ポケットモンスター紫   作:鯖風味鯵

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お話が進みません。表現したいことの取捨選択をまじめにしないからです。
鯖風味の表現力不足、構成力不足はこのあたりから顕著になると思われます。全てをどうにかするのは無理っぽいので、お見苦しくなるかもですが、よければこれからもお付き合いください。


技21

 

 ポケモンハウスに拾われて二日経つ。穏やかな日差しが降り注ぐ中、数匹のポケモンがじゃれ合っている。

 

 コラッタ、ポッポ、コダック、ロコン、カラカラ。ハウスに保護された哀れな被害者達である。

 

 庭で楽しそうに追いかけっこしてる彼等だが、かつては人間に捨てられたり痛めつけられたりと散々な目に合っていたらしい。それなのに、ここにいれば相棒のトレーナーが迎えに来てくれると信じて疑わないのだ。

 

 

 まったく、なんて無垢な心の持ち主なんだろうか。やれやれ、世も末だねぇ。見ちゃいらんねぇぜ。

 

 

 ポケモンを解放しろ、だとかのたまう悪役団体が出たシリーズを遊んだのが最後だったが、今ならその思想にも賛同しちゃいそうだ。

 

 そりゃ全てのポケモンが人と関わって不幸になるとは言わんが、それってつまり間違いなく不幸になってる奴もいるってこったよ。永久に解決しない問題だろうが、何とかならんか、とは思うわけよやっぱりね。

 

 

 思うだけで行動に移すこたぁないがな。だからこそ、ハウスで頑張ってる三人にはガチでリスペクトだよ。

 

 

 俺の隣でポケモン達の戯れをぼうっと見つめてるストライクの兄ちゃんも、そんな人間の毒牙にかかった一匹だ。

 

 何度か会話を挟んで打ち解けてきたと判断したので、親交を深めるためにもバトルしてみないかと誘ってみる。したら、いつものクールなイケメン顔を一瞬で曇らせて断られてしまった。

 

 

 もう、バトルはいい。戦いたくない。

 

 

 そう答える彼の顔がとても印象に残る。顔は仮面のようなのに、目はあふれ出る感情を隠そうともしない。

 

 ぽつりぽつりと語ってくれたが、なかなか重い話だった。

 

 なんでも、以前はダチのカイロス、ヘラクロスと共にブイブイ言わせてたやんちゃボーイズだったとか。

 それがある日、黒い恰好した人間の軍団にゲットされて生活が一変。来る日も来る日も、ろくな治療も受けられずにある『恐ろしいポケモン』とのバトルを強制させられていたのだ、と。

 

 見た事もない恐ろしいポケモンが何匹も、と鎌を震わせて言う。そいつらとの連日バトルのせいで、なんとカイロスとヘラクロスはお亡くなりになってしまったのだ。

 他の連れてこられたポケモンもどんどん倒れていく。自分の自慢の鎌もボロボロになり絶望していたが、人間共の一瞬の隙をついてなんとか逃げ出してきたんだと、という事らしい。

 

 なんとも胸糞悪い話だ。ひでえことしやがる。鬼畜の所業とはこの事だぜ。

 

 情報が少なすぎて決めつけに近いが、まずロケット団の仕業に間違いあるまい。マジで何の証拠もないが、他にそれっぽい事をやらかす連中がカントーにはおらんだろう。悪事ばっかしてっからこういう時に疑われるのだ。

 

 そして気になるのは、見た事もない『恐ろしいポケモン』という存在。

 

 なんだ、ナニモノだ?

 

 別の地方のポケモンとか、か?

 

 ストライクに訊こうにも、その存在が完全なトラウマとなってるだろうから必要以上に刺激してやりたくはない。ううむ。

 

 凶暴なポケモンなんざごろごろいやがるから、こればっかりは特定は無理だな。確実なのは、間違いなく強力なポケモンである、ということだ。

 

 恐ろしくて、強力で、ロケット団と関わりのある奴。

 

 

 もしかして、ミュウツー? 

 

 

 あまりに突拍子も無いが、アニメじゃサカキに唆されて悪事に加担してたしな。

 戦闘訓練のために、大勢の野生ポケモンが捕獲されて奴と戦わされている、なんて?

 

 しかし、ストライクは「何匹も」とも語ってくれた。

 

 まさかミュウツーが複数匹? あり得ないが、あり得なくもない。あり得てほしくないんだが。

 世界に一匹しかいない、なんて設定もあるが、んなもん人間の悪意が絡めばぶっちゃけどうとでもなる。だってミュウツーってミュウの子供をいじくりまわして生まれたポケモン、だったかな? あまり覚えてないが。そうだとしたら、ミュウが子だくさんだったなら何匹かいたっておかしくはないのだ。

 アニメの出自みたく、ミュウの子供ではなくクローンだとしたら? ミュウから得られた細胞の量によっては、複数生成も可能だろう。どっちにしろとんでもないが。

 

 ダメだな、全てが推測にすぎない。そも、ロケット団の仕業だと確定してるわけでもないんだし結論を出すには至らない。俺の中ではロケット団が完全に黒だけどな。

 

 しっかし我ながらとんでもな発想だな。ミュウツーのバーゲンセールとかゾッとするぜ。そんなのはオンライン対戦だけにしてくれよ。

 

 なあストライクさんよ。本当に、本当に悪いが少しだけ教えてくれ。その恐ろしいポケモン達ってのは、みんな同じ姿だったりするのかね? エスパー技とか使ってくるポケモンはいなかったか?

