シルヴァリオシリーズ短編集   作:ライアン

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グランドルートでのヘリオスさんの推測交じりの心情描写になります。短いです


勝利のその先を知る為に。

 "勝利"とは、何か?

 

 "栄光"とは、何か?

 

 それを得れば、果たして人は報われるのか。

 

 救えるのか。本当に、望んだ未来を掴めるのか。

 

 この切実なる問いに対して前任者たる英雄は進み続ける事と答えた。出した犠牲に見合うだけの勝利を齎す事、それこそが唯一出した犠牲に対する報いだと信じて……

だが、そんな英雄と神星の出した答えは他ならぬその犠牲者である冥王達によって「迷惑だ」と一蹴されて、英雄譚はたった一度の敗北で木端微塵に砕け散る事となった。

そうして英雄譚を砕いた冥界讃歌の出した答えはすなわち、”勝利”とは気づく事。今まで生きた過去を、あるがままに受け止める事、それこそが彼らの出した答えだった。

理解は出来る、しかし俺は真実の意味でこの意味を受け止めていなかった。

諦め、逡巡、それは一体何なのか全く持って女々しい。光を拝して一体何が悪いのか?とそんな英雄と同様の想いを俺も抱いていた。そしてそんな、光の魔人であった俺に真の意味で弱者の悲哀を気が付かせてくれた者こそが我が誇るべき比翼だった。

 

最初の頃に奴を見ていて覚えたのは強い歯がゆさだった。何故審判者の良い様に踊らされているのか、記憶を歪まされ、奴の整えたお膳立てに従っているのか、と。男の往く道などただ一つ、決めたからこそ果てなく往くのみだろう、と。迷って揺れる奴のその様と一人の罪無き男を俺のような塵屑を生み出さんがためにそのように変えた審判者に対して強い憤りを抱いていたのを覚える。

 

だが、そんな中で我が片翼はついに審判者のくびきから解き放つための飛翔を始めた。自分のためではなく大切な仲間を守る為に、迷いを振り切りながら……だが、そうして飛翔を果たした後も我が半身たる蝋翼は当たり前のように迷い、揺れ続けた。

 

敵手たる死想冥月を前にしてその色香に迷いーーー

交戦の最中に自らの内に俺の存在を確認した程度で戸惑いーーー

そんなどこまで煩悶を振り切れない状態だった。かと思えば、大切な者の窮地の際にはこちらも目を見張るような勇気と意志の強さを見せ付けた。

どれほど迷い、揺れながらも奴は守るべき大切な者のために勇気を出していた。

俺の赫怒の衝動に引きずられながらも、根底にある死想冥月を大切に想う気持ちを見失わなかった

光と闇の狭間に迷い、揺れた際にも死想冥月を守らんがために意志を燃やした

そうして迷い揺れながらも大切な者のために勇気を出していた我が片翼と光を滅ぼす闇だからという理由のみで冥界讃歌に怒りを燃やしていた俺、もはやどちらが正しいかなどと論ずるまでもないだろう。

 

 

そう、だからこそ俺はようやく気が付けた、英雄譚をなぞるだけでは先がないという事。素晴らしいから(・・・・・・・)正しいから(・・・・・・)というだけで救われる程人は単純ではないという事。

 

ああして、迷い、揺れる事こそが人のあり方なのだと。

 

だからこそ、俺は尋ねなければならないのだ。この世界に住まう一人一人の想いを。どれほど正しいと想っても、素晴らしいと想ってもそれは俺の答えだ。

かつて冥界讃歌をただ、打倒すべき闇と憎悪していた俺が、素晴らしき片翼のおかげで弱者の悲哀にようやく気づけたようにーーー

英雄譚のように雄々しく貫くだけでは、壮大なれど閉塞したものにしかならないと気づけたようにーーー

 

救うべき誰かと不特定多数としてくくるのではなく、彼ら一人一人と真に向き合い対話すること。そうする事できっと多くの事に俺は気づくことが出来る。それでこそ俺は真に進むべき未来を決めることが出来るだろう。重要なのは一人で決めない事なのだから、我が片翼のように素晴らしき者たちが苦しまず、報われるような素晴らしき世界を、この世界の主役たる皆と共に俺は作り上げたいのだ。

 

そうして創世神話を掲げる救世主は自らを強く睨む宿敵たる死想冥月を見据える。そうして自らが犠牲としてしまった半身たる蝋翼の慟哭とその伴侶たる少女の憤りをしかと受け止めんとする。彼女こそが何をおいても自分が決着をつけねば成らない存在であると。

勝手に(・・・)自らの聖戦の宿敵として救世主を見据えて盛り上がっている光の亡者二人とは裏腹に、救世主は冥界讃歌の担い手をこそ超えねばならない(・・・・・・・・)宿敵としてその意志を強く燃やすのであった………

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

おまけ ケルベロスの憂鬱

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・気まずい

 

光の生贄だった少年と接続して彼の記憶や思いを知った冥狼に今、去来するのはそんな思いだった

 

(………やべぇ、マジでなんて声かけよう)

 

 

あまりの残酷な運命に弄ばれたその様子にケルベロスはそんな事を想う。自分のオリジナルたる冥王も大概だったが、これはあまりに酷すぎるだろと。

 

(つーか、逃げろよはねぇだろ俺……)

 

思い返すのは強欲竜に少年が何よりも大事に思っている少女が傷つけられた最中で激怒と共に覚醒しようとしていた出来事。あの時はただ蝋翼がまたトンチキ覚醒しようとしていたのだけ察知したために、あんな風に声をかけたのだが、振り返るとまあ実に最悪なタイミングであった。惚れた女のピンチであるあのタイミングで逃げたら、光だの闇だのの前にただの玉無しである。

 

(あー良かった、マジであん時カッとなってトドメ刺したりしなくて良かった!)

 

思い返すのはファーストコンタクトの時。色々とこっちも衝動に引きずられてやばかったが、自分を呼び出してくれた少女の大切な男だからと大サービスの意味でどうにか堪えたのだが……今となっては本当にあの時思いとどまって良かったとシミジミ想う。

 

(しかしまあ、審判者の野郎とことん腐ってやがるな)

 

ケルベロスが想うのはそんな事、自分のオリジナルも大概外道をやったのでどの口でとなるかもしれんが、それとは別にボロボロに弄んだ審判者への強い憤りが溢れてくる。アレに比べれば英雄閣下と神星もまあ幾分マシだったんだなと。

 

(そうだ!俺がこんな気まずい想いしているのも審判者の野郎が悪い!)

 

そんな八つ当たりのようだがまぎれも無い本当の事を思いながら、さてどんな感じで話をしたもんかとケルベロスはため息をつきながら思うのであった……

 

 




ケルちゃん絶対色々気まずかったと思うんですよね
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