ドヘムの電話からキッカリ二時間後のこと、
『旦那』
ドヘムの部下の一人から電伝虫に電話がかかってきた。
『妖精さん9人、見つけやしたぜ』
「OK」
電話を切ると、俺は外へと飛び出した。
「それにしてもすげえな、まさかこんな短時間で小人さんを発見できるなんてなぁ」
「そりゃそうですぜ旦那。こう見えて、部下だけは多いんで、情報だけは結構入ってくるんでさぁ!!」
「いや、お前ら酒飲み集団止めて情報屋になればいいんじゃねェのマジで「うほー!!すごいすごい、まるで飛んでいるみたいなのれすね!!」え、…あー、すごいね確かにすごいすごい」
俺が来ているコートの中から顔の実出して、目をキラキラと輝かせているラクーンだが、話を残しを折られるという何とも言えない屈辱と共に、俺は不満な顔をラクーンに向けた。
「でぇ、旦那ぁ。どうするつもりですかい?」
「えぇ、何か言った?聞こえないよ」
肩で風を切るのはオード〇ーの春〇さん。しかし、今の俺はもろに風を感じている。電話をした後、何故かすぐにシャッキーの家の前にやってきたドヘム軍団…ならぬ、爆走軍団に無理矢理連行されて、実際に風を切るような感覚でいます。…まぁ、バイクに乗ってるんだけどね。
楽しい?んなわけないだろ!!
こちとら地味に生きていかなきゃいけないから、あまり目立つような真似はしたくないんだ!!…まぁ、時間の短縮になるからありがたいことなのだが、それを差し引いてもやはり恥ずかしい。この光景、まるで前世のテレビで見た、暴走族のようなものじゃあ、ないですか!!
…ちょっと、そこ!!そこの遠くから何事かとこっちを見ているギャラリー集団、露骨に「うわ…」みたいな顔するんじゃねぇよ!!コイツらと俺は一切何の関係ないっての!!一緒にしないでくださるかしら!?
「ったく、胸糞悪いなぁ…もうぅ」
「まぁまぁ、旦那。こういう爆走も、慣れれば結構楽しいもんですぜ?」
「その話してんじゃねぇよ!!というか、爆走じゃない、ほぼ暴走だよね!?…ハァ、いや、ちょっぴりお前らと同族にみられるの嫌だな、とは考えていたけれども」
ヒデぇ!?と呻くドヘムを無視して電話で話した内容を思い出す。
まぁ、捕まって無理やり連れてこられたという話から
「で、旦那。悪いニュースとめっさ悪いニュースがあるがどっちから聞きたいですかい?」
「じゃあ、悪いニュースで…って、結局どっちも悪いニュースなのかよ何でだよ!!」
こういうのって、普通ならいいニュース、悪いニュース、Dotch or Dotch?とかいうパターンじゃないのかよ!?
もういやだ、こんな生活。レッドさんには「困っている人がいたら、なるだけ助けてやんなさい」、とは言われているけれども、それが俺の習性になってはいないだろうか。だとしたら、俗に言う、厄介ごとに首ツッコんでカッコいいとか思っているヤレヤレフェチと思われちゃうじゃないですかーヤダー!!
