夏休み中の魔法を導く奇跡~三期~   作:名無しの権左衛門

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1-4:秘密を知る覚悟

1-4

 

「一之瀬先生。ちょっと面貸して」

「ちょ、ちょっとアリサちゃん」

 

 

 次の日、私は昼休みに担当しているクラスのお嬢様に、聲を掛けられる。

 

 やべぇ、ナニカやったのか?

何か……思い出せ!令嬢がいう事は基本的に、常識外の無理強いばかりだ!

 

 私は月村さんとバニングスさんの後ろをつけながら、必死で思い出していた。

 

 そういえば高町と会話している時、剥きになって騒いでいたんだったか?

 

 私は担任の先生からクラスの皆の情報が書かれた用紙の内容を思い出していた。

確か彼女達は小学1年生以来、ずっと(意図的)同じクラスだったはず。

ならば高町の口調や態度の変移は、余裕で察せるんだな。

 

嗚呼、だから私は連行されているわけね。あいわかった。

 

「バニングスさん、月村さん。話しがあるのでしたら、誰もいない場所へ行きましょう」

 

 

 私は人がいない理科準備室に、彼女達を連れてくる。

準備室には授業に関する道具しか置かれていない。

なのでここで話をすることは、非常に効率がいいのですよね。

其れに静寂性や隠密性に優れているので、密会や密談にはちょうどいい。

 

 私は壊れかけの椅子を持ってきて、彼女達に腰掛けて貰う。

 

 バニングスは椅子に関して文句を言っていた。

しょうがないだろう?

限りある予算は、別に使った方がいいこともあるんだ。

 

 

「さてと……色々聞きたい事は山ほどあるんだけど、その中で重要性の高い事を聴くわ」

「ええ、構いませんよ」

 

 敬語じゃないのは別に構わない。

何せ授業中じゃないから。

 

「一之瀬先生。なんでなのはを”高町さん”から、”なのは”さんに言い換えたの?

 あの呼び方は、生半可な覚悟じゃ呼べないわよ」

 

 なにそれ、初耳なんだけど。

 

「私は仕事の関係上、高町さんに関する重要な任務を遂行中です。

 如何に親友な貴方達であろうと、口外するわけにはいきません」

 

 私は何も表情に出さないで、彼女たちにそれ以上行けばそこは私の領域なのでダメだと口外に含む。

この言葉の意味をちゃんと理解しているのか、バニングスさんはいらだったような表情をする。

 

「わかっちゃいるわよ、そんなこと。

 私達がなのはと付き合って、一年でやっとなのはと呼べるようになったのよ?

 それなのに、たった一か月未満でそれを手に入れるなんて、おかしいでしょ!」

 

 つまり、今の自分の状況に於いて歯がゆいか、嫉妬しているわけか。

 

 それに下の名前に拘るね。

それくらい特別な思いがあるのか。

 

 

 もし、此処で聞けるなら、聞きたい。

 

「バニングスさん。感情を抑えてください。

 今のあなたは何かあれば、全てをぽろっと云ってしまうような勢いです。

 一度息を整えてください」

「そうだよ、アリサちゃん。代わりに私が説明するね」

「御願い、すずか」

 

 

 私はバニングスから月村へ視線を向ける。

 

 バニングスもそうだが、何故そのような顔になる?

いつもの破天荒さは、一体なんなんだ?

 

まさかと思うが、高町の為に繕っているとでもいうんだろうか。

 

知りたい。いや、知らなければならない。

そうでなければ、高町のご両親の表情の意味が分かるかもしれない。

 

 

 

 私は後悔しない。

 

 

 

 

 

「なのはちゃんの寿命は、後2年です」

 

 

 

 

 は?

