―― 戦艦『フソウ』艦橋 ――
「敵ミサイルとの接触まであと3分!」
「『ヤマト』の状況は!?」
「日本政府から全世界に電力供給要請を出した結果、供給電力が増大しつつあるとの事ですが、それでも予定時刻に発進できるかは微妙のようです」
「ん‥‥」
通信長からの報告に、土方は渋面を作った。
『ヤマト』発進に際しての最大の懸念事項は波動エンジンの起動だ。
莫大なエネルギーを生み出し、かつ燃料貯蔵スペースも僅かな波動エンジンだが、最初の始動にはこれまた莫大な電力が必要なのだ。
それでも、平時の地球ならば何て事はないのだが、滅亡に瀕し、計画停電が恒常的に行われていた地球ではそうもいかず、日本地区の総電力を振り向けても始動できなかった。
そのため、日本政府は国連本部や各国に頭を下げまくって電力供給を請願しているのだろう。
だが、予定どおり発進できても、敵惑星間弾道ミサイルをかい潜れるかは微妙だ。
弾道ミサイルを破壊できればいいのだが、残念ながらそれが可能なのは恐らく『ヤマト』のショックカノンだけだろう。
それゆえ土方は割り切った。
破壊できずとも、軌道を反らして『ヤマト』に近づけなければ良いと。
『フソウ』を含めた戦艦と巡洋艦には艦首中央軸線に大口径固定砲が装備されており、これが最強の火器だ。
艦橋砲等のフェザー砲は初めから戦力外だ。
艦首砲は、原設計では劣化ウラン弾等を撃ち出す
このショックカノンは、命中すればガミラス艦も撃破できたが、固定砲ゆえ艦首を向けねばならず、既存の地球艦のレーザー核融合機関では砲撃エネルギーを充填するのに若干のタイムラグを要した。
火星沖会戦で痛い目を見たガミラスもすぐこれらの問題を見抜き、以後の艦隊戦では並走する形での戦闘に徹し、地球側に艦首砲を使わせなかった。
だが、今回は邪魔なガミラス艦はおらず、艦首砲を使う事への障害はない。
だが、地球よりガミラスの方が科学力は上。ミサイルに軌道を戻す機能くらいは当然備えていよう。
ならば、なるべく地球の近くで迎撃すれば、軌道を補正しても『ヤマト』には届かないだろう。
かと言って、万が一爆発して、その影響が地球や『ヤマト』に及ぶのも避けなければならなかった。
『フソウ』が今いる位置は、国連軍極東管区が必死になって割り出した最善の座標なのだ。
「敵弾道弾の回転軸をずらして軌道を変える!
目標は所定の座標AB2215。
近藤、艦首砲の有効射程に近づいたら舵を嶋津に渡せ」
「了解しました」
「嶋津、エネルギーが続く限り艦首砲を撃ち込め。魚雷も全弾使うつもりで行け!」
「わかりました」
嶋津は土方に応えながらターゲットスコープを立ち上げる。
「機関長、発射態勢に入ったら、生命維持と艦位維持に必要な分以外のエネルギーを艦首砲に回せ」
「了解、しかし3連射が限界です。司令」
「ん」
メインモニターに大映しにされた惑星間弾道弾は、正面から見て時計回りに回転しながら、『フソウ』を踏み潰さんとばかり接近してくる。
「操舵を砲雷長に移行します」
「砲雷長、いただきました」
近藤と嶋津がアイコンタクトを交わし、頷き合った。
これからしばしの間、嶋津が操舵も受け持つ。
「まだまだ‥‥」
電影クロスゲージ内の惑星間弾道弾が徐々に大きくなっていく。
既に艦首砲の射程に入っているが、大型空間魚雷の有効射程までは今少し間がある。
やがて、土方が下令する。
「攻撃始め。大型魚雷1番から8番、発射!」
「
ズズズンと軽い衝撃が連続し、艦首と艦尾の大型魚雷発射管から核融合弾頭を付けた空間魚雷が射出され、煙の尾を引きながら惑星間弾頭弾に向かう。
命中までのカウントダウンが続く中、土方と嶋津は“真打ち”の札を切った。
「艦首砲3連射、撃ち方始め!」
「‥‥発射っ!」
乾坤一擲、一か八かの光の矢が放たれた。