ONE PIECE ~青天の大嵐~   作:じんの字

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島揺るがす攻防

「“魔神旋風スクランブル”!!」

 

 ただ振りかぶり、振り下ろしただけの一撃。

しかし、その一撃は先程までと全く違う。青色の闘気を纏いながら、大地を引き割きながら、今まさに飛び掛かろうとしていたセンゴクに襲い掛かった。

 

「ッ!?」

 

 飛び跳ねかけた足を四股を踏む要領で無理矢理大地に抑えつけながら構えると、手の平から衝撃波を発する。飛ぶ斬撃と、衝撃波が激突。本来なら、一撃で軍艦を海の藻屑にかえる2つの力。そがぶつかり合った事で、周囲の土砂を吹き飛ぶほどの爆発がその場にいた4人を包む。

 

「アイツの力は将来的に大将に通じるものがあるが、一定の範囲内でしか冷静さを保つ事が出来ないというのは欠点だな。

 

ゼファーは身を翻すと、ガープの間近まで飛ぶと、覇気の力で黒く変色した拳を地面に叩き付けて大地を抉り、大穴を穿った。

 

「ガープっ、頼むっ!!」

 

「応っ!!」

 

 ゼファーが両手を重ねて丁度お椀のような形にすると、そこにガープが突っ込み、その速度のまま脚をゼファーが作った両手の中に叩き付ける。

 

「「うおおおおっ!!」」

 

 ゼファーは全力で両手を振り、ガープは勢いを殺さず跳躍。2人の人外が繰り出したそのコンビネーションは、爆発の効果範囲の上空へとガープを送り出すのに十分だった。

 

「あの野郎、ますます力をましてやがる。こりゃ、大剣豪と呼ばれる日もそう遠くねぇかもしれねぇな…。まぁ、そのためにはいくつもの障害があるが…さて」

 

 土煙がもうもうと上がり視界がゼロの状況の中、空中で一回転したガープは、先程グンジョーがいた場所を確認する。すると、ガープが空中で何度も飛び跳ねた。常人なら、目を疑うような光景だが、政府やその関連機関に身を置く者ならなんてことはない。世界政府直下CP(サイファーポール)の技術の一つ、“月歩”である。勢いよく空中を蹴りつけることで、空中を“踏んで”移動することが可能になるこの技術で、良い高さまで飛び上がると、ゆっくりと落下を始めた。

 

「隕石拳!!」

 

 ゼファーと同じように覇気で黒化された拳を振り下ろす。落下、そして再びの衝撃。先ほどのセンゴクやグンジョーと遜色しないほどの威力が吹き荒れる。

 しかし、普段のやかましい雰囲気とは一転し、ガープは冷静だった。土煙の中、目を閉じ、嗅覚や聴覚、そして苦手な見聞色の覇気まで総動員し、辺りの気配を探る。

 

「見えたっ!!」

 

地面を蹴って跳躍し、気配を感じた場所に突撃。

 

「ここだぁ!!」

 

 土煙の中移る人影に向け、両手の拳を黒化させ、出し惜しみのない、全力の拳のラッシュ。

 

「“鉄拳機関銃(アイアンマシンガン)!!」

 

人影を拳の暴風が襲う。並の人間なら、一撃で全身が砕け散る攻撃が何度も遅い、人影をまるで土くれのように吹き飛ばした。土を穿った時のようなボロボロとした感触がガープを襲う。

 

「なっ、土!?」

 

 正確には、人ほどの大きさまで盛られた土に、グンジョーが愛用しているコートがかぶせられていた。

 

「クソッ、臭いにも頼っちまったことが仇になったかっ!!…じゃあ、奴は!?」

 

 その問いは、すでにセンゴクが答えを導き出していた。

 

「“幽影剣”」

 

「っ!?」

 

 背後から響いた、ゾクリとするような低音に背筋が泡立つ。視界の端で相手(グンジョー)を捕えた瞬間捕えた瞬間、センゴクは大きく腕を薙いだ。

 

「チッ、あの衝撃波の中、憶せずに立ち向かってきたか!!」

 

「まぁね、あの一瞬で早く動けるなら、次の手が打ちやすくなる。しかし、流石に海軍将校か。失敗失敗。もう少し、気配を隠せるように努力しないとなぁ。いや、そもそも技名を叫ぶ馬鹿がいるかって?バカヤロウ!!それが浪漫なんじゃないか!!」

