シルヴァリオシリーズ短編集   作:ライアン

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グレイに娼館に誘われたところでアッシュが好みのタイプについて、レインちゃんと答えた場合の話になります。
アッシュは無自覚でとんでもない口説き文句を吐く生粋のイタリア人だと作者は思っています。
これじゃあどう考えてもレインちゃん一強じゃねぇかと思われるかもしれませんが、自分の焚くアヘンは大体そんな感じになると思います。


好みのタイプは好きになった子という男が好みのタイプで名前を挙げるのって告白と同じだよね

「---レイン」

 

アリスさんに好みのタイプについて聞かれて、悩んだ末に自分でも驚くほどにすんなりとそう答えていた。

 

「ほうほう、良かったわねレインちゃん!ちなみに理由を聞いても良いかな?」

 

顔を真っ赤にしながら目を丸くしたレインとニヤリと笑いながら問いかけてくるアリスさんが目に映りながら、自分はどこかぼんやりとしながら自分で自分の考えを整理するかのようにポツリポツリと話していく

 

「まず初めて会った時にすごい綺麗だなって思ったんだ。まるでそう月の女神が現世に舞い降りたんじゃないかって思う位に。それで何故か、レインが生きていてくれたってことが自分でもわけがわからない位に泣きたくなる位に嬉しくて……」

 

そうだ彼女が生きていてくれたという事実、それだけで自分は救われるかのようだった。生きていてくれてよかったとそう心の底から思ったのだ

 

「その後はちょっとどういうわけかお互い正気じゃないような状態になってしまったけど、それでも絶対にレインを守り抜きたいという想いだけはあって、向こうも無我夢中になりながらも必死にこっちを気にかけてくれているのがわかって、目覚めた後にはああ、年頃の女の子なんだなってなる部分も見て……」

 

不倶戴天の宿敵であるという妙な確信と同時にそんなものとは別次元に彼女が自分にとって大切だという奇妙な思いの同居

 

「付き合っていくうちに自分でも驚くほどにすんなり真っ直ぐ意見をぶつけ合うことが出来て、橋での戦いの時はわけがわからない状態になっていたところを助けられて……」

 

自分で言いながらわけがわからなくなって来たが結局一言で纏めるとこうなるのだろう

 

「俺にとってはレインが一番放っておけない大切な、だけど真正面からぶつかり合って素直に付き合える女性なんだと思う。だから俺の一番の好みは誰か?って聞かれたらレインになるのかな……ってアレ」

 

そうして自分の考えを吐き出してみると、何やら皆押し黙ってしまった。てっきりアリスさんやグレイあたりがからかってくるのかと思っていたのに。酔っ払っていたはずのグレイはすっかり酔いが冷めたように真顔になっているし、レインに至っては茹蛸のように顔を真っ赤にして俯いてしまっている。

 

「あ~もう流石にコレは勝負ついちゃったかなぁ、ねぇアヤちゃん」

 

ミステルは何処か複雑そうな、しかしそれ以上にホッとした様な表情を浮かべながらそう言い

 

「そうですねミステル様。聊か、いえかなり悔しい思いはございますが、同時に安心もしました。レイン様にならアッシュ様を心置きなく任せることが出来ますし、何より私としては時たまお情けを頂けるだけでも……はふぅ」

 

アヤは最初は少し悲しげに、だがその後には満面の笑みとなにやら艶かしい表情を浮かべながら自分の世界へと突入して

 

「あーうん、なんというかアッシュ、娼館に行く話だったけどアレやっぱりなしで頼むわ。いや、本当に悪かった。お前にそこまでガチガチのド本命の相手が居るとは思ってなかったんだ。

 そりゃそんな相手が居るなら行く気にならなくてもしょうがねぇわ。まあなんというか安心したぜ、あんまりに堅物すぎてもしかすると、本当にひょっとしてそっちの趣味かと疑ったが、お前、ちゃんと女の子が好きだったんだな!」

 

グレイは常に無く真面目な表情をしてそんな事を言う物だから、俺は何やら居心地が悪くなって訝しがりながら問いかけるのだった

 

「いや、一体どうしたんだよ、皆、自分はただ自分が思っている当たり前の事を言っただけだぞ」

 

そう皆何をそんなに驚いているのだろうか、俺にとってレイン(■■■)が大切な少女だなんてそんなの当たり前(・・・・)の事だと言うのに。グレイやアリスさんはともかくおさ■な■■の二人(ミステルとアヤ)までもがそんな反応をするのが全く持って意味がわからない。

 

「……う~ん、からかい半分だったのに此処まで堂々と言われちゃうとこのアリスちゃんとしても流石に反応に困るわね~というわけでレインちゃん、愛しのアッシュ君のこの情熱的な言葉に貴方はどう答える?ここまで言わせて何も答えないだなんて、それこそ女が廃るってものよ!」

 

「あう、あうあう……ええっとええっとその、私も、私もアッシュの事が、す、す……」

 

レインが顔を真っ赤にしながら必死に何かを言おうとしている、聞き届けねばという使命感に駆られるレインの顔をしっかりと見つめる。彼女が生きていてくれていたという事実、こうしてまためぐり合えたという事、それがかけがえのない奇跡(・・・・・・・・・)なのだと訴える胸の奥から溢れ出る想いと共に

 

「って、こんな皆が見て居るような場所でなんか言えるか~~~~~~~~」

 

その言葉を置き土産にレインは脱兎の如く駆け出して行ってしまった。あの日再会した時のように

 

「やれやれ、衆人環視の前で愛を叫んだくせに何を今更言っているのやら……ごめんねアッシュ君、肝心な時にヘタレる妹で。この埋め合わせは必ず後日させるから♪」

 

