もうモノクロの囚人はテイワズの狙撃手の中に入れちゃおうかな...
鳴り響く銃声。それは左肩へと命中する。普通の人生なら来ることのないダメージ。何故か痛みは感じなかった。体が半回転してそのままクレーターの坂を転げ落ちる。その間で石などが当たるがその痛みも感じなかった。撃たれた方向を見ると初老はいっただろう男は笑みを隠せずに笑っていた。
なんで?なんで人を撃って笑っていられるの?
そう思っていると体が止まる。その瞬間急激な痛みがくる。
「ぎゃぁぁぁぁ!!!」
お姉ちゃん!お母さん!お父さん!助けて。
助けを求めようとするがそれも叶わず、肺の空気が完全に抜ける。少なからず、臓器にもダメージが来ているだろう。
赤い血が池を作る。回りに落ちている小石を赤く染める。雑菌が入り込み、膿んでいくのだろう。撃たれたわりには出血は少なかったが、そんなのをわかる筈もなく、痛みでもがく。
涙が出てきて、それは頬を伝い血が作った池へと入る。混ざってわからなくなっていくそれは、これからの自分の用だった。
「はー、はー」
慌てて呼吸をするが痛みは止まらない。それどころか加速していく。思考が追い付いたのだろうか。自分は撃たれた。
痛い。血が出た。助けを。みんなはどこ。
いままで何度も戦闘があり、家族は敵を殺していった。その中では敵の死体を見ることが一度だけだがあった。しかし、それは味方ではない。敵なんだ。お父さんやお姉ちゃんを殺そうとしたんだ。ならば殺される可能性だってあると思った。淡白になってしまったとお姉ちゃん達が泣いていたのを思い出す。そうか。人は死ぬ前にこうなるんだ。こうやって、苦しんで死んでいくんだ。
それを、当然と言ったんだ。思ったんだ。
これはいままで感じた事のない痛み。コンテナに軽く頭をぶつけたり、転んだり。お姉ちゃん達に締め付けられたり。そういうのではない。痛み。つまり、今苦しんでいる。死ぬのか、僕は。なにもできずに。迷惑ばっかりかけて。
お姉ちゃん!お母さん!お父さん!
右腕で左肩を掴みながら叫んだ。
「痛いー!」
耳をつんざく爆発の音。それが友軍機の機体が撃たれた音だと気づくのに、時間はかからなかった。しかし、敵の姿は見えない。
狙撃か。
そう思った瞬間にその機体のコックピット部分が爆発する。あの位置は。
「倒れてくる!」
すぐに自身の危険に気づいて乗っていたモビルワーカーを動かす。その近くにゲイレールシャルフリヒターが倒れる。
「どうした!」
戦場の音に書き消されないように誰かが大声で言った。
「狙撃だ!かなり遠い!」
「そいつはおそらく相当な腕だろう。見ろ。コックピットがやられている。ゼロ距離射撃でも難しい一撃必殺の部位を狙って当てている。気を付けろ!」
そう友軍のガラン・モッサの落ち着いていながら危険を知らせる声が聞こえる。
そうだ。近くにいたからわかるが、敵は牽制や、塗装を剥がすのではなく、一撃で沈める方法を選んだ。
狙撃手。こんな相手がいるとなれば、おそらくギャラルホルン。
「アストン!みんなを一旦隠れさせて!敵の方向はわかるだろ!」
「わかった!」
ここ、鉄華団地球支部で手に入れた相棒に声をかけて木の影に隠れさせる。
その後も正確無比な狙撃は続くがモビルワーカーには一度も撃って来なかった。
「安心しろ!こういう狙撃銃はすぐに弾が切れる!弾が切れたらすぐに押し掛ける!」
ガランがそう言いながら、味方に指令を送る。
狙撃銃は安全性の確保や、連射する必要性が無いことから、弾数は異常に低い。
予想通り、何機かを転ばせたり殺したりしたが、すぐに止まった。
狙撃した機体ははじめはエイハブ・ウェーブの感知できる範囲内にいたが、一発だけ撃った後、すぐに範囲外に出ている。つまりは逃げている可能性もある。普通なら回りに護衛
「よし。俺達が先行するからついてこい」
ガランが重い声で言う。相手の技量を判断しての行動だろう。
この時、ガランはこの狙撃をしてきた人間を知っていた為そう反応したが、此方はそれを知らない為ただ反応する。
「はい」
「タカキ」
その中で、アストンが自身の名を言う
その声は強く、そしてはっきりしていた。
「モビルワーカーを下がらせて。エイハブ・ウェーブとか見てもあっちの他にモビルスーツはなかったから」
「うん。気を付けて」
「ああ──っ!?」
アストンがそう頷くと何かが投げ込まれてきた。反射的にアストンがそれを撃ち抜く。
それは大きな銃だった。爆発が小さいことからもう弾切れをおこしたものだと推測できる。
「狙撃銃!?」
「気を付けろ!来るぞ!」
エイハブ・ウェーブが新たな機影、いや先程まで消えていた機影を再び感知した。
白を基調としたモビルスーツ。胸パーツの右下には弾数が少ないとはいえ、バルカンが備わっている。汎用機らしく、ランドマンロディと比べるとスラリとした体型。両手で大事そうにマシンガンを構えて、少々太く、そのモビルスーツと不釣り合いなシールドを腕につけている。
それは───
「アンドラス!?」
二年間、鉄華団の援護をしたモビルスーツ。何故こんな所で...
