ポケットモンスター紫   作:鯖風味鯵

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技7

 

 

 電気技って対処しにくいよね。避けにくい痺れる威力あるの三拍子だ。

 

 いやピカチュウがね、うん。

 森を彷徨ってたらエンカウントしたんでバトルしたんだが、やっぱ「でんきショック」がウゼェ。特性「せいでんき」も厄介だ。勝ったけど。

 

 いいな~飛び道具。俺も欲しい。あらゆる状況に膨大な数の技で対応して、どや顔晒したい。はぁ。

 

 

 森を抜けるためにうろうろし続けて数日。

 

 出口が分からず迷ってしまった。

 こ、これがリング・ワンダ・リング…! いや、厳密には今までも迷ってたようなもので、気にしなかっただけなんだが。

 

 どうすっかね。目標物も道案内も望めないし、このまま永遠に森の中をぐるぐるしなきゃならんのか。『森のキノコにご用心』が聞こえ始めたぞ。

 

 んん、道案内? 

 

 そうだよ、案内頼めばいいじゃん。

 

 

 ポッポの群れに事情を話して、案内を頼んでみた。

 

 快く引き受けてくれた。やだ、ポケモン優しい。ついて来いとばかりに飛び発ったので、地上から後を追うことにする。

 

 

 上空のポッポの群れを追いかけ続けること数時間。今まで足を踏み入れた事の無い領域に突入。木々が疎らになり、森を両断する一本道を発見。なんぞこれ。

 

 道案内は此処までらしいので、手を振ってポッポ達と別れる。今度会ったらお礼しなきゃな。記憶に残ってたらだが。

 

 ひとまず、その道に沿って歩く。この森に道らしい道なんてあったのかよ。初めて知ったぞ。

 

 

 道なりに進んでいると日が暮れたので、朝まで眠って休息。

 起きて道端の草を食みながら(美味しくはない)黙々と進む。太陽が頭上で踏ん反り返る頃に、ようやっと森を抜けることが出来た。ポッポ様々である。

 

 

 

 さて、森は抜けたが。

 まさかと思ってたが、もしかしなくても此処って「トキワの森」だったのか?

 

 ピカチュウ、ビードル、キャタピー、ピジョン。それらしいポケモンが多かったからな。

 バタフリーやスピアーもいた。苦戦したからよく覚えてる。マンキーは…トキワシティ近辺から流れてきたのかな。

 

 でもトキワの森だとしたら、原作ゲームにはいないポケモン達が何種類かいたぞ。スリープとかディグダ、それ以外にも何匹か。ディグダは、ディグダの洞穴が近くにあるだろうから許せるとして、あの変態顔は解せぬ。

 

 ま、ゲームの知識ってのも信用しすぎちゃ駄目なのかもね。

 ポケモンだって意思を持った生物だ。諸々な事情で住処を変える事だってあるだろうし、俺みたいに故郷を持たない奴だっているだろう。ゲームとリアルは違うってか。

 

 …技マシンも見つからねーし。

 

 いいさ、別に。努力で何とかしてやるもんね。

 

 舗装された道が続いていたので、その脇を歩いて進む。

 しっかりとした道が作られてるってこた、やっぱ人間がいるんだな。

 今まで遭遇しなかったのは、俺がうろついていたのが森の深部だったからか? 

 

 途中の草むらで見かけたプリンに癒されつつ、挑まれたバトルを無傷でこなして歩く歩く。

 

 おおお、耳が反応している。懐かしい感じのする音が近づいてきたぞ。人の喧騒だ。

 

 そしてこれは! この、申し訳なくも邪魔ったらしくそびえ立つ木製の看板は!

 

 標識じゃないかあああ! ヒヒヒッ、訳も分からず変な笑いがでちまったぜ。

 

 ここで、浮かれはじめた脳がクソ真面目に待ったをかける。

 

 

 標識があるから、何? お前読めんのソレ。

 

 

 ああ、そっすね。ちっさいクセに冷静だなマイ・ブレイン。

 

 物は試しと、看板を読んでみる。

 

 

 「 この先 ニビシティ 

   ニビは はいいろ いしのいろ」

 

 

 おう、そうか。

 

 ニビシティなのか、この先。

 

 じゃあ、さっきの森はやっぱりトキワの森で、反対側の道に進んでたらトキワシティ方面に向かってたんだな。

 てかカントー地方だったのね。世界の謎が一つ解けたわ。

 

 そしてヒイィィィィヤアアアアアァ!!!

 

 読める、読めるぞ! ニドランにも文字が読める!

 

 だから何って話だが。

 

 言語は同じなのか。または、都合良く読めるように脳内変換してるのか。どっちでもいいか。

 

 

 何はともあれニビシティだ。この世界に来て初、人間の街。探索してみるっきゃないでしょ。

 

 そういやタケシって、この街にいるのかな? 一目見ておきたいんだが。

 

 

 

 

 

 

 噴水広場を見つけたので、水分補給。

 

 都会って程じゃないな、ニビシティ。やっぱでかい街っていったらタマムシ、ヤマブキとかになるのかね。

 

 ポケモン一匹で街中を練り歩いてみたが、別段騒ぎになることもなかった。

 街の住民には、不思議そうな目を向けられたが…。なんだろう、野生の個体にしか見えないのに、堂々と闊歩していたからかな。

 

 いや、でもちょっと感動したね。

 

 なにせポケモン世界の街だ。人とポケモンが、当たり前のように共存し、その日常を謳歌している。ゲームで散々見てきた光景だが、実際に目にすると心に来るものがある。生きてて良かった。

 

 

 なんてニヨニヨしながらポケモンワールドを眺めていたら、ジュンサーさんに絡まれた。なんでよ。

 

 俺、なにもしてないよ。あれか、毒タイプだからか。毒兎だからあかんのか?

 

 いきなり捕獲されて保健所にぶち込まれる、なんて事にはならなさそうだったので、ひとまずジュンサーさんの仕事振りを観察。美脚っすね貴女。

 

 なになに、通報があった? 傷だらけのニドラン? 通常よりやや巨体? 目つきが悪い? トレーナーの姿がうんだかんだ?

 

 ほん??? 聞き慣れないワードがたくさん。

 

 そのニドランって、俺のことか? 傷だらけでやや巨体、ねぇ。

 

 傷かぁ。特訓やバトルの傷、まともに治療したことなかったなそういえば。木の実で賄った程度じゃ、傷痕くらい残るわな。

 やや巨体、に関しても特に突っ込む気はない。野生において、大きさは強さだ。

 

 でも目つき悪いってのは聞き捨てならん。許さんぞ、人間のクズめ! …は言い過ぎだな。

 

 こちらが睨みつけている間にもジュンサーさんは無線であれこれ会話していたが、無線機を閉じたと思ったらおもむろに俺を抱え上げようとした。

 

 当然抵抗。驚いた声がして、あっさり解放。

 

 ヒュウウ、とりあえず逃げるぜ! よく状況が理解できんからな!

 

 

 

 

 

 





 というわけでカントー地方でした。まずはカントーを舞台としたお話になります

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