女子だけあべこべ幻想郷 ~UnderGround~   作:アシスト

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古明地さとりは頭痛が痛い

*——————*

 

 

 

 

「お願いですお姉さん。こいしちゃんを僕にください」

 

 

 

 

妹が変態を連れて帰ってきました。

私は一体どんな表情をすればいいのでしょうか。

 

 

 

 

こいしと違って私はインドア派。地霊殿から出ることは滅多になく、本を読んだり、お菓子を作ったり、ペットと戯れたりして日々を過ごしています。

 

決して引きこもりというわけではありません。用事があれば外には出ます。稀に鬼さんが『飲みに行こう!』と地霊殿を訪れるときは、みんなでお出掛けます。

 

しかし今日に限っては、大した用事もなく、鬼さんが訪れることもなく。私の膝の上で眠っている猫形態のお燐を起こさないようゆっくりと撫でながら、静かに読書に勤しんでいました。

 

 

 

なのに、なんですかこれは。

 

 

「おねーちゃん! 海斗おにいちゃんすごいんだよ! 私がどこに隠れてもすぐ見つけちゃうの! こんな人初めて!」

 

「ふふ、当然だよ。好きな人の居場所ぐらい気配でわかるよ」

 

 

何を言っているのですかこの人間は。

 

 

 

 

 

こいしがこの人間を連れて帰ってきたとき、あまりのイケメンに失神しそうになりました。

 

私も妖怪として永年生きてきましたが、これほどまでに整った、男性として美しい顔立ちを見たことがありません。そのオーラは神々しく、外見だけなら神に近いものを感じます。

 

…………それだけ(・・)なら、どれだけ良かったことか。

 

 

残念ながら、私には三つ目の瞳があります。私はこの瞳に絶対的な自信を持っていますが、私は今日生まれて初めて、”覚”としてこの力を持って生まれたことを後悔しました。

 

 

 

何故なら私の第三の目(サードアイ)は、彼の本性を見逃さなかったからです。

 

 

 

 

『こいしちゃんはぁはぁ。まずはデートだよね。こいしちゃんくんくん。お互いのことを一つ一つ知っていくんだ。はぁぁこいしちゃん良い香り。どんな趣味があっても僕はこいしちゃんを受け入れるよ。こいしちゃんふへへ。もちろん間違ってることはちゃんと注意してあげるんだ。こいしちゃんのおててはちっちゃくて可愛いなぁ。時には喧嘩をするかもしれないけど、衝突が起こった後にこそ、愛は育まれると思うんだ。こいしちゃんナデナデ。ゆくゆくは結婚して、子供は……2人ほしいなぁ。こいしちゃんああこいしちゃん。そこはこいしちゃんともしっかり話し合わないとね。あぁ、それにしてもこいしちゃんは可愛いなぁ。優しく抱きしめたらきっと薔薇の甘い香りとかするんだろうなぁ。お姉さんもちっちゃくて可愛い……いやいや何を考えてるんだボクは!ボクにはこいしちゃんという心に決めた人がいるだろう!お姉さんくんくん』

 

 

 

 

これが蕁麻疹と言うものなのでしょうか。

身体中が痒くなり、胸のゾワゾワも止まりません。

 

 

生まれて初めて可愛いと思われたのに、なぜこんなにも嬉しくないのでしょうか。あ、相手が変態だからですね。違いないです。

 

地底には変わり者が多いですが、こいしや私のことを可愛いと思う者など間違っても存在しません。いるとしたら精神異常者ですね。地上にある永遠亭にお世話になることをお勧めします。

 

 

「こいしちゃんは結婚したらどこで暮らしたい?」

 

「けっこんとかよくわかんないけど、お姉ちゃんたちとみんなでわいわい暮らしたい!」

 

「お姉さん。婿入り……いいですか?」

 

 

 

何を言っているのこの人間は。

 

 

 

 

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阪村開斗は頭脳明晰、品行方正、容姿端麗と、三拍子そろったイケメンである。

 

その一つ一つが並みいる天才のそれを凌駕しており、特に頭脳は歴史に名を刻めるほどのものだった。彼が大学で研究している生物学のテーマは、それはもう、神の領域を侵すほどのものだったとか。

 

 

 

同時に、阪村開斗は友人から『やばい奴』と言われるほどロリコン疾患者である。

 

しかし、そんな自覚のない開斗には、彼の歳(はたち)になってまで小学生や幼稚園児、ましては実の妹を恋愛対象として見ることを何も可笑しいことと思わない。

 

 

”好きな人がたまたま幼稚園児の妹だっただけ”

 

 

ただそれだけのことである、と彼は思っている。

 

 

 

故に。

 

 

「安心してください。こいしちゃんは、ボクの命に懸けて幸せにしてみせます」

 

 

小学校低学年相当のルックスであるこいしに恋愛感情を持つことを、彼は微塵も不思議に思わないのだ。

 

 

「おねーちゃんだいじょうぶ? 顔色わるいよ?」

 

「……ええ、ちょっと頭痛がね。ふぅ………えっと、貴方、自分が何を言っているのかわかっていますか?」

 

「急な話なのはわかっています。無理も承知なのも………。けど! この気持ちを、ボクは止めることができません!」

 

「止めてください!」

 

 

普段大声を出すことなど滅多にないさとりの声が、数十年ぶりに地霊殿にこだました。

 

 

 

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