数多の戦闘を繰り返し、力をつけて強くなろうとも不意な攻撃には遅れを取る。例え熟練されたライファーでも起こりうることである。
リツカはそのことをよく知っている。ライファーとしてプレダトゥールと戦うため前線にいた時にも起こった。そして必ず大切なものを失う。そして、今もまた失おうとしていた。
リツカを目掛け、右の方向から飛んできた刃物、それを隣にいたアリサが飛び込んで我が身を盾にし、防いでいた。アリサの左胸に刃物が刺さってるように見える。そして、アリサは膝から崩れて床に仰向けになる。
「雪音さん!」
リツカは刃物が飛んできた方向にダガーを投げ、アリサの盾になるべく前に立つ。
キアラは大剣を構え反対を警戒する。
セツラはアリサの様子を見る。
アリサは剣で心臓を疲れていた。
「アリサああ!!」
セツラは泣きながら叫んだ。
「おい!セツラ!そいつは死んだ!自分の身を守れ!」
キアラはセツラに向かって言う。
「アリサがああ!!アリサがああ!!!」
泣き叫ぶセツラの襟を掴みあげキアラは叫んだ。
「いいか!そいつはもう死んだ!!見ろ!心臓に一刺しだ!こんなんで生きてるやつなんていねぇ!お前もこうなりたくないなら周りを警戒しろ!今やばい事が起こってんだ!」
「や…やばい…こと?」
セツラは少し落ち着きを取り戻し、周りを見る。
リツカは剣が飛んできた方向に見ていた。その表情は深刻そうな顔をしていた。
リツカの方を見ると約5歩くらいの所くらいにリツカが投げたダガーが壁に刺さっていた。
リツカはセツラとキアラの方を見て言った。
「…退きましょう」
妥当な判断だった。2人は賛同した。
「私がアリサを抱えて行きますね。」
セツラがそう言うとリツカは予想外の返答をした。
「雪音さんは置いていきます。」
「え!?」
「敵はどこから攻撃してくるかわかりません。何があっても攻撃できる体勢をとってゆっくりと戻ってください。」
「そんな!アリサを置いて置くなんて!」
「私も!自分の身を守ることが出来るかわからない状況なんです…だから」
セツラは唇を噛み、溢れる感情を抑えた。口から少し血が出ていた。
「わかり…ました…」
今の状況をどうにも出来ない自分の力のない自分を憎んだ。
三人はゆっくりとアリサを置いて出口に戻ろうとした。
その時、何かが開く音がした。
ギギギギッ…ドン
それは門の前にある二つの棺だった。
開いた棺には黒い包帯で包まれた人のようなものがいた。
そしてそれはら手で棺の縁を掴み、足を前に出し棺から出てきた。
門の右側は女性に見え、左は男性のように見えた。
三人は息を呑む。
男が右手を前に出すとアリサに刺さってる剣が彼の手元に飛んでいった。
女性が手を前に出すとマジックのスクエアが浮き出てきた。
「二人とも走って!」
キアラは2人に向かって叫ぶ。
だが、セツラはあまりの恐怖に座り込んでしまい、キアラも今まで相当我慢していたのが限界を迎えたらしく足が物凄く震えていた。恐らく動けないだろう。
リツカは我が身を盾にする決意をした。
包帯の女性から炎が飛び出し、リツカ達を襲う。
リツカは手を顔の前にやり、攻撃に備える。
物凄い風が吹く。
「ぐっ!!」
風圧に耐えるため足に力がはいる。
リツカは暫くして違和感を感じる。
「つめ…たい?」
リツカは少し腕に隙間を作り前を見る。
そこには見覚えのある人物が立っていた。
風が無くなり、直ぐに状況確認する。
キアラとセツラは怪我は無いように見える。
「ふぅ…二人とも無事ね…良かったわ」
そう言い放つリツカに反応せず2人は彼女の後ろを見ていた。
リツカも後ろを振り返る。
「なっ、なんで…」
そこに失ってしまったと思った大切な生徒だった。
「やっと、抜けた…結構痛かったんだよねぇ、あれ」
三人は戸惑う。
目の前に立っている。絶望的な状況を助けてくれた彼女がそこに立っていることに。
アリサが立っていることに。
「さぁて、姿を見せた所悪いんだけど帰ってもらうわよ。『黄泉の国』ね」
リツカはキアラとセツラの扉の奥まで運び、直ぐにアリサの元に戻ってきた。
「雪音さんどういうことですか!」
「リツカちゃん、まずは目の前の事片付けよ。」
アリサは銃で門の前に立つ包帯に巻かれた男女を指す。
「男の方、持ってるあの剣好きな様に飛ばれるみたい」
「なるほど、だからすぐ壁だったんですね。」
リツカは全て納得した。アリサ刺した剣が気付かれずあの距離で投げるには無理があり、直ぐ姿を消すのにも無理があった。
「見づらいのは剣が黒いせいかな。」
「女性の方はマジックですが、あれだけの複雑なマジックのスクエアを完成させる時間が早すぎます。」
4人に向かって女性が使った炎のマジック。
物凄い威力のマジックでそれを発動するにはスクエアの構造が物凄く複雑になる。あれを短時間で作るにはかなりの熟練度が必要である。
「恐らく近づく前に3発は撃たれてしまいます。」
「分かった。私は女性の方を牽制するから、リツカちゃんは男性の方をやって。」
「…それしかなさそうね。分かりました。ただし、決して無理をしないように」
「りょーかい」
2人は会話を終えると構え直す。
すると、黒い包帯の2人組も構え直した。