シルヴァリオシリーズ短編集   作:ライアン

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ナギサちゃんみたいな可愛い子が基本男所帯の傭兵にいたら絶対アイドル扱いだと思うんですよね。
多分アリス義姉さんが目を光らせているんで直接手を出してどうこうしようなんていうのはいないでしょうし、居てもサヨナラバイバイされているでしょうが。
まあそんなアイドルに手を出したら当然やっかみうけると思うんですけど、今作では三枚目で陽気なグレイがその辺を表立って堂々と「俺は!お前が羨ましい!!!」などと言って堂々と妬みオーラを出しているためにその辺が陰に篭るような事になっていない的な設定が一応あります。
要は陰口叩くような感じじゃなくて、表立って正面からリア充爆発しろ!って言っている感じですね。


風邪と共に去りぬ 後日談(後)

思ったよりも早くに取引先との交渉も終り、アシュレイ・ホライゾンは現在滞在中の拠点へと帰ろうとしていた。話も大よそ纏まってきたのでこれからはまた拠点での裏方仕事がメインとなって来るだろう。そうなると当然恋人であるナギサと顔を付き合わせる時間も増えるわけで……瞬間ポヤヤンと浮かぶ昨晩の天女のように美麗な恋人の姿を必死に振り払うように頭を振る。

 

(いかん、いかん。平常心平常心)

 

結局朝はあれっきりナギサは一階に起きている事はなく、顔を会わせる事無く自分は仕事に行く事になった。ある意味では良かったのかもしれない、おかげで頭は多少なりとも冷えて冷静に考える余地が出来た。

 

(どうしたものかな……)

 

お礼を言う……これは何か奇妙な感じだろう。確かに彼女の下着姿は拝みたくなる位ありがたいものだったが、その分こっちも色々と大変だったのだ。試しにシミュレートしてみよう。「ナギサ、昨夜の君は最高だったよ本当にありがとう!」等と笑顔で彼女に告げてみる。うむ、色々と不味い。瞬く間に彼女が顔を真っ赤にしてパニクるであろう事が容易に想像できる、というか普通にセクハラだ。

 

謝る……というのも何か違う気がする、風邪を引いた状態で誘ってきたのは向こうだし、恋人同士である以上はキスもハグも添い寝したことも変な事ではないだろう。それになんといっても自分はあんな生殺し状態になりながらもきちんと最後まで耐えたのだ。故に謝る必要はない気もするどと、今まさにその自分が見事耐え切ったことで恋人が悩んでいることなど知る良しもなく、アッシュは思ったりもしたが……

 

(でも、ある意味では俺がナギサの弱みにつけこんだみたいだしなぁ……)

 

なんと言っても昨日のナギサは風邪を引いて普段とは違う様子だったのだ。であれば男である自分が自制すべきだったのだと主張されれば頷く他ないだろう、本当にそうかは置いておいて「ラッキースケベなど死ねばいい」というのが信条であるアッシュはそう考えたようだ。昔から少女がむくれたり拗ねたりした場合は大体アッシュの方が折れたものだったが、どうやら心と身体が成長しても二人のそんな関係は今でも変わらないようだ。

 

(やっぱり俺の方から謝るべきかな)

 

問題はどうやって謝るべきかなどと考えながら歩いているとふと視界の端に花屋が映る。

 

(そういえばナギサは花が好きだったな)

 

かつて手作りの花冠をプレゼントしたら、驚いたように顔を真っ赤にして、その後まさに花が咲いたような満面の笑顔を見せてくれたことを思い出しながらアッシュはそんな事を考える。彼女がそれほどまでに喜んだのは花が好きだという以上に、大好きな男の子が自分の為にわざわざ作ってくれたプレゼントだからという要因の方が大きかったのだが。プレゼントそのものよりもそこに込められた相手の気持ちが嬉しい、ナギサ・奏・アマツは昔からそんな優しい少女であった。

 

アクセサリーなどだとちょっと大げさすぎるし、お詫びの品に花を贈るというのはアッシュにとって名案に思えた。偶然にも小さい頃に花冠にして送った思い出の花を見つけて、思い立ったが吉日とばかりに店員へと話しかけて購入する。念のため縁起の悪いものでないか確認するために、花言葉を店員に尋ねて確認したうえで購入する。店員はなにやらとてもいい笑顔で送り出してくれた。

 

そうして花屋を出ると

 

「よう、この色男。花なんて買っていよいよナギサちゃんにプロポーズする気か?」

 

