1-6
全ては終わった。
月村さんに連絡して特殊な救急車を呼んでもらい、国立中央病院になのはさんは搬送された。
そして罪は誰にもなく、犯人のいないひき逃げ事故として扱われた。
まどかさん達は、既にどこにもおらず忽然といなくなっていた。
私は自宅で睡眠しており、知らなかったとして無罪放免になった。
そしてレイジングハートとユーノ君は、私の家に来てもらっている。
何せなのはさんは帰宅途中どこかで遊び、その途中に事故を被り大怪我をした事になっている。
だからそこにレイジングハートさんとユーノ君が居ることは、非常に不自然なんだ。
本来ならばレイジングハートさんは居るべきだった。
しかし私は知らなければならない。
何故なのはさんが、あのような大怪我を負ってしまったのかを。
とにかく明日も学校なんだ。
汗を流さないといけない。
そこで三人で共に風呂に入ることにした。
「ユーノ君は人間にならないのですか?」
「はい。僕はこれで十分です」
レイジングハートさんは、風呂内部にある台座の上に置く。
勿論、柔らかくきめ細かい眼鏡拭きの布を敷いている。
ユーノ君は変化しているだけなので、毛玉や脱毛することはないから湯船に浸かっても大丈夫と言っていた。
だから男二人とたぶん女性一人で、裸の付き合いをする。
「極楽極楽……さて、今日何があったかききましょうか」
「ふぅ……はい。全てお話します。
と言っても、戦闘状況を撮影したもので説明させてもらいますが」
そういうとレイジングハートが点滅し、私達の目の前に映像が出現した。
その映像は想像を絶するものだった。
最初の方は普通に郊外で回収していたが、都市部で謎の雷撃を食らいダメージが蓄積される。
またジュエルシードが単体で、都市部中央に存在しているのを見て『シーリング』を開始。
しかしまたも雷撃や稲妻を纏った攻撃で攻撃される。
なのはさんはその発起点を発見する。
それは同い年だと思われる少女だった。
黒のレオタードと呼べそうな非常に、防御面で言えば脆い服装をしていた。
金髪のツインテールをたなびかせ、黄色のコアを持つ黒鉄の斧を持っている。
攻撃速度移動速度共に、非常に速いが雷速までではない。
私が考案した魔力弾による攻撃を、相手も使用しておりそれを回避するなのはさん。
やはり空間把握能力が高いですね。
まあそこまではよかったんです。
途中で黒の集団が出現し、なのはさんとその少女を襲い始めました。
少女は逃げたのですが、徹底抗戦したなのはさんはジュエルシードとリンカーコアを奪われてしまいました。
そのあとユーノ君が人間と化して、なのはさんをレイジングハートと共に連れて公園へ行ったのです。
そしてなのはさんの携帯を借りて、私に連絡をしたのだと。
遂に連絡を終えた瞬間魔力が尽きて、ユーノ君はフェレットに戻ってしまいました。
例のジュエルシードは、今レイジングハートが取得している。
個数は7個。今晩で一気に回収したようで素晴らしい手際だと思っている。
私は二人と今後について話し合う事にした。
一番先決するべきこととして、本人のメンタルケアだ。
次に遺物に関して。
特別出動を名目として一定期間自由に活動できる時間を作り、なのはさんの護衛をすること。
最後は授業や放課後を通して、戦闘に魔法以外を取り込みアウトレンジによる有視界外で撃破すること。
「というわけで、レイジングハートさん。適合率は低いですが、今後の為少し機能を貸してください」
<ええ、構いません。ですが、どうするのですか?>
「ユーノ君の魔力を借りて、アウトレンジ戦法を生み出します」
私は最初に例の少女の雷撃について聞いた。
なんでも魔力変換資質というもので、魔力を炎・雷・氷属性に変化させられる稀有な能力なんだとか。
ただでさえ稀有なのに、氷属性の人はまずいないとのこと。
そこで魔力変換資質がなくても、それらの物質の変移を疑似的に魔力で作ればなんにでもなるということになる。
まず最初に化学物質の構成元素表を引っ張り出してきて、トリニトロトルエンの項目を探す。
そしてこれを疑似的に魔法と魔力で作りだす。
これを風呂場から上がって、外で一時間かけて作った。
「これは?」
「TNTです」
「へ?」
「軍事用爆薬です」
「どういう効果ですか?」
「では、レイジングハートさん、この穴の中へその魔力弾をいれてください」
<はい>
頭にクエッションマークを浮かべる彼の為に、実演を行う。
さて、どんな結果になるかな?
私達は一応離れて観察する。
<起爆>
ドッ
籠った破裂音が聞こえるのと同時に、TNTを埋めた場所を中心に直径4M程が地上へ40Mほど吹き上がる。
中々の威力だ。
「どうですか?」
「あ、あはは……」
ユーノ君の眼が虚ろになっている。どうしたんだろうか?
