主人公をタービン姓にすることからこの話は最初から決めてました。
アフターストーリーに繋がるところが多いですね
第40話 引き金
「...というのが事の顛末だ。親父」
「そうかそうか。ご苦労だな。名瀬、オルガ」
歳星にある水上の邸宅にて名瀬とオルガがマクマードに事の報告をしていた。
盆栽の手入れをしながらマクマードは二人が言っていた話を整理していた。
あの子が。自分の事を親父ではなく祖父のように言っていたあいつがモビルアーマーを。それも単機で仕留める。
いままでの働きから考えれば無理だと思うのが普通だろう。それでもやり遂げた。やはり彼のモビルスーツであるガンダムが関係していると見て間違いは無さそうだ。
「そうか。あいつが...か。いつの間にか母親の背中を越えちまったようじゃねぇか」
顔は見せないものの、何処か悲しげな感じがするマクマードを見ながらオルガは答えた。
「母親?そういえばユウ、自分はアミダさんから産まれてきたって...」
確かにモビルアーマーを単機で仕留めたとなればアミダを越えた事にもなるだろう。
出来るだけ重大な損傷は控えて、軽傷だけで済ませて確率の高い方法を模索しながら戦っていたような気がする。鉄華団の中でもエースの三日月と反対の戦いかただ。
しかし名瀬はそんなオルガの顔を驚きながらも見て、言った。
「そうか。お前は聞いていないんだったな。あいつの母親について。一応言っておくがなアミダは俺に会ってから
それはつまり、ユウがオルガに嘘を付いたということになりかねない。それなりの理由がなければ嘘をつくような内容でもない。それに彼はアミダの事を母さん。他のタービンズの職員を姉さんといっていたから騙すのであればここまでやる事もない。そして、もしそうだとしたら、何故ここでボロがでているのか。しかし、もうひとつ答えがある。
それは彼がアミダが母親だと勘違い、もしくはそう教えられた可能性だ。
「ユウはアミダさんの子じゃない?でも...いや、まさか...じゃあ誰なんです?あいつの母親って?越えて言ったって、パイロットだったんですよね?」
「名瀬、俺が話そうか?」
マクマードが盆栽の手入れをしながら名瀬にいう。
「いえ、結構です。けどな、これは他の誰にも話すんじゃねぇぞ。特にギャラルホルンの連中にはな。ユウはギャラルホルンの政権に対して爆弾になりかねない」
「あっ、はい」
「うまくやりやがったな、鉄華団の連中め」
「これでおやじはファリド家...いやギャラルホルンと鉄華団の関係を認めたってことになる」
「こっちもつながっただろうがよ。しかも相手はギャラルホルン最大戦力を誇るアリアンロッド艦隊。マクギリスって若造を相手にするよりよっぽどぶっといパイプだ。こっからだぜお楽しみはよぉ。なぁ、名瀬よ」
何故こうなった。二人が歳星で自分すら知らない秘密の話をしているとはいざ知らず、今の自分の状態を顧みる。
ここは鉄華団団員なら誰もが知っている、バルバトスがあった場所だ。そこには今アンドラスが次の戦いを待っている。アンドラスの整備をしていたエストが疲れきったのか隅で横になっていて(しかし起きてはいるよう)、その近くにアガーテが椅子に座って端末を見ている。
それにしてもここは日当たりがよく、年中暖かい。バルバトスさんがお気に入りといっていたが理由がすぐにわかった。
アンドラスを撫でていると扉の開く音がしたので振り向くとそこにはエーコとアジーが走ってきた。
今日中には火星を出ると聞いていたが戸々で売る時間はあるようだ。
「ゆーちゃん!モビルアーマー討伐おめでとー」
「ちょっ!エーコ姉さん!」
エーコに抱きつかれる。自分がモビルアーマーを単独で討伐して数日がたった。その間自分が何をしていたかと言うと討伐したモビルアーマー、プルーマ、アーラの回収。それの解析だ。アーラがどこから来たか、それはわからない。わかるのは宇宙から乱入してきた陰があるということだけ。
