ポケットモンスター紫   作:鯖風味鯵

3 / 24
技3

 

 弱肉強食。ポケモン世界でも、それは変わらんね。

 

 

 生きる、と決めてから数日たった。いろいろ新発見やら予想通りやらで忙しい。

 

 生きるために必要なのは食い物だ。これについては特に問題なかった。

 その辺の草を食えたし、果物や木の実なんかもいける。毒タイプだからか、多少やばそうな見た目の木の実もがつがつ食えた。

 毒タイプ、いいな。なんというか、逞しい。サバイバルするにあたって、かなりの強みだぞこれは。

 

 

 小川を見つけたから水問題も解決。地面で寝る事にも抵抗がない。生きるだけなら簡単楽ちん、お茶の子さいさい屁の河童だ。

 

 

 うん、生きるだけならね。

 

 

 弱肉強食。くどいようだが、自然界ではやはり真理である。

 見ちまったんだよ。

 ピジョンがキャタピーを連れ去っていくのを。こう、死角からブァサーッて。

 

 

 あのキャタピー、やっぱりそういう目的で襲われたんだよな。うんいや、字面だとなんか破廉恥に見えるが。つまり、食糧としてお持ち帰り。

 ああああ、はややああああああ。かなりキタなあれは。そうだよポケモン図鑑にもそんな事ちらほら記されてあったよな。これが現実なのかよ。

 アニメは夢を壊さないよう配慮していたのか。うわあポケモン恐い。キュートな外見のくせして立派に野生動物だ。ポケモン恐怖症になりそう。

 ハアアッ!? そういや俺もポケモンかっ。いや自分は恐くないな。

 

 

 とにかく、そういうことよ。弱いやつは捕食される。

 幸い俺は毒タイプ。標的にされるってこたあ、なかなかないだろう。だが過信は出来ん。毒でもなんでも食っちまう偏食暴食家だっているだろな。ベロリンガとかマルノームとか。こわっ。

 

 

 食うのが目的じゃなくたって、危険がないとは限らん。強いやつってのは、存在そのものが脅威だ。オコリザルみたいな暴れん坊なら近づかなきゃそれでいいが、バンギラスとかだと回避はかなり難しい。

 

 何でそこでバンギラスかって?

 

 やっこさん、山一つが私有地なんだぜ。もし、気づかず迷い込みでもしたら…ひょおおお!

 

 

 嫌な想像は三角コーナーにポイだ。

 

 はああ、ポケモンはみんな優しいって、そんな風に考えてた時期が俺にもありました。いや捕食は必要なことだからしょうがないんだけども。

 逃げて隠れて、こそこそ食べて。そんな生き方なら、毒タイプってこともあって何とか生きていけるだろうよ。

 

 つまらん。つまらん! そんなのはつまらんぞ! 認めんぞ俺は。

 

 やはり早急に体力をつけるべきだな。そして特訓、レベルアップだ。今はまだニドランだが、進化してニドリーノになればそこそこ自由に生きれるはず。

 

 

 よし、食うぞ。とにかく食って、でかい体を手に入れる! 

 手始めに、眼前の林檎(と思われるものが実ってる)の木だ。

 あ゛あ゛あ゛、木登りうまく出来ないぃぃ。くそが、気合だ! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 林檎は食い尽した。

 そして、俺の特性も分かった。

 どくのとげ だ。接触されると一定確率で相手を毒状態にするやつ。

 

 いやね、林檎を貪ってたら、マンキーに襲われたんすよ。

 うわやべえってなもんで、頭抱えて守りに入ったら「はたく」を喰らった。相手もレベル低かったのか、大して痛くなかったのが幸いだった。

 

 で、豚猿野郎は(メスだったかもしれんが)ステップ踏んで「オラオラかかってこんかい!」と息巻いていたが、途端に顔をサーっと青くしてふらふらしはじめたのだ。そのまま青から紫に変色しはじめたのでちょっと心配したんだが、直後に鳴き声をあげながら逃げてしまった。慌ただしいなおい。

 

 

 少しの間ぼけっとしてしまったが、ピンときた。奴め、俺の特性で毒を喰らったのだ。ザマァ。

 

 思わぬ形で特性が判明したな。にしても、毒の棘か。どうなんだろうか。

 

 ニドラン、いや将来的にニドキングの特性だが、選択肢は三つある。

 

 「どくのとげ」「とうそうしん」「ちからずく」だ。

 

