夏休み中の魔法を導く奇跡~三期~   作:名無しの権左衛門

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次の日。

 

 

 私と月村さんはバニングスさんに叱られた。

 

 

 放課後直ぐに理科準備室に連れ込まれた。

やはり令嬢ともいえるが、その情報は昼休みに掴んで私と月村さんが関わっている事がばれた。

 

 

「ごめんなさい。私が至らぬばかりに……」

「あたしがなんで叱ってんのか、ちゃんとわかってんの!?」

「すみません……」

 

 私は全面降伏、無条件降伏状態で平謝りするしかない状況。

無力すぎた。

だから私は土曜日に市外へ行き、強者を求める旅をする予定だ。

 

きっとこれからも危険な事が続く。

いや絶対だ。

 

 こんなに危険な状態でなのはさんの護衛なんざ、努められるわけがない。

だから私は危険因子は確実に殺していく。

心の中にある確実性から生まれる慢心を、完全に破壊する。

 

これから生きるのは修羅の道だ。

 

 

「あたしはなのはとすずかと……一之先と普通の日常を過ごしたいだけなのよ!

 先生はあたしたちの副担任なんでしょ!?

 たった一人の生徒すら守れないの!?」

「アリサちゃん!」

 

 

 バニングスさんの怒りに、月村さんの仲裁が入る。

 

 

「……っ、ごめん。ちょっと、独りにさせて」

 

 

 バニングスさんは準備室を出て行った。

私は追いかけようとして、椅子から立ち上がり駆けようとした。

しかし月村さんが私の服の裾を掴んでいて、前へ進むことができない。

 

 私は月村さんの方へ振り向く。

 

 月村さんは俯いていた。

彼女も怒っているのだろうか。

いや怒っているだろう。

 

 私の不注意と慢心により、彼女も私の罪に巻き込んでしまった。

そしてバニングスさんの言う通り、私は皆さんの副担任だ。

副次的であっても、私は先生であり大人だ。

 

こんな大人がぐうたらで、いざという時には生徒に頼ってしまった私が愚かだ。

 

「先生……」

「なんですか、月村さん」

 

 

 

「先生はなんで、アリサちゃんに一之先ってよばれたり、なのはちゃんに下の名前で呼ばれているかわかります?」

 

 

 え?

ただの教師と生徒の友好の証じゃないのか?

それになのはについては、自己の確立を認めてくれるってことじゃ?

 

 

「……」

「わからないんですか? 私達、凄くアピールしてるのに……鈍感な人……」

 

 

 は?いや、私の性格まで罵倒するような事項があったか?

そんなはずはないよね?

たぶん。ないはず。

 

でも、私は底辺の屑野郎っていう事は分かる。

だからその屑を止めるために修行をしたのに、結局本質は変えられなかった。

どうすればいいんだろうな……。

 

 

 自身の更正のしようの無さに嘆いていると、月村さんが私の裾を更に強く引っ張る。

 

 

「私達、先生が来る前まで、頻繁に喧嘩していたんですよ?」

「え?」

 

 

 嘘だろ?

仲良し三人組って、メモ帳に書いていた。

 

いや、どうせ主観ばかりで下校した生徒達を、一般人視点から見ていないだけだろう。

 

あ、でも、なんで彼女たちは喧嘩をしていたんだろう?

 

「何でって顔ですね」

「え、あ、すみません」

「いいんですよ。私達が先生の事を知りたいように、私達の事先生にもっと知ってもらいたいのですから」

 

 月村さんはくすっと笑う。

小学三年生がするような笑いじゃないよ、それ……。

所作も優雅だし、さすがは令嬢。半端じゃない。

 

 

「私達って実は、凄く気が強いんです。

 ですから一度意見が分かれると、負けを認めるまで対立しちゃうんです。

 でも先生が来てから、なのはちゃんとアリサちゃんは喧嘩しなくなっちゃって……

 

 本当に楽しそうに過ごしている二人を見るのは、久しぶりなんです……」

 

 月村さんは優しいんだなぁ。

常に二人の事を考えている。

 

もしかしたら月村さんから、バニングスさんへ情報を流したのかもしれない。

心優しいから、友達に情報をって感じかな。

 

「だから先生……お願いします……なのはちゃんを救ってください……

 アリサちゃんも、悪気はないんです。

 

 だってなのはちゃんが、今まで私達に見せたことがない顔を先生に見せたんですよ?

