錬金術師の暗殺教室   作:遠い日のゲン

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今回ちょっと長めです。
ちなみに視点はエルです。


歓迎の時間

恥ずかしい……超絶恥ずかしいんだけど…

なんの段差もないところでコケて、しかも鼻血まで出して、初対面のやつにそれを指摘されて……なんとか自己紹介はキリッと済ませたけどカッコ悪過ぎるよ……

 

「それではエル君はカルマ君の隣に座ってください」

 

いつの間にか冷静を取り戻した殺せんせーに言われ、平静を装いシラーっとカルマという奴の隣に座る。

 

「よろしくね。ええっと……」

 

呼び方に迷っていると、カルマは俺を見て、フッと笑い

 

「カルマでいいよ。よろしくホーエンハイム」

 

「うん、よろしくねカルマ。それとさっきも言ったがエルでいいよ?言いづらいと思うし」

 

「ふーん。じゃ、エルで」

 

取り敢えずそれなりに打ち解けれたようでホッとした。エルは今まで学校に行ったことがないので、カルマが学校でできた初めての友人となる。

こっちの表情を伺って、カルマは質問してきた。

 

「ねーねー、さっきの奴、どうやったの?何かしたようには見えないけど」

 

「ああ、殺せんせーの触手を破壊したやつ?」

 

「そうそれ。何か仕込んでるようには見えなかったんだけど」

 

「うーん、後でのお楽しみかなー。時間がある時に教えてあげるよ」

 

ここまで言うと、殺せんせーは満足げな顔をして

 

「もう話せるようになって何よりです……では授業を始めましょう」

 

殺せんせーの授業が始まった。が、しかし

 

「エル君は少々情報が少ないので、別室で小テストを受けてもらいますよ」

 

「えぇ……めんどくさいなー」

 

「ヌルフフフフ……まぁそう言わずに。午後からは参加できる程度のテストですから」

 

「わかったよ」

 

席を立ち上がった俺はそのまま教室を出て行った。

扉を開けてすぐ横に、教室よりもふた回りほど小さい部屋があり、丁寧にも『エル君のテスト部屋』という看板とともにこれでもかというほどの飾り付けがしてあった。先ほどの少しの間教室を出て行ったのはこれをやるためだろう。全くありがた迷惑である。

 

「失礼しまーす」

 

軽い感じで入ったそこの教室には、何もない部屋にポツンと中央に机と椅子が1セット置いてあるだけだった。

 

(逆に集中できないよ!!!)

 

心の中で愚痴を吐きつつも席に座ると、いつの間にか目の前に殺せんせーがいた。

 

「いつの間に……」

 

「先生はマッハ20の怪物ですよ?気付いたら目の前に、なんてしょっちゅうです」

 

「へー、覚えとくね。でもまあ初速くらいなら追いつけなくはないよ?」

 

「なるほど……しかし君の年齢で国家錬金術師とは……驚きましたよ」

 

顔を緑と黄色の縞々の柄に変化させた殺せんせーは笑いながら話題を変える。

 

「まぁね、国家錬金術師のじじいと一緒に旅をするには同じ資格を取っといた方が何かと都合が良かったから」

 

「それが史上最年少国家錬金術師が誕生した所以ですか」

 

「そういうことだね」

 

すると殺せんせーは納得したように数度頷くと、5枚の紙を取り出した。

 

「分かりました。ではある程度君を知ったところで、テストをしましょう」

 

「はいはい。別にテストするまでもないけどね」

 

「ニュヤ?それはどういう」

 

殺せんせーの頭の上に?マークが浮かんでいるところを見てニヤッとすると不敵にも言い放った。

 

「結果を見れば分かるよ」

 

 

テストが始まった。

まずはじめにテストを見て感心した。基礎問題から応用問題まで丁寧作られており、ミスがあれば何が原因か一発でわかるだろう。それに応用は思った以上に難しかった。が、所詮その程度。国家錬金術師という職業には、物質を理解する理科の知識はもちろん、普段は使わないものの錬成陣を創り出すには高度な数学の技術、専門用語の理解が必要となり、また、様々な国を渡り歩くため色々な国の言語を覚える必要があり、更にその国の情勢や歴史、地理にも関心を持たなければいけないため、このテストはイージーとしか言いようがなかった。と言ってもこれほどまでに色々な知識が必要になってくるのは錬金術師庁の中でも本部の人間だけなのだが。

 

1教科を10分には程度で終わらせ、ふと時計を見ると、既に2時間目の途中だった。

 

残った時間をどうしようかと考え、ふと思いついた。

 

 

 

「そこでここに来た訳か」

 

今日何度目かになる深いため息を烏間はついた。

 