そんな風に良く知る男の声が聞こえた。振り向くとそこにはニヤニヤとした顔の悪友がいて

 

「ティナちゃんとティセちゃんに聞いたぜ。昨夜は色々とお楽しみだったみたいじゃねぇか!」

 

そんなグレイの言葉にアッシュは少しだけため息をつきながら

 

「あの二人は本当に……お楽しみって色々とこっちは大変だったんだぞ。……まあそりゃ役得がなかったと言ったら嘘になるけど」

 

そう、本当に本当に大変だったのだ。あれほどまでに自分が理性を失いかけたというか一時は本当に失った状態になったのは初めてだったのだから。そうして昨夜の記憶を思い出し照れくさげにするアッシュをからかうようにグレイは口笛を吹きながら

 

「おいおい、(初めてで)大変だったのはナギサちゃんの方だろうがよ。で、どうだったよ感想の方は?」

 

「まあ確かに(風邪を引いていた意味で)大変だったのはナギサの方だろうけどさ。感想については口にするのもはばかられる位の衝撃だったとだけ伝えておく。詳細は口にしたくない」

 

まるで子犬のようにスリスリと身体をすりつけながら甘えてきた昨晩の恋人の姿を思い出してこみ上げてくる何かを感じながらそれを抑えるようにアッシュは口にする。詳細を口にして目の前の男に想像させたくないという男としての独占欲のようなものもそこには混在していた。

 

「だからあの時俺の誘いに乗って娼館に行っておけば良かったんだよ。そうすりゃ慌てずに済んだだろうさ。初陣で上手く行かないのなんて当たり前の事なんだからよ」

 

そんなアッシュの様子に相変わらずグレイはどこか勘違いしたままに続ける。この場合は勘違いしているグレイの勘繰りが過ぎるというよりは、アレだけの条件が整っていながらスフィアへの到達(子作り)をしなかったアッシュ達があまりにもピュアすぎると言うべきだろう。年頃で恋人同士の男女が一夜を共にすればそうなった事を想定するのは順当な思考である。

 

「あの時も言ったけど俺にはナギサという恋人がいるんだから他の女性に手を出すなんて不誠実な真似をする気はないっての。というか、俺はナギサにとことんぞっこんなんだから、そんな状態で行っても相手の女性に失礼だろうし、第一経験していたところで彼女のあの美麗な姿を見たらどっちみち衝撃で頭が真っ白になっただろうさ」

 

向こうが勘違いしていることに気づかずアッシュのほうもそんな風にさらりと惚気る。そんな親友の様子にグレイを肩をすくめて

 

「往々惚気やがる。こりゃ下手につっつき過ぎるとやぶ蛇になりかねないか。じゃあなアッシュ、今度盛大に野郎共で弄ってやるから覚悟しておけよ!」

 

それが暁の海洋(うち)のアイドルを恋人にして独り占めにしている勝者が背負うべき責務なんだからな、などと告げる悪友と、最後まで互いの勘違いを解消する事無く別れてアッシュは恋人の待つ拠点へと帰るのであった。今頃アッシュ達が滞在しているのとは別の拠点へと戻ったグレイは盛大に言い触らし、団員達のアッシュへの呪詛が鳴り響いている事であろう。まあコレも勝者(リア充)の背負うべき責務と言えるのかもしれない。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

アッシュの帰宅に備えて夕食の支度をする。少し頭が冷えた私は朝のアッシュに対する私の態度はあまりにあんまりだったと反省して、お詫びとして彼の好物を用意する。

 

(うう……アッシュきっと怒っているんだろうなぁ……)

 

私から一緒に寝ようとか誘ったり、甘えておきながら朝起きたら部屋から出て行けと言われて枕まで投げつけられたのである。怒らないほうがどうかしている。そう思うと気が少し重くなる

 

(こういう時に限って姉さん達はいないし……)

 

あの後もう一度昨日のことについて相談したら「気を利かせて二人きりにしてあげるからばっちり決めるのよ!」などと言ってティナとティセの二人も連れてどこかへ行ってしまった。ちなみにお詫びしたいんだけど、どうすれば良いか?と相談したら「そりゃ裸エプロンで今日のメインディッシュはわ・た・し♪とかやればいちころよ!」などと言ってきたので顔を真っ赤にして無理だという事を伝えると「ち、ヘタレめ」などと今回はやけに辛辣であった。結局在り来りだがこうしてアッシュの好物を用意しておくことにしたのだが

 

(でもアッシュ……もしも私がそうしたら喜んでくれるのかな…?)

