グンジョーが空を飛んで行ったあと、もう一方の軍艦に向かっていたのだが、いきなり船のヘリから男が出てきやがった。
一瞬海兵か?と思ったが、
「よっ。」
態度からして、どうも違うようだな。
「…ああ?誰だお前。」
「船長〜!!なんでここにいるんですか!?」
すると、その男の声に、反応して船を動かしていた船員がワラワラと寄ってきやがった。
さっきの話を聞く限り、この男は、こいつらの船長らしい。
「なるほどな、お前がゴールド・ロジャーか。」
そういえば、話し合いをしている時、はしゃいでいたやつの中にこいつがいた気がする。
いや、それより前に金獅子と喧嘩をしていた気がするが、すっかり忘れていたな・・・。
このアホンダラが船長だったのか?
「しかし、どうして中々強そうじゃねえか。」
思わず口に出すと、
「違う!!」
ロジャーは声を張り上げて否定してきた。
何だ謙虚なやつなのか?
「俺の名はゴール・D・ロジャー!!ゴールド・ロジャーは海軍が勝手につけた名前だ!!間違えんな!!!」
どうやら、名前の間違いを指摘したかっただけらしい。
…何か調子狂うな。
「ん?お前エドワード・ニューゲートか?」
「ああ、そうだ」
ロジャーも俺のことを知ってるらしい。
「グラグラ実の能力者…イロモノ揃いの超人系の中じゃ中々強いらしいが…、お前自身は強いんだろうな?」
「グラララララ、酔っ払いだけには言われたくねえよアホンダラ。」
ゴールド・ロジャー、いやゴール・D・ロジャーか。面白そうなやつだな。
「あ、あの〜。」
俺達のやり取りをかたずを飲んでみていた船員の1人が話しかけてきた。
「船を動かしたいんですけど・・・いいすか?」
「おう!お前ら!!行くぞ!!」
「「「「「はい船長!!」」」」」
ロジャーの雄たけびとともに船員が働き出す。
やはり、こいつの命令の方があいつらにとっては動きやすいいのだろう。いつかは俺も。あいつと共に。
「おいエドワード!!船が近くなってきたぞ!!」
「おう、わかった。!!」
愛用の武器を手に取り、目の前の軍艦を睨みつける。
すると、船員が急に叫んだ。
「せ、船長!!」
「どうした!?」
「上を見てください!!」
ロジャーが上を見上げるのにつられて俺も上を見上げると、赤い点が見えた。
いや、あれは紙?
赤い紙がフワフワとこちらに舞い落ちてきやがる。
それも、一枚じゃねえ。
何十枚、いや、何百枚?
「何だこりゃァ…」
思わず声が出るのも仕方がない。
およそ戦場には不似合いな光景だった。
フワフワを舞い降りてきた赤い紙。
それが船の床に触れると…紙が輝きだし…
ドン!!
「!!」
爆発した。
なぜ紙が爆発したのか?
それを考える暇もなく、ここにいる全員は瞬時に悟った。
“今降ってくる紙はヤベエ”!!
「ウェアアアアアアアアアア!!」
「おりゃあああああああああ!!」
ロジャーが拳を振りぬき、俺は振動を使う。それが上空にある紙に当たると、そこで一気に紙がはじけ飛ぶ。
ドンドンドンドンドン!!
「うわあ!!」
これは誰の悲鳴だったかは分からねぇが、結構な衝撃波が来た。
もしあれ全部が、この船に落ちていたら・・・
「さすがにやばかったな。」
俺は能力者だから泳げねえ。だがらこの船がなくなったら俺はそのまま沈むしかねえ。
「ガハハハハハハ!!愉快なやつが敵にいるみてえじゃねえか!!」
「船長!!そんな気楽でいいんですか!?」
「いいんだ!」
一方、ロジャーはなにもなかったみてえに大笑いしてやがる。
こいつはおそらく能力者ではないのだろうが・・・余裕過ぎやしねえか?
