電の日記帳《完結》   作:室賀小史郎

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ケッコンカッコカリ式

 

 電の日記帳を開き、ページを捲る暁達は早速最近あったビッグイベント『ケッコンカッコカリ式』の日の日記を読んでいた。

 

 しかし、そこに書かれていたのはーー

 

『幸せ過ぎてなんて書けばいいのか

 分からないのです(*>_<*)    』

 

 ーーとしか書いていなかった。

 

 これには暁達も一斉にズッコケたが、なんとも電らしいのでつい笑みがこぼれてしまう。

 

「嬉しかったのね……電」

「そうだろうね。幸せ過ぎて書けないほどなんだから」

 

 暁、響が優しい笑みを浮かべてその日記帳の文字を眺めていると、雷が口を開く。

 

「司令官の昇進式の次の日に鎮守府の大広間でやったのよね〜♪」

 

 その言葉に二人もうんうんと頷き、当時のことを思い起こすーー

 

 ーー

 ーーーー

 ーーーーーー

 

 ○○鎮守府、大広間、控室ーー

 

「はい、出来ましたよ」

「とってもお似合いよ、電ちゃん」

「とってもレディよ、電♪」

「おめでとう、電。姉として鼻が高いよ」

「素敵になったじゃない♪」

 

 控室で電にウェディングドレスを着せたのは鳳翔。化粧を施したのは扶桑。そしてその二人の手伝いをしていた暁、響、雷の三人。

 みんなから『鏡を見てご覧』と促され、姿見を見た電の第一声は、

 

「誰なのです?」

 

 だった。

 

 これには思わずみんなして吹き出してしまう。

 

 姿見に映っているのは紛れもない電本人。

 しかしいつもの電ではない。

 

 純白のウェディングドレスは上半身をタイトにしたオフショルダーのプリンセスラインに、スカートはヒップ部分を大きく膨らませたシルエットのバッスルライン。

 更に純白レースに花々の刺繍を施したハイネックのロングスリーブという全体的に大人っぽくエレガントな仕上がりになった。

 そして極めつけはいつもは髪留めで上げているバックを下ろし、頭にはシルバーのティアラを施したこと。

 

「お化粧はそんなに濃くしてはいないのだけどね、ふふっ♪」

「でも見違えるのも無理はありませんね♪」

 

 扶桑も鳳翔も呆気にとられる電を見てクスッと笑う。

 

「どう見ても電じゃない♪ とっても綺麗よ? どこからどう見てもレディよ?」

「レディかどうかはさておき、とても綺麗だってことは確かだね。おとぎ話のお姫様みたいだ」

「電本人がこの調子じゃ、司令官はもっとボケェっとしちゃうかもね〜」

 

 妹の晴れ姿に暁達もそれぞれ言葉をかける。

 すると電はやっと現実を見たのか、プルプルと小刻みに震え始めた。

 

「ど、どうしたんだい? まさかお花摘みに行きたくなったとか?」

「いや、響姉。それは無いわよ……きっとーー」

 

「本当に司令官さんとケッコンしちゃうのですぅ〜!////」

 

「ーー恥ずかしくなっただけよ」

 

 電は恥ずかしくていたたまれない気持ちになり、椅子に座ったまま顔を両手で覆ってしまう。

 最初は心配した暁達も『あ〜、これは電だわ〜』と思った。

 

 すると控室のドアがガチャっと開く音がした。

 そして、

 

「そろそろ呼ばれるそうだが、準備は出来たか?」

 

 ジャケットの丈が膝まであり、前も後ろもストレートラインのデザインになっているグレーのフロックコート姿の提督が現れる。

 これには電は勿論、暁達に加え鳳翔も思わずティンと来た。

 

 そこへ透かさず扶桑が「電ちゃんのドレス姿はどうですか?」と訊ねる。

 しかし提督は顔を伏せてしまった。

 一同が驚愕し、中でも電はショックで胸がズキッと痛むが、

 

「…………すまん。あまりにも素敵で、それ以外に言葉が出ない、のだ////」

 

 微かに頬を赤く染め、電から目を逸らして言った提督の言葉は電だけでなく、その場にいるLOVE勢にクリーンヒット。

 いつもは余裕がある提督がこれ程まで余裕を無くすのはみんなにとって初めてのことだから。

 

 すると大広間の方から妖精音楽隊によるパッヘルベルの『カノン』が聞こえてきた。

 

「あら、もう時間ですね。提督、電ちゃん、スタンバイしてください」

 

 扶桑は二人にそう促すと、二人は小さく頷き、共に大広間のドアの前へと向かった。

 

 

 大広間内ーー

 

『さぁ、皆さん、これより我が鎮守府で初となるケッコンカッコカリ式が始まります! 司会、進行はこの大淀が務めさせて頂きます!』

 