「タカキ、知ってい...」
そうアストンが言う前にそのモビルスーツは空に向けて一発放った。
「団長命令を伝えに来た!すぐに戦闘を中断せよ!繰り返す!戦闘を中断せよ!これは鉄華団団長である...えーと...オルガ!オルガ・イツカからの命令である!信用出来ないのであれば証拠のデータを開示しよう。だから!鉄華団はすぐに戦闘を中断せよ!」
昔仲間だった者は怒りを含んでいるかもしれない声でそう叫んだ。
それは鉄華団メンバーの頭を混乱させるのには十分過ぎた。
「ええ!ゆーちゃんが!?」
イプシロンのメンバーがユウ以外全員合流したとき、一人の女性がシュインにそういった。
何かあったのだろうか。と思ったが、別に誰かに襲われた訳ではなく、ユウが一人ですぐに行ってしまったらしい。
速さより正確にやることにこだわるユウがシュインと合流すらせず、一人で行ってしまうと言うことは、それなりに考えがあるのだろう。
そういえば移動で聞いた気がする。地球支部のリーダーのような存在であるチャドさんが今、意識不明の重体だと。
今、ユウは一人。一人であることにそこまで意味はない。
「わかった!獅電を出して!私も行く!」
すぐに獅電に乗り込む。
今のユウは危険だ。何を急いでいるのかはわからないが急ぎすぎている。
「やっぱり前回の敗北から行き急いでいる...?」
色々考えるがそれくらいしか頭には浮かばない。
ユウもそこまで敗北を味わった訳ではないが、食い下がる等はした覚えはない。
「とりあえず...シュイン・ヴァイプ!いきます!」
マシンガンで敵のシャルフリヒターを撃った後、すぐにシールドからミサイルを放ち、それを狙撃する。
ミサイルから爆発して回りが高温になる。塗料が溶けていく姿を想像しながら別のシャルフリヒターの攻撃を避けて、蹴りを加えようとするが避けられたので下がる。
「くっ...!」
こいつら接近戦ばっかしている。しかも数が多い上に連携もとれているためめんどくさいことこの上ない。
端には鉄華団が戸惑っている。
そうだ。それでいい。もっと欲するのであればそのまま本部へと引き返して欲しいのだが。
二年前の事があってよかった。もしそれがなければ今頃「うるせぇ!」とか言われながら撃ち込まれていたところだろう。
その場合負けていた。
思考を戦闘に戻してミサイルを放つ。しかしそれは真横にいたゲイレールに撃ち落とされた。
「近っ!」
「腕はいいようだがな。俺を倒せると思うな!」
ピッケルのような物にシールドを引っ掛けられる。
このままでは格闘戦だ。
「その程度で!」
それを察してシールドをパージする。まだ弾はあったのだが仕方ない。
そのままゲイレールから離れる。こいつ...手練れだ。
すぐにでも倒した方がいい。
すると後ろにシャルフリヒターがまたピッケルのような物で攻撃してきた。
「そんな得物で!」
すぐにかわしてマシンガンで撃った後に離れる。
まだか。そう思っているとまた違うシャルフリヒターが、それをかわすとまた別のシャルフリヒターが。最初は10機ほどだったが狙撃等で6機まで減らした。
「──っ!そこぉ!」
マシンガンを構えて、よんだ場所に撃つ。そこには一機のシャルフリヒターがいた。そのシャルフリヒターコックピットから火花を散らして倒れ、沈黙した。
「これで五つ!」
そのままマシンガンを敵に向けて撃っていると弾が少なくなってきた。
「マガジンは後一つ。すぐにあのゲイレールを仕留めなきゃ...」
すぐに弾切れをおこしてそのままマガジンをパージする。シャルフリヒターが接近してくるが、あっという間にリロードを終わらせて、マシンガンを撃つ。
シャルフリヒターに数発当たるが、すぐに逃げて撃破までは至らなかった。