 

 

 

 

「理由はわかりませんが、私達のグループが再検査した結果。

 通常の人間以上に、自己破壊が過ぎるんです。

 そのせいで少なくとも二年の間に、体内の破壊細胞により死んでしまいます。

 

 今は自己生成細胞が勝っているのですが、栄養や疲労の蓄積等で形勢が崩壊していると考えれば

 後二年で基幹や精神を食いつぶして、植物人間になります」

 

 

 いやいやいや、ありえなくはないが……二年だと……?

自己破壊が過ぎる。これだと常時痛みが有る筈だ。

 

まさか神経痛を耐えているとでもいうのか!?

 

いや神経痛による過度な電気信号により、脳細胞が死ぬことで痛覚がなくなり徐々に機能不全になっていくのか?

これだと二年より短くなる。

 

 

 どうやって二年だと断定した?

理科の教師として会いたいな。

 

「月村さん、その二年はどのように断定したのですか?」

「財力にものを言わせて検査してもらいましたので」

「そういう問題ではなく、誰に診てもらったんだ?」

 

 

 私は月村からその人物の名前と電話番号、今居る病院の名前を聴く。

この人物と会話しなければならない。

 

きっと月村さんは、私を結果を聴いても直に聴かないと気が済まない人間だと思うだろう。

だが今回の予測はやりすぎだ。

私の過度な予想もあれなものだけど、きっと魔法を知っている者な可能性が高い。

 

 もしもそうではなくて、知恵と知識、培ってきた勘と能力で生きながらえた最高の名医なら、

少しでも寿命を延ばせられる方法を聞こう。

 

「それで高町さんの名前ですが……」

「あれはただの友達とかそういうのじゃないのよ」

 

 

 バニングスさんは顔を上げ、私の方をちゃんとみる。

強気な彼女はどこか打ちひしがれた少女となっている。

 

人の名前はその者を表す。

外国は知らないが、この国ではそうだ。

 

だから高町さんも、そのような使い方をしたんだろう。

 

 

「なのはが下の名前を呼ばせるのって、”状況を知っても尚、人として接してくれる”または、

 ”本当の心と触れ合ってくれて、一緒に喜んだり悲しんだりしてくれる”その人にだけ呼ばせているのよ」

 

 なるほど。

私と同じような使い方をするんだなぁ。

私も今の状況にならなければ、下の名前はずっと使わないつもりだった。

 

だが認可の証として使うのならば、悪くはないと思うようになっていたりする。

 

 この感情は皆の御蔭だよ。全く。

 

 

 それとバニングスの言葉は、少し抜けている所があるかもしれない。

実際は”私を私として扱い、この情報を絶対に口外せず触れてきた責任をもって墓場まで、それを持っていく”事を

前提とした呼び名なんだろうな。

 

まあこれも私の価値観に当てはめた妄想だろうが。

 

 ただ決めたことがある。

彼女達と家族の前以外では、高町の事をなのはと呼ばないようにすること。

今回は実験的だったが、これを聴いて決心した。

 

これはいっちゃだめだ。

 

 

 生徒は大人の真似をして、成長していく。

まだ基礎しかしらない子供たちは、大人の真似事をするのは必至である。

だから私がむやみやたらに言うと、高町の事を下の名前で言うのは確実。

 

彼女が意図していないところで、そう呼ばれるのは相当の精神被害を受けるだろう。

そんな事は私がさせない。

 

 

 もしも彼女が学校でも呼んでほしいとなった場合は、彼女と面談して説明責任を果たそう。

そうでなければ、下手な鉄火場に首を突っ込ませることになる。

 

 

基本的に責任は上の者が取る。

ならば下の者は、上の者がやっていることは正義であると仮定、または絶対視して行動を起こすことは目に見えている。

 

 

……どう見ても、波乱の幕開けだ。

 

 

「ありがとうございます、月村さん・バニングスさん。

 これで皆さんの前で、なのはさんと呼ばなくて済みます。

 もしもご本人から要請があった場合、説明し納得していただきますので」

 

「はい。先生、ありがとうございます」

 