 三年以上の付き合いがある私達からみれば、嫉妬しちゃうに決まっているじゃないですか……」

 

 あぁ……そっか。

私は勘違いしていた。

 

 

バニングスさんも月村さんも、結局の原動力は『嫉妬』にあったんだな。

 

 だとしたら早急に、バニングスさんの所へ行かなくちゃいけない。

変に感情や関係をこじらせると、ナイスボートになる。

それだけは嫌だ!

 

 

「先生は私達だけの先生になれないんですか?」

 

 私は内心焦っていると、月村さんは顔を上げて私が生きてきた中で知らない表情をしてきた。

少し考えが吹っ飛んでしまったが、端的に情報を組み合わせた。

これが私の答えだ。

 

 

「月村さん、ごめんなさい。私はこの学校の三年生副担任です。

 貴方達だけの先生にはなれません。

 私は皆さんの先生ですので」

 

 私は月村さんの目線と同じ位になる様に中腰になって、彼女の頭を撫でる。

すると私の裾を握っている手が緩くなる。

よし、バニングスさんの拗れを治しに行こう!

 

「月村さん。そろそろ昼休憩が終わります。

 私はバニングスさんを迎えに行きますので、貴方は教室にてお待ちください」

 

 私はこのなんだか重苦しい空気を絶つため、満面の笑みで言う。

こんなの耐えられないからね。

 

「わかりました。先生、アリサちゃんをお願いします」

「お任せください。先生には出来ないことがあっても、やれないことはないんですよ?」

 

 心配そうな月村さんに、私は自信満々の調子をみせる。

生徒を不安に導くのは、最底辺な教師であってもやってはいけない。

 

 

希望でなければ、生徒達はついてこない。

 

 

さあ、やろう。

 

 

 月村さんは準備室からお辞儀をして、教室へ小走りで走っていった。

 

 私はバニングスさんを探しに、早歩きで探し回る。

授業に関しては、暇をしている先生に頼み込んで自由学習にしてもらった。

勝手な事をしていることは、重々承知だ。

頼んだ先生からも、何が起きたか知らないが生徒からの評判に繋がるぞ、と叱責を受けた。

 

 それでも一人の生徒だからという理由で、捨てる事なんてできない。

 

 それ以前に私が原因で、生徒がバニングスさんが落ち込み何かをやらかせば、学校側に非難が来る。

此れだけは避けないといけない。

私の痴情のせいで、全てを巻き込むのはごめんなんだ。

 

「バニングスさん!」

 

 

 私は屋上で彼女を見つける。

 

 バニングスさんは、外の景色を見ている。

 

 

 私は歩いて彼女に近づく。

 

 

「バニングスさん、ごめんなさい。

 私のせいです。護衛でありながら、何の成果もあげられませんでした。

 昨日の約束を、反故してしまい……申し訳ありません」

 

 私は頭を下げた。

不甲斐ないという言葉が、一番似合う私。

 

 

彼女達の絆や信頼を、全てを以って破壊してしまった。

この罪は非常に重い。

 

 

 しかし彼女達に、償いの方法を見出せないのもそうである。

 

 

 情けない。

 

 

 非常に情けない!