 

思い出すのは(思い出すだけで恥ずかしいのだが)昨夜の事。風邪で意識が朦朧として夢を見ているようなものだと想っていたからだったとはいえ、昨夜の自分はかなり大胆に、それこそこうして思い返すだけで顔から火が出るくらいにアピールしたのだが、結局抱き合ってキスして添い寝するだけで終わった。

 

(アッシュは優しいからきっと私の事を気遣ってくれたんだよね……)

 

そう思うし、そう信じている、信じたい。だけど結果を見れば周囲が口々に手を出されて当然だと主張する状況で手を出して貰えなかったわけで………もしかすると自分には魅力がないのではないかなどと不安が湧いてくるのである。実態は決壊寸前だった理性が愛する女の言葉に不死鳥の如く蘇っての大逆転劇というアシュレイ・ホライゾンにとってもかつてないほどに理性が窮地に追いやられた状態だったのだがレインにそれを知る由はない。そうしてふと姉の言うようにアピールしてみたらどうかなどという考えが魔が差す様によぎるが

 

(無理無理無理、無理だ)

 

とてもじゃないが自分に出来る気がしない。それにやっぱり乙女心として初めてはそんなこちらが痴女みたいに迫るのではなく、アッシュに愛の言葉を囁かれながらが良いなどと夢見たりするわけで……

 

(って何で私はすっかりそんな、そういう事をする前提でいるんだよぉ!)

 

そうしてレインは何かを振り払うようにぶんぶんぶんと顔を真っ赤にして振る、傍から見ると落ち込んだり顔を真っ赤にしたりと一人百面相状態である。

 

(で、でも……でも私アッシュとだったら……)

 

思い出すのは昨日つけた下着を買った際に姉に言われた「やらせてあげないのに娼館に行くことを認めない恋人なんてぶっちゃけめちゃくちゃ重いからねレインちゃん!」という言葉。そして今朝姉に言われた無理に欲求を抑え続けたらろくなことにならないという常になく真剣な言葉。一緒に居られるだけで夢のように幸福だけど、もう昔のような子どもでない以上やっぱりその先を求めだすのは自然な事なわけで……でも、やっぱりなどとやんごとなき家のお嬢様として育ったことによる貞操観念と乙女心、愛する男の子どもを孕みたい女としての本能、傭兵生活の間に出来た男の欲に対する理解などが頭の中で喧嘩し合って思考の迷路に陥っていると

 

「た、ただいま」

 

そんなどこか普段に比べてぎこちない愛する男の声が聞こえてきたのであった。

 

 

 

「お、おかえりなさい。今日もお疲れ様。それとその……今朝はごめんなさい!」

 

愛する男を出迎えてそんな風に頭を下げて謝罪の言葉をレインは口にする

 

「風邪を引いた私がアッシュに甘えたのに、あんな出て行けなんて言っちゃって……怒って…いるよね?」

 

そんな恐る恐ると上目遣いで愛しい女に言われて許さないと言える男がいるだろうか。少なくともアシュレイ・ホライゾンの中にはここで突き放すなどという選択肢は存在しなかった

 

「い、いや怒ってなんかいないさ。ナギサは風邪を引いて弱っていたんだから、俺の方がしっかりしなきゃならなかったんだから。ああいうので悪いのは男の方と相場が決まっているんだ。だから謝らなきゃいけないのは俺の方さ、これは一応お詫びも込めての俺からの君に伝えたい気持ちだよ」

 

そんなアッシュの言葉にレインは慌てて

 

「そ、そんなお詫びだなんて……受け取れないよそんなの。だって悪かったのはアッシュじゃなくて私だもん!」

 

そんな慌てた様子の愛する少女の様子にアッシュは苦笑して

 

「じゃあ日ごろのお礼って事で受け取ってくれないかな?」

 

そんな風に笑顔を浮かべられて渡されればレインとしても

 

「う、うん、ありがとう。アレ、これって……」

 

驚いたような顔を浮かべるレインへとアッシュは笑顔で告げる

 

「ああ、昔俺が君に冠にして送った花だよ。花の名前はブルースターって言うんだってさ」

 

少女の驚く様子にしてやったりとばかりに気づいてくれた喜びと共に。そうして店員から確認した花言葉の意味を伝える

 

「花言葉の意味は「幸福な愛」「信じあう心」、俺から君に送るものとしてはピッタリだと思ったんだけどどうかな?」

 

レインもおずおずとした様子で感謝の言葉を告げて受け取る。そうしてどこか恥ずかし気にお互いに顔を見つめ合わせて……

 