<これは質量兵器ですね>
「今更ですか。しかしこれは質量兵器を模した魔法です。質量兵器ではありません」
<ですので、次元世界での法律に触れていません>
私には関係ないが、彼女らには関係あるんだろう。
大丈夫。全て魔法で補いますから。
しかし魔法陣がなのはさんが使っていた砲撃魔法陣の情報量を、簡単に追い抜いてしまっていて結構膨大になってしまった。
普通ならば直径1Mほどだけれど、私が開発した其れは直径10M程。
これでは実践で使えない。
そこで私はレイジングハートさんに、この魔力系のプログラミングを教えてもらう事にしました。
勿論ユーノ先生にかかりっきりになって貰います。
「ユーノ教授。残りのジュエルシードはどこにありますか?」
「たぶん海か市街地ですね」
「でしたら海で魔力反応を起こせば、出てくるかもしれませんね」
「そ、そうですね……あの、先生?嫌な予感がするんですが……」
私は笑顔でユーノ教授とレイジングハートさんに応える。
「では、今からあの少女の雷撃を完封して、ジュエルシードだけもらう練習をしましょう」
「や、やっぱり!」
<た、助けて、マスター>
さて私達は一度室内に入り、休憩がてら理科のお勉強を開始した。
それは電流や落雷に関しての勉強だ。
電位差・電界・負電荷・正電荷・絶縁破壊・階段型前駆・矢型前駆・帯電・放電路……。
更に上記の言葉を使って、魔法の組み立て理論をくみ上げる。
基本的に正から負へ向かう小粒の正電荷と大粒の負電荷に分け、自身に正電荷をまとわりつかせ
相手周辺又は相手のイオンに結合させ、帰還雷撃と多重雷撃でダメージを与える。
又、海水に放つ事で電離によってできた酸素と水素を魔法で集め、後続雷撃というホットライトニングを使って
水素の酸化反応を引き起こすことができる。
もしも電離できない状況であれば、後続雷撃のないコールドライトニングで対象物に含まれる水分を水蒸気に変化させ、
破裂させることも可能だ。
たぶんこれをつかえば、海魔族は殲滅できる。
そしてその少女も完封できる。
やりすぎると殺してしまうかもしれない。
だが、既に手を出されているんだ。
だから止めろと言っても、言い分は聴かない。
情状酌量はなのはさんに任せる。
で、問題の魔法陣だが……半径10Mだ。
先ほどの二倍!
ユーノ君にある魔力と私に微量ある魔力を、結構使って仕上げた。
「こ、こんな情報量、レイジングハートと分割して行うなんて……!」
「いえいえ、これくらいならばそこらの小学生でもできますよ」
ただしプログラミングと構造に関しての知識がないとできないけどね。
私はこの後あらゆる現代兵器からヒントを受けて、プログラムだけ作ってみた。
一つは純魔力結晶に二つの魔力による過剰な反応を与える事で、爆発が起きた事から刺激を受けた。
『魔力核』。純魔力を特殊な構造で作り上げ、そこに過剰で特殊な刺激を与え爆発させる。
周囲へMWP(Magical Waves Pulse)、魔力パルスを発生させる。
MWPによりデバイスや魔法陣に、サージ魔力を発生させそれらを破壊・使用不可にする。
ただしMWP防御結界魔法によりサージ魔力の妨害を別方向へ回避しながら、魔法を使うことができる。
<理論上可能です>
二つ目、燃料気化爆弾。
魔力を使用するほど、大気中に魔力が残る。
これを魔力で刺激し、連鎖反応を引き起こさせる事で広範囲を爆風で吹き飛ばせる。
むしろこの魔力を還元し、自身の魔力を回復させた方が良いかもしれない。
<回復させた方がむしろいいですね>
三つめ、弾性体・粘性体魔力結界。
物理系であれば粘性を使い、吹き飛ばされないようにする。
他は弾性体を使う事で、威力を低減することができる。
勿論弾性体は二重構造でなければ、容易に突き抜けられるのでちゃんと二重発動すること。
また弾性体魔力結界を使えば、異常な攻撃力に対して結界の臨界点でパージすれば雷撃ホイッスラーを
相手に指向性として放つことができる。
耳から血液が出るだろうが、知ったこっちゃない。
「なるほど、いままで結界は守る事と耐える事が主だったけど、副産物として攻撃もできるようにしたのか……」
<非常に合理的です。今すぐしましょう>
4つ目、転移魔法による隕石攻撃。
無差別として利用できる。
超高高度に石や岩等を転移させ、位置エネルギーを運動エネルギーに変換し攻撃する質量兵器。
また運動エネルギーを少々消費して、攻撃座標を変化させられる。
爆心地は普通に危ない。タングステンを投下すると大惨事は間違いない。
しかし当たれば確実に倒せる。
<非合理ですが、可能です>
「しない方が良いですよ?」
最後。魔力弾によるベクトル変更。
砲撃や砲弾系にベクトルを変化させるプログラム変異のウィルスを、その魔法に合体・忍び込ませ
反射または反らすことが可能になる。
<非常にいいですね。これが一番簡単でしょう>
「やるのは僕だよね!?」
「当然です」
少々徹夜をしてしまったが、私達の探求は止まりませんよ。
勿論私の魔力を使って念話もできるようになりましたし、常にユーノ教授に試してもらえます。
いやぁ、実践してもらえるかな?しないかな?
やってもらえると、非常にうれしいのですがね。