ONE PIECE ~青天の大嵐~   作:じんの字

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マリンフォードよりお送りします

『ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァープ!!』

 

電伝虫の向こうから怒声が聞こえた。

 

相手はだいぶ怒っているな。

 

「おお!!そっちから電話をかけてやろうと思ったところだ!!」

 

対して怒鳴られている本人はガッハッハとか笑っている。

 

…またか。

 

だが、いつものことだ。

 

この男とは長年の付き合いだが、外にも内にも様々な敵を作っている。

 

外はいわずもがな海賊たち。

 

しかし、内部からの敵は、・・・まぁ始末書や書類を無視して逃げていることが原因というところか。

 

この悪い癖を部下達に移らなければいいが・・・。

 

『何で善良な賞金稼ぎの俺が狙われる賞金首になってんだよ!?説明しろ!!』

 

「あ?それは俺が推薦しただけだだぞ?」

 

『フザケンナ!!そんな昇格みたいなやり方でお尋ねものにされてたまるか!!』

 

「ガッハッハ!!これで一々始末書を書かなくても海賊討伐という大義名分でお前と戦えるということだ!!もっとお前も喜べ!!」

 

『喜べるかぁ!!!!あれから何回賞金稼ぎの襲撃にあったと思ったんだ!?詳しい説明がねえとこれからマリンフォードに殴りこみに行くぞ!?こっちは本気だ!!覚悟しとけ!!』

 

なるほどな。電伝虫の向こうの人物が誰なのかが分かった。部下に言って数日前の新聞を持ってこさせる。

 

その間、私は一週間前の会議のことを思い出していた。

 

 

 

〜 一週間前 海軍本部マリンフォードのある一室〜

 

 

 

「即刻逮捕するべきです!!」

 

センゴクは今後マークすべき人物を決める会議に出ていた。

 

本来ならば少将以上の海軍の重要人物しか出席できない会議なのだが、彼は今まで実行てきた策略や成果が評価され、立場はまだ准将という立場にいながら、この会議に出席が許されていた。

 

卓上には今世間を騒がしているルーキーや、行動が予測できず危険な賞金首たちがリストアップされている。

 

しかし、彼が悩んでいることはそれだけではなかった。

 

1つ目はもちろん今行われている会議について

 

2つ目は、

 

(またか・・・)

 

自分の隣の席が空席であるということだった。

 

彼の同期であるとある人物は自分と同じく准将の地位が与えられ、この会議への出席が許されている。

 

センゴクと同じくらい戦闘の面では優秀であるのだが、いかんせんサボりがちなうえ、その行動の予測が不能という点では卓上の海賊たちと大差がないほどであった。

 

数日前彼がいないことに気付いたので、部下達に聞いてみると海賊団の巨人の船長を逮捕に行った帰りにいつの間にかいなくなっていたそうだ。

 

また、いつもの癖が出たか。

 

焦っている部下に対して彼は幾分か冷静だった。

 

この前遅刻した際、何とかかばってやった時、「もう二度とこんなことしない」とか言ってたが、それを信じた自分が馬鹿だったのだ。今度は絶対にかばわない。

 

ちなみにその部下に当時の話を聞いてみると、「その時のセンゴク准将の顔は“仏”とは真逆のものでした(泣)」と言っている。

 

さて、センゴクはとりあえず、この怒りを少しでも発散させようとその男に電話をかけた。

 

しばらくすると、目当ての男が電話にでた。

 

「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァープゥ!!」

 

『なんのようじゃい“センゴク”!?』

 

そう。

 

モンキー・D・ガープ

 

災厄(間違いではない)の隣人の名前だった。

 

「戻ってきた船にいないと思ったら貴様どこをほっつき歩いとるかぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「『いや〜。ドーナツを食っててな』」

 

「ガープ!!今度の会議は例の超新星(ルーキー)ゴール・D・ロジャーとエドワード・ニューゲート。そして、ニューゲートと行動を共にしてる“辻斬り”についての重要な話し合いだとあれほどいっただろうが!!』」

 

「『あー気にすることはないゼンゴク』」

 

「何がだ!?」

 

「その内の2人が俺の目の前にいるからな。」

 

ガープの声の雰囲気からセンゴクは瞬時に状況を察した。

 

彼は今戦闘中だったのだ。

 

相手はおそらく、エドワード・ニューゲートと“辻斬り”。最近その海域の近くに出没したという情報を知っているからだ。

 

『・・・戦闘中だったのか?』

 

「いんや。これからするところ」

 

確かにガープは強い。

 

あの年で無意識ながらに“武装色”の覇気を使いこなし、あまつさえ“覇王色”の資質さえあった。

 

しかし、今回は少し相手が悪い。

 

エドワード・ニューゲート

 

白髪の大柄な男で悪魔の実の能力者。

 

詳しいことは分からないが振動を使い、津波や地震を引き起こせるという。

 

これだけでも脅威だが、敵は1人だけではない。

 

“辻斬り”グンジョー。

 

灰色の目と髪を持つ剣士。

 

賞金稼ぎだがその腕は確かで、賞金首なら誰しも構わず襲いかかり、仲間と船ごと皆殺しにする通称“狂犬”。

 

噂によると、どちらも海賊の艦隊相手でも一人で戦えるという。

 

うちの馬鹿犬もそれぐらいはできるが、戦闘力でみればこの2人を相手にするのはやはり1人だけでは厳しいだろう。

 