「……あんた、これから一之(瀬)先(生)ってよぶから」

「略称ですね。いいでしょう。ですが、ちゃんと呼ぶからには、言っている生徒に説明してくださいね」

「ええ、勿論」

 

 

 一之先[いちのさき]か。

渾名をつけられるとは思わなかったなぁ。

 

これは良い事なんだろうか。

親しみを込めてか、ただ長いから省略か、侮辱や畏怖を込めた二つ名か。

 

色々あるけれども、私はいいんじゃないかと思っている。

 

 さあ授業もあるし、さっさと戻ろうか。

私は月村さんとバニングスさんを先に出てもらって、準備室の鍵を閉める。

 

午後はあのクラスだ。

それでは、一時解散だ。

 

……

 

 

 

 放課後。

私は職員室に戻って、作業を開始する。

ここらへんの最適化は、既にソフトを作っているので簡単に終わらせられるようになっている。

またこのソフト関連は、全ての教員にいきわたっているので、情報の伝達やそのほかのデータ保全に役立っている。

 

 

「おや、一之瀬先生、新たに生徒メモをつくるんですか?」

「そうですよ、稗田先生。

 確かに稗田先生や先達の先生から頂いた資料は、確実性が高いものです。

 しかしそれは誰もが見ても大丈夫な情報だけです。

 故に個人のみの情報を取り扱う、マル秘情報付きの名簿をつくるのです」

 

 パソコンに生徒名簿の原型を作り上げ、後に印刷機で刷る。

そしてそれを冊子にして、自分でどうにか情報を確認できるようにした。

勿論これは私自身だけが見ても構わない、という事前提で作り上げた物。

その為他者に見られない様に、十全に管理しなければならない。

 

 

 後は明日である金曜日の理科の授業、来週の月曜日に行う授業の予習・復習を行わなければ。

後はテストまでのスケジュール管理と生徒達への宿題等の提出。

他にも運動会や学園特区の合同文化祭、学園特区の地域別合同体育祭の準備がある。

 

 

一言で片付いているだろうけれど、私は徐々に稗田先生や他の理科の先生から多数の仕事を押し付……貰っている。

だからその事務処理がものっそい……ね?

 

 でも生徒達が成長し糧を得て、己を形成していく様を見るのはとても楽しい事です。

 

 んーよし。今日も校門で下校する生徒を見送ろうか。

高町さんは多目的室で、元帥と共に作戦を練っている。

 

 

 私は鞄に資料を入れて、職員室に残っている先生方に挨拶をしてここを出ていく。

そしてそのまま靴を履き替え、駐車場にある私の車の所へいく。

私は高町さんの護衛役だが、いつも一緒にいるわけではないし、自転車を乗り回しているわけでもない。

 

 ユーノに聴く限りでは、例の遺物は合計20個程あるらしい。

今現在1個入手しているようで、魔法少女になり活動を始めたのも昨日が初めて。

更にジュエルシードと云われている其れは、ユーノが知る限り13個見つかっている。

今日回収しに行くと言って、個人で回収しに行ったとのこと。

 

 それならば高町を巻き込むなと言いたいところだが、そうしなければ彼女は死んでいた。

だから仕方がない事であったとしか言いようがないわけだ。

 

 この問題は仕方ないとして、ユーノ本人がもっとなんとかできた筈だ。

後の祭りだとしても、人に頼り切りだ。

 

とにかく今は頑張ってもらうしかない。

もし頑張れ無くなれば、私がレイジングハートを引っ下げて全て回収して引き渡す。

寧ろこれが教師的観念から考えて最適なんじゃないか?

