シルヴァリオシリーズ短編集   作:ライアン

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前話からのそのまま続きの話になります。

かわいくてとことん尽くしてくれてもうあなたは頑張らなくて良いの!私が頑張って貴方を養ってあげるから!
と告げてくる幼馴染の攻勢に対してヒモ男に成り下がることのないような男でなければナギサちゃんの旦那にはなれぬのだ。
今回ちょい役でオリキャラが登場します。アッシュとナギサちゃんが交易商人夫婦となるまでの話です。

なお、最初はこの前後編をキンクリしてチトセネキルート後時空でアヤさんと再会するネタだけ書くつもりだった模様。まあ高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対処していくスタイルなので……


蘇るあの日の思い出。フォーリンラブ、プライスレス(後)

「……ごめん、恥ずかしいところ見せちゃったな」

 

「ううんそんなの良いんだよ、むしろ私はアッシュに頼られて嬉しいよ」

 

一通り気持ちを吐き出し終わって照れくさそうな様子で彼はそんな事を言うものだから、私はそんな彼を愛しく見つめながら告げる

 

「もう大丈夫。アッシュは戦う必要なんてないの。あの日守られるだけだった泣き虫なお姫様(ナギサ)はもういないんだから。今度は私がアッシュを守る番」

 

そうだ、もうアッシュはそんな無理して戦う必要なんてないのだ。だって優しい彼には戦いなんて似合わないのだから。ただアッシュは私の傍にいてくれれば良い、それだけで私はどんな相手とだって戦える。そう心からの笑顔でアッシュへと告げたのだが……

 

「あ、いやそれは……」

 

どういうわけだかアッシュは浮かない顔をしている……一体どうしたのだろうか、もしかして傷が痛んでいるのだろうか。そういえば彼の身体はボロボロの状態だというのに私と来たら思わず抱きしめてしまった

 

「ひょっとして傷が痛むの?だとしたらごめん、私ったら思わずアッシュを抱きしめちゃったから……」

 

そう告げると同時にふと冷静になって自分が何をしたかや何を言ったかに気づく……さっきまでの自分は何と言っていた?貴方の事が大好きな女の子?私が誰よりも好きなのは今ここに居る貴方?抱きしめながらそんな風に告げるだなんてーーーーーそんなのまるっきり愛の告白ではないか

 

「ああ、いや、そのさっきの発言はそういう意味じゃなくて!ただアッシュが生きていたことがあまりに嬉しくて気持ちが昂ぶっちゃって言っちゃっただけで、でもでも別に嘘とかそういうわけでもなくアッシュの事が大好きなのは本当の事でってああもう、そういうんじゃないのよぉ」

 

急速に顔が熱くなるのを感じながら自分でも支離滅裂になっているとわかるような事を口走ってしまう

 

「お、落ち着こうナギサ。俺が言いたかったのはそういうことじゃないんだ。ナギサに抱きしめられたときは傷が痛むどころかすごく身体が柔らかくて安心して、色々と成長したんだなって想ったりとか、笑顔を見たらかわいくて愛らしかった天使だったみたいな昔に対してまるで今は女神のようだな……って何言ってんだ俺は!」

 

そんな風に彼が言ってくれるものだから私はますます顔を赤くしてしまって俯いてしまう。

そうして、どこか気まずい沈黙がお互いの間に下りる

 

「と、とにかく俺が言いたかったのはそういうことじゃないんだ」

 

ゴホンとその沈黙を破るように咳払いして仕切りなおすように彼が告げてきたので、私もとりあえず気を取り直して彼を見つめる

 

「えっと、それじゃあアッシュはどうしてあんな浮かない顔をしていたのか教えてもらっても良い……?」

 

傷が痛んだというわけではないのなら、さっきのあの表情は何だったのだろうかという私の問いかけに対して

 

「……なあ、ナギサ。俺にも何か、出来ることはないかな」

 

彼は何かを決心したような凛々しい表情でそう答えたのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「えーそれではアシュレイ・ホライゾン殿、当暁の海洋への入団を希望されるとの事ですが入団を決意した理由及び貴方が何を出来るか、貴方を雇うことでどのようなメリットがあるのかをまずはお聞かせください」

 

あの後何もしなくても良いと言って来るナギサをなんとか説き伏せて、俺はこうして暁の海洋の団長と話をしている。……なんだか予想していたのと違うが、おそらくは入団の審議を行なうための質問なのだと想い、答えようとすると

 

「……姉さん、何をふざけているのさ」

 

そんなあきれ返ったようなナギサの言葉がアリスさんへと投げかけられた。

 

