ポケットモンスター紫   作:鯖風味鯵

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相変わらずの鈍亀更新です。皆さんの感想は全て読ませていただいてます。ですが、返事を返すことはもうないかもしれません。お許しください。


ニドランがいない剣盾をややテンション下がり気味に遊んでましたが、追加DLの情報をみて発狂。アニメでミュウに煽られていただけかよと愚痴っていただけに、嬉しさも一押しです。


技23

 

 落ち着け。そんでもって決断即実行だ。

 

 

 裏切り! 俺は悪の手先にゃならねえよ!

 

 

 サカキの手にあるボールへ「どくづき」。驚いた様子で狼狽えるサカキを尻目に落ちたボールを咥えて距離をとり、赤帽子少年の横へ移動する。

 

 おおう、よく見ればこのデザインってハイパーボールじゃねえか? なかなかの優良物件だが、残念。大家が悪党じゃ、LDK揃ってても住みたいとは思わねえな。

 

 

 「手持ちに反抗されるとは。昔を思い出す」

 

 

 ポケモンには好かれる質なのだがな。呟き、腕を抑えて苦笑するマフィアのドン。毒針がかすったらしいな。ざまあねえぜ。

 

 

 「戻ってこい。お前には最強になれる素質がある!」

 

 

 横のピカチュウが何とも言えない表情で見てくるのを無視していたら、サカキ様が熱いアプローチをぶっ込んできた。聞く耳持たぬと言いたいとこだが、一応今の俺のマスター(?)でもあるのでほんの少しだけご清聴。

 

 

 お前の事は評価しているだの、あらゆる能力データが一般のニドランを遥かに凌駕しているだの、いろいろと褒めちぎってくる。能力データ? 眠っている間に色々と調べられたようだ。

 

 

 一流のトレーナーでもあるサカキにそう言われるのは悪い気がしない。

 

 

 だが、うん。やっぱないな。ごめん聞くだけ無駄だったわ。

 

 

 「サカキ」というキャラクターは、ポケットモンスターの登場人物の中では個人的にかなり好きな部類だ。こんな状況じゃなけりゃ素直に尻尾を振っていたかもしれんし、この世界に来た直後にサカキに拾われていれば、特に何の抵抗もなく下っていたのかもしれない。お気に入りのキャラに煽てられちゃ、そりゃ良い気分になるってもんよ。

 

 

 が、それはそれだ。俺は既にロケット団の悪行をこの目で見てしまった。紛う方なきリアルな悪人であるサカキに、俺が靡くことはない。

 

 

 俺が好きなのはサカキというゲームキャラなんだよな。目の前のこいつはただのポマード臭い悪党である。

 

 

 自信満々で「戻ってこい」と促す御主人様。捕獲されたポケモンは基本的に従順になるから、適当によいしょしてやれば従ってくれるとでも思っているのだろう。

 

 

 悪いな。そうはいかねえんだ。

 

 

 純粋なポケモンならどうだったかわからんが、お生憎様。こちとら人とポケモンの交じりモノである。雑種は悪の大ボスに似合わねえぜ。

 

 

 咥えたボールを落とし、前脚を乗せる。一つ間を置いた後、見せつけるようにハイパーボールを踏み壊した。

 

 

 ははは、俺の帰るボールはもう無いってか。感動もなにもありゃしない。

 

 

 つーか罪悪感っ。ボール壊す時の躊躇いがパねぇ!!

 

 

 なんだこれ。愛着ある我が家に重機ぶちかましてるというか、大事な宝物を自らスクラップに変えちまったかのような悲壮感と後味の悪さ!

 

 

 モンスターボールって、ほんとポケモンの本能を上手く突いた商品なんだな。知らぬ間に捕獲された俺でもここまで精神を揺さぶられるもんなのかよ。こりゃ、よっぽどのへそ曲がりでもないかぎりトレーナーに懐いちゃうのも納得ってもんだ。魔性のアイテムやでぇ。

 

 

 真顔でこちらを見つめる元御主人さま。睨み返す俺。

 

 

 「何だこの展開」と困惑する少年とピカチュウ。すまんね、ちょっと置いてけぼり感あったねごめんね。てかさっきの間にサカキにダイレクトアタックしてもよかったってのに、お行儀のいい坊やだな。

 

 

 ま、そういうことだ。お前さん方は気に食わんかもしれんが、ここは共同戦線といこうぜ?

 

 

 このまま逃げてもいいんだが、こちとら世話になったポケモンハウスを襲撃され、さらに雑に捕獲されてお冠である。一度正面から叩きのめしておきたい。

 

 

 まず少年を見る。赤帽子が似合う、顔面無表情常時固定化エンチャントされてそうな小僧。が、俺と目が合うと優しそうに微笑んでくれた。ポケモン垂らしな顔してやがる。

 

 

 お次にピカチュウ。嫌っそうに唾を吐いていた。え??