 

 いや、どうみても独りよがりに過ぎない。

教師的観念でいえば、なのはを護衛しつつ課題を終わらすのを支援することが最上だと考える。

それにもう結論は決まっているんだ。

全てを回収できればいい事になっている。

 

 基本的になんとかなるだろう。

何せ私からの技術提供があったんだ。

集中力とレイジングハートの支援があればなんとでもなりそうだ。

 

 ああそうだ、一応なのはに挨拶してから帰宅しようか。

 

 私は多目的室に立ち寄る。

そこでは水曜日の1~4時限を使う授業の研究が、日夜休憩時間等を使用して行われている。

使用しているのは私が副担任をしている所だ。

ちょっとした優遇だが、勿論スパイであるクラス生徒に情報を流している。

 

 私はこのクラスのドアをノックして、入室許可を貰う。

 するとドアの『閉』が『開』の表示へ変動する。

 

ガラッ

 

 

「調子はどうかな。空軍戦略指揮官殿」

 

 

「一之瀬実務顧問殿、空軍戦略指揮官殿は早急に退勤しました」

「む、なるほど。相分かった。ところで課題である、戦闘マップから作り上げた戦略データはまだかな?」

「まだ海軍がちょっと……」

「わかった。期日まで楽しみにしているよ、元帥殿」

「はっ!」

 

 

 三年生の男子生徒は、敬礼をして私が退出するまで直立不動だった。

別に気を楽にしてくれてもいいんだけどなぁ。

 

 おっと、余命宣告を行った病院への訪問についても、今日連絡しておかなければな。

 

 

「……」

 

 

 私は月村から聞いたその病院とその先生に関して、高町なのはについて訪問して聞きたい事を伝える。

すると相手からは重要な事項であり、その情報は国家機密となってしまっているようだ。

だからこの情報は渡せないし、個人情報の保護の観念からしても開示も不可能とのこと。

 

 私はなんとか理事長の権限や私の教師として知っておくべき事項として、下から御願いしてみたがやはり無理だった。

 

 この電話は歩きながら人気のない所まで歩いて到達してからやったので、他の人に会話内容を聴かれている可能性は低いだろう。

何せ生徒の大半は下校している。

部活動がある生徒もいるが、今日は晴れているので外に出る部活動が多い。

その為大きな聲でかき消されていることも含め、防諜対策は完全だろう。

 

たぶん。

 

 

<何と云われても不可能です。では>

 

 

ブツン

 

 

 私は携帯を仕舞い、屋上の手すりに手をかけ盛大な溜息をつく。

 

 

 

 国家機密ってなんだよ。

そんな理由で高町を救えるかもしれない可能性を、完全に殺してしまったじゃないか。

兵器転用またはその現象を利用して、C又はBC兵器を繕うとでも思ってんのか。

 

納得いかない。

 

 納得なんて、してたまるか。

 

 

 だが私にできることなんてない。

権力は他人頼り。

私の功績なんざ、ただの一握り。今まで怠惰だったのが響いてきたなぁ。

 

 

「一之先」

「なんですか?」

 

 

 私は手すりにもたれかかって夕日を眺めながら、後方から聞いたことがある声が近づいてくる。

その人物は私の真横に来て、共に外界を眺める。

 

 

「あたしも取り合ってみたけど、ダメだったのよ。

 国家にはあたしら財閥は歯向かえないわ」

「そういうものですよ」

「むしろ自己破壊細胞が悪さをしているところまで知れたのはよかったわ」

 

 私は夕日の朱に焼かれ輝く、金色の頭髪をたなびかせるアリサをわき目で見る。

そして私は地面である校舎屋上の屋根に座り込む。

汚いが仕方ない。

 

ここまで無力感に苛まれたのは初めてなんだよ。

 

「私達は本当に無力ですね、バニングスさん」

「ええ、そうね」

「でも、できることがあります」

 

 私はバニングスさんを安心させるため、微笑んで言い放つ。

しかし彼女は悟るような表情から、少々いらだつような表情をして私の方をにらむ。

 

「何もないわよ!あたしらにできることなんて、なのはが無残に散る様を近場でみるだけなのよ!?」

 

 彼女は無気力に座る私をしかりつける。

絶対的な権力に脅され、保身に走った国内大臣のような心境だ。

もうやってることが意味ないなっていうやつだ。

 

しかしそれでもできることは決まっている。

それは私達でしかできないことだ。

 

「落ち着いてください」

「落ち着いていられないわよ!二年前から奔走してるのよ!?

