女子だけあべこべ幻想郷 ~UnderGround~   作:アシスト

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地 底 編。



気づかぬ間に地底

 

 

地底。

 

 

それは全てを受け入れる幻想郷において、嫌われ者が集う異例の土地。地上と不可侵の条例があるこの地に人間はほとんどおらず、腕に自信のある妖怪たちにあふれていた。

 

地底とはいえ、暮らしそのものは地上と何ら変わらない。春になれば桜は咲き、冬になれば雪も降る。唯一変わっているのは、昼夜関係なく酒盛りをする習慣があるぐらいである。

 

最低限の掟さえ守れば、地底での暮らしに不自由はない。今日も今日とて酒盛りの励むもの、命懸けの喧嘩に精を出すもの、のんびり釣りをするものなど、各々自由に暇をつぶしていた。

 

その日の彼女たちもそうであった。

 

 

「うーん……釣れないねぇ」

 

「………いと退屈」

 

「何でもいいから引っかかってくれると面白いんだけどねぇ」

 

 

 

病気を操る土蜘蛛『黒谷ヤマメ』。

 

内気な釣瓶落とし『キスメ』。

 

 

地底暮らしの長い彼女たちも例外ではない。暇を持て余した2人は、その辺に落ちていた木の棒と蜘蛛の糸を使い、まともな魚が泳いでいるのかもわからない河に向かって糸を垂らす。

 

淡い希望を胸に秘め、釣りを始めたのは、かれこれ2時間前の話。

 

 

「ふん、そんなに粘ったところで何も釣れやしないわよ」

 

「わからないよーパルスィ。もしかするとすっごい大物が釣れるかもしれないじゃん」

 

「なんでそんな無駄にポジティブなのよ……ねたましいわ……」

 

 

2時間もの間、横で2人の様子を見ていたのは『水橋パルスィ』。彼女も好きで2時間も眺めていたわけではない。

 

地上から地底へと続く大穴。その奥底には湧き水が池のようにたまっており、それを跨ぐように橋が架かっている。その橋こそ、橋姫と呼ばれるパルスィの特等席ならぬ特等橋。

 

何かするわけでもないが、時間があればパルスィはその橋に足を運ぶ。今日に限っては2人ほど先客がいただけの話であった。

 

 

「やっぱり餌なしじゃ釣れないなぁ。糸には自信があったんだけど」

 

「そんなのでよくもまぁ2時間も粘ったものね。妬ましさを通り越して呆れるわ」

 

「可能性は0じゃなもん。ねーキスメ」

 

「ねー」

 

「ああぁぁあああやっぱり妬ましいッ! アンタたちの仲の良さが妬ましいッ! 友達のいない私への当てつけってわけ妬ましいぃいいいいいいあああああああ!!!」

 

「今日もパルパルは絶好調だねー」

 

「ねー」

 

 

髪の毛が逆立つほど激昂しているパルスィを、横断歩道を手を上げて渡る小学生を見るような微笑ましい目で見るヤマメとキスメ。

 

それが彼女たちの日常。いつもと大して変わらない、くだらない会話であった。今日もこんなつまらなくも飽きることのない会話で一日が過ぎていく。少なくとも、今の彼女たちはそう思っていた。

 

 

 

 

しかし、そんな彼女たちに、神の行き過ぎた悪戯が襲う。

 

 

「………むむ? ヤマメちゃん、竿引いてる」

 

 

ヤマメの竿に本日初の当たりが来た。

 

河に向かって垂らしていた糸が強く引かれ、ピンと張る。力に多少の自信があるヤマメには気づかない程度の引きであったが、糸を見れば引かれているのは一目瞭然であった。

 

 

「え、嘘!ほんとだ!粘るもんだね!よっこいしょぉおおお!」

 

 

まさか本当にあたりが来るとは思わなかったヤマメは、勢いよく竿を引き上げる。

 

引っかかった得物は地底の空に舞い、ゴスッと鈍い音を立てて橋の上に落ちた。地底に打ち上げられたその獲物は、ピクリとも動かない。

 

 

「さぁさぁ何が釣れたかなー……ってなんだ、死体かい」

 

「しかも人間。おりんさん歓喜」

 

「妬ましいッ!妬ましい妬ましいッ !妬ましい妬ましい妬ましいッ!!妬ますぃいィィィ!!」カンカンカンカン!

 

「パルスィさんうるさい」

 

 

鬼の形相で藁人形へ五寸釘を打ち込むパルスィを余所に、2人は釣り上げたそれをジロジロ眺める。

 

釣れたのは、うつ伏せに倒れた男の遺体(・・)であった。

 

本来なら非常にショッキングな獲物だが、幻想郷の、ましてや魑魅魍魎の集う地底では、死体など大して珍しいものではない。ゆえに彼女たちが驚くことはなかった

 

 

「地上から落ちてきたのかな……まだ若そうなのに……なむなむ」

 

「男の需要の高い世の中だってのに、不運なやつだねぇ。どれ、ちょっとお顔を拝見」

 

 

死体と言えど、男。彼女のようなブサイク(・・・・)なら持ち合わせて当然の好奇心に駆り立てられ、ヤマメは男の顔を見るため、彼を仰向けの状態にしようとした。

 

 

 

 

それが、これから地底を襲うことになる『異変』の始まりであった。

 

 

 

 

ドサッ。

 

 

 

 

「……? どうしたのヤマメちゃん、いきなり顔面から倒れるなんて不吉。この男の人がどうかした」

 

 

 

 

ドサッ。

 

 

 

 

 

「妬ましい妬ましい妬ましい妬ま………ん? ちょっと何よアンタたち。こんなところで昼寝のつもり? 自由すぎでしょ妬ましい。そっちの死体は何? さっさと片付けなさ」

 

 

 

 

ドサッ。

 

 

 

 

 

 

「あ! みんなお昼寝してる! わたしもー!」

 

 

 

 

 

スヤァ。

 

 

 

 

 

 

橋の上に横たわる4人の妖怪と、ヤマメによって仰向けにされた男の遺体。

 

嫌われ者……何百何千年もの間ブサイクと罵られ続けられ、挙句の果てに地底に追いやられた彼女たちとって、彼は眩しすぎた。

 

 

 

横切れば、老若男女、国籍問わず、誰もが振り返るであろう。例えるなら、太陽のような顔立ち。

 

幻想郷のイケメンハードルをロケットで飛び越えるレベルの、(スーパー)イケメンだった。

 




モチベーション向上のため、別作品として書きました。

かなり後悔してます。


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