 

 

「先生」

 

 

 バニングスさんは、景色を見つめながらそうつぶやく。

 

 

「なんですか?」

 

 

 私は頭を上げ、彼女の言葉を待つ。

 

 

「ごめんなさい」

 

 

「バニングスさんが謝る必要なんてありません。

 私の不徳とするところです」

 

「違う。そういうのじゃないの」

 

 

 バニングスさんは、黄昏るのを止めて私の方へ振り返る。

その表情は悲壮なのか悲哀なのか、全く読み取れない。

無表情ともいえるのか。いや、そうじゃない。

 

 

「私ね。なのはやすずかと一緒に居られればいいと思って、先生方の動向を調べては脅迫したりして、

 私達に近づけない様にしていたのよ」

 

 

 バニングスさんは、私を見上げ微笑みかける。

 

訳が分からない。何故私にそのような事を云いだしたのか。

それよりもそんな妨害知らない。

 

 いや、仕事中は携帯電話の電源を切っているし、移動中は今後の動向を思案していることが多いから、

そのような事に気づかなかっただけかもしれない。

 

 

「でも、先生は例外だったのよ。だって、なのはが私達に見せない表情をするのよ?

 他の餓鬼っぽい男子にも見せない、教員にも見せない……憧れの姿……。

 だから脅しは止めて、情報収集をしてみたの。

 そしたら、先生……なのはの為に、凄く頑張っていたって事がわかってね。

 

 正直、先生に取られたくなかった。

 だけどなのはは、私達の輪を抜けてまでも先生に近づいたのよ」

 

 

 はて、そうだったかな?

そういえば放課後に、毎日特別な講義を始業式の次の日から始めたんだけれど、

その日から多くの知識欲を満たしたい生徒が見聞を聞きに来たような……。

 

 まさか、そこになのはさんが居たのだろうか?

 

 いやありえないだろう。

素性がまだわからない教師の講義に、即行で心酔するなんて……。

 

そういえばあの時、来ていた人物は女子5人、男子2人だ。

行った講義は、『家政学』。

 

 プリントや電卓を使って、家計の付け方とその合理性のある物事の順序を教えただけだ。

たったそんだけだ。

 

 

「それで私はすずかと一緒に、今回の先生は頼りになるからという建前の下なのはの秘密を教えたの。

 でも本当は生徒想いの先生に、無理難題を強いて私の言葉で挫折させて、さっさとどこか行ってもらいたかったんだけどね。

 

 でも、一之瀬先生は、挫けなかった。

 

 寧ろ私が……」

 

 

 バニングスさんは頭を振る。

私は静かに、彼女の独白を聴くしかなかった。

それくらい私は情報の整理に、神経を割かなければならなかったからだ。

 

 

「私もすずかも、なのはが魔法に関係しているのは知ってるの。

 でも、なのはは必死にその事を隠してた。

 だって私達が知って居るはずないもの。

 

 だから私達は介入しづらくなった」

 

 なるほど、自分で自分の首を絞めて仕舞ったんだな。

魔法の方も、裏で消すこともでき無いようだ。

傍から見ると非常に楽しそうな魔法も、少しこじらせると面倒な物に変化する。

 

 核みたいなものになってしまっている。

 

 そこから私達にやった仕打ちを聞いた。

いや私は全く被害を受けていないから何とも思わない。

だがそれでもその告白から、なんとかバニングスさんの自己加害を止められる方法を編み出す。

 

そう、私とバニングスさんの距離を縮める、最適な行動を……。

 

 

 

「私、転校するわ」

 

 

「え?」

 

 

「元々一人だったし、丁度いい頃合いかなって。

 今まで迷惑をかけたし、すずかも脅迫と強要は非常にまずいって言ってた。

 幸いすずかは先生を認めているし、私がいなくなっても……」

「逃げるな」

 

 

 

 私ははっとする。やっべ、言っちまった。

バニングスさんも、驚愕しているようで固まっている。

 

 私は生徒の言葉に共感しながらも、それに意見して方向性をずらすことを主体とした話し方をしてきた。

だけども私は彼女の独りよがりでありながら、言葉の表裏に見える『逃げ』を感知して自然と聲に出してしまったようだ。

何故なら私はそういう逆境を、どんなに落ち込んでくよくよしても逃げずに立ち向かってきたからだ。

 

だから今は彼女自身の勝手な解釈と他を見捨てる様な言動をとる彼女の思惑そのものが、

私にとって受け入れがたい信念であるから真っ向から拒否してしまった。

 

 

「”逃げるな”ですって……?