「だって暇なんですもん」

 

「教室で奴の授業を受けてればいいだろう?」

 

パソコンに向かって仕事をしながらこれほどまでに会話を成立させる烏間先生はハイスペックすぎる。

ソファーに腰を下ろし紅茶を飲んでくつろぎながらニコニコと人当たりのいい笑みを絶やさずにいるエルはそう感じた。

 

ひと段落ついたのか伸びをした烏間先生は思い出したように俺に言った。

 

「そういえば、午後の体育では生徒たちの前で俺と模擬戦をして貰うぞ」

 

そう言った烏間は再びパソコンに向かおうとするが、途端に嫌な汗が噴き出た。

ふとエルの方を見ると、ほんの一瞬だけエルの顔つきが獰猛な、まるで獲物を見つけたホオジロザメのような顔つきになったような気がした。

 

(気のせい、か?)

 

身体的な疲労は殆どないにしても、ここ最近、色々なことが起こりすぎたために精神的にやや疲れているのだろうと思い、少々リラックスして、またパソコンに向き直った。

何より、今、殺気どころか敵意すら感じさせない男の子がそんな顔をするはずがない。そう思い込んだ。

 

一方のエルはというと……

 

(危ない危ない……久々に強敵と対峙できるって思うと、つい殺る気が満ち溢れてきちゃった)

 

世界でもトップクラスの手練れとの対峙に心を躍らせていた。

 

話は変わり、ちょうど午前中の授業を終えた頃。

 

(さてさて、エル君の様子はどうでしょうか……)

 

殺せんせーはエルがいる隣の教室へと入った。

 

「遅かったね先生。時間が余りまくっちゃうから暇だったよ」

 

なんの変哲もない、いつも通りの笑顔を絶えず浮かべ続けるエルに殺せんせーは思わず油断し、彼の元へ行くと

 

錬金・鋭利(レアメイク・シャープネス)。案外ちょろいね、殺せんせー」

 

「ニュ、ニュヤ!」

 

床の木がいきなり鋭利な棘となり、連続で殺せんせーを襲う。ザシュッっと触手が切れる音がする。見ると床の上には2、3本程の切れた触手が落ちていた。

棘の連撃が終わると、すぐさま殺せんせーは退避する。そして、落とした部分は綺麗に生え変わったが、殺せんせーからするとこの身体になって、もしかしたら生まれて初めて身の危険を感じた。

 

「はいテスト。多分500点満点だよー」

 

気がつくと目の前に移動していたエルは殺せんせーの目の前にテストを突き出し、殺せんせーはそれを恐る恐る手に取った。

 

「ふふっ、いつの間に目の前にって顔だね?まあ俺のことを見てればそのうち理解できるかもね」

 

それだけ言い残し、教室から出て行った。

 

昼休み、みんな思い思いの場所で食事をとったり遊んだり談笑したりしている教室へとエルは入り、すぐさま自分の席に座ると、カバンから自作の弁当を取り出した。

弁当を食べ尽くした後は何をしようかと考えていると

 

「エル君それ誰が作ったの?」

 

隣の席でくつろいでいるカルマが聞いてきた

 

「俺だけど?」

 

そのセリフを聞いた途端、カルマはこちらに身を乗り出してきた。

 

「へー、よくできてんね。あ、そのウィンナー美味しそう」

 

「そんなに欲しいならあげるけど……」

 

若干カルマの押しに引きながらもちょっと今日は作りすぎたなと感じていたところなのでちょうどいとウィンナーを思いあげることにした。

 

「マジで?ラッキー」

 

そう言ったカルマはウィンナーを全部食った。

 

「…………」

 

「どうしたのエル君?」

 

「いや、なんでもないよ」

 

「?」

 

カルマはこちらを不思議そうに見てるが、この気まずい雰囲気の原因は間違いなく

 

(俺のウィンナァァァァァァァァァァ)

 

カルマである。

しかし、喉のあたりまで来た怒り文句をなんとか飲み込み、再び食べ始め、すぐに完食する。

 

するとタイミングを見計らっていたのかたくさんの生徒たちがエルの机に群がってきた。その中には今朝助けた矢田さんもいる。

 

「ねぇ!朝のアレどうやってやったの?」

 

「お前、背高ぇな。何食ってんだ?」

 

「錬金術師ってなに?」

 

「外でサッカーしようぜ」

 

群がってきた生徒たちはそれぞれ質問やら疑問やらを口にする。

 

「ま、待って。俺は聖徳太子じゃないから……頼むから1人ずつ喋ってほしいな。できれば名前も言ってくれれば嬉しいんだけど…」

 

