視点は基本的にエル君になります
『春は出会いの季節』
日本にはそんな言葉があると
ある程度大きな道に出たものの、家を朝早くに出たためか道路にはあまり人の気配はなく、代わりに時々車が通り過ぎていく。
「は、離してください!」
気分良く歩いていたところに女の子の声が右側のちょっとした路地から聞こえてきた。
「いいじゃねぇかちょっとくらい。俺らとお茶してこうぜ?」
「かわいいねぇ〜。中学生?」
「連れさっちまうか?」
高校生と思わしき3人組の不良たちに1人の女子が絡まれており、しかも制服を見る限り同じ椚ヶ丘の生徒だった。
登校初日早々面倒ごとに会うとはついてない。そう思いながらも助けることにした。
高校生らしき奴らのうちの1人が女の子の肩に触れかけ、女の子が体を竦ませ、目をつぶった時だった。
「そんな汚い手で女の子を触るもんじゃないよおじさん」
女の子の肩に触れかけていた手首を掴み、強く握った。
「いってぇ!なんだテメェは!」
今まで体の筋肉という筋肉を鍛えた自分の握力のため、そこらへんのチンピラにダメージを与えるのは容易であり、いとも簡単に手首を掴まれた奴は悲鳴をあげた。
そして、なんだテメェと言う言葉に対しシラーっとした顔で
「俺か?俺は通りすがりの………主ふ、じゃなくて……
通りすがりの一般人だ!」
あたりが静寂に包まれ、少し間が空くと、不良たちは「プッ」と吹き出し大声で笑った。
「ハハハ!なんだこいつ。通りすがりの一般人だぁ?」
「フン、一般人なら一般人らしく見て見ぬ振りでもしときな」
「そーだそーだ、さっさと会社にでも行ってな」
ここぞとばかりにおちょくる不良たちに対し、エルは怒った。
「あのなぁお前ら、一般人とは言ったが俺は中学生だ!誰が老けてて、ストレスの溜まった会社員みたいだ!」
(((そこまで言ってねぇ!!)))
エルのちょっとズレた怒りに我を忘れかけた3人だが、すぐに正気に戻り、エルが中学生だと分かると更に執拗におちょくりだす。
「なんだよデケェ図体してんなと思ったら中坊かよ!」
「こりゃいじめがいがあるってもんだ!」
「さっきの掴みにぁびびったが3対1だ!やっちまおうぜ!」
相変わらず息ピッタシの3人に対し、ため息を吐きつつも、戦闘体勢になり、不良たちを待ち構える。不良たちから離してもらった女の子は心配そうにこちらを見ているが、こちらから笑顔を見せると、幾分か安心したように見える。
「っと、今はそうこうしてる場合じゃないな」
最初に殴ってきた奴は右腕で軽く流して体勢が崩れたところに脇腹へ一発お見舞いしてやり、倒れて動かなくなったところを見ると、残りの2人へ目を向けた。
2人同時に殴ってきたところをリーチのある長い足でしゃがんでから足払いすると、2人とも地面と愛のキスをし、最初に女の子に触れていた奴は動かなくなり、最後の1人はよろよろと立ち上がり、恐怖と共に後退していき、ついに壁際まで追いつめると顔のすぐ横に笑顔のまま一発コンクリートを殴りを入れた。ついでに言えば、コンクリートは殴った周辺が砕けた。
「そこの2人を連れてどっかいけ」
ニコニコしながらそう言うと、不良は2人を引きずりながら一目散に逃げていった。
「よっ、君、怪我はない?」
不良たちが逃げていったのを最後まで見届けると、絡まれていた女の子の元へとかけ寄り大丈夫か確認する。
「あ、はい。ありがとうございます!」
女の子は深々と頭を下げた。
「いいよてそう言うのどうやら同じ学校の人っぽいしね」
「え?でもあなたのこと見たことないけど……もしかして新しく来る転校生!?」
「あー、多分それ俺のことだ。君はあれ?3−Eの人?」
「そうだよ。矢田桃花って言うの。よろしく!」
エルは烏間先生から成績不振者が集まるのが3−Eだと聞いたが優しそうな人がいて一安心する。
ともあれこのままだといくら早く出たとは言っても遅刻してしまうので、2人で歩き出す。
「そっか、俺はエル。エルフォード・ホーエンハイムって言うんだ。よろしくね矢田さん」
俺の名前を聞いてびっくりする矢田さん。何を不思議に思ったのか聞いてみると
「顔立ち的に日本人だと思ったけど、名前は外人さんなんだね」
「別に名前が外人っぽいから外人さんって訳でもないよ?じじいから聞いた話によると俺を拾ったのは日本だって言うからね」
「え、拾われたって……聞いたらマズかった?」
矢田さんはやらかした感を出しながら俯向くが、別にそんなことはない。
「大丈夫だよ。俺は今の生活に満足してるしね」
