ダンジョンに衛宮親子の力をもらったものがいるのは間違っているのだろうか 作:all
「みんな!ダンジョン遠征ご苦労さん!今夜は宴や!」
ダンジョン遠征から帰った日の翌日。俺たちロキ・ファミリアはダンジョン遠征の打ち上げをするため、『豊穣の女主人』に来ている。
「思う存分飲めぇぇぇぇえええ!!」
『オオォォォーー!!!!』
主神ロキの音頭によって宴は始まり、各々が酒を飲み、料理に舌鼓をうち、会話を楽しむ。
そんな中、俺は五人用のテーブルで副団長のリヴェリア、エルフのレフィーヤ、アイズ、ベートと一緒に座っていた。
「アイズ、剣はどうだった?」
「5日はかかるって…。それまではこれを使うことになった」
「そうか、ちょっと見せてくれよ」
「いいよ。はい」
アイズから剣を渡される。俺はそれを受け取り、手で剣に触れる。
「
ふむ、構造を見たところ、不壊属性はついてないものの、かなりの業物だな。けど、アイズの剣技についていけるほどのものではないな。また壊してしまうだろう。そろそろあそこのじーさんにも悪いし、俺がデスペレートを投影してアイズが使った方がいいんじゃないか?
「ありがとう、アイズ」
「どうだった?」
「業物だけど、お前が使ったら折れるだろうな」
「…そうなんだ」
「なんなら、俺がデスペレートを投影してやろうか?」
「うん、あまり迷惑かけたくないし、壊したらお金もかかっちゃうからお願い」
「ん、OK」
やはり、アイズも常々その事については感じていたようだ。
ふと、周りを見渡す。店内にはロキ・ファミリアの団員で埋め尽くされていたが、カウンターの一席に白髪の少年が座っていた。あの時、ミノタウロスに襲われていた少年だ。一言、昨日の事を謝ろうと飲み物を持って席を立ち、少年の近くに行く。
「少年、隣失礼するぞ」
「えっ!?シ、シキ・タカミネ!?」
「俺のこと知ってるのか。まあ、それはいい。少し言いたいことがあってな」
少年は緊張しているのか、背筋を伸ばし、顔を強ばらせている。
「昨日は…」
「よっしゃあ!アイズ!そろそろ例のあの話、みんなに披露してやろうぜ!」
「あの話?」
俺が謝ろうとしていた所に、ベートの大声が店内に響いた。少年は目を大きく見開いてベート達の方を見ている。
「あれだって、帰る途中何匹か逃したミノタウロス、最後の一匹、シキとお前が5階層で始末したろ?そんでほら、そん時いたトマト野郎の!いかにも駆け出しのヒョロくせえガキが、逃げたミノタウロスに追い詰められてよお!」
ベートが言葉を発する度に、少年の顔は暗くなっていく。酔っているな、ベートのやつ。
「少年、気を悪くしないでくれ。少し酒が回っているみたいなんだ」
「……」
少年に俺の声は届いておらず、顔を俯かせて、唇をこれでもかというほどに噛み締めている。
「例えばだ!俺とあのトマト野郎、どっちを選ぶってんだよオイ!」
俺がどうしようかと悩んでいる間も、ベートの話は続く。
「雑魚じゃ釣り合わねぇんだ!アイズ・ヴァレンシュタインにはなぁ!」
この言葉を聞いた少年は、椅子から勢いよく立ち上がり、店の外へと走っていった。
「お、おい!少年!」
俺が呼び止めようと店の外に出ると、もう少年の姿は消えていた。level1にしては中々速いな。そんな場違いなことを思ってしまった。
「シキ、今のは…」
「ああ、あの時の少年だ。一言謝ろうとしたけど、ベートの話を聞いてショックを受けたのか、逃げちまった」
少年に気づいたのか、アイズも外に出てきて、俺に話しかける。
「まあ、またいつか謝れるだろ。そん時はアイズも一緒に行くか?」
「うん」
まあ、それにしても…
「ミアさんの店で食い逃げなんて、いい度胸だなぁ。あの少年」
「……うん」