「ハッ」
辻斬りの野郎を見下ろして荒い息を吐く。
終わったか。
中々いい腕前だった。少なくともこの偉大なる航路で戦てきた中では上位の強さに入るだろう。
ここらへんにのさばっている程度の海賊なら地震一発で船ごと沈めてきたが、これはいい意味で予想を裏切られたな。
「ガッ!!」
チッ、さっき受けた傷が疼きやがる。
振動を使って無理やり突破口をこじ開けたが、実際とんでもないダメージが蓄積されているようだな。やれやれ、俺はこんなに無茶をする人間だったか?
…いや、とりあえずは、さっさと街に行って傷を治すとするか。はたして間に合うかどうかだなぁ…。
俺はもう一度ピクリとも動かなくなったそいつをもう一度見降ろした後、乗ってきた小舟に向かって歩き出した。
死して屍、何も語らず。
コイツともう少し戦いたかったが、動かなくなってしまっては仕方がねぇ。今生の別れになるのが口惜しいが、俺の一撃を直に受けたからにはもう起き上がらねえんだろう。
…こいつのことは“強敵”絶対に忘れねえようにしよう。後で墓でも作ってやるか。
ガシャ!!
「ッ!?」
絶対もう無理だろうと思った。俺の振動が直撃したんだ。よほど鍛えてるか、能力者じゃなければ…いや、例えそいつらだとしてもマトモに食らって生きていられるハズがねェ!!
しかし、剣を支えに目の前のこいつは立ち上がろうとしていた。
この闘争の世界、常に全力で殺り合う世界、一人しか生き残れない世界。
結局、生き残る奴はただ強いから、って理由だけじゃねェ。それ以外の何かを持っていやがる。折れそうになる気骨を支え続ける絶対的な
こいつが持っているのはなんだ?
「おうい?海賊さんよ、ゴフッ。勝ったつもりになるのはまだ早いと思うんだけどなぁ〜?」
手負いの獣が何言ってやがる。…いや、俺も他人の事を偉そうにいう事は出来んか。
「クソ生意気な・・・。」
上等だ。
俺はもう一度、戦うために向き直った。
やべえ、目がかすむ。体中がいてえ。
どうも、(ガフッ)決闘してボロボロになってるほうのグンジョー君です…。
白ひげさん。白ひげさん。なんで白ひげさんは僕の体に全力で地震エネルギーをたたきこんだの?
A.それはね君がムカついたからだよ?
…やっぱり?
やっとる場合か!!
さて、今俺に起こってるのは人生最大のピンチ。
なんてこった、原作史上最強クラスの強い一発をモロもらっちまった。どうすんだよコレ、身体全体がキシキシいってるぞ?
というか、意識はまだあるがぶっちゃけヤベエ今にも色々吹っ飛びそう。たとえば天国とか。
スカイハイ!!
フライアウェイ!!
・・・冗談も言っていいときと悪い時があるよね?
というか、何ドヤ顔して勝った気になっちゃって歩き出してんだよエドワード・ニューゲートォォォォォ!!俺はまだ負けちゃいねぇぇぇぇぇ!!
俺は虎丸を杖代わりに起き上がる。
何ビックリした顔してんだよ。俺はまだ死んじゃいねえぞ?
「おうい?海賊さんよ、ゴフッ。勝ったつもりになるのはまだ早いと思うんだけどなぁ〜?」
やべ、血でた。てか、負け惜しみにしか聞こえねえ。
「クソ生意気な・・・。」
「生意気で結構。でもさ、あんたもフラフラじゃん?俺の“爆風ナマズスクランブル”受けて立っていることが未だに信じられないんだが・・・。あんた本当に人間?」
「いや、その質問は俺がしてえよ。武器から衝撃波飛ばすたぁ、どうやったらできんだ?お前さんこそ人間の皮被ったなんかじゃねえのか?よかったら今度教えてくれ。」
「いいよ、俺に勝てたらな。」
「なるほどな、グラララララララララ。」
つか、ヨロヨロのけが人達が何言ってんだ。もし、今これで一発喰らったら俺死ぬるぞ。…一発?
「エドワードさんとやら、提案があるんだが。」
「なんだ?」
「お互い全力の一撃を出し合ってそれで終わりにしなか?」
「…なるほどな」
相手にもここままやってもらちが明かないってわかったみたいだ。理解が速くて助かる。
「ふぅ」
俺は力を抜く。
心に波風一つ立てることなく。
これは奥の手だ。
今までは剣をふりぬく“速さ”で技を放っていたが今度はそれに、“俺自身の速さ”を加える。
大規模破壊ではない、“最終決着用”の技。
失敗、自己犠牲をいとわず、恐怖を恐れず、真っ向勝負!!
白ひげも振動発射態勢をとっている。それも、さっきより深い構えだ、言葉通り、この一瞬で決着をつけるつもりか!!
「なら!!」
低く腰を落としたまま―――加速
回転、遠心力、そして速度!!すべての要素は整った!!
「いいぜ、かかってきな
「上等だ、首洗って待ってろよ、大海賊!!」
「「俺はお前に負けない!!」」
「ウェアアアアア!!」
「カミカゼ“嵐”!!」
その時、
上空の雲が割れた
え?結果?
結果は相うち。
俺はあいつの全力の振動をくらって、
あいつは俺の全力の斬撃をくらって。
見事に体力尽きて、地面に倒れ伏している。
「…オイ。」
「…何だ。」
「お前に聞きたいことがあるんだけどよ」
「飛ぶ斬撃についてなら、いつの日か教えてやるよ」
「グラララ、そいつはありがてえな。でも、俺の言いたいことはそれじゃねえ」
「じゃあ何?」
「なあ、お前
俺の……
「・・・ハァ!?」
グランドラインにある、とある孤島。
そこは、近くに大きな街がある以外、潮風の運ぶ海の香りや、ウミネコの鳴き声が聞こえる、他の島とも何の変りもない普通の島だ。
しかし、この島は偉大なる航路で生き残る唯一の術である、
さらには、この島への道筋を示す
それは何故なのか?
理由は簡単だ。
“地震”
“大嵐”
この二つの天災が歴史上初めて激突した場所だからだ。
しかし、天災と言っても人々が考える災害そのものの事ではない。
それは、世界から見たらとても小さな個…しかし、その
しかし、その幕間劇が徐々に徐々に姿を変え、最終的には世界を相手にした千客万来の大公演へと姿を変えたのだ。
ならず者は夢見る。自らが世界の覇を唱えんとすることを。
その島の名前は、“地嵐島”エドワード・ブルート島
必勝祈願の祈り場所として名高いこの島は、いつしか崇拝され、島全体がまるでご神体のようにあがめられている。