機動戦士ガンダムテイワズの狙撃手   作:みっつ─

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今回はエストの話です。
んー。エスト君は気が狂ったようになるけどいい子だと思うんですよね。
格闘ならイプシロン...いや、タービンズ最強...と思われる。アミダさんは平均して凄い印象が強い。



第47話 兄として

機体の限界がどこにあるか。

量産機であればデータを取っているためわかる。ワンオフ機でもある程度の戦闘データからある程度読み取れる。

それは当然の事。

元メカニック志望で地球の学校へと行き、とある日に弟に呼び出されていなければ今、適当な企業にでも就職していたのかもしれない。

それで弟に呼び出されて何をやっているのだろうか。

それは戦闘だった。

元メカニック志望である自分なら先程言ったようにモビルスーツの性能を無知な人間よりよく知っている。

そして常識としてモビルスーツは破壊されると動かないと言うことも。

 

ならなぜ。

 

「今俺は機体に普通出来ない行動を求めているんだろうな」

 

戦闘中とは思えないほど頭が急に冷静になった。

グレイズルデンと言うらしい機体と何度も切り結びながらそう思った。

おそらくだが、相手は最初からモビルスーツパイロットになるつもりでギャラルホルンに入隊したもの。

機体の性能もパイロットの腕も、本当は彼方に軍配が上がるのだ。

今は機体に無理をさせて、パイロットの腕で空いた穴を埋めさせている。

コックピットの中で警報(アラート)が鳴り響く。

 

弟は一言で言うと才能があった。自分が地球に降りて、勉強をしているうちに彼は自分の才能に、自分で気づいた。そして努力でそれを伸ばしてテイワズでは欠かせない人間となっている。

自分はどうだ。それなりに勉強はした。努力はした。何においても普通より少し上を保ち、安定していた。

結局自分の才能はまだ、目覚めていない。

わかった。俺は悔しかったんだ。小さい頃なんて甘えん坊で、泣き虫で、駄々っ子で、寂しがり屋で、怖がりで、けど好奇心がある弟が、自分より明らかに劣っていた筈の弟が、今では年上であり、兄である筈の自分を追い抜き、名前だけとはいえ、責任者となっている。

だからあいつを出し抜きたかった。あいつが倒せなかった相手を倒したくていま、戦っている。

不純だがそれでも、戦う。

親孝行をして、強くなりたいと。

 

「だからぁ!」 

 

新たな警報。機体の限界は近い。

短期決戦。

一瞬、一瞬に命を...懸ける。

 

「だぁぁぁぁぁ!!」

 

パルチザンをしまい、盾で構えながらライフルを残弾を惜しまずに撃ちまくる。

もう一機の敵はユウ達が止めてくれていて、此方にはこない。

敵機は行動が変わったことに困惑をせず、狂ったと思ったのか素直に接近してくる。

ユウのような射撃スキルは無いため、弾丸は全てグレイズルデンに弾かれて終わる。しかしある程度は食らった筈。

盾で一度斧を迎え撃つ。その盾に衝撃が来る。素直に斧を振るったようだ。ここまではいままで通り。

敵機の損傷はそこまで無いだろう。少なくとも外部から見て損傷は少ないし、そこまで無理をした乗り方はしていない。考えた通り長期戦は不利。それどころか勝てる見込みがない。

 

「ぐっ!だあっ!」

 

冷静さを欠いたようにライフルを投げてそこに意識を向けさせて盾をパージする。これで少なからず驚いた筈と読んでパルチザンを素早く抜きそれで殴る。長くしている時間は無い。短い状態で、抜刀(刀ではないが)した直後に殴った。

 

「あああっ!」

 

その後よろけた所に追撃を加える。パルチザンを槍のように構えて刺すようにグレイズルデンに向けてそのまま突っ込む。

しかし、グレイズルデンのパイロットも普通ではない。ギャラルホルン最強のパイロットの教えを受けた唯一の生徒。エースなのだから。

斧を一つ逆手持ちにしてパルチザンをいなした後に膝蹴りをする。

獅電が一回転している間に斧で左肩の装甲を割る。

コックピットの中から嫌な音がした。装甲が剥げるのでも削れるのでもなく、割れた。破片が飛び散りタッチパネルにそこが映し出される。フレームに装甲の一部が当たり、明後日の方向へと飛んでいった。