 大淀の挨拶にみんな拍手喝采。

 他のLOVE勢は自分達のケッコンカッコカリ式の予行演習的な感じに捉えており、どこか目がギラギラしている。

 

 

 大広間外、ドア前ーー

 

 大淀の説明が進む中、二人きりでドアの前で佇む提督と電。ただし、少し後方に暁達もいる(行進時に二人へ向けて投げる花を回収するため)。

 電は緊張でガチガチ。顔色も真っ青なうえ、ブーケを持つ手もじっとりと冷や汗がにじむ。

 

「……電」

「ひゃ、ひゃい!?////」

 

 ふと提督に名前を呼ばれ、返事をした電の声は裏返ってしまった。

 

「あっはっは、大分緊張しているようだな」

 

 電の反応に提督は豪快に笑う。そんな提督に電は「緊張しない方がおかしいんですぅ////」と言って、提督の手の甲をキュッと優しくひねった。電なりのほんの反撃である。

 

「だが、少し安心した」

 

 そう言ってホッとした表情を見せる提督。そんな提督に電が小首を傾げていると、提督は電と同じ視線になるようにしゃがみ、電をギュッと抱きしめた。

 

「し、司令官しゃん!?////」

「聞こえるだろう、私の鼓動が?」

「え?」

「……私も緊張しているんだよ」

 

 提督の言葉で電が耳をすませると、ドッドッドっと早い鼓動の音が聞こえる。

 

「大将への昇格式でもこうはならなかった……それだけ、このことは私にとっても特別なんだ」

「司令官さん……♡」

 

 電も初めて見る、提督の優しく、それでいてはにかんだような表情……その言葉に電の鼓動も早く、それでいて高鳴る。

 

 すると提督は電を自身の胸から少し離し、今度は電と目を合わせる。

 

「私のこの鼓動が止まるまで、電……君を愛することを誓おう。一緒に幸せになろう」

 

 提督のプロポーズの言葉。それは提督と電が結ばれて初めての言葉だった。

 

「はい♡ 電は司令官さんと幸せになります♡」

 

 そう言うと電は満面の笑みで提督の首に手を回し、自身の唇を提督の唇にチュッと重ねる。

 流石の提督も電の行動にビクッと肩を震わせたが、すぐに電を受け入れ、提督も電の腰に手を回し、電を優しく包み込むように互いの唇の感触を感じ合った。

 

 いきなり始まったキスシーンに後方にいる暁達は思わず息を呑む。

 そんな中、

 

『提督と電ちゃんのご入場で〜す♪』

 

 その言葉と同時に大広間のドアがバッと開いてしまう。

 

 それでも、

 

「ちゅっ♡」

「んっ……」

 

 当の本人達は既に誓いのキッスの真っ最中で周りなど眼中になかった。

 

 キスシーンであることにLOVE勢は勿論だが、他のみんなも大興奮。

 青葉はシャッターチャンスなのでシャッターボタンを連打しており、録画班の加古もカメラで二人をズームアップして大広間の大スクリーンにキスシーンを流している。

 

 最初からこのケッコンカッコカリ式で誓いのキスなんてものはシナリオに入ってなかったし、初っ端からリハーサルと大違い。

 

『お二方〜! 二人の世界を壊すようで大変申し訳ありませんが、段取り通りにお願いします〜!』

 

 大淀の叫びにも近い注意にやっと二人は二人だけの世界から戻ってきた。

 

「はわわわ〜、恥ずかしいよぅ////」

「た、確かに、これは何とも言えないな////」

 

 まさかみんなに見られているとは知らず、今になって顔を赤くする二人。

 

 そんな二人にみんなは「早く前に来い!」「二人だけでイチャイチャすんな〜!」「妬ましい!」と野次を飛ばし、二人はその野次の中を腕を組んではにかみながらゆっくりと行進していった。

 

 ーーーーーー

 ーーーー

 ーー

 

「それからはいつものパーティだったわよね♪」

「そうだね。加賀さんの熱唱と那珂さん達のステージライブ、あと金剛さん姉妹の『提督との絆』のプレゼント……どれも楽しかった」

「ブーケトスはある意味で戦争だったけどね……んで、ちゃっかり阿賀野さんが勝ち取ったっていう」

 

 回想を終え、暁と響は小さく笑い、雷は苦笑いを浮かべる。

 

「でも私も早くケッコンカッコカリ式したいわ♪ 私の時はステージでみんなの前で司令官と〜……ふへへ♡」

 

 一方で雷は自分がケッコンカッコカリ式をする時の妄想で顔が蕩けていた。

 そんな雷に触発されたのか、暁も響も脳内で自分のケッコンカッコカリ式の風景を思い浮かべ、ふひひと怪しい笑い声をもらすのだったーー。




ケッコンカッコカリ式の思ひ出ということで、書き上げました!

電ちゃんとキス……艦娘なら合法です!
なので憲兵は必要ありません!

読んで頂き本当にありがとうございました!
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