ONE PIECE ~青天の大嵐~   作:じんの字

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全話に加筆修正いたしました。


閑話休題:女帝の苦悩

 

男は嫌いじゃ

 

男は弱い

 

 

 

 

そう思い始めたのはいつだったであろうか。

 

幼少の頃は、男とはどのような生き物なのかをさんざん聞いてきた。

 

 

 

 

 

覇気も使えず

 

 

 

 

 

勇気もなければ

 

 

 

 

 

弱く

 

 

 

 

 

ただ逃げることしかできない

 

 

 

 

 

当時、私は、男とはどのような生き物なのかを聞きつつも深く考えたことはなかった。

 

しかし、成長し・・・初めて見た九蛇海賊団の遠征。

 

そこで、初めて男という生き物を生で見た。

 

当時すでに九蛇海賊団の悪名は中枢の海に広がっていた。滅多なことでは戦闘は仕掛けられないし、「九蛇の海賊船を見たら逃げろ」というのは、この海で生きる者にとっては絶対と聞いた。

 

しかし、戦闘を仕掛けてくるものはいた。

 

それが男だった。

 

 

「金をよこせ!!」

 

「おとなしくしろ!!」

 

 

・・・何じゃこいつらは?

 

覇気も使えない癖になぜこんなに偉そうなのじゃ?

 

 

「うわぁ!?」

 

「な、何だこいつらは?」

 

 

あまりの弱さに少し蹂躙すれば、すぐに弱気になり、立ち向かってくる勇気もない。

 

 

「助けてくれぇ!!」

 

「命だけは!!」

 

 

そしてただ逃げだすことしかできない。

 

・・・何じゃこの生物は?

 

 

 

 

 

覇気も使えず

 

 

 

 

 

勇気もなければ

 

 

 

 

 

弱く

 

 

 

 

 

ただ逃げることしかできないできないか。

 

 

 

わらわの男に対する見識は九蛇の思想と相まって確固たるものとなった。

 

それからというもの、わらわは襲いかかる男すべてを根絶やしにすることにした。

 

誰よりも男の海賊を打ち取り、誰よりも男が統べる商船を襲いかかった。

 

 

女よりも男は弱い。

 

 

九蛇海賊団は強くあるべき。

 

 

故に九蛇は男になどなびかぬ。

 

 

故に、全皇帝がいきなり男を追いかけて国を飛び出したときは、驚きと共に怒りに襲われた。

 

男なんぞに傾倒し、国を捨ておって!!

 

彼女の強さを尊敬しただけに軽蔑した。

 

そして、わらわは皇帝に選ばれ、そして徹底的に男は排除せよと命じた。

 

 

わらわ達は最強の九蛇海賊団!!だれよりも強い!!

 

 

我らに男はいらぬ!!

 

 

なぜなら、男とは醜いものだからじゃ!!

 

 

じゃから、遠征から帰った時、この国に男が侵入したと聞いたとき、一体自分はどのような顔をしていたであろうか。

 

下賤な男がこの島にしたじゃと?

 

 

ふざけるな!!

 

 

怒りのまま護国の兵士に命じ、即刻捕えさせ、見せしめのために闘技場で殺してやることにした。

 

予想通り、捕えられた男は、覇気も使えず、勇気もなければ、弱く、ただ逃げることしかできないできない。

 

わらわに頭を下げた時もその認識が変わらず、潔く戦うと言った時も、何か方法を用いて逃げようとしているのだと思った。

 

いつも通りだと・・・。やはり、男とはこの程度なのだと思った。

 

でも・・・目の前の男は何じゃ?

 

 

『えっ!?』

 

 

凪のないはずの凪の海で一瞬風が吹き、次の瞬間バジリスクが崩れ落ちていた。

 

今の一撃・・・。一瞬にして刀を振り、そこから鋭い剣撃が飛び出したのが見えた。

 

あの男は何なのじゃ?

 

逃げずに目の前の敵に立ち向かい、あれほどの剣の腕を持ち、不敵に、そして勇気に満ち溢れた顔、そして・・・あの刀は何じゃ?覇気?いや、武装色ではない!!もっと別の何か。でなければ、刀があれほどの質量を纏うことなぞ出来るはずがない!!

 

 

「知ってるか?」

 

 

いつの間にかこちらをみつめていた男に気付き、慌てて平静を装う。

 

 

「俺は“大嵐”だぜ?」

 

 

自信に満ちたその顔に、今まで感じたことのない気持ちが現れた。

 

あの男は何なのじゃ?

 

何なのじゃこの気持ちは?

 

 

「蛇姫様?」

 

 

ハッ、と気付くと侍女が怪訝な顔をしてこちらを見ていた。

 

 

「どうかなされましたか?」

 

「い、いや、何でもないのじゃ。」

 

 

改めて男を見る。

 

緊張を解くことなく、あたりを警戒しているのが分かる。

 

目の前の敵を倒しても尚油断をしないとは、中な・・・なっ、いや、そんなことはない!!

 

男は弱いのじゃ!!

 

覇気も使えぬ分際で調子に乗り、すぐに逃げる生き物なのじゃ!!

 

そんなもの認めぬ、そんなもの認めぬぞ!!

 

 

「おい!!」

 

「ハイ!?」

 

 

思わずとい言った感じで侍女を怒鳴りつける。

 

 

「“アヤメ”を呼びつけよ!!」

 

「へ!?アヤメ様ですか!?」

 

「そうじゃ!!あやつは護国の戦士の中でも一番強い!!あいつと、あの男を戦わせるのじゃ!!」

 

「し、しかし」

 

「早くせよ!!このまま男に負けてよいのか!?」

 

 

それを聞いた侍女は、慌ててアヤメを呼びに行った。

 

 

「何じゃ・・・一体何なのじゃ・・・。」

 

 

今怒っているのは、男に負けたのが悔しいのか、今自分が抱いている感情が何なのか、わらわには分からなかった。

 

 


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