機動戦士ガンダムテイワズの狙撃手   作:みっつ─

52 / 85
そういえばバルバトス損傷してないからこのままルプスなんだよなぁ。
ルプスレクス「解せぬ」

忘れてましたが今回のサブタイトルは太陽と光関係が多いです。


第44話 あの日の光

「アリアンロッドの艦隊がタービンズの基地に侵攻したそうだよ」

「いよいよ始まるか」

 

歳星にてたまたまバルバトスの整備とモビルアーマーで止まった原因を知るために来たおやっさんとバルバトスを一目みたいのとバルバトス専用の武装を考えて来た整備長が話していた。

話題はギャラルホルンがタービンズに侵攻する事。それで持ちきりだった。

 

「もう名瀬も耐えられないだろうね」

「俺達はあそこに嬢さん達を一人でも多く保護することしか出来ねぇ。行けるか三日月」

「うん」

 

鉄華団はタービンズの保護を行うために歳星にいる三日月、ハッシュ。比較的タービンズの基地に近い所にいる昭弘、シノ、ライド。その五人に加えてヒューマンデブリである、チャド、デルマ、ダンテには五人が守ったタービンズ兵を火星に率いれるために用意したランチまで護衛している。残りの兵はランチの準備をしてたり、火星で引き取れる用意をしている。

全員でタービンズの兵を一人でも多く救う。名瀬やアミダなど重要なポジションにいる人達はイプシロンが救助に行った。マクマードの制止を降りきっての行動。もしかしたらテイワズには戻らないかもしれない。狙撃手としてユウの評価が高いとはいえ、これは裏切りも同然。子供だからって甘い刑罰ですまされるようなものではない。

いつの間にか準備が出来ていた三日月とハッシュが発進体制に移る。

 

「ハッシュ・ミディ、行きます」

「それじゃ三日月・オーガス、出るよ」

 

端からそれを見ていたアトラは祈ることしか出来なかった。「みんな生きて帰ってきて」と。しかしわかっていた、それが叶わない願いだと知っていた。

それでも祈り続けた。ずっと。

 

 

「もうここは俺だけでいい。お前らも早く輸送船に行け。ヤツらの相手は俺がする」

 

タービンズの保有する戦艦ハンマーヘッドにてタービンズ兵が輸送船にゆっくりと乗っていっていた。この輸送船で火星へと行き、鉄華団に拾ってもらう算段だ。しかしアリアンロッドも逃げる者は追いたくなると思うのでハンマーヘッドであいつら(ギャラルホルン)の相手、いや手打ちをさせてもらおうと思っていた。 

 

「でも!」

「アリアンロッドが来るまで多少の時間はある。お前らが安全圏まで離脱したのを見届けたら俺も尻尾を巻くさ」

 

女性陣は当たり前だが、無理だよと名瀬を止めようとする。まだモビルスーツ戦に慣れているのならまだしも、まだまだなのだ。モビルスーツ相手にうまく立ち回れるとは思えない。 

 

「とはいえあんた一人じゃ危なっかしすぎて見てらんないよ。私が護衛につく」

「アミダ...」

 

長年の勘と溢れんばかりの愛のお陰で気付いたアミダが自分もと名乗りを上げる。そして、他の仲間がなら自分もという前にそこを止めた。

 

「ラフタ、アジーあんたらは家族を守るんだ。モビルスーツは足は速いが携帯火器じゃ船の装甲は抜けない。慌てずに避難するよう誘導してあげな」

「くっ!」

 

ラフタもアジーも口をつぐむ。縛り悔しそうな顔をしていたのは言うまでもない。しかしそれが合理的な判断だということにも気づいていた。

その後タービンズ兵は輸送船に乗り込み、戦闘員はモビルスーツに乗り、アミダを除いて輸送船の護衛。アミダはもう名瀬一人となったハンマーヘッドの護衛。

対するはライル、ニール、ジュリエッタというギャラルホルンでも選りすぐりのモビルスーツパイロットを入れたアリアンロッドイオク隊。

 

戦の火蓋は切って落とされた。

まず名瀬は一縷の望みにかけて停戦要請のための信号弾を放つ。

しかしやはりと言うべきか全く反応がない。

 

「アリアンロッドからの応答がない...」

 

するとアミダが名瀬に通信を送った。それに気づいて前方を確認するとモビルスーツが扇状に広がって、止まっている。そう。動かないのだ。不審な動きをしていないのが逆に不審に思われる。

──狙撃か?