エルの呼びかけに一同は静かになると、何やらコソコソと話し合っている。恐らくだがどの順番で質問するか決めてるのだろう。

 

「はい!じゃあ私から!私の名前は茅野カエデ。呼び方は好きにして」

 

「わかった。よろしくカエデさん」

 

「うん!よろしく!ところでさ、今朝のアレってどうやったの?」

 

いきなり核心を突いてくるとは思わなかった……。カエデさんのどストレートな質問にやや苦笑しながらも受け答える。

 

「うーん、その前に錬金術って言うのを知ってもらわないとなー。

錬金術って言うのは、特定の錬成陣と、自分の中に流れる気を使って、物を生み出す技術のこと」

 

「え?じゃあなんでも作り放題ってことか?」

 

「そう見えるけどそうじゃないんだよねー。えっと……だれ?」

 

「お、悪ぃな。岡島大河だ」

 

「えっとね岡島君、錬金術の基本は等価交換。何かを作るためにはその材料を揃えないといけないんだよ」

 

等価交換について説明したのはいいもののやはり理解はできないみたいで、みんな頭の中にはてなマークを浮かべてる。

 

「うーんと、1のものからは1しかできないってこと。例えば土から何か錬成しようと思ったら、錬成したものはその土と同じ成分でできるってことなんだ」

 

完璧には理解できないものの、ある程度は分かったみたいだ。

 

「じゃあ本題に移るけど、殺せんせーの触手はいくらヌルヌルしていそうでも、必ず何かの物質でできているっていうのはわかるよね?」

 

みんな頷いている。ここまでは理解できるようだ。

 

「錬金術っていのは基本的に物質が何でできているかを知る『理解』。その物質を全て一度バラバラにする『分解』。分解したものを新たな物体に変える『再構築』の3段階があるんだけど、殺せんせーの触手をあれは破壊したんじゃなくて、『再構築』の1歩手前の『分解』錬成を止めることによりせんせーの腕の物質を全て分解、空気中へと飛ばしたってわけ」

 

ここまでは説明するとほとんどが口をポカンとあけている。

 

「要するにせんせーの腕の物質を全て分解したってこと」

 

「「「あ、そういうことが」」」

 

君たち息ピッタシだね……。そう思いざるをえないほどのハモりにびっくりする。

 

「はーい!つぎ俺な!俺は前原陽斗」

 

「前原君ね」

 

「おう!あのさ、錬金術って俺らでもできんのか?」

 

「あ、それ気になるー」

 

「確かにー」

 

やっぱり錬金術を見た人は、錬金術が自分にも出来るのかどうかが気になるみたいだ。

 

「残念だけどこればっかりは幼い頃からやってないと身につかないと思うよ?」

 

「じゃあさエル君、何かコツみたいなことはあるの?………あ、僕は潮田渚。よろしく」

 

「渚君ね。そうだねーコツかー。あ、あることにはあるかな。これは俺の体術の師匠に教えてもらったんだけど」

 

なんかジリジリ寄ってきてないか?と思うほどみんな顔の表情からワクワクする気持ちが読み取れる。

 

「全は一、一は全。これが理解できる人はいい錬金術師になれる」

 

「えー、なんだそれ」

 

「どういう事?」

 

期待した分落胆も大きいようで、先ほどのジリジリ感は無くなった。

 

「ちなみにエル君は答えを知ってるの?」

 

再び渚君が聞いてきた。

 

「勿論だ。だがこればっかりは教えられない。どうしても錬金術師になりたいって人は自分で答えを見つけないとダメなんだ」

 

「ふーん。そっかぁー」

 

納得はいっていないようだが、満足はしたようだ。

そして、このクラスのリーダーらしき人が「じゃあ改めて…」と言うと、みんな一斉に言った。

 

「「「ようこそ3−Eへ!!!」」」

 

こいつらハモり大好きだな……

 

 

 




エル「錬金術紹介のコーナー」

ホーエンハイム「ドンドンパフパフ」

エル「今日の錬金術は……錬金・鋭利と最初に殺せんせーにやった錬成・分解の2つ!」

ホーエンハイム「錬金・鋭利は国家錬金術師の中ではポピュラーな攻撃方法だな」

エル「一撃の軌道がわかりやすい代わりに、錬成しやすいから手数を多くできるのがメリットだね」

ホーエンハイム「次は錬金・分解だな」

エル「あまり使う人はいないけど、使い方によっては[破拳の錬金丹術師]スカーさんのような事ができ、使い手によっては無双も夢じゃない!」

ホーエンハイム「ただし、人にやってしまうと体の内側から破壊し尽くしてしまうから注意が必要だな」

エル「以上」

ホーエンハイム「錬金術紹介でした」
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