 

 あん? はっきりしない? そりゃどういう・・・。

 

 

 「奴らは全身に防具のようなものをつけてたからな。エスパー技を使ってくる奴もいたかもしれない。確かなのは、翼のあるポケモンもいて・・・」

 

 

 ここまで話してストライクは顔をよろしくない色に変えはじめたので、会話を中断せざるをえなかった。すまんね、嫌なこと思い出させて。ありがとうよ。

 

 

 

 翼、翼か。飛行タイプって事か? 少なくとも一匹は空を飛べる奴なんだな。

 

 そしてエスパー技ね。

 

 つーか防具って何よ。拘束具? 奴らって言ってたから、全員が身に着けてたのか?

 

 それによって操られていたとか・・・。あぁんわからん!

 

 

 これ以上は考えてもしかたないな。やめやめ。

 

 

 が、やはりミュウツーの存在は気がかりだ。

 やっこさんが複数存在する、なんてのは俺の妄想だが、悪事に利用されてる可能性はゼロではない。悪の組織と最強のポケモン、組合せとしちゃ最高にベターだ。杞憂だといいんだが。

 

 そこらへんどうなの? いずれ問いただしてみるかな。地面に「ミュウツー」とでも書けば教えてくれるだろうか。なあフジの爺さんよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、唐突だが。

 

 

 このまま食っちゃねしてるだけでは最低の居候ニートの完成である。

 

 なので、ハウスの手伝いも合間を見つけてこなすようにする。

 

 世の中には、真っ当に働いて人様の役にたっているポケモンが大勢いるからな。ポケモンだからって働かない理由にはならないのだ。人の良心に付け込んだ生活してるからっていう負い目も、もちろんあるが・・・。

 

 

 とりあえず体力仕事は積極的に請け負う。庭の草抜き、荷物の持ち運び、保護ポケモン達のリハビリバトルの相手等々。

 んが。いつまでもハウスでの生活に甘える気はない。タイミングを見計らってバイバイするつもりだ。

 

 だがその前に、どうしてもやらせてほしい事がある。「シャドークロー」の習得? 後回しになったから違うんだな。

 

 

 

 

 それは・・・特訓だよ!

 

 

 

 

 ポケモンハウスを拠点に、走り込みや技の熟練度アップなどのトレーニングを徹底的にこなす。

 

 トキワの森以降、体を苛め抜く機会がなかったからちょうどいいぜ。今の自分がどのくらい動けるのかを知り、覚えた大量の新技を完全なモノにする。

 

 安心安全、衣食揃った優良物件に身を置いてるからこそ出来るのだから、利用させてもらわな損ってもんだ。ついでに進化できればウハウハである。

 

 完全にポケモンハウスに依存したプランだ。我ながらクソだな。

 

 

 早速、次の日からトレーニングを開始した。

 

 

 シオンタウン周辺の森、水辺、イワヤマトンネル付近の悪路などを走る走る走る。

 限界まで走り込み、もう体が動かない死んじゃう~てな次元に達してもさらに運動を続ける。

 

 そう、これよこれ。肉体が動くかどうかの瀬戸際の感覚。自分の限界を攻め、さらにその先に踏み込む。

 

 もう動けない、体力がないなどと、真剣勝負のバトルでは言い訳にならない。勝つためには、例え体力がなくなっても動き続け、意識朦朧になっても正確に攻撃を当てなきゃならん。ベストコンディションで戦えりゃそれでいいが、突発的な野生とのバトルではそれも難しいのだ。逃げるにせよ戦うにせよ、やはりまずは体力、体力だ。

 

 

 相手が良識的なトレーナーなら、こちらが動けなくなったら攻撃の手を止めてくれるだろう。

 

 が、ロケット団や一部の凶暴な野生ポケモンはそうもいかない。奴らは、ルール無用で痛めつけてくる。野良バトルにジャッジなんざ必要ないのだ。安全にやり過ごすには、逃げるか勝つしかない。

 

 ・・・今までの生活で再認識した事だ。トキワの森での発想は真実であり、体を鍛えてなんぼの世界ってこった。

 やっぱ厳しいぜ、ポケモン。バトルが日常化されてんだから、おっかなくて当たり前だ。

 

 

 

 一日中走り回った。途中、野生のポケモンから売られたバトルを何度か買う。戦いの最中、ちょっとした隙に小休止を挟んだりしてエネルギーのやりくりを鍛えるのだ。連続でのバトルや長期戦では重要なことである。

 

 へとへとのボロ雑巾になってポケモンハウスに帰還。そんな俺の様子を見たブリーダーちゃんがワーキャー騒いでるが、欲しいのは悲鳴じゃない。エサを強請る。大量の飯をかっ食らい、軽く運動して膨れた腹を絞り、就寝。

 

 

 翌日。起きて食事をし、ハウスのお手伝いをしてからまた走り込む。バトルする。変な効率化を避けるため、走るルートを少し変える。

 

 帰ったら飯を食って寝る。泥のように寝る。

 

 で、翌朝起きる。また飯を食う、お手伝い、走る、戦う、寝る。

 

 

 このサイクルを繰り返した。ひゃあ、なんだか楽しくなってきたぜぇぇぇ!

 

 

 




一応、保護ポケモンそれぞれの嫌な思い出エピソードも設定してあるんですが、必要ないと判断して載せてません。
 

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