「いや~ちょっと一度こういうそれっぽいのやって見たくて」

 

テヘッと舌を出してアリスさんはごめんごめんと謝ってくる、だがそれを終えると

 

「まあ冗談は置いといて、アッシュ君。うちに入ったとしても貴方に何が出来るの?どうやらそこそこは戦えはしたみたいだけど、それあくまでそんな風にボロボロになる前でしょ?幸いな事に腱やら内臓やらの重要な部分は無事だったから、しばらくすれば前みたいに動けるようになるでしょうけど、貴方はエスペラントじゃないんだから治った後も今度はブランクを取り戻す期間が必要になる。ねぇ、そこそこ使える程度の傭兵をそこまでして雇うようなメリットが私のどこにあるの?」

 

そんな風に目を細めてさっきまでの弛緩した空気とは打って変って、ナギサの身内としてではなく対等の男として接してこようとするならば甘えたような態度を許さないと言わんばかりに歴戦の女団長は問いかけてきた。

そうして俺を心配して庇おうとするナギサに目で大丈夫だ任せて欲しいと伝えて真っ直ぐに相手を見つめて答える

 

「確かに……傭兵としての俺に、そこまでの価値はないでしょうね。それこそ別の希望者を探したほうがはるかに安上がりでしょう」

 

貴方の言うとおり戦士としてのアシュレイ・ホライゾンにそこまでの価値はないと首肯する

 

「わかっているなら、無理に傭兵なんてやらずにおとなしくレインちゃんに養われていなさいな。私も別に妹が自分の稼いだお金で男を養おうがそこに干渉する気はないもの」

 

お前は無力な存在なのだから大人しく守られていればいいという言葉を受け止めて、俺は戦いには向いていないという事実を改めて受け入れてその上で告げる

 

「でもアリスさん、経理や事務、そういった裏方要員としてならどうでしょうか?」

 

そうして虚を突かれたかのように目を丸くしたアリスさんへと畳み掛けていく

 

「俺も一応は傭兵の端くれだったんでわかっています。傭兵になるようなのは基本的には満足に教育を受けることの出来なかった様な人達だって」

 

戦場を駆け抜ける英雄としてその名を歴史に刻み込みたい、命を賭けた戦いというものを愛している、そういった理由で安定した生活を捨て去り傭兵などと言う職業を選ぶのは極一部だ。大半はのっぴきならない事情で、それこそ生まれつきその日食べるものにも困る貧しい家の出身、あるいは親のいない孤児そういった存在がやむを得なく傭兵となる。

必然的に傭兵というのは腕っ節は立っても読み書きや計算等ができないものが大半となる。商国でそういったことが出来るものは基本的に商人となるからだ。

 

「これでも俺は元はそれなりの商人の家の息子でした。その手の教育は受けていますし、団に居た頃もその手の雑務は押し付けられていました」

 

父は優しく家族思いではあったが、いや家族想いだったからこそ、その辺は厳しかった。幼少期にした勉強は大人になってから如実に差として現れる、そう常々言って、俺に一通りの教育を施してくれた。……あの頃はそんな父のスパルタ加減が時おり嫌になったが今となっては感謝しかない。

最も子どもの頃に受けたその程度ではあくまで下地となる部分で、それだけで務まるはずがない、だが幸か不幸か団にいた時に俺はその手の雑務を一通りおしつけられていた(・・・・・・・・・)。作戦に事有るごとに噛み付いて邪魔をする以上、その位役に立てといわんばかりに。もちろん事務員としての給料は一切出ていなかった。

 

「もちろん、本当に務まるかどうか、その辺は試験していただいて構いません。でもこれならこうして怪我をしている今でもある程度は仕事をこなすことができますし、何よりもリハビリの期間は要りません、幸い手はこうやって自由に動きますし」

 

どうでしょうかとアリスさんを真っ向から見つめて今度は問いかける。俺に現状で考えられるのはこれ位だ。これでもしも駄目だったらその時は……ナギサと改めて話し合うことにしよう。とりあえずヒモになる未来だけは避けたい。男の意地として、切実に。

沈黙が下りる、俺の言葉を受けてアリスさんはその内容を吟味するかのように目を閉じて……

 

「うん、合格!」

 

そうしてさっきまでの張り詰めた態度をといて満面の笑顔で告げて

 

「いや~これでもしも「それでも頑張ります」とか気合と根性でなんとかするみたいな馬鹿げた精神論を言ってきて妹を悲しませるつもりだったらはっ倒すつもりだったけど、そこまでしっかりとした答えが出せるなら大丈夫そうね」

 

そんな言葉を聞いて俺は喜びを隠し切れずに問いかける

 

