ギィン!!
甲高い音を立ててマツと俺の剣が衝突した。
「…!!」
「どうしたどうしたそんなんじゃエースは狙えねえぞ!!」
確かにマツは強いと思う。
構え方といい、その所作と言い、武人としての強さが伝わってくる。
だが、力比べならば負ける気がしない。
そもそも、マツは明らかに細腕なので力なんぞ出るはずがない。
故につばせり合いならこちらは負ける気がしない!!
「そうらよ!!」
「…クッ」
力で押し切った後、マツに高速で接近!!
ヒュロリ
「!?」
俺の刀はマツを斬る、というあと一歩のところで空を斬ってしまった。
…今のは何だったんだ?
まるで、斬られるのが分かっていたかのような動きだった・・・。
「…もう終わりか?それではエースは狙えんぞ。」
(カチン)
意趣返しってわけですか?
上等ですなぁ!?
「テメエヌッ殺すぞゴラア!!“旋風スクランブル”!!」
さっきの准将を一撃で倒した“旋風スクランブル”を放つ。例え、少し身のこなしがよかろうと、この距離なら反応できまい!!
ヌルリ
しかし、それもかわされてしまう。
「チクショー!!何だテメエ、さっきからヌルヌル動きやがって!!ウナギかお前は!?俺の相手がそんなに避けるのが上手いわけねえだろゴラア!?」
「…先程から何を言ってるかは分からないが、お望み通りずっと避け続けてやろうか?ウナギのように。」
(カチン)
「テメエ絶対に斬る!!」
「…できるものならな。」
接近して斬りかかるが、それもかわされてしまう。
「…弱い。非常に弱い。噂の“辻斬り”も所詮この程度か?」
「ふざけんな!!ヌルヌルしてないでかかってこいオラ!!」
「…フム、ならばいかせてもらう。“柳下”」
「あ?」
すると、マツの身体がぼやけ、最終的には俺の視界から忽然と消えた。
(!?)
慌ててあたりを見回すが、マツの姿はない。心なしか生ぬる〜い風が吹いているような気がする。
「何だってんだ?」
「…“御岩”」
「え!?」
いつのまにか、マツは俺の後ろに立っていて、すでに大きく刀をふりかぶっていた。
「…フン!!」
「やべ!!」
ガン!!
刀と刀がぶつかり合う。
しかし驚くのはまだはやかった。
(押されている!?)
その一撃は、先程のマツの一撃はとは比べ物にならないほど重い一撃だった。
というか、このままだと押し負ける!?
(一体コイツのどこにこんな力があるってんだ!?)
「…不思議でたまらないようだな。おそらく、一体コイツのどこにこんな力があるってんだ。とか、考えているのであろうな。」
「テメエ!!」
そっくりそのまま心の中よみやがってこのサイコメトラーが!!
「…そっくりそのまま心の中よみやがってこのサイコメトラーが。フム、なるほどな。確かに、この力は読心術と言えばそうだな。」
「な!?」
こいつマジで心の中を読んでやがるのか!?
「…こいつマジで心の中を読んでやがるのか。まあ、半分正解半分不正解と言ったところか。この力はそんなものじゃない。」
「クッ!!オラア!!」
必死にその一撃を押し返し、刀を使って体勢を立て直す。
「…よく耐えきったな。普通の海賊ならば、私の細腕をなめてかかり、ここで斬り殺されるのだが、立て直すあたり、さすがは噂の海賊の1人と言ったところか。」
「それはどうも」
ふう、クールに、クールになるんだ。
何も考えずにに斬りかかったらおそらく俺は殺される。何か策を練らなければ!!しかし、今の一連の流れどこかで見たことがある気がするんだよな。
「…気を抜くと殺すぞ?」
「おわ!?」
いつのまにか接近していたマツにあやうく斬られかける!!というか、髪ちょっと斬れた!!
「テメエ、容赦ないな!?」
「…これでも、殺す気でかかっているのでね。もう少し警戒を出してもらえないかな?」
「ウ○トラマンと仮○ライダーの敵だってもう少しは待つ余裕あるよ!?」
「…やはり何を言っているのか分からないのだが」
「そうは言って、っと!?オッ、アブね!?」
情け容赦なくマツの斬撃が続く。そして、その一撃一撃はとてつもなく重い。
てか、ちょ、ちょっとたんま!!
「…させると思うか?」
「すいません、俺が言えなかったっす!!」
「…しかし、力を使えないお前がまさかここまで逃げるとはな。もしかしてすでに目覚めているのか?」
「一体何の話ですか!?」
くそう、相手の手が読めねえ!!よし、ここは一か八か!!
「もう一度!!“旋風スクランブル”!!」
不安定な態勢の中、どうにか“旋風スクランブル”を放つ。しかし、その一撃も簡単にヌラリとかわされてしまう。
まるで、本当に俺の手の内が分かっているみたいに。
攻撃の来る場所が最初から分かっているみたいに。
(…)
もし、
細腕から考えられないほどの力と、俺の攻撃をよけきる力が、同じものだとしたら。
1つだけ。
1つだけこんなことをできる力を俺は知っている。
「…ああ、それで正解だ。」
「え!?」
まさか、本当に!?
少将でも“アレ”使うことができるのか!?
「…改めて名乗らせていただこう。」
俺から少し距離をとり、マツは自分という存在を改めて名乗り出した。
「私はあらゆる攻撃を柳の如く受け流し、一方私が振るう剣撃は一瞬であらゆるものを一刀両断する!!この力は悪魔の実にあらず!!これは“覇気”!!私は“覇気使い”海軍少将“柳木”のマツだ!!」
さて、とマツがもう一度刀を構えなおす。
「これは、私が認めた相手しか名乗らない名乗り方だ。お前は私が名乗るにふさわしい相手だとみなした。ありがたく思え。しかし、それでも運命は変わらない。では、海賊。その運命にあらがってみせよ!!」
言葉をはくやいなや、今度はマツが突進してくる!!
「そうか」
未だ自分が未到達での領域“覇気”
そして、敵はそれを使う“覇気使い”
おそらくは勝てないかもしれない相手
だがそれがいい!!
強くなるために、少しは格上の相手とも戦わないとなぁ!!
「こい!!“柳木”のマツ!!」
俺はマツを再度迎え撃った。