ということで暫く鉄華団所かイプシロンにもいなかったので、会えると思ったら全然会えなかった。というのもあると思うが締め付けが強い。
「おめでとう。ユウ。凄いじゃないか」
「あ、ありがとうアジー姉さん」
エーコ姉さんがきつく絞めているのをおかしく見えないのか、アジー姉さんが頭を撫でる。そういえばいままで鉄華団という男性ばかりの所にいたので寂しい思いをさせたのかもしれない。いや、確実にさせてしまった。でも、そこには同じく鉄華団の方へと行っていたラフタの姿がない。
何か事情でもあるのだろうか。
気がついたのかエストが此方に来たのでアジーがエストの方を向く。
「エストもお疲れさん。あんたもモビルアーマーを単機で破壊したんだろ?」
「俺は取り巻きの一匹だけ。ユウの方が凄いさ」
アジーがエストの頭を撫でながら言う。
でも、前の情報を何もなし、しかもいきなり乱入してきたアーラと終始互角以上に戦った。
十分だ。
「でもエスト兄さんはパイロットじゃなくてメカニック志望だったのに凄いよ。これじゃ殆どのパイロット顔負けだよ」
「そうか?いや、そうか。...しかし、今後あいつらと合間見えたら何処までやれるか」
エストはあのギャラルホルン士官との対戦が人生ではじめての敗北だったらしく、自分達以上に悔しがっている。
そういえばあのグレイズダマシ(名前は知らないので仮)のパイロットは腕に牙が付いたグレイズのパイロットだと本能的に悟ったが本当にそうだったのだろうか。エストの細かい実力はわからないがこんなに簡単に負けたとは思えない。強く...なったのか?なんのために?
そう首を捻るがそれより大切な事を思い出してアジーに言う。
「アジー姉さん。ラフタ姉さんは?討伐戦でなんかあったの?」
考えられるのはモビルアーマーに一撃やられたとか。でもそうだったらここでこうやって僕を抱いているのも、撫でているのも、反応がこないのもおかしい。
「いや、あいつなら昭弘の所に行ってるよ...あ、えーとガンダムフレームの四本腕の奴だよ。ベージュ色でなアンドラスよりちょっと太いか?グシオン、グシオン」
アジーが分かりやすく人ではなく、モビルスーツの特徴を言う。そこから誰なのかというのを思い出す。あのガチムチの筋肉の人だ。射撃をよくするわりには命中率は悪いがサブアームを自分の腕のように使える強さがある。それがわかると急に寂しくなってくる。そうか。もう姉さんもそういう時期なのかもしれない。
「そうか。少しだけ、寂しいね」
「もう察したのかい?勘が鋭いのも考えものだね」
その言葉だけで理解するアジーもアジーだな。と思いながら頷く。
「...でも僕はラフタ姉さんを応援するよ。でもね、グシオンさんとはしっかり話した後で。もし、幸せを奪うと言うなら、鉄華団を沈めると釘も打っといてね」
「ああ。それがいい」
アジーが優しく微笑みながら頭を撫でた。それでエーコ姉さんも首の締め付けから解放してくれた。とりあえず伸びをしたあとに歩いて置いていかれていたアガーテに声をかける。
「アガーテ姉さん。そういえばクーデリア・藍那・バーンスタインは?」
「クリュセに何も無かったから通常通りだよ。でも仕事が忙しい、とは通信で来たわね。それと、ゆーちゃん」
アガーテが此方に近づいてきて、指を立てる。年甲斐もなく、そんなことしてもな。と一瞬失礼な事を考えたがそれをすぐにぶん投げて頭から消し去る。
「クーデリアさんがお礼言ってたよ。何でも依頼を受けさせたようね。此方に送金されてきたわ」
「あー。あれね。あれはクリュセ守ってやるから報酬くれっていったらくれた。何も変な事はないよ」
当然でしょ。と澄まし顔で答える。そう。何もしていないのだ。確かに依頼を受けろと言ったのは始めてではあるが。
「家の子はやっぱりおかしいよ...そうだ。シュインちゃんが先に宇宙に戻ったみたいだけどなんかあったの?」