「俺はそんなニヒルなキャラは目指してない!!」
とりあえず、怒りのままドヘムの頭をポカリと殴ってやった。
「イデエエ!!何すんだ旦那!!」
「うるせぃ!!いいから黙ってバイク飛ばしやがれ、頭部の毛を丸ごとひっくるめて永久脱毛させんぞ!!」
「ヒぃぃぃ!!な、何か一段と旦那がヴァイオレンスだ!!」
おびえて悲鳴のような声を出す光景を部下たちは、酒には弱いはいえいつも頼りになる親分が、一方的に苛められているが、相手が相手なので、何もすることができないという何とも言えない物悲しげな顔で見守っていた。
「…で、そのにゅーすとやらを聞かせてもらおうか」
「ああ、その話だったな…まずは、小人さん達がいるオークションハウスのオークションがすでに始まっている」
その言葉に、高揚していた気持ちが一気に静まりかえり、それに代わってまるでマグマのような怒気の塊が、俺の中でくすぶり始めるのを感じ取った。
「もしかして小人がいるのって…」
「へェ、この島の名物の一つ、闇の商売、世界政府の隠したい部分“ヒューマンオークション”にいるんでさ。ま、奴等は珍しい種族なので、登場は最後の方みたいですがね」
思わず握り拳を太ももに突き立ててしまった。知らずに力がこもっていたのか、口の奥から歯がギリギリと軋む音が響いた。
「ひゅーまんおーくしょんとは何ですかアオランド?」
唯一事情を知らないラクーンが無邪気な声で俺に問いかけてきた。
「ああ、置いてけぼりにしてしまったな。スマンスマン」
「それはイイですけど…どうしたのですか、アオランド。なんだかすごく怖い顔をしているのれすけれども…」
マジか感情が顔に出てたか。うむ、こういうところはまだまだ修行が足りない、といったところか…。
「いいかい、ラクーン」
何とか気持ちを落ち着けた後、ラクーンの疑問に答えることが出来た。ドヘムは俺の気持ちを汲んでかさっきからずっと黙っている。こういうところは、妙に勘の鋭い奴だな。
まぁ、いい。やや嫌な気分がするが、こいつにも教えてやる事にしよう。
「ヒューマンオークションてのはな…捕まえてきた
この綺麗な世界の中で、暗く濁ったクソッタレな話をな。
“奴隷”
人として当たり前の権利がなく、“物”として売買される人間達の事である。
そもそも、過去の時代から奴隷というは存在していた。敗北した国が勝者の国に連行されて奴隷として働かされたのは、誰しもが知っている事だ。
しかし、その待遇は地域、時代で様々である。鞭で叩かれ、一日に何時間も無理矢理労働させられたりされたものがその最たる例もあれば、中には幸運に恵まれて奴隷身分から解放されたり、中にはローマの剣闘士のように、自らの力で自由身分を勝ち取るような例もあった。もちろん、日本でも旧世、中世でも人狩りなどで攫われた人々が戦力や労働力として働かされ、江戸時代にも遊郭に遊女として口減らしされた。中には海外に売られる例もあったという(後に豊臣秀吉のバテレン追放令によって禁止された)。
しかし、この世界で知られている奴隷の扱いとは、俺達が考えるイメージ通りそのものだった。いや、それよりも悪い。
この世界の人々はただの人間だけじゃない。魚人を筆頭に、巨人、小人、足長族、手長族と様々な人種に富みすぎている。金持ちたちはオークションハウスに足を運び、そこで様々な奴隷を手にする。
その種類は様々だが、労働奴隷、愛玩奴隷etc…etc…。こんな行為だけでも反吐が出るが、何とこの世界では、珍しい人種を持つことがステイタスなのだそうだ。
…やはり、思った通りの事をしてくれちゃってるな世界政府。奴らは、この状況を知りつつも事実上黙認しているのだ。遥か昔に廃れた奴隷と言う悪しき文化を、今に伝えている。確かに世界的秩序を保つためにバラバラになった世界中の国々をまとめ上げ、海軍を組織することはいいことなのだろう。
しかし、その抱えている闇は相当深い。
彼等は世界の盾であると同時に、その盾の裏にどうしようもない矛を抱えている。まぁ、人の良くは限りないともいうが、個人的にはあのクソッタレ一族がその大きな原因名のような気がするけれども。
「…酷いのれすね!!」
俺の語った政府の悪行の数々聞いたラクーンが憤る。
「せかいせーふめ!!えと、あと、そのててててん?そいつらもいつか、僕が直々に成敗してくれるのれす!!」
「ハハハ、お前ひとりじゃ無理だよ。ま、いつかは世界政府に対して直に文句言える日が来るかもな。いつかは」
「剣呑な話をしている所悪いがいいですかい旦那?さらに悪いニュース…」
「あ~、そんな事もあったねェ。この際、もう何が起きても驚かないからな俺」
「あ~、実はな、そのオークションハウスに何だが――――がいるみてェ何だよ」
「アアハハハハ、もうやだ何なんですかね。前言撤回させていただきますわ…」
風切り音と共に聞こえてきたそれに、思わず俺は天を仰ぎ見た。ヤルキマンマングローブの木々にシャボン玉、そしてお日様が見えた。
「いつか全部ぶった切ってやるゥ…」
「へ、何の話ですかい?」
お前は気にスンナ。さっさと、目的地まで急げ!!
