シルヴァリオシリーズ短編集   作:ライアン

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真面目そうなタイトルですが色々とキャラ崩壊が酷い話になります。
具体的にはゼファーさんと総統がソフマップの特異点状態になっていてアッシュが完全なるイタリア男と化しています。
諸々の悲劇がなかったことになっているのにマイナ姉ちゃんはヴェティママンになっていたり、アッシュは海洋王になっていてヘリオスさんと共存しているという、色々と何でもありなご都合時空の話になります


シルヴァリオカーニバル
アドラーの一番長い日(上)


「あーもう何もかもダルい」

 

クリストファー・ヴァルゼライドのそっくりの外見をした別人としか思えないようなただのおっさんがごろねしながらそう呟いた

 

「何を言っているんですか総統閣下!涙を笑顔に変える為に男は大志を抱くんじゃないですか!少しでも多くの戦えない人を笑顔にする、そのために僕たちは軍人になったんじゃないですか!」

 

ゼファー・コールレインそっくりの外見をした何やら爽やかなオーラを漂わせたどこからどう見てもただのエリートな好青年がそう説得にかかった

 

「ああ、ナギサ。君はなんて美しいんだ。まさに地上に舞い降りた僕の天使、いや女神だよ」

 

「ここここ、こんなみんなが居る前で一体何言っているんだよ馬鹿!馬鹿アッシュ!」

 

顔を真っ赤にしたレインに対して何かキラキラとしたエフェクトと薔薇の描かれた背景を背負ってアシュレイ・ホライゾンそっくりのイタリア男がキザったらしく口説いている

 

「いや、そうは言うけどねゼファー君、俺も人間だからー毎日毎日仕事ばっかりでいい加減に疲れたのよ。というかなーんで俺軍人になんかなったんだろ。あー毎日ダラダラ暮らして、誰かに養ってもらいたい。働いたら負けだと思っている、故に勝つのは俺だ」

 

「総統閣下!一体どうされてしまったんですか総統閣下!あの熱き眼差しを一体どこにやってしまったんですか!あなたはそんな人じゃなかったはずだ!!!働いたら負けなんてそんなわけがあるはずないじゃないですか!僕らの苦労が誰かの笑顔に変わる、それが僕達の勝利だったはずです!」

 

(((((いや、お前もそんな奴じゃなかったよ)))))

 

そんな風にその場に居た人間達の心が一つになる。「何でしょうねあの二人、ありえない光景なのに何故かどこかで見たような気がするのは」などとヴェンデッタは遠い眼をしながら呟き、眼を閉じて眠ろうとしているヴァルゼライドのようなナニカをゼファーのようなナニカが必死に揺さぶりながら熱く声をかけている。

 

「ああ、ごめんよ、ナギサ。天使だの女神だのなんて陳腐な表現じゃ君の美しさや可愛らしさをとてもあらわしきれるものじゃなかった。確かにそんな程度じゃ、君に対する侮辱も良い所だ。でも参ったな、君の素晴らしさを表すには例え海がインクで空がそれを記す紙だったとしてもとてもじゃ無いが足りやしないよ。だからどうか行動によってそれを示すことを許して欲しい、愛しいナギサ」

 

そうして顔を真っ赤にしているレインを抱き寄せながらアッシュのようなナニカはレインに口付けをしようとしている。

 

控えめに言って混沌(パライゾ)な状況だろう。ちなみに他ならぬ第二太陽(われわれ)自身がこの状況を望んでいるために、何とかして欲しいというこの場の人間達の総意が叶う事はないだろう。そうしてこの場に集まった人間たちは何故こうなったのかをある種の現実逃避も兼ねて思い起こしていた……

 

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アオイ・漣・アマツはその日何時ものように彼女が最も尊敬(尊敬ではなく愛だろうと従姉妹が揶揄してくるがそのような感情では断じてないと彼女は主張している)する上官にしてこの国の至宝である第37代総統クリストファー・ヴァルゼライドの下にその日のスケジュールを伝えに訪れようとしていた。海洋王(ネプトゥヌス)の異名を持つ商国出身の平和の英雄アシュレイ・ホライゾンの仲立ちとこれ以上の領土の拡張は逆に統治に支障をきたすという鋼の英雄ヴァルゼライドの判断により齎された三国の和平条約の締結。そうして齎されたアドラーの平和(パクス・アドラー)とも言うべき平和と繁栄の時代。そんな時代になっても、いやそんな時代だからこそ繁栄の立役者にして統治者たるヴァルゼライドは多忙を極めていた。だがそんな激務をヴァルゼライドはそれこそが自分のなすべき責務であると言わんばかりに平然とこなしていた。

 

(あの方に仕えられる私は幸せ者だ)

 

長きに渡る漣の家でも自分ほどの果報者は居ないだろう、そんな風にアオイはこの方以上の存在などありえないと断言できる至高の主君を誇るーーーチトセが見ていたらそれは主君を誇る忠臣の顔ではなく好きな人を自慢する女の顔だぞなどと揶揄するであろう表情を浮かべながら、ヴァルゼライドの執務室を訪ねた

 

「おはようございます総統閣下。本日のスケジュールですが……」

 

そうして何時ものように厳粛な面持ちで執務に励む主君へと声をかけようとしたところで

 

「あーもう総統とか辞めたい。というか別に俺居なくてもアオイちゃんとかチトセちゃんとかギルベルトくんとかが居るんだから平気でしょ。うんそうだ、オレもアルみたいに軍人辞めよう」

 

ソファーにごろねしながらそんな事を呟いているヴァルゼライドのようなナニカ(ただのおっさん)がそこにいた。

 

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完全に忘我の状態へとなったアオイに対してそのヴァルゼライドのようななにかは気だるげに伝えていく

 