 

「貴様は何の話をしている!!」

 

「ただの独り言です!!」

 

 おちょくるのが上手い男だ、とセンゴクは思う。今も、拳を振る自身の隙間を縫うようにして、攻撃を避け、なおかつすぐに攻撃を取れる最適な距離を取っている。

 

「っ!?」

 

 一瞬、グンジョーの身体がブルリと震えたと思うと、剣を抜き背後で交差させた。すると、剣の刃に黒化した拳が叩き込まれて両方の剣にヒビが入る。

 

「…ほぅ」

 

「油断も隙もあったもんじゃねぇな!!」

 

「隙だらけで悪かったねバカ!!千本通し千形(せんぼんどおしせんけい)離刃陣(りはじん)!!」

 

 グンジョーは手に持った剣をすぐさま放棄すると、籠の中から別の剣を一度に何本も弾く。抜身の剣が飛び、ゼファーに襲い掛かる。操る者がいない剣とはいえ、そこにはハッキリと姿が見える程の濃厚な覇気が纏わりついている。

想い出してほしい、覇気が付加された木製の弓が、岩をも穿つという事を。それが、例え売上効率を重視して作られた安物とはいえ、鉄製の刃が驚くようなスピードで放たれた場合どのような結果になるか?

 

「くっ!?」

 

 ゼファーはすぐさま身体全体を黒く変色させ、防御態勢を取る。

 その姿を確認sヌルまでもなく、籠から刀を引き抜いたグンジョーは目の前の戦国に襲い掛かった。“かわす”という選択肢もあったが、状況にもよるが、本来ならどちらを選んでも不正解ということはないだろう。しかし、今回ばかりはゼファーの行動は正解となる。

 

「グッ、ガッ!?」

 

 開店する刃がゼファーの身体の周りを通り過ぎ、中には直撃するものがある。すると、ゼファーの身体にいくつもの裂傷が生まれた。

そう、これが目の前の男の恐ろしい部分。常識で考えられないような事象を平気で起こす。…彼らには言えないことだと思うが。

 

(纏わりついただけの覇気で俺に傷を負わせるとは…覇気なしで直撃だとどうなるんだ!?)

 

 事実、剣の周囲には特異な気流が乱れ、不可視の刃である“鎌鼬”が発生していた。もちろん、それだけでは傷をつける程ではないが、覇気が加わると、その殺傷度を軒並み跳ね上げる。仮によけに徹していたのならば、状況を把握する前に全身を切り刻まれていただのろう。その点では、ゼファーの黄泉は正しかったともいえる。

しかし、その一撃はゼファーが恐ろしい未来に一瞬身体を硬直させるのに十分だった。そしてその隙に、グンジョーは刀を振り回し、飛ぶ斬撃をセンゴクに向けて飛ばす。

 

「魔神二閃旋風スクランブル!!」

 

「っ!!覇ッ!!」

 

再びの衝撃波の激突。グンジョーは地に足を踏みしめて疾走。そのまま、何と吹き荒れる衝撃波の中に突入した。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「何ッ!?」

 

 思わず目を見張る程のバカげた行為。しかし、吹き荒れる嵐に吹き飛ばされず、そのまま自身の攻撃を自身で浴びながら直進するグンジョーに、センゴクは一瞬動きが止まってしまった。

 

「白ひげのグラグラアタックを耐えきった俺を舐めるなぁっっ!!」

 

 獰猛な笑みを浮かべながら、剣に手をかける。

 

「“魔神カミカゼ嵐ッ!!…”「「くらえっ!!」」のばっ!?」

 

 突然横合いからの衝撃。もちろん、それはガープとゼファーが横合いから襲い掛かったからだ。

 

「ぐがばっ!?」

 

「なっ!?」

 

「のりたまっ!?」

 

 しかし、悲鳴を上げたのは同時だった。グンジョーは殴り飛ばされた頬を抑えながら立ち上がり、ガープとゼファーは、若い頃鉄を殴ったときのようなジンジンとした痛みが手を襲い、若干悶えている。

 

「くぅーーーーっ!!久方ぶりの痛みだぁっ!!」

 

「このっ、貴様俺達が攻撃を仕掛けてくるのを見て、咄嗟に防御したなっ!?」

 

「へへへっ、ご明察だよ。手前等が一気に来るのは何となく分かったからな。ヒットするであろう直線状に剣を構えた」

 

(正直ギリギリだったけどな…。あぶねー、というか鼻血垂れてるよなぁ。あれ、傍目から見たらかなり滑稽?)