 わ、私がどれだけ苦悩して言っているのかわからないの!?」

「分かるさ。大体どんな事情か、当事者から言うと容易にわかる。

 だがな、私はアリサ・バニングスではない。

 圧倒的容姿・財産・名誉、その他諸々同じような思想・思考・性別を持っているわけではない。

 しかし同じような状況であるからこそ、共有し共感できることもある」

「だったら、私の事を”逃げ”と認めないで、さっさと許可しなさいよ!

 あんた校長と理事長の親族なんでしょ。早く承認しなさいよ!」

「阿呆抜かすな、アリサ・バニングス!

 お前の親友をほっといて、自分だけぬくぬく他の場所で過ごす気か!

 何故なのはがアリサを親友だと思って―――」

 

「ただの友情ごっこに、興味なんてないわ」

 

「そうか。お前はこの舞台から降りると云う訳なんだな?」

 

「ええ。全く興味ないわ」

 

 

 いけしゃあしゃあと述べているように見えるが、瞳が揺れていて今にも心が決壊しそうになっているのが見て取れる。

ただの強がりだ。

気が強いとはいうが、これはどうみてもやりすぎだ。

これではただの我慢と変わらない。

 

 だから私は、強行する。

 

 

 私は一気に駆け、バニングスさんの胸倉をつかみ上げ、校舎の外に彼女を吊るしだす。

彼女の足元には、3階立分の高さの下にコンクリートの地面がある。

幸い皆授業中。体育を行う運動場も、つるし上げている方向の真逆にあるので見られない。

 

 

「くぅっ!」

 

「アリサ。お前、この舞台から降りるということは、私が立っているこの舞台から去るということだ。

 それはつまり、わかるよな?」

「ええ、わかるわ!さっさと……さっさと放しなさいよお!」

 

 アリサは両手で私の腕を握り、離させるような行動をとる。

しかしただの小学生の握力で私の腕から、離脱できると思わないでほしい。

 

ただ、脅しも必要だろう。

私は彼女の胸倉をつかまず、人差し指だけで服のつっかかりを使って持ち上げる。

 

「っ!?」

「どうした?去りたいんだろ?むしろ、死んだ方がましだなんて、思っているんだろ?

 ん?そのへんどうなんだ?」

「……」

 

 アリサは歯を食いしばって耐える、

うーん、強情。仕方ない。アレをするか。

 

 

 私はアリサの胸倉をつかみ思いっきり上空に投げる。

そしてすぐに三年生の教室へ向かい、ドアを蹴飛ばして、閉じている窓を割り道中にいるすずかを拉致して飛び降りる。

 

 

「へ?」

「月村さん、すまない。ちょっとしくじりました。

 力を貸してください」

「い、良いですけど……」

「君は何も見なかったし聴かなかった、いいね?」

「あ、はい」

 

 

 二階から地上に降り立ち、そこにすずかを降ろす。

次に窓のつっかえを使って、屋上まで登りアリサが落ちてくるのを見て私が飛んで、位置エネルギーが

運動エネルギーに変化するその頂点をアリサの落下地点を合わせて地上へ降り立つ。

 

 

 私は足を捻挫したし、腕は脱臼した。

ただアリサが無事なので、問題ない。

 

 

 彼女は身体を震わせ、失禁していた。

だが失神はしていない。さすがにここまでくると笑うよ。

 

「月村さん、バニングスさんの本心を誘導する様にしてみてください。

 一応心は壊してしまったので、あっさりといけるはずです」

「何してるんですか……」

 