「そっか、よかったー」
ホッとした表情につい見惚れてしまい、体温が高くなるのを感じたが、じじいの顔を思い出すと急速に体が冷えた気がした。矢田さんが不思議そうにこちらを見ているところを見ると、どうやら顔の紅潮は見られていないようだった。
(なんだこの気持ち……戦闘中のワクワク感とは違った、別のドキドキは……)
主にこれまでのE組に起きた出来事。潮田君という人が、寺坂君という人に無理やり自爆させられ、殺せんせーには月に一度[脱皮]と呼ばれる奥の手があること、赤羽君が登校初日に触手を破壊したものの丁寧に手入れをされたことなどを矢田さんは楽しそうに話してくれた。そして、そうこうしている間に山の麓についた。
「やばいよエル君!あと10分しかない!」
矢田さんが凄い焦った顔をしているところから、本当に時間がないのだろうと分かる。
「そうだなー、じゃああまり使いたくはないけど使っちゃおう!」
俺は矢田さんの目の前に手を差し出した。
当然矢田さんは不思議そうに俺の手を見ている。
「何やってんの、時間、ないんでしょ?俺の手掴んで」
言われるまま、俺の手を矢田さんが握ると、俺の心臓は自然とバクバクと高鳴ったが、冷静を装う。
「酔うかもしれないけどしっかりつかまってて!」
[
そう口にした瞬間、いきなり景色が変わった。
「え?ど、どういうこと?」
理解できないまま俺の手を握っている矢田さんは辺りをキョロキョロしている。
「これがしばらく続くから覚悟してね」
ニコニコしながら言い放つと、遂に矢田さんは覚悟を決めたようで、強く目を閉じた。
目まぐるしく景色が変わり、あっという間に山を登っていく。
それなりに平坦なところにポツンと木の校舎のようなものを見つけ、ここかな?と思うと、錬金術を止める。
「着いたよ矢田さん」
ずっと目を閉じていた矢田さんは恐る恐る目を開けると、バッと目を見開いた。
「え?ど、どういう事?さっきまで麓にいたのに山頂にいる?」
どうやら混乱しているようだが無理もない。いきなり景色が変化し、本来ならもっと時間をかけて登るところを超ショートカットしてきたのだから。
「あれ?ここであってるよね?」
「うん、あってるけど……」
もしや間違っていたかと内心ヒヤヒヤしていたが、どうやらあっていたようだ。
「じゃあ俺は職員室に行ってるから。またねー」
そう言って旧校舎へ走っていった。
残された矢田は呆然としていたが、いきなり肩を叩かれ、ビクッとした。
「おはよー!矢田さん」
肩を叩いたのは同じE組のカエデちゃんだった。ついでに渚君と杉野君もいる。
「お、おはようカエデちゃん」
やや動揺を隠しきれずに返事をしてしまい、すぐに何かあったことがバレてしまったので、仕方なく朝起きた事をすべて話した。
「ふぅん、謎の力を使うこの時期に入る転校生かぁ……案外暗殺者だったりして!」
カエデちゃんの言葉にまさかと思う。確かにこの時期に転校生は謎が多いし。けれども、自分を助けてくれた事には違いなかった。
「でもさ、不良たちに絡まれてるところをサッと助けてくれるって………
王子様みたいだね!」
カエデちゃんがふと漏らしたこの言葉に、私は
「ふえぇ?!」
思わず変な声を出してしまった。その反応を見てカエデちゃんは
「ふーんなるほどねー。矢田さんもやるぅ!」
何かを察したようだった。
そんな事も知らずに、エルは職員室に入る。すると、中には烏間先生が1人で待っていた。
「来たか、エル君」
「昨日ぶりですね烏間先生」
「ああ、それよりも早速で悪いがそろそろ朝のホームルームが始まる。奴はもう教室にいるから、すぐに教室へ行こう。簡単に自己紹介してもらう」
「了解です」
手短に話を済ませると、同時に席を立ち、教室へ向かう。途中廊下のきしみがとても気になったため、「後で直していいですか?」と聞くと「後でな」と返された。
教室の手前まで行くと、まず烏間先生が前の扉を開けて教室に入り、俺が入る前に簡単な紹介をする。
「今日から君たちと同じ教室でこいつを暗殺する事になる仲間が増える。エル君入ってこい」
そう言われ、教室の中に入る
前に扉のレールの段差でこけた。
ハガレンの要素も少し組み込みつつ書いてみました!
エドは身長の低さがコンプレックスですが、エルのコンプレックスは雰囲気が大人びている事です。なので老けている感じの物言いをされるとエドと同じ感じでキレます。
次回からは、エル君が使った錬金術をあとがきで説明したいと思います。