小人たちが捕まっているというヒューマンオークション会場の前につくと、すでに入り口前が騒がしい。遠くの方から見守っていると、ドヘムの部下らしき皮ジャンを着た男数人が、オークションハウスの前にいる紳士服を着込み、腹がでっぷりと膨れて逆に足がヒョロリと細い奇妙な体躯の小男に詰め寄っていた。
「おい、どうしてだよ、そいつらは俺達の知り合いなんだって、本当だよ!!」
「ヒフフフ、一体何をおっしゃっているのやら、そうは問屋が許しませんよ。こちとらお金を払って、商品を買わせていただいたのです。はいそうですか、と返すわけには行きませんよってに、ハイ」
「じゃあ、どうすればいいんだよ!!」
「…そうですねェ、小人1人50万ベリーで買ったので、8人分で400万ベリー。儲けの事も考えますと、是非とも1000万は欲しいですねェ。ハイ」
「そんな金あるわけねェじゃねェか、ボッタクリか!!」
「いえいえ、お商売のお話ですよ。我々もどうしてもお金が欲しいもので、ハイ。それに、知り合いを取り戻すためには、それ位のお金容易いでしょう?」
「テメエなめてんのか!!」
全額俺が立て替えるから、買い戻してくれ、といったが、やはり目論見が甘かったようだ。奴等、予想以上の金額を引っ掛けてきやがる。小人の奴隷1人レートが70万として、全員買い占めるとなると560万。ほぼ倍の金額を吹っかけてきている。俺の所持金でも…うむ、無理だな。
というか、チッ、さっきから聞いてれば反吐が出てくるような会話しやがって。
「あー、もう結構です。あなた達の話は現実味はなく、ただ邪魔です。それにもう聞き飽きました、ハイ」
小デブが軽く手を叩くと、彼の後ろに構えていた屈強な大男2人が皮ジャンたちの前に進み出た。
「これ以上我々の手を焼かせると、あなたたちどうなっても知りませんよぉ?それに、今日は
「うっ…」
その言葉に皮ジャンはずるずると引き下がる。
弁舌戦は終わり。誰の目から見ても、勝敗は明らかだろう。
「ドヘムもういい。彼等を帰らせろ。これ以上は面倒くさいことになるぞ」
「…ヘイ、丁度今、俺もそう思っていたところでさぁ」
俺が指示を出すでもなく、ドヘムは子電伝虫に手をかけていた。
今日は何と幸運と面倒事が一緒にやって来た。
このオークションハウスの支配人を初めてもう数年になるが、先日世界政府から直々に連絡が来たときは心底驚いた。遂にこの日がやって来たのかと。あの方々は癖が強いが、気に入った商品を見つけた時、ポンと多額のベリーを払っていく。それも、一般人が一生かけても到底払いきれるようにない額をだ。
その分、失礼のないようにしなくてはならない。過去には、他のオークションハウスの住人が銃で撃ち殺されたり、聖地マリージョアに連れて行かれたりしている。
曰く、顔立ちが気に入らなかった、美人で気に入った。嫁にしてやる、と。
一般人からしたら狂気の沙汰かもしれないが、彼らのように生まれた時から常識や、人として当たり前の事を教育するものがいないで育つと、ああなってしまうらしい。
世界政府の傘を借りた豚めが…
そう思う事もあったが、現在彼等は大事な金ヅルであることは確かだ。
そのために、奴隷を仕入れてきて天竜人のために特別なビップルームを不眠不休で作らせたのだ。
そして、海軍の面々が護衛するかのようにやってきた親子の天竜人の方々を出迎える二至った。…その際、彼らが連れてきた家臣の騎士達と、移動代わりにでもしてきたのか、まるで家畜の様に四つん這いになっている男の奴隷と首輪をかけている踊り子のような女の奴隷たちは無視して。
『お父様、コイツもう弱っちいからいらないアマス!!』
『お前はまた奴隷を壊しおって。“物”はあまり壊すなと言っているはずだえ』
『でも、私はもっと強い奴隷が欲しいアマス!!今度は奴隷を使って人間神輿を作りたいアマス!!それに、人魚と魚人のコレクションも欲しいアマス!!』
『まぁ、仕方がない。おい店主。こいつはもういらんえ。ただで売ってやるから適当に処分するえ。ホラ、行くぞオマエら』
『ウッ…』
『ハ、ハイ。ありがとうございます』
馬鹿が!!こんな傷だらけの奴隷なんぞ、誰も見向きもしねェよ!!
