ポケットモンスター紫   作:鯖風味鯵

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技11

 ハナダシティに到着。

 ピッピを一目見れなかったのは心残りだな。生「ゆびをふる」を拝見したかった。何が起きるかわからんけど。

 

 ともあれ、ハナダシティだ。ここは見所が多いぞ。

 

 まず、『おてんば人魚』ことカスミがリーダーを務めるハナダジム。

 カスミかぁ。やっぱ、可能なら勝負してみたいよな。スターミーに勝つ算段がまったくないけど。

 

 次に。ハナダシティ内にあると言えないかもだが、ポケモンマニア「マサキ」の家。ゲームプレイヤーなら誰もがお世話になったであろう、ポケモン預かりシステムの開発者である。

 こいつ、本当にポケモンに変わってしまうのだろうか。元人間として、どういった経緯でそうなるのか、とても興味深い。

 

 で、忘れてはいけないのが、アレだ。

 

 

 ゴールデンボールブリッジ。

 

 

 

 ゴールデン  ボール  ブリッジ  !!!

 

 

 

 二回言った。

 いや、改めて思うけどすっげぇネーミングセンス。脱帽。

 

 この橋では、連続でポケモン勝負を挑んでくるトレーナー達が有名だ。

 まあ俺はトレーナーじゃないし、勝負を吹っかけられることもなく橋を渡れると思うが。

 「きんのたま」? 煮ても焼いても食えないアイテムなんぞいらん。ポケモンに金はいらない。玉は、ご想像にお任せしよう。俺は子供たちの夢を守る。

 

 

 下ネタはこのくらいでいいとして。

 

 ハナダシティの名所。最後の一つは、やはりハナダの洞窟だろう。

 

 

 

 …行かねぇよ??

 

 

 

 行くわけないじゃん。アホみたいな高レベル個体がわんさか出てくる魔境だぞ。わざわざ自分から地獄に突入する事もなかろう。

 

 いずれは、行ってみたいけどな。修行場所としては、これ以上に適当なダンジョンはあるまい。シロガネ山より簡単に入り込めそうだしな。

 

 てか、いるのかなミュウツー。あいつって今どういう状況にあるんだろう。

 俺ってミュウツーほどじゃないが、かなり特殊な境遇に居るよな。けっこうシンパシー的なものを感じなくね? もしかしたら仲良くできるかも。

 

 いや待て。ポケモン図鑑の説明だと、どのシリーズでもおっかない記述しかなかったぞ。アニメのミュウツーが理性的すぎるのかね。

 つーか、そんなポケモンがエスパータイプなのが一番の問題だよ。

 毒タイプ不利じゃねえか。タイプ一致の「サイコキネシス」なんか喰らってみろ。木端微塵になって汚ねぇ花火になるわ。

 

 

 よし決めた。ミュウツーなんか、俺知らない。世界に一匹しかいないポケモンだし、遭遇する事もまずないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゴールデンブリッジ、何てことない橋だったな。バトルもイベントも無かった。

 

 五人組のトレーナーがいたが、みんな俺をチラ見するだけで絡まれもしなかった。「あのニドラン、一匹で何してんだ?」「散歩中じゃない?」てな具合だ。

 

 一人、橋の終点で突っ立ってる男だけは、品定めするかの様な熱い視線をくれたが。

 この男、ゲーム通りならロケット団だな。目つきがやばい。利用価値があるか無いか、それだけしか考えてない目だ。

 

 無視して通り過ぎようとしたが、こちらに向かってモンスターボールを振りかぶろうとしたので「にどげり」をかます。危ねぇぇ、手に持ってるのハイパーボールだぞこいつ!

 

 騒ぎになる前に退散! ポケモンを出す気だったのか捕獲目的なのか謎なままだが、嫌な予感がしたから蹴らせてもらったぜ。

 

 ただのトレーナーだったかもしれんが、まあいいだろ。ポケモンにだって、トレーナーを選ぶ権利くらいある。

 

 

 

 さて、マサキの家だ。

 

 玄関をノックしてみたが、反応がない。留守か?

 

 或いは、いるけど出られないってか。技術者ってのは集中すると意識が隔絶されるっていうイメージがあるし、今がまさにその状態なのかもしれん。

 

 じゃあ邪魔しちゃ悪いか。でも、せっかく金玉橋越えてまで会いに来たのに、このまま引き返すってのもな。

 

 だからと言って、下手に騒いで集中力を切らせてしまうのもどうか。何てったって、あの預かりシステムを開発したマサキだ。俺が騒いだおかげで何らかの研究がぽしゃりましたなんて事になったら、全国のポケモントレーナーに顔向けできない。考えすぎかもしれんけど。

 

 ちょっと、中の様子だけ窺ってみるか。こんな時に役立つのがニドランの聴覚。壁に寄り添って室内の物音を探る。

 

 どれどれ。…おん、何やら叫び声が聞こえる。

 

 

 誤作動。ポケモンと繋がって。あかん助けて。どないすりゃええねん。 …ほうほうなるほどね。

 

 

 そうか、災難は既に起きていたのか。頑張れよマサキ。

 

 

 前足で十字を切り、マサキ邸を後にした。

 

 

 助けないのかって? 馬鹿言っちゃいけない。

 

 俺だってそこまで人でなしじゃない。一瞬、助けに行くかと思ったよ。でも踏み止まった。

 

 今の俺は、ポケモンだ。

 

 人間なら苦も無く出来る事が、ポケモンの体だと難しくなったりする。

 例えば、そう。機械のボタンをポチッと押すだけの作業とかね。

 

 俺の前足は、足であって手ではないのだ。

 精密な動きが可能な「指」というモノがない。隣のボタンを誤って押して、さらにカオスな事態を引き起こす、何て事をやらかしそうで怖い。

 マサキの体がチビクロで不定形グループなバターみたいになっちゃうかも。そうなってからでは遅いのだ。

 

 うむ。やはり薄情かもしれんが、新たなメシアの到来を待ってくれたまえマサキよ。面倒だっていう理由も少なからずあるけどね。

 

 

 でも、ポケモンと繋がってしまったってのは、本当に興味あったんだがなぁ。

 

 ブルーな気分はごめんだからあまり考えてなかったが、人間の俺に戻りたいって気持ちはやっぱある。日に日に薄れていくが。

 

 マサキの研究がどんなものか理解できんだろうが、それでも人間に戻れるヒントか何かが得られるかと思ったんだが…。

 

 

 あ? でも、マサキ事件ってポケモンと人間がくっついたのであって、人間が丸々ポケモンになった訳じゃないよな。

 

 人間の体とポケモンの体。両方が失われずに残っていたから元に戻れた。

 

 じゃあ、人間の体が無い俺は、同じやり方では戻れない。そうだよな、そりゃそうだ。なんだよ考えてみりゃあ当たり前のことじゃねえか。元からあまり期待してなかったけど。

 

 

 ま、仮にここで俺が助けたら、次に訪問するかもしれない主人公(いるかどうかは分らない)が豪華客船のチケット貰えずに困るかもしれないしな。

 

 すまんが、マサキにはしばらく耐えてもらおう。

 な~に、ポケモンの姿ってのも、慣れるとけっこう面白いぜ? 

 

 用を足すのが、ちと屈辱だがな。

 

 

 

 




人間に戻る気はあった主人公。ですが、あまり拘ってないようです

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