 

「つっぅ!」

 

でも止まらない。すぐに左腕で斧を握ってそこを軸としてグレイズルデンを巻き込みながら一回転してその衝撃を利用して膝蹴りを返す。

スラスターの一部がひしゃげ、調整が困難になったようだ、動きが止まった。

それを逃がすほど此方に余裕はない。

すぐにパルチザンを延長させて、右肩にパルチザンを差し込む。

そのまま押し当てて、テコを使って引き剥がす。装甲が吹き飛び、フレームに強烈な負荷がかかった。

今頃敵機のコックピットではコンピューターがそこからベキベキだろうか音を鳴らしているのだろう。

その瞬間、敵機から余裕が消えた。憎悪と怒りの感情が見てとれるようになる。

通信越しに雄叫びが聞こえた。

訓練等では決して出てこない。命の危険を感じている。それは同時に相手が本気ということと、それほどの相手であると認めたことの証拠だった。

 

「ああああ!!」

 

斧が頭部のバイザーを引き剥がす。頭部もある程度曲がり、フレームの一部の損傷が大きくなったと警報が知らせてくる。バイザーが吹き飛んだことにより、映像が少し鮮明になったように感じた。その追撃を受けながらも蹴りを加えて距離を取る。

視界が若干クリアになったとはいえ、それは申し訳程度な上に、危険なところをわざわざさらしている。これでもし、相手に射撃武器があったなら負けている。

メインカメラがほぼ露出した状態のまま、覚悟を決めてペダルを踏み込んだ。

ライフルを投げて此方に射撃武器はない。残りの武装はパルチザン一本のみ。それに加えて相手のモビルスーツは腕が片方極めて動かしにくい、もしくは動かない状態とはいえ、斧が二本。手数は逆転された。機体もボロボロといっても過言ではない。

それでも勝利の可能性はある。

 

「ここで決めてやるよぉ!」

「──ッ!来るか!」

 

もう敵のモビルスーツもアンドラスの事が頭から抜けている。ただ、俺を倒す。その事だけに頭を使っている。

パルチザンを横凪ぎに振るい、避けられた所を突く。腕が両方とマトモに動くためそれが避けられた所に拳を捩じ込むように入れる。

しかしモビルスーツとはいえ、パンチが効くわけもなく、双方の距離を実感離して終わる。そこに今度は自分の番だと言わんばかりのグレイズルデンが左腕のみを使って斧で凪ぎ払う。片方だけなので避けやすい攻撃ではある。だからこそ、それがおかしく見えた。何故、こんなにも避けやすい攻撃をしてくるのだろうかと。疲れているようには見えないが。

何度か振り払うと急に止まったのでパルチザンで突く。

その瞬間、グレイズルデンは急に傾いた。

避けられたと思った。でもそれだけではない。

 

「しまっ──」

 

気付いた時には左腕でパルチザンを止められていた。斧を吹き飛ばせたようだが問題はそこではない。

余った右腕にはしっかりと斧が握られている。

敵に余裕が消えたのはわかっていた。俺だけを倒すために全力で来たことも。右腕の損傷的にはまだ二、三度降れてもおかしくないということも。

だから、わかっていた筈だ。

左腕に意識を集中させて、右腕で決めてくることも。

それに気付いた時にはグレイズルデンの右腕が破壊する音とコックピットの壁がひしゃげる音が聞こえたがどちらがどのような音か、違いは全くわからなかった。

 

 

 

 

「エスト!」

 

ジョーカーの介抱をしていたシュインがジョーカーの獅電から情報を得た。隣には応急措置をし終わったジョーカーが感覚を確かめている。

しかしあくまで応急措置。コックピット内に侵入した破片が腕を斬っていた。

 

「あいつなら生きている...でも回収はしないとな。とりあえずコックピットから出ろ。コックピット内に空気を入れる」

 

しかしジョーカーはあくまで冷静に機体の状態を調べている。そして肩を押してシュインを外に出した。

そのままシュインは自分の獅電に乗り込み、そこに酸素を流し込む。ノーマルスーツのヘルメットのバイザーをあげてモニターを確認する。

グレイズモドキとエストはグレイズモドキの方に軍配が上がったと思われる。ジョーカー曰くエストは生きているとのことだが回収はしなくてはならないだろう。ボロボロとはいえ、モビルスーツの目の前で。