そう舌打ちと共に怒鳴りつけたい気持ちを抑え、奴隷を引き連れていく天竜人の方々に笑いかけながら話かける。彼等を怒らしたら大変だ。まるで臣下のように接し、ビップルームにお連れ致した。
彼らが希望する人魚たちの奴隷はいないが、そのかわりに魚人族や巨人族の奴隷や、小人族の奴隷たちが複数入ってきている。
特に、魚人族は高い値段で買われることであろう。
この品揃えには、彼等も満足してくれるだろう。…そう思った時だった。
「おい、ここに小人の奴隷は入ってきてないか!?」
いきなり、複数人の男達がバイクで乗り付けてきたと思ったら急に私に詰め寄ってきた。
チッ、この手のタイプはメンドウくさいタイプだ。一部人気の奴隷を買い付けて、他のオークションハウスで高値で売りさばくタイプか、知り合いが奴隷として売りさばかれそうなタイプ。前者はともかく、後者は厄介だ。
「ええ、小人の奴隷は複数入ってきていますが?」
「お、マジか!!そいつら、もしかしたら俺達の知り合いが探してる奴かもしれないんだよ。出来れば面通しさせてくれねェかな?」
チッ、後者だったか!!
この手の連中は厄介だ。返してくれだの何だのとごねてこちらに迷惑をかけてくる。その人は家族なんだ早く返してくれだの、全く、こっちは高値を出して奴隷を買ってるんだ。今更返せとか言われても知らねェよ!!お前らの自業自得だろうが。俺には関係ねェ!!
こういう連中は脅して丁重におかえりいただくに限る。サングラス越しに後ろの男達に無言で指示を出すと、自分のエモノを引っ張り出した。
その後も散々ゴネてくる男達に適当な金額をふっかけかわしてもう、強引にお引きとりいただこうとしたその時、男達が持っていた子電伝虫に連絡がかかって来た。どうやら、こいつらのボスらしい。成程、言いがかりをつけてうちの商品を盗ろうとする魂胆だったのか、全くこれだから人間ってのは信用ならない。
やっとうるさい奴が帰ったと思ったら、彼等と入れ替わるように先程よりも規模が大きい集団がやって来た。
何だ?こいつら言葉でダメなら力で奪おうってか!?上等だ。こっちには、何人もの賞金首を狩ってきた賞金稼ぎコンビと、天竜人の手下である海軍共がいる。ここでこれ以上の騒ぎをおこせばどうなるか分かってるんだろうなぁ!?
懐から銃を取り出して身構えている私の予想に反して、その頭と目される男はフレンドリーに話しかけてきた。
「よう、すまねェなぁ!!まだ奴隷の売買はやっているかい?」
「ハイ?」
ああ、そういえばコイツ…見たことある。どっかの人さらい集団のボスで確かドヘムという名前だ。討ち取った賞金首を海軍ではなくヒューマンショップに引き渡し、そのお金で飲んだくれる下戸の男。
何故か頬に殴られたようなあざがあるが、恐らくこいつを討ち取ったときに出来たものだろう。
今更次から次へとやってくる海賊どもをそんな古風な方法で捕えるとは、何を考えているのだあいつは…オークション仲間からは、半ば不気味な存在と言われている。ソイツが急に奴隷の売買だと?