「…今はやめておけ。この先また会う機会もあるだろう。とりあえず早く帰ってこい。これ以上かばいきれん。じゃなきゃまた罰則だぞ。」

 

「『何!?それはいかん!!帰る!!今すぐ帰る!!』」

 

どうやら、戦闘を避けられたようだ。

 

すでに船を向かわせているからすぐに帰ってくるだろうと思ったが、

 

(やはりこうなかったか)

 

やはりどこかで買い食いでもして部下を困らせているんだろう。

 

「センゴク准将?センゴク准将?」

 

ここでセンゴクは自分を呼ぶ声で我に返った。

 

「あなたはどう思われますか?ゴール・D・ロジャー!!シルバース・レイリー!!十分我らの脅威になりえると思われるが、あなたはどうお思いか!?」

 

少し意識が遠のいていたようだ。しかし問題ない。

 

「そうですね・・・」

 

センゴクは自分の意見をスラスラと述べる。短時間の間であれば少し考え事をしていても問題ない。“智将”の名前は伊達ではないのだ。

 

「うむ、そうか。では、次の海賊たちに「いやーすんません!!」」

 

入口のほうを見ると、見知った顔があった。それがガハハハと笑っているからセンゴクは余計にイラッとくる。

 

「ガープ遅いぞ。」

 

「いや、すんませんコングさん。」

 

モンキー・D・ガープがやっと会議に出席したのだった。

 

 

 

s

 

「ゴホン。ガープ准将、君も誇り高き海軍の一員なら「はい分かってますよ。」・・ならいいんだ。」

 

まったく、正義正義言う上官たちの相手も疲れる・・・。もっと自由にすればええのにな。

 

そう!俺のように!!

 

「さて、会議に戻りますが。この2人の海賊たちについてなのだが。」

 

お!こいつらは!

 

「ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!」

 

「分かった分かったガープ准将、君の意見を聞こう」

 

さて、俺が遅刻した理由も交えて話して行こうか。コングさんのお仕置きは御免だ。

 

「単刀直入に言いますと先日こやつらと会ってきました。」

 

上官たちの間で少しどよめきが起こる。

 

「ガープ准将、それで戦闘になったのか?」

 

「いいえ、相手が悪いんで逃げだしてきました。」

 

「貴様!敵前逃亡とはそれでも海軍の軍人か!?」

 

ハイハイ分かってますよ。これだからタカ派の上官は困る。

 

「で?続きがあるんだろガープ?」

 

「ハイ、そうです。今回は少々訳ありでしたので。」

 

「訳ありとは?」

 

「先日、あのロッキーが捕まりましたな。」

 

「それは、すでに周知の事実だ。あいつはインペルダウン送りになったな。」

 

「そう、そのロッキーなのですが、ロッキーをその一味ごと倒したのは海軍ではないのですよ?」

 

「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」」

 

「それは一体誰なんだね!?」

 

ここまで言って分からんのか?

 

「その人物たちこそこのエドワード・ニューゲートと“辻斬り”なのです。」

 

「何!?」

 

明らかに上官たちの間にどよめきが起こった。

 

「何を言っているのだ?海賊がそんな事をするはずがない!!名を上げるために決まっているだろう!!」

 

「いや、そうとも限らないのです。町民たちに話を聞いてみましたら、彼らが率先してやってくれたと。町を救ってくれたんだ、と言っていました。」

 

タカ派の上官たちは口々に「馬鹿な!!」とか「ありえない!!」とか言っとる。まったく、これだから頭の固い連中は・・・。

 

「少しいいかな?」

 

コングさんがしゃべりだした。

 

「コング大将殿、何か?」

 

「君たちは頭ごなしに海賊を“悪”というが・・・、必ず“悪”と言い切れるのかどうか疑問に思ってね。」

 

「何を言ってるのか分かりかねますな大将殿。海賊共の行動からすれば「では」・・・なんですか?」

 

「我ら海兵が“絶対正義”である、とはどうして言いきれるのだ?」

 

会議場に重い空気が流れる。

 

それはそうだ。海軍の士官の中にも海賊と結び付いて、報告をしないような不正を行う輩もいる。俺が言いたかったのはそういうことだ。

 

「つまりはそういうことだよ。」

 

「この世に絶対正義はありえない、ということですか?」

 

「いや、それもあるが、今までの彼らの行動を見てみるとそれを裏付けることができる。」

 

コングさんは手にもっている書類をパラパラとめくる。

 

「エドワード・ニューゲート。ある海賊団に所属し、襲いかかる海軍や海賊の船を撃沈させたというな。」

 

「!ではそいつは完全に「“襲いかかってくる船”のみだ」・・・。」

 

「降りかかった火の粉をはらいのけるのは、当然の行動だろう。自分から襲いかかった記録は今のところない」

 

コングさんの反論に手も足も出ないようだな。

 

「そしてこの“辻斬り”」

 

「海賊と一緒にいるだけで罪だ!!」

 

「確かにそれはあるかもしれないが、彼にいたっては一般人を襲ったという記録はないではないか。」

 

うむ、コングさんの言うことはもっともだが、この人の発言が何か引っかかるな。

 

「コング大将!!あなたは海賊を擁護するのですか!?」

 

「いや、少し私に考えがある。」

 

?どういうことだ?

 

しかし、次の発言に俺たちは度肝を抜かれた。

 

 

 

 

 

 

 

「こいつらを・・・七武海にしようと思うんだが」

 

 

 

 

 

『え?』

 


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