 どくのとげ はさっき説明したとおり。

 とうそうしん は、同性へのダメージ補正が1.25倍、異性なら0.75倍になる。

 で、夢特性である ちからずく は、技の追加効果がなくなるかわりにダメージ補正1.30倍なるという代物だ。

 

 うーん。こうしてみると、リアルで生きてくんなら どくのとげ が一番安定してるな。ちからずく も強いが追加効果がなくなるってのは後々痛い目を見そうである。とうそうしん なぞ論外だ。バトルの相手が性格最悪のメスだったらどうすんだ。

 

 でもなあ、どくのとげ、か。

 特性のオンオフって可能なのかね? 機会あって他のポケモンに触れることもあるだろうに、意図せず毒状態にしちゃいましたとか気分悪いぞ。誰だよ どくのとげ が一番安定してるとかいったの。

 

 

 そういや、さっきのマンキーって倒したことにならんのかね。経験値が…ないだろなあ。自爆だもんなあれ。俺も、バトルする時には相手の特性に注意しとかないとな。

 

 

 うーし食ったから寝るか。林檎の木の根元をちょいっと掘れば、寝床の完成である。

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝。

 穴から這い出てこんにちは。毒兎だよ。

 

 穴の中で丸まっている時に自覚したが、体が強くなってた。

 どうやらあのマンキー、ちゃんとバトルで倒したことになってるらしい。マジか。

 倒したってかバトルしたってか、追い払ったが一番正しい…のかな?

 

 まあいい。すこーし強くなった事に変わりなし。心なしか目線も高くなったような。うっそ信じらんねえ成長速度! ポケモンすげえな。

 

 興奮しながらバカ犬みたいにその場でグルグル回ってたら、またしても野生のポケモンに喧嘩を売られた。

 

 ビードルである。

 うあー虫かよ。つーかビードルって毒もってたよな。

 毒タイプのニドランが毒を恐れるこたぁないか。が、「いとをはく」には要注意かね。生理的にも虫の糸なんざ受けたくない。

 

 逃げるという選択はない。

 それに、なんだか負ける気がしないんだよ。

 タイプ相性的に泥仕合になるかもだが、それなら気迫で勝れば負けはないだろう。昨日までの俺なら逃げもありだが、今の俺ならやれそうだ。それに、勝てればレベルも上がるかもしれん。

 

 人生、いやポケ生初バトルか。相手も毒針振り回して闘志むき出し。

  

 さて、いっちょやったるかね。

 

 

 

 

 

 勝った。

 

 苦戦っつうような苦戦もなかった。拍子抜けだ。ガチで泥仕合を覚悟してたんだが。

 

 「いとをはく」は頭を上げる予備動作で見切れるし、ならばと頭を下げたら「どくばり」による突貫なのでこれも対応。

 空いた横腹に二度「つつく」。これで勝ち。楽勝だった。

 

 そう、「つつく」があったのである。威力が低いとはいえ、効果抜群の飛行技。しかも低レベル時の戦闘での弱点特効。もたぬわい。

 

 

 しっかし普通に使えたな、技。

 なんか、『技!!!』って思い浮かべたら、ポンと脳内に使える技リストが浮かんだのである。あとは本能に従って技を使うだけ。正直、技が使えなかったら単純な取っ組み合いをやらかすつもりだったよ。

 

 

 ちなみに、現在俺が使える技だが

 

 「にらみつける」

 「つつく」

 「きあいだめ」

 「にどげり」

 

 もう四つ覚えてたんだよなあ! 

 

 というか「にどげり」て。たしかレベル9は必要だった気が。どうなんこれ。どうなってんのよ。

 異常事態だ。バトルなんて、マンキー戦を加えても二回だぞ。原因はなんだ。元から俺はレベルがそれなりにあった? それとも、やはりマンキーか。あいつの経験値か?

 

 マンキー、実はかなり強かったのかね。ビードルは弱かったし、それしかありえないか。

 

 

 ま、いいか。技が多いに越したことはない。

 「にどげり」はかなり有用だ。硬い敵にもバツギュンの かくとうタイプ技。硬すぎる相手なら逃げるしかないけど。

 

 レベルも上がってるみたいだし、これは早速特訓もありだな。アニメのように、特訓による技の習得も試してみたいしな。

  

 そうとくりゃ今日からやったるぜ。「たいむ いず まねー」だ!

 

 

 

 

 




主人公はふしぎなアメを気づかず拾い食いしましたが、にしたってこの成長速度は異常です。マンキーも、レベルは3くらいです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。