「貴様!若いな!」
「なんだと!...があっ!」
ゲイレールのピッケルをまともにくらい、機体が揺らぐ。
コックピットの壁に頭をぶつけてそこから血が出る。
「あの頃のようにいくと思うな!...あの頃?」
疑問が出てきたがそれを頭を降って捨ててすぐに後ろにいるゲイレールを撃った。
左肩に当たりはまともにくらったのかゲイレールが揺らぐ。
「右に重心が傾いた。今!」
マシンガンでゲイレールの腰を撃つ。バックパックに当たり、小規模な爆発が起こる。
止めを。と思ったら隣からシャルフリヒターが出てきてピッケルを振るう。
一人に殺気を向けさせて、他の機体が邪魔をする。十分すぎるレベルの連携だ。
「だからって!まだ!」
マシンガンを撃って敵を牽制する。あと少し。あと少しだけでいい。せめてモビルワーカーだけでも逃がさなければ。それを感じたのかどうかはわからないが、鉄華団のモビルワーカーとモビルスーツが離れていった。
「耐えてくれ!アンドラス!」
両目が輝く。その瞬間突っ込んできた、シャルフリヒターをシステムが捉えた。
その時聞こえる筈の無い音がユウの耳の中で響いた。
「やっと聞こえた」
ツインアイのカメラがより輝く。
マシンガンでコックピットの開閉部分を撃って倒す。
これで六つ。
それに怒りを感じたのか、二機のシャルフリヒターがピッケルを持って突っ込んできた。
「アンドラスだって、ガンダムだ!」
マシンガンで牽制して退かせる。あと少し。あと少し。
だんだん戦闘が激しくなってきている。全弾当てているとはいえ、まだ時間がかかる。
弾が少ない。不味いな。マガジンはもうない。当たり前だが、補給も受けれない。バルカンではコックピットに開閉部分を当ててもパイロットを殺すのは難しいだろう。
マシンガンを連射させて、ゲイレールのライフルを破壊する。そのまま近くにいたシャルフリヒターの頭を掴み、投げた後に右腕を踏んでコックピットを撃つ。
これで7つ。あと三機。その後、ピッケルを投げて、シャルフリヒターを転ばせる。
「ピッケルは投げるもの!」
アンドラスの両目が輝いたまま、ジグザグに動く。
光を置いていき、二本の線を作る。
すぐにシャルフリヒターに追い付き、コックピットを踏み潰す。
残り二つ。
「早...化け物が!」
マシンガンを連射しながらシャルフリヒターに近づく。その状態でいると急にシャルフリヒターのコックピットから火花が散る。
「あと少し!」
火花が増える。そのままコックピットの壁が外れた。
それは重力に従い、シャルフリヒターの腰に当たった後に、足元に落ちた。
「っ!!なんだと!」
「これを狙っていたのか」
それを逃がすようなユウではない。すぐにバルカンでシャルフリヒターのパイロットを殺した。
人と姿が見えたのに。
人と認識しなかった。
その為、その引き金に迷いはなかった。
「さぁ、後はあんた一人だ。どうする?死ぬか、投降するか」
「くくく...ははは...」
なんだ。こいつ...笑っているのか...
そう思ってマシンガンを構える。止まった敵を当てられないほど、僕は下手ではない。
「見たことある機体だと思ってな。その機体アンドラスだろう。ジェラルドコロニーにあった」
「なんだと...」
アンドラスも固まる。こいつ...まさか...
そう思いながら、そして出来るだけシンプルに前向きに言った。
「良かった。あんたを殺せば僕の迷いが無くなる」
アンドラスはそれが最適解だと言うようにツインアイを輝かせた。
シュインがたどり着くまであと少し。
「待っててね。ゆーちゃん...」
なんと言う事でしょう(謎の急展開)
アンドラスとユウがおかしな事になっちゃいました。
そして、ユウを撃った容疑者の出現...あれ?なにこれ?