「それじゃあ!」

 

「うん、貴方の読みどおりこの業界、その手の仕事が出来る子は貴重だからね。テストはさせてもらうけど問題ないようであれば正式に契約させてもらうとするわ。……というか貴方、そんな事が出来るのにどうしてよりにもよってあんな団に居たのよ」

 

うちに来てくれていればちゃんとした待遇で雇ってあげたのにとそんな呟きを聞いて、選択の誤りを自覚した今となっては笑って誤魔化すしかないのであった……

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

幸せだなぁ、こんなに幸せで良いのかなぁ

 

レイン・ミラー、いいやナギサ・ホライゾン(・・・・・)は隣で眠る最愛の人を愛しげに見つめながらそう呟いた。彼が暁の海洋に入団してから数年が経った。幸いな事に彼の傷は後遺症が残ることもなく完治して、今では元気に動きまわることも出来る。事務員としての仕事も上々で、最近では姉の補佐として契約相手の交渉の際にも同行を求められるようにもなっていた。そうしてこれまで離れ離れだった時間をお互い取り戻すように一緒に居て

 

愛しいナギサ、か。えへへへ……

 

彼からプロポーズされて、今日正式に結ばれた。

 

きっと姉さんには盛大にからかわれるんだろうなぁ……

 

事あるごとに「レインちゃんや、姪っ子か甥っ子はまだかのう」などと言ってこちらをからかってきた義姉の姿を思い出し、苦笑して

 

でも、それでもいいや……

 

明日を最期にずっと一緒だった姉のからかいもしばらくは受けられなくなるのだからと。レインはもう一度愛しい彼の寝顔を確認して幸せに浸りながら目を閉じた……

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「アッシュ君!君は、ひょっとしてアシュレイ・ホライゾン君じゃないか!?」

 

アリスさん(お義姉さんと呼んでくれて良いのよ、妹婿君などと本人は言って来る)にいつものように連れられて訪れた雇い主との交渉の場で俺は予期せぬ再会をしていた

 

「あなたは……ひょっとしてマルティンさんですか!?」

 

記憶を辿りながら、子どもの頃に父の友人として何度もあった人物の名を告げる

 

「そうだよ、マルティン・プーフホルツだ。ああ良かった、生きていたんだな。お父君があのような事になりずっと心配していたんだ」

 

本当に良かったと、そう心の底から思っていてくれていることが伝わるマルティンさんの様子に胸の奥からこみ上げるものを感じる

 

「う~ん、その様子を見ると二人は知り合いみたいだけど、一体どういう関係なのかしら?」

 

蚊帳の外に置かれていたアリスさんがそんな風に問いかけてくるので俺は慌てて答える

 

「失礼しました、団長。こちら私が子どもの頃に世話になっていたマルティン・プーフホルツ氏です」

 

「マルティン・プーフホルツです。いやはや失礼しました、亡くなったと想っていた大恩人の子どもに巡り会えたもので思わず感極まってしまいました」

 

そんなマルティンさんの挨拶を受けてアリスさんも答える

 

「なるほどなるほど、どうでしょうか。久しぶりの再会ともなれば積もる話もあるでしょうし、ゆっくり話されたら。こんな状態じゃすぐさまビジネスの話、とはいかないでしょうし」

 

俺とマルティンさんはそんなアリスさんの言葉に甘えることにするのであった……

 

 

 

「そうか……君もずいぶんと苦労したんだな、だがどうにか元気そうにやっているようで良かったよ」

 

俺はマルティンさんに両親が死んだ後に強欲竜団に入ったことを省いて今の団長に拾われたという事にして、今までの経緯を概ね話した。するとマルティンさんはホッとしたようにそう答えて、何やら思案するような顔をしておもむろにこんな事を提案してきた

 

「なあ、アッシュ君……もしも君さえよければうちの商会を手伝ってくれる気はないかな?」

 

驚く俺に対してマルティンさんは続けていく

 

「今の私があるのは君のお父君が危ないときに援助をしてくれたおかげだ……だがそんな大恩人の危機に私は結局何も出来なかった」

 

だからせめてその恩人の息子である君だけでも助けたいのだよと心の底からこちらを慮りながら

 

「傭兵と言う仕事を侮辱する気はない、そこらのごろつき崩れならばともかく暁の海洋は一流として知られる傭兵団だ。だがやはりそれでも傭兵というのは命を担保にした危険な仕事だ。恩人の息子には出来ることならそのような危険な仕事にはついていて欲しくない、というのが本音だ」

 

ーーー傭兵と言うのは命を担保にした危険な仕事。その言葉を聞いた瞬間に俺は心臓を鷲掴みにされるような思いを感じた。

 

そうだ、俺は何を勘違いしていたんだ

 

昔よりもすっかり強くなっていたから、アリスさんが頼もしく部下を大事にする優しい団長だったから、失念していた事実に気づく

 

人は、死ぬのだーーーどれだけ強くてもある日突然に。最強と謳われたあの英雄閣下でさえ敗れ去ったというのだから。

 

まして強いと言っても彼女はエスペラントですらないーーー帝国軍の優秀なエスペラント、あのギルベルト・ハーヴェスのような傑物を相手にすれば?