 月村さんは私に呆れ、盛大な溜息をつく。

しかしすぐに気を引き締めて、問答に入る。

 

月村さんはバニングスさんの両手を取って、彼女の顔を覗き込むようにして言う。

 

「アリサ・バニングス。天国へようこそ。ここでは貴方が現世にしてきたことを、一生悔やみながら懺悔できる場所です。

 あなたは地上で何をしましたか?」

 

 囁く様に彼女に言う。

するとバニングスさんは目を閉じて、身体を震わせながら言葉を一つ一つ紡いでいった。

 

「はぁ……はぁ……私は、せんせーにひどい事いいました……。

 私、何もしてないのに……せんせーだけ、必死に動いてなのはの事……守ってました……。

 何もできない事……歯がゆくて……そしたら、なのは……せんせーの事が好きってラインで来て……。

 発狂……したのかな……。性格が性格だから……初めて友達ができたの、うれしかった……。

 

 

 なのに、せんせーになのはを取られて……きづいたら遅かった……。

 なのはに逢いたい……。逢えるの……?」

 

 

「ええ、逢えます。今からその場所へ行きますね。少々風が吹きますが、安静にしていてください」

「はい……」

 

 

 月村さんは私に微笑みかける。

殺す気かな?まあ、私がやっちまったことだし、やってやるよ。

捻挫でひどい痛みと違和感の中、なのはさんが幽閉されている病院へ向かった。

勿論月村さんを背負い、バニングスさんを腕に抱えてね。

 

 全力で走っている途中、月村さんが何か電話をしていました。

どうしたんだろうと思って、病院に到着すると大量の警察が周辺を制圧していました。

私は途中月村さんに案内され、病院に入り込む事に成功。

 

そして幽閉されている階層に来て、誰もいない通路を通って例の場所に来る。

 

 私は既に開いている扉を開けて、中へ入り込む。

そこは真っ白な広い部屋で、中央にぽつんとベッドがある。

ベッドにはなのはさんがいて、周辺機器が充実していた。

 

 

 私はなのはさんにバニングスさんを近づける。

月村さんは所定位置に着いて、バニングスさんの意識を誘導し始めた。

占い師とかカウンセラーに向いている言動っぷり、それとも彼女の性格を熟知しているのか……?

 

「アリサ。到着しました」

 

 なのはさんは左腕に点滴を受けているので、右側に来て比較的自由に行動を起こす。

バニングスさんは周囲の状況に目がいかず、なのはさんの右手を取る。

しかし私はそれ以上先は見ることはできない。

 

 じつはなのはさんは、白い布っぽいものをかけられていた。

それをめくると、なのはさんは全裸だということがわかった。

だから目線を外したんだけれども、バニングスさんが自分の世界に落ち込んでいる時、

月村さんが私に催促した。

 

「一之瀬先生。なのはちゃんは先生が好きだって言ってたんですよ?

 だったら見る位どうってことないじゃないですか」

「まあ、実質私の生徒であり護衛対象です。肉体的損傷がないか確認しておいてもいいでしょう」

 

 勿論何かあれば、責任者を引っ張り出して処刑しますが。

ただ私刑ではなく、ちゃんと意見を集めたうえで私刑にします。

ん?どっちみち変わってないような……?

 

 

「ん……んぅ…………アリサちゃん?」

「なのは……」

 

 気づいたみたいだ。

だが残念ながら、私はバニングスを抱えているのでなのはから私は見えないのだ!

