ONE PIECE ~青天の大嵐~   作:じんの字

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少し立ち止まって力を付けろと過去人は言った

身体が動かん。それどころか、指一本動かせん。何だこれどんな状況だ。

 

 

「…何コレ。」

 

 

なるほどね合点が言った。

今現在包帯グルグルミイラ男。

そりゃ動かないわけだよ!!だって全身拘束されてるんだもん!!俺縛られる趣味ないからこの状況を素直に喜べない!!

とりあえずベッドから起き上がろうと柔らかいベッドに手をつk

 

 

「ッ!!!!!!!!!〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜イダぁぁぁぁぁああああああああ!!!???」

 

 

途端に腕から頭へと一気に駆け上る激痛。ジ〜ンジ〜ンとまるで波の揺り返しのように響く

 

 

「ここどこだっけ?」

 

 

おかしいちょっと前までの記憶がない。俺そういえばどうしたんだっけ?私はどこ?ここは誰?

海軍にフルボコられて・・・あ、思いだしたら急にムカっぱらたってきた。あの山猿と金色大仏とパリラいつかシメル。

まぁ、とりあえずこの話題は・・・

 

(そっとしておこう。)

 

ですよね。

さて、その後逮捕された俺はインペル投獄手前で華麗なる大脱走・・・。あ、ちょっと今度は震えが止まらなくなってきた。海面から迫る無数の巨体。涎を垂らすキバ。この記憶は思い出しちゃいけないと身体のどこかがアラームを発している!!

そう、先人は言った!!

 

(そっとしておけ!!)

 

というわけで再び元の話題に戻ろう。

そして、何とか“根源たる恐怖”から逃げだした俺はみんなの憧れ、男の夢、桃源郷、ガンダーラ、“女ヶ島”アマゾン・リリーに流れ着いた俺は逃げて逃げて捕えられ罵られシメられ

 

よし、結論は出た。

 

(撤退だ!!)

 

「了解たぜリーダー!!」

 

瞬時に生命の危機を察知した俺はベッドから華麗にジャンプして目の前の床に着地…して体中に衝撃が走りすぐさま卒倒した。

 

「あ!足が!!ぁ、腕までも!!ついでに体中のあらゆる部位が電撃属性で部位破壊ぃぃぃイイいいぃぃい!!」

 

そのままの体勢でゴロゴロと床の上をローリング!!そしてローリングでさらに体中に広がる激痛!!

マズイこのままでは本格的に意識を失いかねない!!

 

「あら〜?あなた何やってるの〜?」

 

「げっ!?」

 

見つかった!?何という最悪のタイミング!!おもれ、この世には神も仏もいないのか!?このままではナース帽をつけた悪魔に消された男としてギネスに載ってしまうではないか!?

 

「あなた〜。え〜と〜〜〜〜?」

 

「ちょ、ちょっと待って!!ゴメンナサイ!?」

 

「あのね〜。蛇姫様がね〜〜〜〜〜?」

 

「すいません!!ちょっと諸事情あってまだ死ぬわけにはいかないんです!!」

 

そのまま背後の窓にダイブ!!

わほ〜〜〜このまま逃げてやるぜ…あれ?何か忘れ

 

「あ」

 

しまったぁぁぁぁぁぁぁ!!俺重傷でいつもの身体能力ないんだった!?というか、このままだと俺激痛で絶対ハゲる!?

 

「やべえェェェェェェェェェェ、え、え、あれ?」

 

しかし、宙に飛びだした瞬間に身体がピタリと停止した。

 

「あのね〜〜〜〜〜?」

 

「え?」

 

服の襟を引っ張られている感触を感じて後ろを振り返ると、先の看護師さんが相変わらず頬に手を当てながらニコニコとこちらを見下ろしていた。

 

「話を〜〜〜聞いてほしいのよ〜〜〜〜〜?」

 

「…分かりました。」

 

(行って来い)

 

 

その笑顔に拒否権は、ない。

 

 

 

 

「話があるのなら先に行ってくださいよ…」

 

「何か〜〜〜言ったかしら〜〜〜〜〜?」

 

「いえ、何でもないっす」

 

 

あの後、冷静に聞いてみると俺の誤解だということがよく分かった。

満足に回復していない状態で行く共の戦闘を繰り広げて気絶した俺はその後3日間ほど気絶していたらしい。

というか、最近俺気絶しすぎじゃね?気のせいだよな?

 

ハァ

 

というわけで、皇帝に約束した件について話さなければいけないらしい。

そういえば、戦闘後のルフィもハンコックに呼ばれていたっけ・・・。今となっては何とも懐かしい記憶だなオイざっと20年前か?

 

「さっきから〜〜〜呆けてるけど〜〜〜どうかした〜〜〜?頭〜〜〜ぶつけたの〜〜〜?」

 

「あ、いや大丈夫ですから懐から出したその怪しげな薬をしまってください早急に!!」

 

というわけで俺は皇帝の間の前にいる。

まぁ、俺の身体とか人目を外れるためとか色々な理由で必死に隠れて来たんだけど割愛。

途中「男はどこだ〜〜〜!?」とか言ってる物騒な集団がいたけど僕は何も見てないヨ。

と、あたりが騒がしくなってきた。

 

「皇帝陛下のおな〜〜〜り〜〜〜!!」

 

カッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッカッ、ドスン!!

高いハイヒールを鳴らしながら奥の部屋からやってきた長身美女はデカイ蛇のクッションに荒々しく腰かけた。

 

「…」

 

メッチャこちらを睨みつけてきます。どうしよう怖い。なまじ美人だからすっごい怖い。

でも、俺は男の子!!

やればできることを証明してやるぜ!!

 

「…」

 

「…」

 

アカン!!空気何このアウェー感!?話しが続きませんですけど!?