彼女は優しくいつまで経っても人死に慣れることが出来ていないーーーそんな彼女が、あのファヴニル・ダインスレイフのような勝利のためならあらゆる外道に手を染める男と戦ったら?

きっとやられてしまう。そんな当たり前の事実に今更ながら気がついて、彼女を何時失うことになってもおかしくないという恐怖に震えだした俺に対して、マルティン氏は何かを勘違いしたように続ける

 

「ああ、ちなみにこれは何も善意が全てというわけではないんだよ。暁の海洋の事は契約を結ぶ前に調べさせてもらってね、もちろん団長の片腕と呼ばれている君の事もだ。その上で君ならばしばらく修行すれば、いずれはうちの商会を背負ってくれるような人材になってくると判断したんだ。なにぶんちょうど今うちの商会は人手不足でね」

 

だからこれはこちらにとってもメリットのある話なんだと笑いながら告げるマルティンさんの言葉に対して俺は

 

「……すいません、今すぐということは出来ません。しばらく待っていただいてもよろしいでしょうか?」

 

そんな俺の言葉に「もちろん構わんよ」と言ってくれたマルティンさんの言葉に甘えて俺はその場を後にするのであった……

 

 

 

「ふーん、良い話じゃない。受ければ?」

 

罵倒される覚悟でアリスさんへと相談した俺はそんなあっさりとした態度に拍子抜けするのであった。

 

「入団するときも言ったけどうちの団は基本的には来るものは拒まず、去るものは追わずよ。入団するときに貴方も言っていたけど傭兵なんて結局はそれ以外やれることがなかったはぐれものがやることだからね、もしも堅気に戻れるっていうのなら笑顔で仲間を見送る、それが傭兵の流儀ってもんよ」

 

まあ確かに貴方とレインちゃんに同時に抜けられるのはちょっぴし痛いけどねーと笑いながら、そうしてアリスさんは打って変って神妙な顔をしてこちらへと告げる

 

「それにね、あの子が強いとかそういうのとは無関係にこの仕事にあんまし向いてないってのは私も感じていたの。だからもしもあの子が大好きだった男の子と一緒に表の世界に戻って、どこにでもいるような幸せな奥さんになれるって言うのならそれは素敵なことだと思うわ。姉冥利に尽きるってもんだわ」

 

そんな風に心の底からレインを想っているのだと判ることを告げて

 

「だからあの子を一緒に連れて行きたいというのなら好きにしなさい。その代わりに、絶対に一緒に幸せになる事」

 

離れ離れになったときみたいにまたあの子を泣かせるような事があれば承知しないわよーというアリスさんの言葉を聞いて俺は

 

「はい!お世話になりました、アリス義姉さん!絶対にレインを、ナギサを泣かせるような真似はしません!」

 

そう告げて俺は駆け出した。伝えたい思いを何よりも誰よりも大事な相手へと告げるために……

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「~~~♪」

 

交渉へと出かけた姉さんとアッシュが帰ってくるのを待って今日の夕食の支度をする

 

(よし、完璧)

 

以前はシチューみたいな大勢に作る料理以外はそれほど得意ではなかったが、今ではすっかり料理が趣味となってしまった。アッシュに、少しでも美味しいご飯を食べさせてあげたい、そう思ったらどんどんのめりこんでいって。そんな風に考えているとドアの開く音がしたので、エプロン姿のまま入り口へと向かって愛しい大切な人に笑顔でお帰りなさいと伝える

ーーー幸い姉さんや金髪の双子はいないのでまるで旦那様をお迎えする新妻のよう、などとからかわれる心配もない

そうしてただいまと返した後に真剣な表情で彼は一言「大事な話があるんだ」と私に告げてくるのだった。

 

 

ーーープーフホルツ商会に入らないかと誘われて自分は受けるつもりだとそう彼は告げてきた。

 

馬鹿みたいだ、何を新妻のようだなどと浮かれていたのだろうか。

そうだアッシュは元々商人の家の子だったのだ、今こうして傭兵団にいるのも何かの間違い。本来はそうやって表の道を歩んでいくのが相応しいのだ。

なのに私と来たらずっとこんな日々が続くのだと無邪気に信じていたのだ。

 

