」

 

皆を見回してから、土方はおもむろに口を開く。

 

「『ヤマト』の事は知っていよう」

 

土方の表情はいつにもまして緊張しており、居並ぶ者達も表情を引き締めた。

 

「『ヤマト』は本日1225、イスカンダルに向けて発進するが、それに合わせたかのように、冥王星方面からかなり大型の物体、惑星間弾道弾が遊星爆弾の約5倍の速度で地球に接近しつつある。

地球への落着予想時刻は本日1224頃。落着予想地点は徳之島近海。

そこで『ヤマト』は発進準備の最終段階にある。

先日、『ヤマト』はガミラス空母を砲撃で葬り去った。存在は既に露見している」

 

ここまで聞けば、皆状況を理解する。

ガミラスの意図は『ヤマト』の破壊以外にあり得ない。

厳しい表情のまま土方は続ける。

 

「『ヤマト』は人類最後の希望だ。いかなる手段を用いても発進させなければならない。

『ヤマト』を除けば、稼働状態にある艦で最大の攻撃力があるのはこの『フソウ』しかないが、正規の乗組員が決まる前にこのような事態が起きた。

こうなった以上、所属に束縛されていては対処できない。

なればこそ、金剛級戦艦の乗り組み経験がある諸君を選出した。

今日一日、諸君らの命は私が預かる。人類の未来のため、諸君の頑張りに期待する!‥‥以上だ」

「敬礼!」

 

寄せ集めの『フソウ』乗組員ではあるが、自分たちのやるべき事は理解している。

仮に個人的に反目し合っている者がいたとしても、そんな事にこだわってはいられない。

よし、やってやろうじゃないかという気運が高まっていった。

 

土方が降壇すると、同行してきた本部付士官から各セクションの責任者が発表された。

 

フソウ1隻しかいないので、艦長は土方が兼任。副長は坂 勝一二佐。

航海長は近藤清一三佐、機関長はボー・ザップ大尉(東南アジア連合軍)が指名され、嶋津(三佐)は砲雷長に指名された。

因みに、嶋津と近藤は同じ三佐だが、嶋津の方が先に昇進したため、艦のナンバー3は彼女だ。

 

(こりゃ責任重大だな‥‥)

 

指示は土方か坂が出すにせよ、実際に照準して引き金を引くのは嶋津だ。

肩を竦めた時、

 

「乗艦!」

 

号令がかかり、特別編成の乗組員たちはすぐさま『フソウ』のタラップを駈け上がり始めた。

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