ユウ(息子)を思い出しながら名瀬の頭の中にそれが浮かんできた。しかしそれをすぐに否定する。あんな距離の狙撃なんて彼レベルでしか出来ない。彼レベルの狙撃手なんているもんではないし、もし下手な鉄砲数撃ちゃ当たるだとしても扇状に広がっていることを説明できない。まるで範囲内ならどこに当たってもいいと考えているような...此方ではなく此方がいる範囲を狙っているような。そんな気がした。

 

「名瀬、敵艦隊前方に新たにモビルスーツ隊の反応だ。扇状に広がって...なんだ?」

「ヤツら一体何をするつもりだ?」

 

僅かに火花が散るのが見えた。その瞬間一斉に何かが飛び出た。それは目で追う事も叶わない速度で輸送船に当たる。普通の弾丸ならそこで弾かれただろう。当たったのは火気でもなければガラス部分等の柔い所ではないのだから。しかし、それは輸送船に突き刺さった。輸送船は小規模な爆発を繰り返し、黒い煙をあげながら速度を落とす。

 

 

「なっ!?」

 

見るとそこには黒くて細い棒が突き刺さっていた。あの形に見覚えはない。しかし、ユウの話からなんとなく察した。

 

「まさか例の兵器を...」

 

彼方の見解では此方が違法兵器であるダインスレイヴを持っていたからとのことだったが。まさか彼方が使ってくるとは。しかも弾丸は通常の弾丸では無いためグレーゾーンではない完璧な違法だ。

違法兵器を持つなら此方も違法兵器を使うと言うことだ。

 

「こけにしてくれるぜ全く」

 

どちらにしろ不味いのは変わらない。さっきまではこのハンマーヘッドに敵の視線を釘付けにして雑魚兵をアミダに任せてアリアンロッドの艦隊に突入して交渉する予定だった。予定通りにいくとは思わなかったがこれほどとは...此方を狙わずなのかたまたま当たらなかったのかはわからないが輸送船に当たった。つまり輸送船も攻撃出来ると言うことはわからない。

このままでは第2射が来る。そうすれば輸送船はもう...持たないだろう。当たりどころが良かったとしても落ちる時間が変わるだけだ一応ランチがあるのだがそれまでの時間が稼げるかどうか。

 

「第2射が来る!」

「やめろーー!」

 

苦し紛れにスモークを。ありったけのスモークを発射する。これで反れてくれ。

そう願った。すると第2射は...撃たれなかった。

 

「名瀬!敵艦隊が爆発が...あっ...」

 

此方はスモークのせいで見えないがスモークを潜ったアミダから通信が入る。敵艦隊の爆発。アミダがやったとは思えない。となれば答えは一つ。

 

「あいつら...来るなって言ったのに」

「いつまでも世話の掛かる子だよ。でも見えるよ。あんたのにやけ顔」

 

アミダから送られてきた映像にはひとつの戦艦の上で狙撃体制に入っている純白のモビルスーツがいた。

 

 

 

 

 

「ヒット。シュイン、兄さん。敵モビルスーツが来る。相手よろしく」

「「了解!」」

 

純白のモビルスーツ...ガンダムアンドラスのコックピットに座り《スナイプモード》での狙撃。

見えれば当たる。これは狙撃手としての彼の当たり前だった。

 

「ジョーカー」

 

家族である二人に命令を送ったあと今か今かと戦いを待つ。一人の男が乗る獅電をユウは睨んだ。

でも決めたんだ場所で人を見ないって。

 

「僕は今回の件JPTトラストのせいじゃないかと思っている。だから...お前の事も」

「憎んでいるか?」

 

正直に頷く。

その間も敵艦隊に狙撃をして気をそらしている。横にオレンジ色の細い線が何本か通った。下手な狙撃だ。自分はここにいますよと言っているようにしか見えない。

その兵器を狙撃しながらジョーカーと話す。

 

「でも、僕はお前を信用するよ。仲間だし」

「スパイかもしれないぞ」

「...わかってる。でも僕は()()お前を信じたい。ただそれだけだ。...頼むジョーカー。敵モビルスーツが来た。迎撃を頼む」

 

僕は人を信用出来ていなかった。家族しか信用していなかった。でも今は違うこの男をジョーカーを信用して敵モビルスーツを任せる。親を救うために。

 

「わかった。じゃ、これが終わったら酒に付き合えよ...お前とは話したい事が沢山ある」

「ああ。好きなだけ飲め。好きなだけ話せ。その後僕の質問にも答えてもらう」

 

そう言うとジョーカー機は親指を立ててサムズアップをする。

そうして閃光を出しながら飛んでいく彼を一瞬だけ見た。

 

