ふぅ、何とかうまくいったのれす。
仲間たちとはぐれてしまって焦っているのに、中々人目が多すぎて進めなかったのれすが、こんなところで渡りに船。
隠れやすそうな服を着た大人間がいたとは、本当にラッキーれした。
(うまく利用させてもらうのです大人間…お、何か甘い匂いがするのれす?丁度、小腹がすいていたのです)
このまま大人間につかまって、仲間とはぐれた場所の近くまで向かいましょう。
生地の裏側につかまりながら、少し休憩するのれす。
~~~シャボンディ諸島 10番GR~~~
俺は、やや汚れてしまった手をパンパンとはたいて汚れを落とした。
「お前らさァ…」
腰に手を当てて呆れている俺の足元には、100人ほどのバカどもが寝っ転がっていた。
「ううう…」
「イ、 イデェ…」
ここら辺の島に入ったあたりからだれかに尾行されているのは分かっていたけども…全く、観光都市とは…だれが言い出し始めたのかね!!こんなに治安が悪いのに!!
いきなり飛び掛かって来たので、殴り飛ばしてやりました(正当防衛です)。前はどうだったかは知らないけれど、今ならこんなザコ共に態々こった技も使う必要もない。
とりあえず、いきなり襲われてムカついたので、手近にいた一人を踏んづけてみる。
「ねェ、ちょっと聞いてる?」
「イデ、いででででd」
ハッ、貴様の感じている痛みなど、それ以上にズタボロな俺にとっては関係ないね!!こちとら、心の傷を負っているんだ。心の傷は中々治らないんだぞ!!
「こちとらよォ、人畜無害な人間なのよ。分かる?人畜無害さん。略してジンチクさん。いや、誰がジンチクさんだよ!!」
「ひでぶっ!!」
額に向かって水平チョップ!!全く、失礼な話だ。誰がジンチクさんだ。そんな失礼な事を教えた記憶はお父さんにはないぞ!!
「あ、あんたが勝手に言い出したんじゃないか…」
「うるせェ、お前の意見は聞いてないのだよ。ワトソン君」
というか、こいつらはもしかして馬鹿なのだろうか。
最初の奴が、ワンパンチでKOされたのを見て何故襲撃をあきらめなかったのか?何がヒャッハーやっちまえ!!だよ。俺がやっちまったじゃねェか。
「最近不景気なので、もうここら辺歩いてるやつならだれでもいいや…的な感じで」
「お前らそれドアホウだろ。…ったく、もうどうでもいいや。運動したら、喉乾いちった。なァ、ここら辺に喫茶店とかないかね?」
「き、喫茶店?そんなものはないけれども、確か向こうにバーがあったような…」
「ばー?うん、もうそこでいいや。ありがとうなオマエラ」
そう言って、サクサクと草の根をかき分けて進行方向に向かって歩き出すことにした。
「くそぅ、縄張りに一人で入って来たから、拉致ってヒューマンショップかオークションに売り払ってやろうと思ったのに…」
「それどころか、とんでもねェ化け物だったぜ…」
「でも、今からでも襲っちまえば、案外アッサリ捕まえられるんじゃねェか?」
「いや、やめとけ。アイツ俺達の相手をしている時、息切れもしてなかったぞ…」
「賞金首ではないみてェだけどな。しかしあの強さ…恐れ入ったぜ」
「やっぱり、追いかけて捕まえれば高く売れるんじゃねェの?」
聞こえてる聞こえてるお前らの邪悪な思念がここまで聞こえてきてるぞ。でも、一々戻ってブン殴るのも面倒だから放置という無難な形にしといてやる。ありがたく思え。
「えええええええ!?」
その店の看板には、こう記されていた…。シャッキーの`SぼったくりBARと。えェェ、嘘でもあれって…いや、でもありえるのか。
シャッキーことシャクヤク。
原作では、ルフィ達を助けてくれた年齢不詳のお姉さん(←ココ重要)である。
確かこの店を開店したのが40年前以上…。この時期に開店していてもおかしくない。…うん、いかんせん野次馬根性が湧いてきた。
せっかくだし、良いお酒でも堪能させてもらいましょうか。
「お邪魔し、どわァァァァあああァァあ!?」
バーの玄関に何かいる!!ゴミ?人間?まるでゴミのようだ!!
「な、何?」
少し心配になったので男達の顔をのぞき見ると、誰もが引くほど顔が膨れ上がっていた。
「もしも~し、大丈夫?」
「…」
うん、大丈夫そうだ。よしよし、安心した。
「そいつらなら念入りにやっちゃったからしばらくは起きないわよ?」
「ッ!?」
何奴!?バカな今一瞬でも人がいる気配はなかったぞ!?