良かったね。おめでとう

 

そう彼に笑顔で告げないといけない。なのに彼と別れることが寂しくて、悲しくて……私は上手く笑顔を作ることが出来ない。そんな風に頭の中がぐちゃぐちゃになっていた私に彼は続けて言ってきた

 

「だからナギサ、俺と一緒に来て欲しい。俺と結婚して欲しいんだ」

 

だからそんな風に告げた彼の言葉が最初信じられなくて私は頭の中が空っぽになる

 

「これは俺のエゴだってわかっている、大事な家族であるアリスさんよりも俺を取ってくれていっているわがままなんだって。でも、それでも俺は、君にもう戦って欲しくないんだ。君がひょっとしたら明日にも死んでしまうかもしれない、そんな風に思いながら待つことに耐えられないんだ」

 

気が付いたら彼に抱きしめられて、告げられてくるのはそんな言葉。私がアッシュにもう危ない目にあって欲しくないと想っていたのと同様に彼もまた私にそう思っていたというそんな当たり前の事実

 

「俺は君の事が大切だ、愛している。これからずっと一緒に支え合って生きて行きたい、そう思っている。だから、一緒に来てくれ愛しいナギサ、俺には君の全てが必要なんだ」

 

どちらかが一方的に相手を守るのではなく一緒に支え合って生きて行こうというその言葉に私は喜びの涙を流して告げるのだった

 

私も貴方の事を愛している

 

と。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「それじゃあ、レインちゃん元気でね。必ず二人で一緒に幸せになるよ」

 

「うん……本当に今までありがとう、姉さん」

 

「ほら泣かないの、別にこれが今生の別れってわけでもないんだから」

 

目の前でのナギサとアリスさんの別れの挨拶俺はそれを穏やかな気持ちで眺めていた。

 

「アッシュ君も、もしも新天地で駄目だったらその時は変に見栄を張らずに相談しなさい。私たちはもう家族なんだからね。あなたとレインちゃんだったらいつでも大歓迎なんだから」

 

そんな風に笑いながら告げるアリスさんに俺は敵わないなと苦笑しながら心からの感謝を告げるのだった

 

「はい、ありがとうございます。今まで本当にお世話になりました、アリス義姉さん」

 

「それであの、俺達の方が上手いこと行ったら……」

 

アリス姉さんも傭兵稼業から引退して一緒に暮らしませんかと提案しようとした俺の言葉を見透かしたようにアリスさんは告げる

 

「うーん、前にも言ったけどね、この仕事これしか出来ないような子達ばっかりなのよ。だから気持ちは嬉しいけど、その子達の面倒を見なくちゃいけないから遠慮しておくわ。」

 

自分はこの世界にしか居場所がないような人達のためにまだこの仕事を続けねばならないと苦笑しながら。

 

「……でもそうね、もしも後を任せられるような子が出来たらその時は」

 

もしも、信頼して任せられるような自分の後任が出来たのならば

 

「妹夫婦のところにお邪魔する小姑になるってのも悪くないかもね♪」

 

そんな事をウインクしながら告げられて、俺達はずっとお世話になった古巣を後にするのだった。

 

 

 

「なんだか夢みたい……アッシュとこんな風になれるだなんて」

 

腕を組みながらしばらく歩くと愛しいお姫様はそんな風に呟いてきた

 

「それを言ったら俺だってそうだよ、あの日君に助けられるまでこんな風にまた一緒に過ごせる日が来るだなんて想ってもいなかった」

 

もしもあの時彼女に会えなかったらと想うとぞっとする。きっと俺はそのままのたれ死ぬのが関の山だったのだろうから。

 

「ねぇ、アッシュ。幸せになろうね」

 

そんな風にはにかみながら告げられた愛しいナギサの言葉に俺はああ、もちろんだと笑顔を浮かべながら返すのだった。澄み渡る青空の下、二つの太陽が俺達のこれからを照らすかのように、優しく輝いていた。

 

 

 




Qわざわざオリキャラ登場させてまで傭兵辞めさせた意味は?
A作者が優しいナギサちゃんに命に関わる傭兵稼業を続けて欲しくなかった模様

Q英雄閣下でさえ敗れたって書かれているけどチトセルートってこと?
A一応そのつもりですが、ミリィルートの場合はそこの部分が消えるだけで後は同じと思ってください

アリスお姉ちゃんは本当に良いお姉ちゃんだと思います(アッシュの全く恵まれなかった原作での上司運を見つつ)


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