2-D組の生徒は長い廊下を一列で歩きながら、体育館を目指していた。
アリサはその最後尾にいた。
この20数名のクラスと一列になれば結構長い列だ。
先頭がどの辺にいるかなど、アリサからは確認出来ない。
そして、他のクラスも体育館へ目指すようで恐らくその一つのクラスの列の先頭がアリサのすぐ後ろに来た。
(あっつ…挟まれたくなかったな…)
アリサは後ろを気にせず前を歩く。
「しかし、あれは何なんだろうなぁ…」
(あれ?あの男は他のクラスに?)
アリサは歩きながら後ろの人の話に聞き耳をたてる。
「突然あんなデカイもんが空に出てくるなんてな。」
「しかもあれ、城だよな?」
「何か財宝とかあるかもな!」
「なら俺が最初に見つけるわ!」
「おいおい、俺に決まってんだろ?」
アリサは男の話ではないと理解すると共に、何の話をしてるのか疑問が浮かんだ。
(空中に城?夢でも見てたのかしら?)
そう思い、廊下の窓から空を見た。
見えるのは辺りいっぱいの雲…それと氷の塊。
「へ?」
アリサ思わず声を出してしまう。
氷の塊は凄くでかかった。
そして、その上には城の様なものが見えた。
「なに…あれ…」
「あれ?気づかなかったのか?」
アリサの後ろの人がアリサの独り言を聞いてたのか話しかけてくる。
「私達、それどころじゃなかったから。」
「さっき雲の上から…降りてきたって表現でいいのかな?現れてきたんだよ」
「へぇ…気づかなかった。」
そんな話をしながら歩いてるとあっという間に体育館へ着いた。
アリサはそのまま列に着いていく。
先頭の人が人数を数え、先生に報告する。
報告終えると白髪頭でメガネを掛けた老人、理事長がステージに立つ。
「ええ…静粛に。今回皆に集まってもらったのは他でもないあの飛行物体についてだ。」
理事長の後ろに写真が映し出される。
それはアリサが見たあの氷の塊を上から映し出されていた。
「突如として現れたこの飛行物体、今わかっているのはライフの使用して空中から侵入しようとすると何らかの防護壁を貼られ足を踏み入ることすら出来ない事。そして、プレダトゥールの存在を確認した。反応の数は約…10万はいる。」
生徒達がざわつく。
「じゃ…じゅま…」
「う…うそ…」
理事長はそれを無視して話を続ける。
「また、その城から繰り出された隔離防壁により、我が校のみが隔離された。応援は恐らく…来ない」
生徒全員、絶望に落ちたような顔をした。
応援は来ない。闘えるのはここの学生約800人と先生30人のみ。
けれど、まともに戦える生徒3/4…つまり約600人程度。
もし、プレダトゥールが攻めてきては勝てないであろう。
「これからどうするかは決めてある。まず各クラ…」
理事長が何かを説明しようとした時、地面が大きく揺れた。
地震。
アリサは立っていることが出来ずその場に屈み込む。
他の人も立っていることは出来なかったようでその場に伏せていた。
地震は数秒で止まった。
アリサは周りを確認する。
損害はそんなに無いように見えた。
が、奇妙な音が聞こえてきた。
ドサッ…ドサッ…
小さい。が確に聞こえた。
方角は飛行物体のあったほうから。
アリサは走って体育館の非常扉を開ける。
其処には飛行物体から氷の柱が地面に伸びていた。
柱の辺りの地面には氷が出来ていた。
そして、黒い影が蠢いてるのが見えた。
「な、なんだあれは」
人のような姿、まるで侍のような格好していた。
だが、兜の中はカマキリのような顔をしていた。
「プレ…プレダトゥールだ!!」
誰かが叫ぶ。
「せ、生徒は地下に避難しろ!」
先生方がアリサの横を通り前に出た。
「や、いやだ!死にたくない!!」
「キャー!」
その後では絶えず悲痛な叫びが聞こえる。
ゾワッ…
アリサは突然何かを感じる。
これは…殺気だと一呼吸置いて理解する。
その殺気は何処から放たれているかはすぐに場所はわかった。
あの飛行物体の端から向けられている。
アリサはすぐに見上げる。
そこにはあの中年男ともう1人いた。
遠すぎて普通の人には蟻くらいの大きさにしか見えないだろう。
だが、アリサは二人の姿をしっかり見えていた。
右目が隠れるように流された白い綺麗な髪、薄いピンク色の羽織。
その下は私達と同じ学生服。
左目に縦に切られたような傷。
アリサを見下すように見る赤い目。