「ハ、ハぁ、成程そう言うわけですか…。所で先程の彼等はお知り合いか何かで?」
例えそんな話を聞かされてもこちらはハイ、そうですかとはいかない。子分の後に親分が登場と言うのはよくある話だ。未だ警戒は説く気はない。
「…いんや、知らねェ奴らだな。何だ、お前らの知り合いじゃないのか?」
ドヘムが去っていく男達を振り返りながらそう言う。…ふむ、あくまでシラを切るか。まぁいい。話を本題に移すことにしよう。
「で、奴隷はどちらに?」
「おうおう、そうだな、おいお前らさっさと連れてこい!!」
ドヘムの怒鳴り声と共に、後ろで控えている部下と目される男達が鎖でボロ雑巾のような粗末な毛布をかぶった男を連れてきた。
「ああ、こいつはなぁ、俺達の酒場で騒いでいたバカヤロウだ。奥越え賞金首だというからな、買ってみたら何とびっくり300万の賞金しかかかってないってんで、ふざけんじゃねェよここは東の海かっ!!って事で連れてきたまでだ。精々灸を据えてやってくんな」
毛布を取ると、そこには中肉中背程度の男が鎖に繋がれていた。
ふむ、こういう場合、奴隷どもは泣き叫び、許しを請うが、この男はそれがない。眼光は鋭く、健康体で体も引き締まっている。
ふぅむ、ただのハッタリなのか、どうなのか、しかし、この海で300万程度ではお話にもならない、その程度の海賊という事だろう。
労働奴隷にしようか…いや、賞金首海賊のコレクションを集めているという愛好家も確か客の中にいたはずだ。よし、さっきからそこでヘばっている元天竜人の奴隷として売ってしまう事にしよう。
「なるほど、そうですかハイ。では、お幾らほどで買い取ればいいので?」
「…んあ?あ、別にいいぜそんなの、お前が決めてくれ」
…ほゥ、中々どうして自分の立場を弁えている。
オークションが始まってからも割り込みの依頼はいい金額が突かないことも多い。だが、それでも諦めきれずにゴネるやつもいるが、そう言う連中の商品は買い取らないか、逆に値段を引き下げて焦らせるという手段をとる。
しかし、ふぅむ、礼儀ものか、ただの馬鹿か、それとも何か裏があるのか…。まあいい。
「では、飛び込み料引きで20万で買い取らせていただきましょう。いかがですか、ハイ?」
「おうおう、それでいいぜ。交渉成立だ」
「了解いたしました。オイ、お前達!!」
視線で呆気にとられていた後ろの男達に指示を送ると、奴らやっと状況を理解できたのか、懐からベリーの札束と、奴隷用の首輪を取り出してこちらにやってきた。
「ではお金を」
「おう」
20万の札束を渡すと同時に、奴隷の身体のボディチェックをさせる。ダイナマイトのような危険な道具で強盗をやらせないための保険だが、今回はどうやら機器的なものは持っていないようだ。
頷く男を合図に、もう一人の男が首にガチャリと首輪をかけた。
これで、勝った!!
「毎度ありがとうございます。またどうぞ御贔屓に」
「おう、じゃあな飛び込みで悪かったな。今度はもっといい品を持ってくるからよ!!」
そう叫んで汚い口を半月上に歪めて一団は立ち去っていく。やれやれ、とんだ取り越し苦労だったな。まぁいい。首輪さえかけてしまえば、こっちのものだ。どんな策を練っていたとしても、首輪が外れてしまえば中に仕込まれた爆弾が起動する。時間が立てば木端微塵だ。コイツに出来ることは何もない。
「おい、こいつを商品の部屋まで連れて行け。しっかりと檻をすることを忘れるなよ?」
「ヘイ」
リーダーの男の合図を境に、別の屈強の男達がボロ頭巾をかぶせられている合われた奴隷候補の手首に繋がれた鎖を引っ張り中へと連れて行った。
これで、今日出荷できる商品が増えた。流石に天竜人の方々は買わないと思うが、中にいる進行役が観客達を盛り立てあの商品の値段を釣り上げてくれる事だろう。
私は近々昇進をしているであろう未来を喜びながら、天竜人のいるビップルームまで身を翻した。
「おし、第一段階終了」
「なのれす」
ボソリとそう呟いた二人の言葉を聞いた者は、その場にはいなかった。
誤字訂正12/5
数段→集団 すいませんでした