 

 

 

 「気に入った。やはりお前は私の下へ来るべきだ」

 

 

 

 ニヤリと笑って言い放つサカキ。直後に投げられたのは、新たなモンスターボール。

 

 

 繰り出されたのは、一匹のポケモン。

 

 

 ドサイドンだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はへ~。巨体を見上げる。まさに山の如し。それでいて、強者特有の圧がビシバシ伝わってくる。

 

 

 冷静に、戦力分析。「ステータス」ではなく、今までの戦闘経験によって培った洞察力によるものだが。

 

 

 

 

 やっべ。これ無理だわ。

 

 

 

 

 ドサイドンが、こちらを見下ろす。威風堂々たる佇まいだ。たった三匹の蟻が恐竜に睨まれ竦んでいる。

 

 

 勝てん。でもやるしかない。分かっちゃいるがなぁ。分かっちゃいるけど、ううん。

 

 

 俺が今まで見てきたポケモンの中での最強面子と言えば、当然ジムリーダーのエース達だ。イワ―ク、スターミー、マスター・フーディン、ライチュウ。鍛えに鍛えまくった今の俺でも、彼らに勝てるかどうかは分からない。

 

 

 が。このドサイドンは、違う。そういう次元じゃない。

 

 

 絶対に勝てない。俺とピカチュウが組んでも無理。何なら少年の手持ち全員を一気にぶつけたとしても、簡単に蹴散らされるだろう。というか先に挙げたエース達を総動員したとしてもどうなるか怪しい。

 

 

 完全に、格が違う。根性論でどうにかなるもんじゃない。

 

 

 デカブツを気にしつつ、少年の顔を横目で窺う。恐怖というより、驚きが強い表情をしている。

 

 

 ピカチュウは、と。全身の毛が逆立っている。明らかに気圧されている。あ、目が合った。

 

 

 

 

 どう思うあれ? 反則じゃね?? つーかお前のメインウェポンであろう電気技、効かねえぞ?

 

 

 え、マジ? 「でんじは」も?

 

 

 マジマジ。「アイアンテール」とか覚えてねえの?

 

 

 いやそれはまだ練習中で。イワ―ク相手に一度成功したっきりでよ。

 

 

 

 

 ……。これは本当にまずいぞ。

 

 

 

 

 「お前は後だ。まずは、レッドといったか。君が先約だったな」

 

 

 何がやねん、と視線を向けると同時に、サカキが指をパチンと鳴らした。

 

 

 何の合図だ? 下っ端の増援でも呼んだか? 

 

 

 ドサイドンに気を取られていたためか、周囲の警戒が疎かになっていた。突然、斜め後ろから一撃をもらう。何かに突進されたようだ。いやいやこれはしょうがないでしょあのドサイドン相手にしながら他に注意しろとか無理ゲ―もいいとこだよ。

 

 

 はっとした少年の叫びが聞こえる。俺に一撃くれた輩は、さらに勢いを増して加速。少年達と引き離された。お互い揉み合いに近い形で転がり、周囲の物体と騒音を巻き込みながら隣の部屋まで押し出されてしまった。

 

 

 ええい邪魔じゃい! やたらと角ばった感触の不届き者を押しのけようとしたら、目がチカチカする独特な色合いの光線で抵抗されてさらに吹き飛ばされた。これって「サイケこうせん」じゃねえか?! 痛いっつーの。

 

 

 

 「性能テストと躾も兼ねた良い機会だ。適度に痛めつけてやれ」

 

 

 

 サカキの声。自動ドアか何かが閉じる音がする。

 

 

 頭を振って正面を見れば、閉じられたドアの前に陣取るずんぐりむっくりな物体を捉える。

 

 

 赤と青のカラーリングが特徴的な、箱のようなポケモン。

 

 

 おお、こりゃ間違いねえ。

 

 

 俺も、お前を手に入れようと躍起になってコインを集めていた時期があったぜ。

 

 

 世界初の人工ポケモンとされている、ポリゴン。お会いできて光栄だ。是非ともサインの一つでもと頼みたい所だが、ちょいとタイミングが悪い。今は急ぎの用事があるのだ。

 

 

 そこをどいてくれないか?

 

 

 尋ねてみる。まあ、当たり前だが無反応だわな。知ってた。

 

 

 「あなをほる」。堅い床だがなんとかいけんじゃね? ポリゴンの下を素通りして少年達の所へ戻ろうとしたら、奴めとんでもない行動に出やがった。

 

 

 轟音、振動、衝撃。ぐえええ全身がいてえええ。

 

 

 あの野郎無茶苦茶しやがる!! 床に潜ろうとした俺目掛けて「はかいこうせん」をぶっぱなしやがった! 粉々になった床ごと宙に放り出されたわ!

 

 

 だが「はかいこうせん」は絶大な威力を持つが故に、撃ったら行動に支障がでるというデメリットがある。その隙を突けば奴を無視して少年と合流できるか? 着地と同時に駆け抜けてやればいけるか。

 

 

 が、そうは問屋が卸さぬってか。背後から二体目のポリゴンが現れた。俺の尻目掛けて「サイケこうせん」が襲い掛かる。間一髪回避。

 

 

 二体のポリゴンに挟まれる形だ。どうも、ちょっくら相手をしなきゃならんらしい。

 

 

 面倒だが、やるしかないか。というか、無視したとしても、俺を追いかけてきてそのままサカキのドサイドンと合流されたら万に一つの勝ち目もなくなっちまう。

 

 

 こいつらはここでダウンさせなきゃならん。腹を括りますか。

 

 

 

 

 

 




駆け足展開、だと思っています尚個人差。
更新頻度がおっそいので、その分物語は進めていきたい。

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