プロローグ
親というものは偉大だ。
絶対に のためになるからこれだけはやりなさい。
勉強をすれば将来 は幸せになれるはずよ。
私たちは のことを応援しているから。
父さんと母さんは必ず俺のことを考えてくれる。色々な話をしてくれる。
僕はそれが嬉しかったし、父さんと母さんのいうことをきいていれば必ず幸せになれるんだからだったから喜んで受け入れた。
両親に言われたことは何でもやり、学校でも一番をとり続けた。意味がないから、とマンガとかテレビは一切見なかった。
というか、元々俺にはそれ以外の選択肢はなく、だから疑問に思ったこともなかった。
でも、ある日すごいマンガと出会ったんだ。
ある日、近所の本屋さんにいったんだ。
貯めたお小遣いで何か買おうと本を読んでいた。
と、近くで同い年ぐらいの男の子達が興奮して何かを話していた。
うるさいなあ、本屋さんでは静かにあいろよ。僕はそう思いながら彼らに聞き耳を立てた。すると彼らはこんなことを言っていた。
「すげえよな!ルフィ!!」
「俺はゾロが好き!!」
ルフィ?ゾロ?何の話をしているんだ?
すると、店長が話しかけてきた。
「あれ、 くんONE PIECEしらないの?」
ONE PIECE?何それ?
「最近はやってきてるよねー、どうだい?最新刊あるけど買う?」
まあ、お小遣はたくさんあるし、みるなといわれてるけど一冊ぐらいいいだろ。俺はそう思い店長さんが勧めてきた一冊を買った後家に帰って読んでみた。
そして、僕の中で電気が駆け巡った。
おもしろい!!
ゴムゴムの実をたべてゴム人間になった少年ルフィ。そして愉快で強い仲間たち。強い敵、その世界観、重厚なストーリーそのすべてに僕は酔わされた。
発売している単行本すべてが欲しくなった僕は翌日開店とともに本屋さんに飛び込み、置いてあった単行本を買い占めめ、徹夜して読破した。
それから毎日僕はONE PIECEを読みふけった。何度、麦わらの一味に入れたら、と思ったのかもわからない。
友達に勧められるまま他の漫画や、小説を読み漁る日々が続いた。
そして、時は経ち
僕は
俺になった。
親に言われるまま勉強を続けるが、その裏で適当に理由を付けて図書館や本屋に通うのが日課だった。
相変わらず家は厳しかったが、それでも本や、マンガ、そして隠れてみるテレビが俺の麻恵だった。
そんな日々が続いたある日、家に帰ると家が燃えていた。
火事か
慌てて家の門を開けると、それは火事ではなかった。
ボウボウと燃える俺のマンガ、本の山
俺には何が起こったのか分からなかった。ただ呆然とするしかなかった。
俺の存在に気付いた父さんはこちらを見つめ、何の感情も浮かんでいないその眼のまま、他のものもだしなさい、といった。
お前には不必要だから。なんでこんなくだらないものを持っているんだ? には必要ないだろう。お前は将来私たちに家を買ってくれるんじゃないのか?あんなものただのゴミでしかない。そんなもの読み漁るくらいなら参考書を読んで、勉強しなさい。
俺にはなんで父さんと母さんがこんなことを言うのか分からなかった。
急に後ろから母さんの声をかけてきた。
あなたこんなに。
母さんの手には僕のONE PIECEを含めて俺のコレクションが握られていた。
父さんはそれを受け取ると新たな焚火の火種にした。
そして、次の瞬間にはある結論に至った。
ああ、この人たちは僕のことをかんがえてたんじゃない。
自分のことを考えてただけなんだ。
俺のためといったのはうそ。
本当は自分たちが将来いい思いをするために、ただ自慢をするために俺は使われていただけなんだ。
俺は人形?
オレハアナタタチノニンギョウナノカ?
イイヤ、ソンナコトハナイ
オレハオレダカラ、ソレヲヒテイサレルリユウハナイ
急に両親が何か人間ではないものに見えた僕は家の玄関を押しのけ、道へと飛び出した。待ちなさい!という声が聞こえたけど無視した。自分でもなんでこうなってしまったのか分からない。
ビリビリと破かれたONE PIECE
あの光景が脳裏でチカチカと瞬きこびりついて離れなかった。
あの時
俺がもう少ししっかりと話しておけば、、
両親がもう少し理解ある人だったら、
急に道路に出た僕を車が僕をひかなかったら、
未来は少し変わったかもしれない。
最期に見た光景は
眼を思わずつむってしまう程の車のライト
俺と、そして僕は死んだ。
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「うん?」
俺は何もない真っ白い部屋でいすに座った状態で目が覚めた。
あれ?なんでここに座ってるんだろう。俺は
死ンダノダカラ。
「!?」
いきなり頭の中で声が響いた。何だったんだ、空耳か?
アア慌テナクテモイイヨ。
再度声が響く。やはり、誰かが俺に語りかけているのだ。一体どこのだれが話しているのだろう?
ボク?ボクハ神様ッテヨバレテルヨ。
「神様!?」
ソウダヨ。
「え?じゃあここは死後の世界?」
ソウイウコトニナルネ。
「俺は本当に死んじまったのか?」
ソウダヨ。間違ナクキミハ死ンダ。車ニヒカレテネ。
「そんな!俺は父さんと母さんのために一流大学に入ってちゃんと就職しなきゃいけないんだ!!さっきのこと謝らないといけないんだ!!」
ホントニ?デモ、君ノ大切ナ本ヲ焼イテシマッタノハ誰ダイ?
「え?」
君ガ死ンデシマウ要因ニナッタノハ誰ダイ?
俺は何も言えなくなってしまった。今まで疑問に思ってこなかったけどなんでぼくはあの人たちの言う事を聞いてきたんだろうか。親だから?分からない。
すると、何も言えなくなった俺にまた声が響いた。
何モイエナクナッテシマッタネ。キミニトッテアノ人達ハボクノヨウナソンザイダッタンダロウネ。
「でも父さんと母さんは」
すると、声はため息をついた後、悲しそうな声で言った。
悲シイナア。君ニハ自分ノ価値観ッテイウモノガナインダネ。君ノモッテイルモノハスベテオトーサントオカーサンノウケウリダネ。
「そんな!!こと・・・は・・。」
その言葉を否定しようとするが、それ以上の言葉が出てこない。
すると、その声は俺の心の中の戸惑いを見透かしているかのように冷めた声で続けた。
アルヨ。ダカラ、コノママ君ヲ輪廻ノ輪ニ戻スノハ僕トシテハ心苦シインダ。
「どういうこと?」
キミヲ転生サセテアゲヨウト思ッテネ。
「えっ!?」
キミハ自分シカデキナイ生キ方ガデキナカッタ。全テヲ隠シ、自分ノ生キガイヲ守ロウトシタ。当タリ前ダネ。ダッテ、君ハソレヲ許サレテナカッタノダカラ。
ダカラ、
僕ハ、数多アル世界ノ中デ最モ自由ナ世界ニ君ヲ放リ込ム
ダカラ今度ハ自分シカデキナイ生キ方ヲスルンダ。
誰ヨリモ自由ニ生キテゴラン
僕ハココデ君ノ活躍ヲジックリト楽シマセテモラウヨ
「ちょ、ちょっと待って…」
その声に質問する暇もなく、身体全体に落ちるような感覚が襲った。
そのまま、落ちる…
落ちる…
落ちて…
そして、俺はこの世界にやって来た。