 

 

 バニングスとなのはは、お互いの事を確認しあい思っている事をぶちまけた。

 

 

「なのは、ごめんね。あたし、なのはが先生に取られると思って……」

 

「大丈夫だよ、アリサちゃん。魔法少女になってから、検索魔法で不審な人、たくさん見つけたことがあるんだ。

 あの人達って、アリサちゃんが仕向けた人だったんだね」

 

「うん。もしなにかあったら、あたしは……」

 

「ごめんね、アリサちゃん。私は先生の事が好き。生徒としてじゃなくて……」

 

「あいつのどこがいいのよ……」

 

「……私達の事、ちゃんと見てくれるから、かな?今までやけに怯えている先生が多かったし」

 

 バニングスは監視の事だけ言い、脅迫と強要の事は言っていない。

強かだな、おい。

 

「それと、私の事を可哀想だ、って一言も言わなかった事とほめてくれたこと。

 後は、私が淹れた紅茶をちゃんと指摘してくれたこと」

 

「そんなこと?」

 

「む。私だって喫茶店の娘なんだよ?

 皆おいしいとかいいつつも、冷や汗だして無理やり笑顔を作って誤魔化してた。

 でも、先生はそんなのなかった」

 

 うーん、なのははちゃんと会話できている。

リンカーコアは、肉体と結合しているのか?

 

 

「なのはちゃん。もう大丈夫?」

 

 

 月村はなのはに確認する。

 

 

「っ!?え、いたの?」

「居たんだよ?後、先生も」

 

 

 私はドッキリ大成功と同じぐらいの思考レベルで、アリサの身体の陰から頭を出す。

 

「やあ、なのはさん。リンカーコア結合、できました?」

「っ!!!?」

 

 するとなのはさんは、右手でめくれている布団を使って首下まで隠した。

結構な焦りっぷりだ。私は皆さんをそういう目で見れないのですがね。

 

「先生、アリサちゃんの解放をお願いします」

「そうですね。レコーダーに十分な情報を収納できました。これで利用できます」

 

 私は山籠もりで取得したツボを使って、バニングスさんの感覚神経遮断をしていた。

自然にこれを行う位慣れてしまったものですから、前説明なくやってしまいました。

とにかく解放します。

 

「んぁっ。っつぅ……って、ええっ!?一之瀬先生!?すずか!?」

 

 私と月村さんは、爆笑と最高の微笑みを見せる。

 

「告白、ありがとうございました」

「せ、先生の馬鹿あああっ!」

 

 私がこういうと、バニングスは私を蹴飛ばしました。

私は華麗にしゃがんで回避して、彼女の攻撃を無効化しました。

しかし回避する時、スカートが翻ります。

 

そして本来ならば、下着をつけている筈なのですがありませんでした。

 

 そういえば失禁していたのを思い出しました。

尿素でアンモニア臭を漂わせるくらいならば、下着をパージすればいいじゃないか、と。

素晴らしい考え持ってんな。

 

非常に合理的だ。

 

「アリサちゃん。おねしょな下着は、私が切り落としといたよ」

「なんか、涼しいと思ったら、あんたのせいね!」

「あ、見られたのは気にしないんだ」

 

 うがーっとアリサは、一気に騒がしくなる。

彼女の言葉は羞恥心がないようで、気にしていない事はなのはに言われている。

 

「気にするわよ!で、でも、先生ならいいかなって……」

「一之瀬先生は渡さないから!」

「そんなんじゃないわよ!」

「なのはちゃんもアリサちゃんも、先生に口説かれたもんね」

 

 うんうん、子供は元気が一番だ。

私について語っているけれども、気を引きたければ結婚適性年齢まで引き上げて挑戦しなさい。

法律的にも私の教師魂的にも、二人や三人の婦女子を特殊な感情で贔屓するには不可能としかいいようがない。

まず私にそんな気はないので。

 

 今は不可解な世界の動乱を知らないと、これからが危なくなる。

だからそちらに気が行くな。

 

「それで、リンカーコアは……」

 

 

 

<それについては、私が説明しよう!>

 

 

 

 いきなりホログラムで担当主治医が出現した。

何というオーバーテクノロジー!

 

 

 バニングスさんと月村さんは、その立体映像に驚くがなのはは先生と言って認めている様子。

ふむ。これは……協力体制を敷けるか?