「というわけでアオイちゃん、後はよろしくね。俺、総統辞めてただのおっさんに戻ります。他の皆にもそう伝えといて」

 

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「アオイちゃん?アオイちゃーん、どうしたの君も疲れているの?まあ無理も無いかーこの仕事本当に大変だもんねー。こちとら切り捨てたくて切り捨ててるわけじゃないけど、犠牲になったほうにしてみるとそんな理屈は関係ないし。みんなの為に頑張っているっていうのに「お前たちは迷惑だ」とか「俺たちはそんな事望んじゃいない」とか言われちゃうもんねー。本当に君主は国家第一の下僕とは良く言ったもんだよ。あーなんかそんな風に愚痴るのももう面倒だ。それじゃあアオイちゃん、君も大変ならもう後は全部チトセちゃんやギルベルトくんに任せればいいから。それじゃあお休み」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、誰だコイツ

 

「貴様!ヴァルゼライド総統閣下をどこへやった!一体どこの手の者か知らんが総統閣下を誘拐し、その名を騙る等死罪以外有り得ぬと知れ!!!!」

 

そうしてアオイ・漣・アマツを敵意を露に目の前のヴァルゼライドのようなナニカへと叫んだが……

 

「いやアオイちゃん、不本意だけど俺が一応は37代総統のヴァルゼライドだって」

 

「何を言うか!貴様などがヴァルゼライド閣下であるものか!あの方は常に民と国へと滅私奉公して弱音など一切吐かぬお方だった!!!貴様のような者とは似ても似つかぬわ!!!!」

 

アオイはそんな風に必死に目の前の人物が自分の敬愛する人物であるものかと必死に否定にかかる。今の彼女はさしずめ「貴様たちはガンダムではない!」と叫んだガンダムを救世主として崇めている少年兵であったガンダム主人公の心境である

 

「うーんそんな事言われても……あーもうしょうがない、これやると疲れるし痛いから嫌だったんだけど流石に死刑になるのは嫌だからなー」

 

そうしてあくまで気だるげにソファーにごろ寝になりながらそばに放り投げてあった刀を一本手にとって

 

「創星せよ、天に描いた星辰をわれらは煌く流れ星ー」

 

謳い上げられるのは威厳も何もあったもんではない気だるげな詠唱、しかして起こった現象はまさしくアオイの知るヴァルゼライドの星辰光であった。

 

「はい、これで俺がヴァルゼライドだって信じてくれたでしょ。あーこれだけで身体のあちこちが痛い、それじゃあ後はよろしく」

 

そうして完全に寝はじめたヴァルゼライドのようななにかを他所にアオイは混乱の真っ只中にあった。

 

(星辰光はその人物固有の物、つまりアレは紛れも無い総統閣下という事に……)

 

ぐごーぐごーといびきを立てて寝始めたただのおっさんを見てアオイは信じられない信じたくない、だが厳然たる事実を突きつけられて苦悩する。

 

(閣下はご多忙を極められていた。あるいはその過労やストレスによるものなのか)

 

かつて旧暦において今のアドラーのようなパクス・ロマーナと呼ばれる時代を作り上げたローマ帝国。その統治者たる皇帝の多くは過労に倒れた例が少なくないという。巨大な帝国を統治するその重責、軽いはずも無くだからこそ多くの権力者は女や美食、酒と言ったものに溺れて暗君へと墜ちて行く。ましてやヴァルゼライドはそういったものに一切の興味を抱いていないかのように職務に励んでいた。その清貧さたるや、「閣下ほどの地位にあられる方がそこまで清貧に暮らされては下の者もやりづろうございます」とある文官が苦言を呈した程だ。

加えて今のアドラーは建国以来から続いていた領土の拡張主義から大規模な方針転換を行なったばかりだ。システムの一大転換を迫られ、当然ながら最高指導者たるヴァルゼライドの忙しさたるや、幼き頃より国家の要職へと着くことが約束され、励んできたアオイをして筆舌に尽くすことが出来ぬ有様である。そうして貯まりに貯まっていたストレスがついにこのような形で暴発した……一応ありえないとは言い切れない仮説だ。

 

そう、何せアオイ・漣・アマツは私人としてのヴァルゼライドの姿を知らないのだ。彼女が知って居るのは公人としてのヴァルゼライドの姿のみ。だからそう、実は自分の知るヴァルゼライドの姿はずっと彼が仮面を被って、無理(・・)をして演じていた姿で実は私人としてのヴァルゼライドの本当の姿は今目の前にいるような人物であったという可能性はあるのだ。そんな思考に至った瞬間にアオイ・漣・アマツは思わずよろめく。

そうして真偽を確かめるべく、「総統閣下はお風邪を召されたため本日は一切の面会を禁じる」との通達を出して、ヴァルゼライドの私人としての素顔を知る数少ない夫妻の下へと急ぐのであった。仮にこの場にチトセ・朧・アマツがいたならば彼女はからかい混じりにこう言っただろう

 

「おやおや、我が従姉妹殿はあくまでヴァルゼライド総統閣下を公人として尊敬し、忠誠を誓っていたはず。私人としての素顔がそこらにいるような人物だったとしても公人としての責務を果たしていればなんら問題ないのではないかな?」

 

と。何故過労によるものだと判断して医師にすぐ見せずに、まるで私人としてのヴァルゼライドの素顔がそうであっては困るかのような必死さを見せているのか自分で理解せぬままに、アオイ・漣・アマツはヴァルゼライドの旧友たるロデオン夫妻の営む酒場へとそうして急行するのであった……




色々と優しい時空なので総統の幼馴染ちゃんは死なずにアルバートのおっちゃんと結婚しています。
基本仏頂面の総統がこの二人の結婚式の際には常に無い心からの微笑を浮かべて祝福したとか。
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