 なのになんの糸口も掴めてないし、なのはは徐々に弱っていくし……もう……友達が傷ついていくなんてこと……耐えられない……」

 

 私の電話で言われたことや聴かされたことと同じかそれ以上の言葉が、バニングスさんに振りかけられたのだろう。

それに月村が居ないという事は、月村は共にいたが既にバニングスさんがやっていたことをやっていて、バニングスさんは同じことをやらかした私に諦め、またはほかの何かを要求しに来たんだろう。

 

 遂にバニングスさんは目尻から雫を出し始め、言葉の最後の方では嗚咽を繰り返すほどになってしまった。

 

 私はそう悲観的になることでもないだろうにと思いながら、片足を地面につけて中腰になる。

そして彼女の頭を撫でる。

行き成りの行為に、バニングスさんはしどろもどろする。

 

「バニングスさんは凄いです。

 

 私はたった数分であきらめました。

 それなのに、一人の友人の為に必死になれる事は、きっとなのはさんもうれしく思ってくれます」

 

「う、嘘よ!だって、何もしてないのに……!」

 

「高町さんの為に何もしていない人が、高町さんに下の名前で呼ばせてもらえることなんてありませんよ。

 だって、誰でもない他人である自分を気遣ってくれるんですよ?

 

 それと聞いたことがあります。

 なのはさんは、自分が一年生の時一時的な記憶障害の中、苛めている男子をおっぱらったそうじゃないですか」

 

「そ、それは大事な友達だから……」

 

「普通はそこまでできないんですよ。

 とにかく今は、しょげくれている時じゃありません。

 

 私はなのはさんと愉しく授業したいです。

 

 バニングスさんはどうですか?」

 

 

 私は学生メモに書かれていたことを本人から聞いたかのように伝え、

いまだに頬を濡らすバニングスさんの目尻にハンカチを宛がう。

 

このハンカチ、吸水性がいいな。じゃなくて!

 

 

「あたしは……」

 

 

「最近疎遠気味なの、知っていますよ。

 バニングスさんが今やれるのは、なのはさんと一生の思い出をたくさん作ることです。

 人生は一度きりなので、思いっきり遊んじゃってください。

 隣の席の子として、友達として、なのはに認められる親友として、ね?」

 

「はい……!一之先……一之瀬先生、ありがとうございます……」

 

 うーん、まだそんなに笑顔じゃない。

 

 私は彼女の口の端を両手の人差し指を使って、少しでも頬を上げさせる。

 

「ふぇっ!?」

「笑顔ですよ」

 

 私は心を込めて、彼女に笑顔を見せる。

まだまだ精神的に立ち直れてない。

だったら表面を繕ってでもいいから、作ってもらおう。

 

大人だと理屈を述べるけど、このくらいの歳の子だと表面に内側が引っ張られるから

無理やりでも笑顔を作ることはいいんだよ。

 

「なのはさんは悲しい顔をして喜ぶ友達?」

「ち、違うわ!なのはは毎日笑顔で、皆に明るさと元気を振り分けてくれる大切な親友よ!」

「そっか。なら、なのはと一生物の思い出を作らないといけないですね。

 勿論、そこで突っ立っている月村さんと共に」

 

 

 私は室内から屋上へでる扉の前に居る月村さんに、指で指し示す。

バニングスさんは、”えっ”と小さく呟き月村さんを視界に入れ走り出す。

 

二人は抱き合う。

彼女達が話す言葉の中には、電話なんてやったって無駄、なんて事を云いにバニングスさんが私の所に来たことが分かる。

更にバニングスさんが”そんなこと言わなくても、無駄で無意味な事をすぐに思い知るから止めた方が良い”、なんて月村さんが言った事もわかった。

 