試そう。

 

 

<今回のリンカーコアの損耗率は78% 損壊率は88% 適合率1% 魔力ランクAAA[トリプルエー]です。

 損耗は魔力使用で、損壊は摘出による魔力以外による損耗、適合はリンカーコアとの結合と共に燃費よく消費できるかの

 重要な値であり、また保有している本人との魂的結合の意味があり意識レベルの回復等注視されるものです>

 

 

 この主治医やるな。

今後彼と組もう。そうしよう。

それにもし魔力に関する問題があった場合、彼とコネクションがある場合活用できるかもしれない。

 

 

<現在全ての%[パーセンテージ]は、100%となりました。

 今後の治療の心配はございません。

 それと今回の事により、国立学園特区の一之瀬正樹非現実的現象専用顧問と我々地球魔導研究機関と連携することになりました。

 私は西田 洋一。今後ともよろしくお願いします>

 

 先に根回しをされていた。

という事は、宮本先生の影響かな?

 

 それと国立学園特区は、学園特区の計画・整地・大学建設を国がやっているだけ。

他は計画と整地による学区に、県がそれぞれ建てるだけ。

 

「よろしくお願いします、西田さん。

 ですが私個人ではなく今後増える可能性がある為、保険の先生である宮本さんと一度対話して頂きたい」

<既に介入は済んでおります。

 今の所は魔力やそこらの基本的な事を、宮本先生の所へ送っております。

 

 えー、高町なのはさんは、既に完治しておりますが体調回復の為、一週間は入院してもらいます。

 それとアリサ・バニングスさんは、身体に大きな凍傷があることが確認されていますので、此方も診察を受けてください。

 月村すずかさんは、今回の件について少々長引く会議があるので、そこに参加してもらいます。

 一之瀬正樹さんは、全身打撲・脱臼・捻挫を確認しております。こちらも集中治療をさせていただきます>

 

 あちゃー、ばれてた。

 

 

「「全身打撲!?」」

「強気なアリサちゃんを凍傷させてまで、心を開かせるつもりだった結果がそうなんでしょ、先生?」

「そうですよ、月村さん。

 私はどんなに強気であったり問題児であったとしても、どんなことをやってでも心を開かせて見せます。

 ですので我が身の安全は、省みません」

 

 私は堂々と言う。

全ては生徒の為!

 

どんなことになろうとあきらめないで、いろんな妥協を行いながらも解決を図っていく。

これが教師魂。

 

 少々加害がすぎたり、物損も行うが……生徒が新たな発見をしてくれれば重畳だ。

なにせ、子は宝だからな!

 

しかし、これでようやく私達は歩み始められる。

後は……私が悲願とする、あの子たちをどうにかしなければならない。

 

 

 

ガチャ

 

 

 

 出入り口である扉が開く。

其処から入ってきたのは、警部格一名・モーションブラー担架二台と付属の病院従属者4名。

 

 

「月村様、こちらにおられましたか。院長室まで同行を」

 

「一之瀬様とバニングス様は、こちらの担架に寝そべってください。

 拒否はできません」

 

 あ、やっべ。

 

 

「色々ありますがまずは皆さん、自身の用事を済ましてからにしましょう」

「一之瀬先生、またお会いしましょう」

「一之先、また病室で!」

「皆、また逢おうね」

「いったん解散だ」

 

 

 私達はそれぞれの担当者の指示に従った。

またこれに従った事により、後の面倒なことがすべて犯人が居ない事故として判断されいろんな責任から逃れられることになった。

 

特に病院の占拠と学園特区での誘拐が、リンクしていないながらも既に終身刑となっている者へ責任をなすりつけられた。

 

私とすれば解雇だろうという事を危惧していたが、まさかこんな解決されるとは全く思いもしなかった。

今後はもっと静かに、物事の解決をしていこうと思う。

 

 

 

――――週末の護衛の奴は後に説明するだけ。

 

 

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