ため息をわざとらしくついてアガーテが言う。
シュインは今回上手く働けなかっただの云々言っていたのと、先に宇宙に戻るということは聞いた。理由は言ってくれなかったが。
「んーこっちも本人に聞いたけどうまくはぐらかせられたよ。別に誰かに脅されているとかそういうもんじゃ無さそうだし。別にいっかって」
そういうとアガーテは考える顔をして、数秒後成る程と呟いた。
その表情は何処と無く不安な物を与えた。女性だからこそわかるものだろうか。
「ゆーちゃん!じゃあこっちも仕事あるから!三人はユウより先に...っていうか今日の午後にはタービンズに戻る為に宇宙に出るんだから」
「わかってる...じゃあ...ほら二人とも」
そう言って二人の背中を押す。
この三人はタービンズで少々仕事をしたあとにイプシロンに入るという事を名瀬ともう話している。時期的に二人になる可能性があるのだが。
「ああ。元気でな」
「えーもー!寂しすぎる!」
「大丈夫。アンドラスが直ったらすぐに宇宙に戻って仕事するから」
そう言って背中を押す。
しかしその数週間後、この事を後悔することとなった。
それは突如きた通信。ただ、いつもなら単なる嫌がらせの筈だった。その内容は。
輸送班と各地の事務所にギャラルホルンの強制捜査が入った。
ただ、それだけだ。それだけなのに。問題は肥大化していく。そして、とある大事件の引き金となる。
カラン。
グラスに中の氷が当たっていい音を出す。その音を出したのは誰なのか確かめようとはしなかった。微妙な明るさが何処か心地よい。
ここは地球のバーである。少々離れている位置から、マスターの方にグラスを付きだして「おかわり」と言う男を確認した。マスターがそれを注ぐより前に男はそこから目を背けて、隣でチビチビと酒を飲んでいる男に話しかけた。それも自分の唯一の部下なのだが。
「まさかお前も来ていたとはな。ニール」
「俺はギャラルホルンの駐屯部隊にアリアンロッドの名で参加していただけですよ。まぁ、モビルアーマーは倒せず通してしまいましたけど...しかし無人とはいえ、カメラを置くことに成功しました。そのデータは送ったものです」
そのデータは狙撃手がモビルアーマーを撃破して数時間後に送られたものだ。そこには撃破されたモビルスーツのエイハブリアクターを取る二機のアーラの姿が写っていた。
イオクを回収して火星からそそくさと逃げたあとにアメリアに連絡したあとにアリアンロッドの権限を使い映像を見たのだが、そこには人工密集地のクリュセに目のくれず宇宙何処かへと飛ぶアーラ二機。別の所では宇宙へと出ていった一つの機影。一つの機影はおそらく、アーラと物資を乗せた大気圏を抜けられるロケットと思われる。
ギャラルホルンの駐屯基地に襲ってきたアーラはバックパックが此方に襲ってきたものとは違い、大型のケースに多数のラックがあるものでそのラックにエイハブリアクターを強引に捩じ込んでいた。
ここからわかるのはアーラが少なくとも
「あの人類を殺すため
「誰かが。いえ、この場合は確定してますね。モビルアーマーがまだいる。そして、力を蓄えるためにアーラ二機にエイハブリアクターを求めた」
エイハブリアクターは今現在ギャラルホルンが権利を剥奪して自分の所でのみ使っている。他の組織が使いたいのならギャラルホルンから買うか、レストアして使うか、デブリ帯から取ってくるか、である。
しかし、それは厄祭戦後の人類のみ。厄祭戦時はそこにモビルアーマーから奪う、というのが追加されていた。
モビルアーマーはエイハブリアクターを動力源としているのはモビルスーツや、戦艦と変わらないが問題はその数だ。モビルスーツでは二個が限界なのに、モビルアーマーはその上を行く。