アリサにとって見覚えあると言ったレベルでは比にならないくらい記憶にある姿。
アリサはその人名前を震えながら呟く。
「ルミ…」
アリサはその姿を見つめた。
間違いなくそれはルミだ。
ルミと中年男性は振り返り姿を消した。
「これがパーティー?」
アリサは目の前に広がる光景見て呟く。
先生方がプレダトゥールに向かい構えている。
プレダトゥールはこちらに向かって走ってくる。
アリサは考えた。
これが姉が私に向けたパーティーの出し物ではないのか?と。
「なら、受け取らなくちゃね。」
アリサは両足のレッグホルスターからリボルバー式の銃を取り出す。
そして歩いて行こうとした時、右手が何かに掴まれた。
「アリサ!早く行こ!」
セツラだ。
逃げ腰で下を向きながら震えた声でアリサに言う。
「プ、プレダトゥールになんかに、私達Dクラスは戦えない。けど、支援くらいは出来る!だ、だから!地下で怪我人の治療とか!」
セツラは必死にアリサに言う。
アリサは左手の銃をホルスターに入れ、下を向くセツラの頭に優しく手を乗せた。
「セツラ。私はあそこに行く」
「え?」
セツラは顔上げた。
泣いてるせいかひどい顔をしていた。
アリサは気にせずそのまま続ける。
「あの城には姉とあの男が居た。私は姉に聞きたいことがあるし、この状態じゃ先生と少数の生徒くらい。少しでも手を貸した方がいいじゃない?だから、私は行く。」
「また…置いてくの?」
アリサの手を握るセツラの手に力が入る。
ぎゅっと音がなるくらい強く握られる。
セツラの思いが手からしっかり伝わってくる。
「うん、置いてく。けどまた戻ってくる。」
アリサはセツラの頭を撫で優しい笑顔で答える。
セツラはその表情を見て納得した。
何を言っても無駄だと。
セツラは手を離した。
アリサはすぐ近くで怯えて動けずにいた人に声をかける。
「ねぇ、この子を連れて地下まで逃げてくれない?」
男は一瞬固まったがすぐに理解し行動した。
「わ、わかった。」
男とセツラは早歩きで体育館を後にした。
アリサは見送った後、歩き始める。
「お、おい!お前!まて!!」
先生方に加勢しようとするAクラスの人が話しかけるが気にせずに歩く。
そして、列の端にいるDクラスの担任・通称リッカちゃんの隣に立つ。
本名はリツカ・アスベルく・クルイクスだが、その幼い容姿からリッカちゃんと呼ばれている。
「ゆ、雪音さん!?ど、どうしてここに!?」
リッカちゃんは驚きながらアリサを見る。
「やぁ、リッカちゃん。私ちょっと用事あるもんで」
アリサはにこやかに答える。
「そ、それどころじゃ!」
「来るぞ!!」
リッカちゃんが何かを言いかけた時、1人の男が叫ぶ。
プレダトゥールがもうすぐ目の前に来ていた。
先生方の全員が戦闘態勢に入る。
そして、マジックを撃つ先生2人がライフを集め始めた時だった。
ザッ。
「な!?」
「なんだと?」
色々な声が上がる。
それもそうだ。
本能のままに、考えもなしにライフを食い荒らしてきたモノ、プレダトゥール。
今までの行動に知性を感じさせるものなんて無かった。
が、このプレダトゥール達は違った。
マジックを撃つ二人の先生方、二人が用意したのは火属性系統の魔法。バーン。
集めたライフ操り、地面から上空にめがけて火柱が走る魔法。
隊を分断したり、援軍を出来なくなったり、戦況によって色々使えるマジック。
距離的には発動者から約1kmは発動地点に出来る。
プレダトゥールはその1kmを避ける様に1.2kmで止まった。
今までこのような行動は過去1度も無かった。
「全員そこを動くな。様子を見るぞ」
理事長が大声でいう。
が、アリサは歩き始めた。
「ちょ!雪音さん!?」
リッカちゃんが話しかけるが無視する。
「お、おい!誰かアイツを止めろ!」
「俺が行く!」
大男が走ってアリサに向かってくる。
「ジャンプ」
アリサはそう呟くとアリサの両足にライフが集まる。
「な!?」
またもリッカちゃんが驚く声が聞こえる。
アリサはそっと地面を蹴ると空高く飛んだ。
大男は捕まえようと両手で捕まえようとしたところらしく、アリサが飛んで見た時には転んでいた。
「ふっ」
アリサは少し笑った。
約3秒くらい後、着地した。
その場所はプレダトゥールのすぐ目の前だった。
「さて、主役が来たわよ?楽しませてよね?」