 

 内心よく分からないことで冷や汗を出しているグンジョーに対し、ゼファーは拳を何回か振って汚れを払った後、小さく呼吸をしながら未だ冷静な目でグンジョーを見つめる。汗や汚れなどダメージも見受けられるが、その眼とは気は全く衰えていなかった。

 

「ふむ、大体わかった。貴様の攻撃は確かに脅威だな。しかし、その分身体(からだ)にかなりの負荷がかかっているようにも見えるな」

 

(ッ!!)

 

 それを聞いたグンジョーは、鼻血と…、滝のように流れる額の汗をぬぐった。

 

「成程、未だ安定した力はないという事だな」

 

「…ッ!!」

 

 ガープはゆっくりと舌を垂らしながら笑い、センゴクはゆっくりと頷いた。すると、グンジョーは若干ひきつった顔をした。

 

「ああーっ、そこに気づいちゃったか。隠すつもりはなかったんだけど。この力、馬力は凄いんだけど、その分燃費が悪くてね。長い間使うわけにもいかないから、早めに決着をつけたいときに使うんだよね」

 

 エヘヘ、と頭をかきながら、頭を掻くグンジョー。

 

「いや“ぼくのかんがえたさいきょうふぉーむっ”!!というのも、実現するとなるとなかなか難しいものでね。この形態維持するだけでも酷何だわ。あれ、弱点ネタバレ乙って思う?」

 

 ニコニコと笑いながら、自分の圧倒的不利を自虐する。しかし、その笑みが決してこの状況をあきらめていないことを物語っている。彼に相対する海軍将校たちもまた、それを敏感に感じ取っていた。

 

「けど…本領は、ここから」

 

笑みを崩さぬまま、黒化させた右腕を刀に押し当て、一気に擦りあげる。金属音と共に火花が飛び散り、刀が着火する。

 

「ッ!?」

 

「何も恐れる事はない。覇気の使い手の中には、この程度の事をする者はいる。…まぁ、ある程度戦闘に慣れ、一流の覇気センスを持つ者に限られるがな」

 

 やや驚愕に顔を変えるガープを諭すゼファー。しかし、全身が覇気の宝で黒くなっており、何が起きても対応できるようにしており、センゴクもすでに大仏の形態に移行している。

 

「覇気に自然界物質の“属性”を纏わせる、ってのはやれば誰にもできる事。しかし、燃料の量、質によって、火の色や燃焼度まで変わるのもまた事実。…さて、俺はこれを神覇天王色に日の性質を纏わせる。すると、どうなるか」

 

ボボボッ!!

 

 グンジョーの身体全身を炎に包まれる。しかしそれはグンジョーに着火することなく身体の周りに滞留する神覇天王色の覇気に着火し、青色だった覇気の色が、一瞬にして燃え上がる焔の色に変色する。

 

〈ゴオオオオオオ…〉

 

青い色の鬼は、色と共に消え去り

 

〈〈グオオオオオオオオオオオオオオ!!〉〉

 

覇気の渦の中から現れ出たのは鎌首をもたげる2頭の竜。

実体はない筈の覇気そのものが、ガープ、センゴク、ゼファーを血走った目で睨み、今にも食いつこうとする様だ。

 

「ここからが真の決着だ。天紅く燃え、大地に緑満ちよ!!焔風“双竜乃番(ソウリュウノツガイ)”イイイイイガアアアアアアア!!」

 

 その瞬間、グンジョーの理性は飛んだ。

 




「親友のためなら、衝撃波の中を泳ぎきる程度余裕です!!」

「誰!?」

「あれ、その金ぴかさんはもしかして“がまごおり”先輩ですか!?」

「私はガマゴオリなる男ではない!!」

「そんなに大きいのに何で先輩じゃないんですか!?」

「いやだから誰!?」


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