しかしモビルアーマーがエイハブリアクターが無くなったので人間から盗る。というのは厄祭戦の事が書かれているアグニカ叙事詩にも書いてない。理由は簡単だ。モビルアーマーが自分自身でエイハブリアクターを作れるから。いや、その言葉には語弊がある。実際はガブリエルという名のモビルアーマーがエイハブリアクターを作れる、だ。
勿論ガブリエルは厄祭戦にて撃破が確認されている。つまり、ガブリエルを失った後のモビルアーマーが人類を殺すために力を蓄えているというのが正しい。
「実際、火星から木星の航路で幾つかの組織が行方不明になっております。おそらくアーラに襲われた物かと」
「しかし、ガブリエルが死んだ後に他モビルアーマーとアーラを率いていることができ、尚且つガブリエル並みの思考を持つモビルアーマー。四大天使にもそんなやついたのか?」
モビルアーマーの四大天使というのはその名の通り、四機しかいない、モビルアーマーの最高格の存在だ。他にウリエル、ミカエルが確認されたそうだ。
「神話の中で考えるとするなら他にもう一人四大天使がいる。キリスト教ではミカエル、ガブリエルと共に3人の大天使の1人と考えられて、守護天使を監督する天使とされている存在。イスラム教ではイスラーフィールとして知られていて、薬剤師、盲人、病人、精神障害、旅人の守護者。ラファエル。そいつだけが厄祭戦にて確認されていない」
実際アグニカをはじめとした厄祭戦時のパイロットはみんな化け物なので、個体名を出されずに天寿を全うしたモビルアーマーも多数いる。なので、情報が完璧とは言えない。
「ギャラルホルンでは、確認したものの、すぐに撃破したという情報がありますが」
他にも噂ですがガブリエル戦...
マスターに自分と同じカクテルを頼んで端末を見る。
そこには昔のギャラルホルンの情報がある。
「アグニカ・カイエルは現在確定されている四大天使の全てに止めをさした存在です。しかしそのアグニカでさえ、ラファエルについてよく知らないのかアグニカ叙事詩でもラファエルについて触れられていません」
「元々あれはヘイムダルのメンバーの一人が書いたものをアグニカ・カイエルが加筆修正したものだった筈だ。つまりヘイムダルにもそれほどの情報はないだろう」
ため息をつきながらライルはカクテルを飲み干す。
そのあと端末を見ながら過去の情報を見る。
「──駄目だ。わからない。もし、ガブリエルに値する知力を得たモビルアーマーがいたとしよう。ならばなぜ、エイハブリアクターをそちらに運ぶ?ガブリエルに値する力を持てる者。仮にガブリエル2号機とでも呼ぶか。そのガブリエル2号機になぜ、エイハブリアクターを用いればモビルアーマー、もしくはそれに準ずる者を作れるのにエイハブリアクターを作れない?」
エイハブリアクターの技術はこちらも詳しくはわからない。材料の問題なのかもしくはまずエイハブリアクターのみ出来ないのか。どちらにしろ人間側からとらなければいけない分、効率が悪い。
エイハブリアクターに必要な情報を集めるため...それも無い。だったら襲われて行方不明の者達がみんな事故か、海賊となる。
事故はそう頻繁に起こるものでも無い。それに発生予測ポイントが密集しているのもおかしい。海賊ならギャラルホルンがもう何度も巡回に行っている。ギャラルホルンが行方不明になっているものもあるにはあるがどちらにしろ証拠がない。
わざわざ危険と時間と労力を起こしてまで火星へと赴き、エイハブリアクターを盗る理由が見えないのだ。
頭を悩ませていると通信が来た。
相手はアメリアだ。
「ん?どうした?アメリアさんよぉ?」
「地球での会議がもうすぐです。貴方方には護衛についていただきたいです。それと、とある企業について話が」
「...わかった。今すぐに行く」
ライルは金を置いてニールを叩き、引っ張りながら店から出た。
その様子を見て、会話を聞いた一人の男が微笑んだ。
微笑んだ人って誰でしょーねー?
意外と大したことないかも(すっとぼけ)