 この会話で二人は袂を分かったんだろうと思う。

結局バニングスは遠回りに、愚痴を云っただけに過ぎなかった。

月村さんもバニングスさんが心配で、見に来たこともわかった。

 

ならば私は次の指針を示せばいいだけだ。

 

 私は立ち上がって、抱擁しあう二人と視線を合わせて頭を撫でる。

驚いているだろうけど、私は非常に愉快な気分だから度外視する。

 

「さあ二人とも、今日は遅い。帰って明日の為に、英気を養ってください。

 お二人の笑顔と元気があれば、なのはさんは……」

「「元気になる!」」

「そのとおり!」

 

 二人は元気になったようだ。

安心安心。と思っていると、両腕をいつの間にか二人に掴まれていた。

何でだ!?

 

「先生。こんな遅い時間に、可愛い生徒を一人で帰させるつもりですか?」

 

 月村さんが私を見上げてそう言ってくる。

あー、夕日がなくなって、薄暗くなってきているなー。

 

うむ。これはダメだな!

 

「そんなわけないじゃないですか。

 いまから駐車場へ行きましょう」

 

 

 私となのはさんの親友二人と、駐車場へ向かう。

その途中いろんな先生や生徒に見つかってしまう。

基本的にはたった一か月以内に、生徒の心をつかんだ事への賞賛があった。

だが一部のませた生徒や奥さんがいる先生からは、三角関係とかなんとか野次を飛ばされた。

 

 なんでだあ?

 

 駐車場に来たとき、どのような順序で帰るか聞く。

場所的にバニングスさんを最初に下ろす事が決まった。

私は二人を後部座席に乗せる。助手席は普通に危ないから却下。

 

 

「一之瀬先生、感謝しなさいよ!学校で一番人気な私達が、乗ってあげてるんだからね!」

「ええ。何事にも一生懸命な可愛い子に乗ってもらえて、私の車もハッスルしますよ」

「と、当然でしょ!」

 

 頬を朱に染めながら、シートベルトを締めている姿をバックミラー越しで確認する。

全く……なのはさんは、幸せ者だなぁ……。

 

とにかくなのはさんに深くかかわるという事は、彼女達も護衛しなくちゃならんということか。

上等だ、やってやるよ。

 

 

 

 私は決意を新たにしながら、バニングスを門の前で降ろす。

また明日会おう、という事を告げて発車する。

 

既に闇夜に包まれてしまっている。

 

車を走らせる中、月村さんが話しかけてくる。

 

「一之瀬先生。リンカーコアって知っていますか?」

「へ?あ、いや、全くです」

「リンカーコアというのは、生命力を表しながらもう一つの力を顕現するためのものです。

 しかしこれを抜き取られ全くない状態になった、『無魂体』の生体が発見されます。

 なのはちゃんは、このリンカーコアにあるもう一つの力が継続的に減少して行っている状態です。

 更に減少するというその現象が不可解であり、量子論でも分からない為何らかの形で物理的に、リンカーコアが損壊させられそれと同時に、なのはちゃんの肉体や精神を食い破っているものと考えられます」

 

 私は冷静にそれを聴く。

リンカーコア?聞いたことがないな。

 

「月村さん、それはどこ情報ですか?」

「父上から聞きました」

「わかりました。情報提供、ありがとうございます。

 ここからは大人の時間です。任せて頂きたいのですが?」

「御願いします。私ではここが限度でした……。

 それと、この事については御内密に」

「勿論ですよ」

 

 

 私は月村さんと約束し、彼女を屋敷の門前に降ろす。

 

 

 

 そして中へ入っていくのを確認して―――

 

 

 

 

 

―――電話に出る。

 

 

<一之瀬さん、あの公園に早く!>

「わかりました」

 

 

 

 全く………何をしているんだ!

 

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