「おそらく…能力者がいるな。爆発する紙なんてきいたことがねえ。」
「あ?そうだな、まあどっち道殴るだけだ。」
相手の能力もわからずにただ殴るとは・・・。
こいつはただ馬鹿なのか?
それとも大物なのか?
「いやー、今の一撃を交わすとはさすがに驚いた。ほめてつかわすぞ海賊諸君。」
「「!?」」
急に船のヘリから声が響いた。
驚いて声がした方も見ると、1人の男がこちらを見ていた。
平均的な体格に海軍の正義のコート。
ニコニコと笑っている顔。
しかし、醸し出されるオーラは明らかにつええ奴が持つ特有ものだ。
とりあえず、俺はこいつを知らねえ。少し話を聞いてみるか。
「オメエは誰だ?」
「海賊程度に名乗る義理はないが、この心優しい私は違う。いいだろう、私はパピエル。海軍の中将だ」
中将…、なるほどこいつほどの地位ならばこれぐらいの無茶できんだろうな。それに、いつの間にか軍艦もさっきよりも近くに来てやがる。
あの紙野郎に対応していた時に近寄っていたのか?
…クソッタレめ。
「ほう、オメエが今回の一件の引き金を引いたものか?」
「失礼な!私は何もしていません。あなた達がここに来たから私は攻撃した。ただそれだけですよ」
「バスターコールとか言ってじゃねえか。住民も皆殺しにするつもりだったのか?」
「生意気いってんじゃねえよ海賊風情が!!」
パピエルが急に語尾を荒げ、眼を限界まで見開きながらまくしたてる。
「そもそもお前らは生きてるだけで社会にとって邪魔なんだよ!!それなのに、それなのに、“正義”たる俺の作戦を邪魔しやがって!!挙句の果てにこっちが下手に出てやれば何をほざいたやがる!!お前らと関わった時点であいつらも同罪なんだよ!!」
成程な、笑顔がウソくせえと思ったら本性を隠してやがったか。
自分を保つために、他の人間を平気で排除する。人間のクズめ…
「仲間の海兵も結構迷惑な話だと思うが?」
「黙れ!!私の前に個人の感情などどうでもいいのだ!!私は!!海軍全体の私の“正義”のために戦っている!!そのためにはある程度の犠牲もやむを得ない!!」
こんなやつが海軍の中将とは、堕ちたな海軍!!こいつは、結局自分の都合に振り回しただけじゃねえか!!
「アホンダラ!!テメエの都合で殺されたりしてたまるかよ!!それに」
薙刀を構えなおしながら、パピエルとかいう中将を睨みつける。
「“正義”ってやつはそいつの心のありようだ。他人から押し付けられるものじゃねえ」
「黙れ黙れ黙れ!!“赤紙”!!」
パピエルが怒鳴ると、体から紙がペリペリとめくれて出てきた。
そしてそれがフワフワと舞いながら俺に接近してくる!!
「ヌン!!」
ボッ!!
薙刀の刃先でそれに触れると、すぐに紙は爆発した。
こいつが能力者か!!
「私は“ペラペラ”の実を食べた“紙人間”!!私は体から自在に紙を出し、それを使って攻撃することができる!!“赤紙”は爆発する紙だ!!しかし種類はまだまだあるぞ!!」
すると、パピエルはまた紙を体から作り出す。
「圧倒的な手数にどう抗えるのかな?」
作り出した紙を操りながら余裕綽々で近づいてくるパピエル。
仕方ねえ。腹くくるしかねえか。
薙刀に振動をため始める。間に合うかはギリギリだな・・・。
「死ね!!」
クソッタレダメか!?
さっきの爆発する紙がこちらに接近してくるが
「ヌン!!」
「グホッ!?」
横から飛び出してきたロジャーがパピエルを軍艦にまで吹き飛ばした。
主人を失った紙はフラフラと床に落ちる。
「…ロジャー」
「エドワード。俺は今最高に機嫌が悪いんだ。話しかけんなら気をつけな」
当たり前だ。今俺もテメエと同じ気分だからよ。
「あいつを潰すぞエドワード」
「ああ、任せろロジャー」
2人の海賊は軍艦に向けて跳躍した。