シルヴァリオシリーズ短編集   作:ライアン

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作者の妄想成分多数による奏の屋敷での日々の話になります。人名や地名は適当に名付けています。
アッシュの父親はバレンタイン家や奏の家に比べて切羽詰った理由がなさそうなのに
エスペラント技術の流出とかいうハイリスクハイリターン案件に関わった辺り野心家で、その野心に相応しいだけの才幹を抱いていた人といったイメージで描いています。


だって僕は男の子だから、ピンチの時は君を必ず守って見せるよ

 

 

「あなたは誰?」

 

その美しい漆黒の髪をした可憐な天使との出会いと日々を

 

「僕の名前は、アシュレイ・ホライゾン」

 

アシュレイ・ホライゾンは例え地獄に落ちても忘れることはないだろう

 

 

 

「ほら、アッシュ。着いたわよ、起きなさい」

 

そんな母からの呼び声と共に優しく揺らされながら、アシュレイ・ホライゾンは眠りから覚めた。寝ぼけ眼を擦りながら窓の外を眺めてみると「シュレスヴィヒ」と描かれた看板が見える。初めて来るところならば、その景色に心を動かされるものだが、ここに来るのはもう二桁を超えている、目新しさもなくどうやら眠ってしまったらしい。ここに来ること自体はとても楽しみにしていたのに。

 

両親に連れられて何時もどおりに酒臭さを漂わせた兵士から形だけの検閲を受けて駅を後にする。

 

「相変わらずここの兵隊さんは緩いわねぇ。検閲が形だけなのは奏様からお話が行っているからってことだろうけど」

 

「何、露骨に賄賂を要求したりしていないだけここの兵士はまだ幾分マシな方さ。昨今はそうでもなくなって来たが、数年前のアドラーはそれが当たり前だったからな」

 

最もそれはそれでこちらとしてはやりやすくもあったがと最後の呟きは聞こえなかったが、父と母のそんな会話を聞いてアッシュはもう待ちきれないとばかりに急かす

 

「ねぇ二人とも、早く行こうよ。お客様を待たせるようじゃ商人失格でしょ?」

 

何時も自分が友達との別れを惜しんで駄々を捏ねると、決まってそう言ってくる父の言葉を逆手にとって二人を急かす。早く会いたい。会ってまたあの笑顔が見たい、そう思って一生懸命選んだお土産を大事に抱えながら。

 

「はいはい、ごめんなさい。そうよねアッシュはずっとナギサちゃん達に会いたかったんだもんね」

 

母はそんな風に苦笑しながら優しい瞳でこちらを見つめて

 

「笑顔だけを対価にしているようでは商人は名乗れないぞ。きちんと形に残るものを対価として貰わないとな」

 

からかうような口調で父はそう自分に言ってくるものだから

 

「僕はまだ見習いだし、それに父さんもいつも言っていたじゃないか、「どちらも笑顔になるのが一番良い取引だ、利益だけを追い求めて自分だけが得をしているような奴は、その実信用という一番大事な商品を対価にしているだけだ」って」

 

お金を大事にするのは良いがそればかりを追い求めるようでは二流、いや三流の商人だと

 

「ナギサにアヤにミステルが笑顔になってくれたら、僕も嬉しくなって笑顔になる!ほら、どっちも笑顔になる一番良い取引だ」

 

そう笑って告げる、三人の大切な友達の笑顔を思い浮かべながら。うん、代金としては十分すぎる、僕の方が得をしている位だ。あの笑顔が見れるならちょっと薄くなった財布の痛みなんて大したことじゃない

 

「まあ今はそれで良いさ。商人としての心構えはまたおいおい教えてやる」

 

「アッシュは本当にナギサちゃん達が大好きなのね。でも気をつけなさい、世の中にはそうやってお財布の中身が空になるまで女の子にプレゼントを贈っちゃう男の人も居るんだから」

 

アッシュはそんな風にはならないようにねと、何故か遠い未来で友人になるような気がするオレンジ色の髪の毛をした奴がどこかでくしゃみをしたような妙な予感を覚えつつ、苦笑する両親と共にいつもの通りこの街で一番大きな屋敷へと向かうのであった……

 

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「ねぇアヤ、おかしいところないかな!?」

 

「ええ、何時もどおりとても可愛いらしゅうございますよナギサ様」

 

「何時もどおりじゃ駄目だよ~だって今日はアッシュが来るんだよ!?」

 

「と言われましても、あまりめかしこみすぎてもアッシュ様と遊ぶ際に不便でございましょう?あの方は身体を活発に動かす遊びを好まれますし」

 