「え、えっとご飯出来ているよ!私もお詫びとして……じゃなくてアッシュへの日ごろの感謝として今日はアッシュの好物一杯作ったから!」

 

「そ、そうか!ナギサの作るご飯は美味しいからな!楽しみだよ!でもなんだかアリスさん達に悪い気がするな!」

 

どこか白々しさの漂う様子でそんな会話を行うとレインは恥ずかし気に

 

「あ、あのね……今日は姉さん達居ないんだ……別のところに泊まってくるって……」

 

そんな事を告げてくるものだからアッシュも戸惑って

 

「そ、そうなのか……」

 

「うん、そうなの……」

 

昨夜の事をお互いに思い出したのかどこか気まずげなぎこちない雰囲気を漂わせながら食事を行なうのだった……

そうして食事中もどこかお互い無理のある白々しい会話を行ないながら妙に落ち着かない雰囲気を漂わせて

 

「アッシュ……その、少ししたら私の部屋に来てくれないかな……きちんと話したいことがあるんだ……」

 

意を決したようにナギサ・奏・アマツはアシュレイ・ホライゾンへとそんな事を告げてくるのだった。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

ブルースターの花が大切そうに飾られた部屋の中で二人の男女が顔を赤くして互いに縮こまってしまっていた。しばらくずっとそんな風にしていたのだが意を決したように男を部屋へと誘った少女の側が意を決したように口を開く

 

「あ、アッシュ……私って魅力ないのかな……?」

 

恐る恐ると言った様子で問いかけてきたその少女の言葉にへ?と男のほうは何を言っているのかさっぱりわからないといった様子で間の抜けた声を漏らす

 

「だ、だって……昨日あんな風に迫ったのに結局アッシュ、私に手を出してくれなかったから、ひょっとして私に女としての魅力がないんじゃないかって……」

 

そんな風に涙目で告げる愛しい少女の言っている内容を理解した瞬間アッシュは猛然と反論を行なっていた

 

「馬鹿を言っちゃいけない。俺にとって君以上に魅力的な女性なんて居やしないよ」

 

そう、きっぱりと断言していた。

 

「正直に言うと昨日は本当に我慢のギリギリだったんだ。でもそれでも君に手を出さなかったのは、君が風邪を引いた状態だったからさ。大切だからこそ、初めてをそんな弱っているところに付け込むような形でしたくなかった。そんな男のつまらない意地と誇りだよ」

 

真摯な瞳でそう告げてくるアッシュの言葉にレインは安堵したような様子と恥じらいを浮かべながら

 

「そ、そっか……それじゃあ、そのアッシュはさ……私とそういう事したいの……?」

 

キスや添い寝よりも先の大人じゃないとしちゃいけないこともなどという、愛する少女のどこまでも可愛らしい問いかけにアッシュは一瞬言葉を詰まらせて

 

「俺は……」

 

女にここまで言わせてヘタレるのは男ではないとばかりに意を決して

 

「ああ、したい。俺だって男なんだから、君と、ナギサと心と身体を重ねあわせたい。君は俺のものなんだと誰にも渡さないんだとそう周囲に宣言したい。君が相手だからこそ、俺はそうしたいんだ」

 

真摯な瞳で見つめながら、そう告げる。そんな男の言葉に少女も頬を赤らめながらどこか嬉しそうに

 

「そっか……うん、いいよ。私アッシュとだったら……ううん、アッシュじゃないと私も嫌だから。でもね、一つだけお願いを叶えてくれないかな?」

 

「お願い?」

 

「うん」

 

そうして少女は可愛らしいおねだりを口にする

 

「私……その、は、初めてだから……優しく……してね……」

 

そんなどこまも愛おしく可愛らしい少女の言葉にああと答えて二人は共に長い一夜を過ごすのであった……

 




具体的なHシーンについては原作のアッシュとレインちゃんの初体験時のシーン参照でよろしくお願いします。
流石に数年生殺しを可哀想&きちんと耐えたアッシュには然るべき報いがあって当然だと思いこうなりました。

ちなみに本能に負けて風邪を引いた状態のレインちゃんに手を出していた場合レインちゃんはもちろん許してくれますが、初めてはアッシュに情熱的に告白されてそれでそれで……などと夢見る乙女だったレインちゃんは少しだけ「初めては……あんな状態じゃなくて……ちゃんとした形でアッシュと結ばれたかなったな」などと残念に思う気持ちを抱きます。
アッシュは当然罪悪感で死にそうになります。
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