「あらあら、そんなに警戒しないでくれないかしら?」
「…いやーいきなり背後にいるとはビックリしてね。結構気配には敏感な方だと思っていたんだけどね。もしかして今を時めく忍者さんですかね?」
「フフ、ワの国の忍者はもっとうまく気配を消すわよ?」
「おやおやまるで知っているような口ぶりですね?」
「さァ?どうかしらね」
そう言って、彼女は今しがた壊れたばかりの扉を通って、店内へと入っていった。
「あ、それと…」
「?」
「初めましてね。この島はどう辻斬りちゃん?…いや、グンジョーちゃんって呼んだ方がいいかしら?」
「っ!!」
「とりあえず、立ち話も何だし店の中でお話ししない?」
「あ、ハイ。分かりました」
ああ、やっぱりお見通しだったのですか、シャッキーさん。というかすぐばれてたんだ。というか、昔見た時の本人と全く変わっていないのはどういうことか?
俺はそんなことを考えつつ、取り敢えずカウンターの席の前に腰掛けて頬杖をつく。視線を右にずらせば、大破した机と椅子。うん、何があったのか聞くのは野暮ってもんだな。
「ご注文は?」
「え…?あ、とりあえず生」
「トリアエズナマ?」
「あ、違ったわ。ビールで」
「あらそう。じゃあ、ちょっと待っててね」
そう言ってシャッキーは冷蔵庫からキンキンに冷えたグラスを取り出し、樽から麦酒を注ぎこんだ。
「ハイ、どうぞ」
「あ、いただきます」
グラチの口を唇に押し当てて、注ぎ込む。
「うんめェ~~~、この、ちょっとした暑さにこの冷えたビールはたまらんね…あ、そういえば」
ここ
「あ、その、お代の方は…」
「あら、大丈夫。今日は私のおごりよ?どうせ、お金はさっきの奴らからせしてめてきたし。それに、何だか今日は祝いたい気分なの」
「おぅ、そいつはラッキー。それなら安心して飲めるね」
でも、このままじゃ少し好意に甘えすぎかな?…あれがあるか。
「これ、ツマンネーもんですけど、シャボンディ饅頭って奴です。どうぞ、食べてください」
何だか重量が妙に偏っているような気がするけど、移動中に寄ってしまったのだろうか?でもまァ、いいだろう。
「あら、これは?フフフ、ありがとう、でも気にしないでね?血に飢えた狂犬さんの、復活祝いってところかしら?」
「ハハハ、手厳しいねェ」
「それにしても、よく生きていたわね?海軍に捕まって、その後行方不明って聞いたから、てっきりインペルダウンに放り込まれたか、どこかで野垂れ死にしているか、とか思っていたけど?一体、どこで何をしていたのか、興味あるけど」
「…ああ、ちょっとそれは秘密?」
「あら、少しくらいなら教えてくれたっていいじゃない。そのビール、お値段1000倍にするわよ?」
「やっぱり法外なの!?」
ったく、外見が変わらないみたいだとはいえ年はそう変わらないはずなんだけどなァ…雰囲気っての?
精神年齢を含めたら俺が年上のはずだが、すでに、俺以上の貫録があるように見える。
「それとね、グンジョーちゃん?」
「あい?」
「さすがに、こんなものを渡されても食べれないんだけども…」
「え?」
饅頭が腐ってたのかな?いや、今さっき買ったばかりの品だ。そうそう、腐るような事はないだろう。
いや、もしかして…あの店B級品売りつけやがったのか!?
「全く、どうしたのかなァ…あ?」
そこには、四角い箱に入っているはずの6こ入り饅頭の姿はどこにも見当たらなかった。
代わりに、そこに
「けっぷんこ」
空になったシャボンディ饅頭の箱の中には、饅頭の代わりに、丸々と腹を膨らませた
「あー、満腹れす。大人間のご飯も中々うまいのれすね…あれェ?」
満足そうに腹を摩っていたそいつと、俺の目線が重なり合う。
「だ、誰だお前―――――――――――!?」
一瞬の静寂の後、俺は目ん玉が飛び出さんばかりに見開き、大声を発していた。
「あらあら」
「えーーーーーーーーーー何故ばれたのれすか!?」
「そんなことォ!!知ったこっちゃねェよ、このアホンダラァァァァ!!」