「それはそうだけど……」

 

「変に気取らず何時もどおりで、めかしこんだ姿をお見せになりたいのであれば今度の建国祭の宴の時でよろしいではございませんか。ホライゾン様に対しても招待状を送ったと旦那様も仰っていましたし」

 

建国祭にアッシュが参加する!それを聴いた瞬間に目の前の景色がとても鮮やかになる

 

「アッシュもパーティに参加するの!?」

 

「はい、もうホライゾン様とも結構な付き合いですし、今後も考えると、親密になっておきたい、それにナギサ様も喜ぶだろうからと」

 

嬉しい、お父さんはちゃんと約束を守ってくれたんだ。今からとてもその日が楽しみだ、でもそれはそれとしてやっぱり……

 

「うーんそれはとっても嬉しいけど、でも……」

 

「はて、何時になく強情なこのご様子。久しぶりの再会だからというだけではなさそうですが……とは言っても何か特別な事はこれといって……ああ」

 

アヤが何かに気づいたように優しく微笑みながらこちらを見つめてくる

 

「そういえば、今回はナギサ様の番(・・・・・・)でしたね。なるほど、すでに気分は長い間会えなかった旦那様と久しぶりに再会する奥様というわけですか。そこまで役になりきっておられるとは、このアヤ・キリガクレ感服いたしました」

 

「あうう………」

 

理由を見事に言い当てられて顔が真っ赤になる。そうなのだ、前回がミステルで前々回がアヤだった。だから、今日のおままごとは私がアッシュの奥さん役をする番なのだ。

 

「……アヤだって、アッシュが来るのが楽しみで昨日は上の空だったのに」

 

そんな風に反撃を試みてみたものの

 

「そうですね、私もアッシュ様とお会いできる今日という日を大変楽しみにしておりましたから、そのせいで昨日は恥ずかしながら浮かれてしまっておりました、もうしわけございません」

 

少し前までは顔を真っ赤にして俯くだけだったのに、今ではこの通り。私の従者でもある友人はすっかりとたくましくなってしまった。

 

「ナギサ様、私はアッシュ様もナギサ様もそしてミステル様もとても大切に想っております。ですので四人全員で幸せになれたらと想っておりますよ」

 

アヤは改まって何やらおかしなことを言っている、四人でずっと一緒に幸せになれたら良いなんてそんなの私だってそう想っているし、アッシュやミステルだってきっとそう思っている当たり前の事だと言うのに

 

「ええ、私は一番であることにはこだわりません。忠誠も愛情もどちらかを壊す事無く両方とも手に入れて見せますとも」

 

うふふふと笑う友人の姿を見ると何やら寒気がしてきた気がするのは気のせいだろう。アヤは単にアッシュも私もミステルの事も皆大好きだといっているだけなのだから

 

「話がそれましたが、とにもかくにも今日は一先ず何時もどおりの格好でご納得頂けませんか?逆に今日めかしこみすぎても建国祭の時のせっかくの晴れ姿の有難味が薄れてしまうのではと思いますし」

 

「うーん……わかった、アヤの言うとおりにする」

 

結局そう言って私は駄々を捏ねるのを辞めて部屋を出るのであった。建国祭の時こそめいいっぱいお洒落した姿を彼に見せようと誓いながら……

 

 

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両親と一緒に奏の家の人への挨拶を終えると、難しい話をし始めた大人たちを尻目にアシュレイ・ホライゾンは部屋を後にして、家の庭へと向かった。

しばらくするとこちらに向かって笑顔で手を振る大切な友達三人の姿が見えたのでアッシュも負けじと大きく手を振り返す、そうして告げる

 

「ただいま、みんな」

 

「「「おかえりなさい」」」

 

少年はあえて「ただいま」と言い、少女達も「おかえりなさい」と答える。いつからかこの四人にとってはそれが当たり前となったのであった。

 

「今日は皆にお土産あるんだ」

 

アッシュはそういって笑顔で用意した贈り物を少女達へと贈る、期待の通りにいや期待以上に三人は喜んでくれて花の綻ぶような笑顔をアッシュへと向けてくれた。

 

(うん、やっぱり僕はすごい得をしているよ)

 