「あ、いえ埋め合わせも何も……」

 

自分は当然の事を言っただけなのだから、そんな彼女に何かしてもらうような事をしたわけではないのだが。

 

「あ~まあ気を落とすなよ、アッシュ。どう考えても脈はあるんだからよ、後は焦らずゆっくりと攻めて行けばじきに晴れてお前も卒業できるさ!……あんな可愛い子で卒業できるとか何か腹が立ってきたな、おい」

 

「アッシュ様、私はレイン様の次でも一向に構いませんので何卒お情けのほうをよろしくお願い致しますね」

 

「結婚式をする際には是非うちを利用してよね。他ならないアッシュ君とレインちゃんの二人だもの、サービスしとくわよ」

 

そんな友人達の不可解な言葉を聞き、その場は結局解散となるのであった。

 

 

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やってしまった。

 

枕に顔を埋めながらレイン・ペルセフォネは激しい後悔に襲われていた。

 

「あ~もう、私のバカバカバカ、せっかくアッシュがあそこまで言ってくれたのに肝心なところでヘタレちゃって……」

 

でも仕方がないだろう。あんなにもアッシュが自分の事を大切に想ってくれているだなんて想像していなかったのだから

 

「えへ、えへへへ、大切な人、アッシュが私の事を大切に想っているのなんて当たり前の事かぁ……」

 

アッシュが自分をそんな風に想ってくれていたという事実が嬉しくていけないというのに顔がニヤケだしてしまう。

 

「まったく、あんな告白よりもはるかに凄いこと言われておきながら逃げ出しちゃうなんて、お姉ちゃんは妹のヘタレぶりに涙が止まりません」

 

「う、うわぁ!?姉さん、い、一体いつからそこに!?」

 

そんな風に幸せに浸っていると何やらため息をつく姉の姿がそこにあった。

 

「枕に顔を埋めて足をバタつかせながら、「私のバカバカ~」とか言っているところからよ」

 

「さ、最初からじゃないか~~~~」

 

よりにもよって最悪の人に見られてしまった。当分、いや下手をすると一生このネタで事ある毎に玩具にされてしまう

 

「もう、そんな事はどうだって良いのよ。レインちゃん、さっきのあの様は何よ。

 気がある男の子にあそこまで言われたんだったら女としては「私も、私もアッシュの事が……」

 とか何とか言いながら瞳を潤ませつつ、上目遣いでもして身体を相手に向かって寄せておけばそれで良いのよ!

 そうすればもう、後は盛り上がった男の子が勝手にリードしてくれる、だというのに貴方ったらもう、本当に……」

 

「う、うう………」

 

普段ならば姉さんの男に対する話(ざれごと)なんて聞き流すところなのに、今回ばかりは自分がヘタレてしまったという自覚があるだけに何も言えない。

私だって女の子なのだ。好きな相手とその、そういう展開になる事を夢見たりだってしているわけで……その点、今回のアッシュはまさに女の子が夢見る王子様そのものみたいだったのに、私の方がそれを台無しにしてしまったわけで……

私のやった事は言うなれば王子様がダンスに誘ってくれたのに、怖気づいて突然城から逃げ出してしまったシンデレラと言ったところだろう。子どもの頃に読んだ絵本でこんな展開になっていたら確実に怒っている。

 

「こうなれば、今度は貴方が勇気を出す番よレインちゃん!アッシュ君の想いに応えるためにも!」

 

「こ、今度は私が……」

 

だからだろうか普段だったら聞き流す姉さんのいつもの妄言を真に受けてしまったのは

 

「そう!幸いな事にあなたは私よりもはるかにスタイルが良いわ!そしてアッシュ君も年頃の男の子!ならばその育った身体!ここで使わずに一体何時使うというのか!?

 今こそ私と同じ踊り子衣装を着て、彼を脳殺するのよ!!!!」

 

「え、えええええ、そ、そんなの無理だよ~~~~」

 

無理だ、無理だ無理だ、そんなの絶対に無理だ。アッシュが自分の胸を見ているというだけでもあんなにも恥ずかしかったのに、姉さんのような格好をして誘惑するだなんて絶対に無理だ

 

「ふーん、そんなことで良いの?彼を別の子に取られちゃっても知らないわよ。何せあんなにも勇気を出した愛の言葉を無視されたんだもの。それこそ傷心状態でグレイ君の誘いに乗っちゃって~なんて可能性だってあるのよ」

 

「う、うう………」

 

アッシュが私以外の誰かと……アヤやミステルだったら……多分祝福することが出来る。胸に一抹の悲しさを覚えながらもきっと笑顔で二人の幸せを祈ることが出来る。

でもそれ以外の誰かだったら?私は笑顔で祝福できるのだろうか?こんな、「あの時自分が勇気を出してさえ居れば」なんて後悔を抱えた状態で……

 

無理だ。絶対に無理だ。きっと諦めきる事が出来ない

 

「わかったよ姉さん!私、頑張る!」

 

「そうよ!そのいきよ!レインちゃん!さあ今こそ少女から女への階段を駆け上がるときよ!!!」

 

(そもそもアッシュ君はどうも自分が愛の告白したって自覚がない上に、あんなにもレインちゃんにベタ惚れな彼が他の子に手を出すなんて考えづらいけど、いい具合にやる気になってくれたので黙っておこうっと♪)

 

そうしてレイン・ペルセフォネは海の魔性の誘いへと乗ってしまったのだった………

 

 




駿河屋特典「アリスちゃんのお色気踊り子教室」または本編5章の踊り子衣装を着たレインちゃんのシーンに続く
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