 

 

 

「あっ...ああ!おい!モビルスーツ隊!早く増援を仕留めろ!」

 

イオクが艦長席に身を隠しながら叫ぶ。

ダインスレイヴ隊がいるため、この作戦は安心安全。ギャラルホルンに犠牲など出ず、タービンズを全員仕留められる。そう思っていた。

その安心は招かれざる客によって覆された。

ダインスレイヴ隊にそちらを撃つように命じたが何せ角度があるのと距離が遠くてあたらない。

 

「圧倒的な力で捩じ伏せる筈がねー。これだから無能は」

 

そのイオクを見ながらライルはほくそ笑み、言う。それをイオクが素早く返す。本当にこう言うときでも陰口には敏感だ。

 

「む、無能とはなんだ!働いてないお前が言うか!」

 

声に出したのはイオクだけだったがオペレーターが全員そうですよ!と言いたい気分になっただろう。しかし今はタービンズが近づき、輸送船は逃げ、増援のせいで損害が出ている。

 

「イオク様!このままだと輸送船が有効射程外に出ます!」

 

オペレーターが急にそう叫ぶ。元の作戦が台無しだ。名瀬と違い、予備の案を考えなかったイオクは頭を抱えて項垂れる。しかしこれでも厄祭戦の英雄の血を継ぐ者。すぐに立ち上がり命令する。

 

「す、すぐにダインスレイヴ隊に撃つように言え!増援はモビルスーツ隊に任せろ!」

 

誰でも思い付くような指揮ではあるが状況が状況な為これしか思い付かなかった。しかし不幸な知らせは止まらない。

 

「ダインスレイヴ隊の損害が10%を越えました!増援部隊と思われる隊に行かせたモビルスーツ隊の損害は40%を越えます!」

「くそっ!ラスタル様の隣に立つには...ぐっ!」

 

イオクが対応に頭を悩ませていると船がぐらついた。

数秒宙に浮かんだイオクを見ながらライルは横に立っていたニールの顔を見て、行けと言った。するとニールは敬礼をして

 

「イオク様!ニール・ガロン出ます!」

 

そう言って指令室を出た。対するイオクは身体のバランスを保って慌てながら

 

「待て!ダインスレイヴ隊の邪魔をするな!」

 

と慌てながらもしっかりとした呂律で喋った。

 

「イオク様!先程の狙撃と思われる攻撃で本艦の損害が25%を越え、リアクター出力低下!」

 

狙撃。その言葉を聞き、ライルは眉を上げる。

もう来ているのは気づいていたがここまでおっきくやるか。この船がボスの物だとわかっているように。

オペレーターがブリッジに捕まりながらも指を止めずにイオクへの指示を仰ぐ。

 

「イオク様!前方の強襲装甲艦が近づいてきます!このままではダインスレイヴが上手く効果を発揮出来ません!」

 

ライルはもう限界だった。もう止めるのを諦めて笑いが出てくる。

 

「ははは!ぎゃーはっはっ!腹痛てぇ!なんだよ!お前ら!そんだけの力を持っていながらマトモに戦えてねぇじゃねぇか!これだから机にかじりつくことしか知らない平和ボケやろうが!だから死ぬんだよ!」

 

突如ライルが大笑いをし出した。腹を抱えて目には涙が浮かぶ。今度はイオクも多すぎる情報量でパニックに陥って声がよく聞こえてないのか怒るどころか応答しなかった。

 

「モビルスーツデッキに通信を取れ!俺が出る!そして無能なボスを叩き起こして言え!輸送船に俺達以外のありったけのモビルスーツ隊をいかせて前方の強襲装甲艦をダインスレイヴで迎撃。狙撃手は俺が止める!とな!せいぜい祈りな!死にませんようにって!気分に乗った神様が救ってくれかもしれんぞ!」

 

そう叫んで弾かれたようにブリッジから飛び出た。

もう形振り構っていられなかった。オペレーターが一人イオクに叫びながら落ち着くように言う。もう一人のオペレーターがグレイズルデンとグレイズクルーガをすぐに出すように言う。

このライルの指示が吉と出るか凶と出るかは誰も知らない。

ただ、わかるのがこの戦いは死ぬ可能性が高い戦いと言うことだ。

 

 

「ライル・バレル!グレイズクルーガ!出るぞ!」

 

オペレーター達はその姿を見ながら祈った。作戦は失敗しても良いから死にませんようにと。

 

「頼む。カルタ司令。力を...貸してくれ」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。