 

いや、これが向こうの作戦か!?こうやって俺を混乱させるつもりなのか!?どんどん俺をジリ貧にさせようという噂に聞く孔明の罠なのか!?

 

もしかしたらこれか再度処刑するつもりなんですか!?いやだ!!もう蹴り飛ばされるのはいやだあぁぁぁぁぁァァァァァ「話を聞け!!」

 

「スボロッチ!?」

 

隕石の激突もかくやという音を立てて床に埋没する俺の頭。

アカン、即刻処刑されるとは思わなかった。すまねえおやっさん俺はもう

 

「さっさと起きよ!!」

 

「いでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

耳が!!グンジョーさんの耳が身体とお別れをするハメにいいいい!?

 

「フン、この妾が話しかけているのに無視するでない。今のは“罰”じゃ」

 

「スイマセンスイマセン!!!!ゴメンナサイ!!!!!」

 

「…何もそこまで謝罪しなくてもよい。妾達はもうそなたには何もせぬわ」

 

「ゴメンな…え?」

 

い、今何とおっしゃいましたか?

 

「この国では強き者こそ絶対。強き者こそ美しい。お前は勝負に勝ったのだからもう妾達はそなたにはなにもすることはないのじゃ。」

 

え、あ、あれーーーーーーー!?これって救済フラグ!?

 

 

「殺さないの?」

 

「では、逆に聞こう。お前は殺されたいの「いえ、滅相もございません!!」ならばよい。」

 

やったー!!これで当面は命の心配はねえ!!頑張って戦ってよかったなぁ!!でも、あまりパッとしないな。約束があるとはいえ、あれだけ殺す殺すといっておいて急に手のひらを返したような態度。

何か裏があるような?

 

「そなた…最近行方不明になった“辻斬り”グンジョーじゃな?」

 

「っ!?」

 

 

俺を知ってるのか!?というか行方不明になってんの俺!?

思わず動揺してビクリと強張った俺を、おもしろそうな顔をしながら見つめた後、皇帝は命じて召使いに数日前の新聞を持ってこさせた。

その新聞には

 

    『大罪人“辻斬り”グンジョー凪の海で行方不明!?

                      生存可能性は皆無か!?』

 

という見出しと共にデカデカと俺の顔が載っていた。

 

「やはりそうか。お主が噂のエドワード・ニューゲートとコンビを組んでいた海賊じゃな?」

 

「うん、まぁ海賊には“なった”というか無理矢理“ならされた”んですけどね」

 

「ほほぅ?その話詳しく聞かせてもらいたいものじゃのう。」

 

何か妙に興味深々だな?

まぁいいやと思い、無理やり海賊に仕立て上げられてしまった一件を話し始めた。

しかし、人間ってやつは一度話し始めると10を語ってしまうものらしい。

 

 

 

この世界に来て(記憶喪失と偽ったことにした)レッドさんの世話になったこと

 

 

街中のならず者たちに片っ端から喧嘩したこと

 

船出した先々で賞金稼ぎの日々

 

 

そして・・・後に伝説の大海賊と呼ばれる、“白ひげ”エドワード・ニューゲートとの遭遇と決闘

 

 

海賊を倒したり、賞金を懸けられて海軍の追手を退けたりといった旅の日々

 

 

あの島で金獅子、冥王、海賊王との出会い

 

 

そして、自らの力不足が招いた“結果”

 

「つまり、貴様は他の海賊を逃がすための囮になったと?」

 

「まぁ、そういうことになりますね。」

 

そうあれは単純な力不足。

覇気を習得していなかったとか、そんな言い訳の前に立ち塞がった単純な実力の差が招いた“結果”だ。

 

「俺は…弱かったってわけですねぇ…」

 

「フン。まぁ、妥当な判断じゃろうな。貴様の言った他の賞金首が貴様よりも強かった。結果、貴様は切り捨てられた。それだけの話じゃ。」

 

「だよなぁ…」

 

それにしても“覇気”か。

 

 

「あぁ、ちょっといいですか?」

 

「何じゃ?」

 

「覇気というものは武装色とか見聞色を含めてすぐにマスターできるものなんすかねぇ?」

 

「…貴様何故覇気の種類について知っておる?」

 

あっヤベッ

 

「いや、ホラ単純に前聞いたことがあったって話で…!!」

 

「…まぁよいじゃろう。」

 

 

しばらくジト目で俺を見つめた後、ため息をつきながらこう言い放った。

 

 

「妾達九蛇の戦士たちは生まれながらに覇気を扱う資質を持ち、そしてそれを伸ばす修業をしておる。貴様のような覇気を知らず育ったような男は、そう・・・少なくとも2年。もしかしたら達人レベルになるまでに一生を使いきるかも知れぬ。」

 

「…そうか」

 

 

そんなに時間がかかるのか。

 

でも、もしかしたらもっと時間がかかるかもしれない。

 

 

なんせ、俺は元々この世界にはいないハズの存在。それに、ベースは凡人。悪魔の実の能力者でもない。

 

そして、おそらく、この世界の誰よりも、そう誰よりも弱い。

 

 

俺がこの先の海を生きていくことは限りなく困難だ

 

 

だから

 

 

誰よりも努力しなければいけない

 

 

今の現実を受け入れ

 

 

俺は膝を折り、圧倒的強者に願いを伝える。

 

 

 

「お願いがあります」

 

 

 

名声を轟かせる?

 

 

誰も見たことのない宝?

 

 

全ての海を支配する権力?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなものクソくらえ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺を鍛えてください。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はこの世界で生きる“グンジョー”という男であるために

 

 

 

 

 

背中を預ける戦友を救うために

 

 

 

 

 

俺にしかできない“生”を生きよう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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