ちょっと財布が軽くなったのと引き換えに大切な友人達の心からの綺麗な笑顔が見られたのだからとアッシュは心の底からそう思う。

そうしていつもの様に、ずっとこの屋敷で過ごして居る友人達三人へと屋敷に居なかった間に訪れた場所や旅の事を聞かせる。

時折、アッシュが新しく出来た女の子の友達について話した時、などはナギサが頬をふくらませ拗ねた様な顔をしたりもしたが、三人はそれを笑顔で聞いていく。

そうして一通り話し終えると、今度は皆で何をして遊ぶかを決めて大人達が声をかけるまでずっと一緒にいる。これが四人の子どもにとっての当たり前だった。

 

そんな優しい当たり前がずっと続くのだと四人の内三人は無邪気に信じていた。

ただ一人、年長の少女だけはこんな日々がずっと続けばいいと願っていた……

 

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新西暦1027年

軍事帝国アドラーを未曾有の災厄が襲うことになる。

「アスクレピオスの大虐殺」後にそう称される事になった軍民合わせて数十万にも及ぶ被害を出した悲劇はある一人の男の英雄譚によって打ち払われる。

軍部改革派筆頭クリストファー・ヴァルゼライドによるまさに神話の英雄の如き怪物退治。

この伝説によりヴァルゼライドは名実共にアドラーの英雄となり、不幸にも(・・・・)血統派の重鎮が軒並み死亡した事も合わさり、瞬く間にアドラーを掌握していく。

 

これに慌てたのは幸運にもこの大虐殺を免れた帝都にいなかった血統派の重鎮である。

当然だろう、如何にヴァルゼライドが冠絶した男でチトセ・朧・アマツを筆頭に優秀な人材の助力を得ていると言えど、長くアドラーに君臨し続けていた血統派とて決して侮れるような勢力ではないのだ。少なくとも後数年はヴァルゼライドは帝都での政争で手一杯である。

それがバレンタイン、ホライゾン、奏の三家の認識だったのだ。なのにこのままではもう一年も立たないうちにヴァルゼライドは総統の地位へと登り詰めるだろう。

もはや一刻の猶予もない。ヴァルゼライドが総統へと就任する戴冠式、その日ならば国を挙げての祝いとなるために警戒も甘くなるはずだと決行を大幅に前倒しにする事を余儀なくされる。

彼らの認識は概ねでは正しかった、だが彼らには二つの誤算があった

 

一つ目、十全に評価しているつもりでもそれでもなお英雄(かいぶつ)への認識が甘かったこと

二つ目、セントラルの地下深くにはヴァルゼライドに伍するだけの彼らは知る良しもない怪物が存在していたこと

 

よって彼らの末路はここに定まった、清廉なる英雄は国賊を決して許さずその断罪の刃を執行するだろう。少なくとも国賊たる奏の家の人間は誰一人としてそこから逃れることは出来ない。

 

「ああ、全部な。俺は軍人には向いてない。笑えるだろう?こんな男が新世代の星辰奏者なんだから」

 

振り下ろされたその刃に人狼(まけいぬ)が刻んだ皹と

 

「羨ましい。僕がそんなに強ければ皆を護る事が出来たのに」

 

大切な少女をただ守りたいと願った少年によってそれが露にされるような事でもなければ誰一人として

 

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帝都で起こった惨劇。そのニュースが駆け巡って以来屋敷中がどこかピリピリしている。

そんな空気を感じ取ってか目の前の少女もどこか不安げにしている。だから何とかして元気付けたい、勇気付けたいと想って僕は笑って宣言するのだ

 

「大丈夫だよナギサ、僕がついているから。僕は、ナギサの笑顔が大好きだから。君のためなら、あの鋼の英雄にだって負けない位に強くなって見せるよ」

 

そんな僕の言葉に、彼女は驚きながらもどこか嬉しそうにはにかみながら言うのだ

 

「それじゃあ……その、もしも、もしも私が危なくなったらその時は……アッシュは私を助けてくれる?」

 

そんな風に投げかけられた大切で愛しい女の子(ナギサ)の可愛らしいおねだりに()は胸を張って答えたのだ

 

「もちろん。だって僕は男の子だから、ピンチの時は君を必ず護って見せるよ」

 




ロリナギサちゃんとの初めての出会いでナギサちゃんを天使とか想うアッシュを描きたいから始まったらなんかこんな風になってしまいました。
肝心のアシュナギ成分が薄めですがすまない、ショタロリの頃の二人のやり取りが上手いこと思い浮かばなかったんだすまない。

アッシュ父「ライブラも半壊しているし、流石に総統に就任する日なら祝い日で警戒甘くなるだろうし、いけるやろ」
なお、鋼の英雄とカグツチとかいう逆襲劇でもない限り対抗できない最強タッグ。
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