黒いグレイズとユウの戦いは膠着状態...と言う筈だが、両方とも物凄いスピードで駆けているので、その言葉が正しくないように思える。

もう頭が一つ抜けている所ではない。遠くの世界へ行ってしまったように思えた。勿論助けに行ったら足手まといだ。

ならばしなければならないのは名瀬とアミダの保護だろう。逆にいうとジョーカーがエストは大丈夫と言ったのとユウのあの状況からそれしか出来ないのだ。

 

ジョーカーと通信回線を繋ぐ。

そこには同じような状態のジョーカーがいた。どうやら穴を埋めたようだ。ヘルメットのバイザーをあげて楽な状態になって栄養バーを頬張っている。

まるで戦場じゃないみたいに振る舞っているその姿を見ながらも怪我がよく見える。

 

「私はアミダさんの援護行くからジョーカーはフュンフの所まで戻って」

「いや、俺はユウの援護に行こう。あいつの戦いは元々一対一が主じゃない。前衛役の誰かがいることであいつの優位性は何倍も強くなる」

 

怪我は戦えない程ではない。しかしあの高速戦闘についていけるとは思えない。怪我がなくてもついていけるかわからないのに、怪我があるとついていけずユウの足手纏いになる可能性が高い。

 

「安心しろ。あいつの足手纏いにはならねぇよ。出来るだけあいつを止めてイプシロンの家族を...タービンズを助けさせれば良いんだろ?」

 

その言葉はまるで自分はイプシロンとは関係ないと言っているように聞こえた。

しかしそれに気にする事は今はしない。自分もタービンズには、イプシロンには居続けると思うが戦うのはこれで一旦終わると思ったから。

それより通信越しに見える。ジョーカーが今までとは違い、此方を睨んでいた。

 

「...わかった。お願い。ゆーちゃんを生かして」

「任された」

 

ジョーカーの機体は一瞬エストの方を向き、その後高速戦闘へと突入していった。その姿はまるで特攻しているように見えた。

 

「エスト...信じてるから。生きて帰りなさい」

 

 

 

 

──俺、死んだのかな。

急に体が軽くなる。弱い重力を感じるのでここは...地球だろうか。しかし先程まで宇宙で戦闘をしていた自分が地球に行くことが出来るのはおかしい。しかも何も見えない真っ暗な状態で何も視認出来ない。身体が妙に軽く感じる。確かに身体はあるのだが何も触れない。

──多分、負けたんだ。

ギャラルホルンの名も知らぬパイロットに。負けたのだろうか。殺されたのだろうか。

最期の映像が頭の中で繰り返される。

痛みは感じない。

──悔しい。みんな、助けられたかどうか...

それすらもわからない。

助かれば良いのだが。何もわからない為、ゆっくりと重力のようなものを感じる事しか出来ない。

──嫌だ。

俺は、こんなの嫌だ。

望んでいない。俺はこんなの望んでいない。

 

身体は動く。動くんだ。

じたばたしながらもがく。

嫌だ。まだ死にたくない。死にたくないと。

──俺には...俺にはまだ!

まだ沢山の物がある。息子である自分を愛してくれた家族がいる。残して死ぬなんて出来ない。

せめて、安心できるようにしないと。

──死ねない...死にたく...ない...

意識が遠退いていく。力が抜け、死という一文字が此方に迫るように感じる。

しかしまだ、諦めない。

──あいつだって!こんな状況経験しているんだ。兄貴である俺が負けてたまるかよ!

 何が、何があっても。

──まだ、死ねるかぁ!

動け、俺の体!獅電!俺が動かしたとおりに動け!まだ死ねない。死ねない。死ねない。

その瞬間何かが手をつかんだ。

 

「何言ってやがる? 腕も足も有る。身体も動く。なら、お前はまだ戦える。どれだけ無様でも、最期の最後まで足掻きやがれ。

──家族を、守るんだろう?」

 

真っ暗闇が一気に取り払われる。

その瞬間、視界に半壊したコックピットが入ってきた。ガラスの反射で身体から出る血がよく見える。何かが身体に刺さったのか、そこに違和感を感じた。すぐにそれを身体から抜き去る。

何かが吹き出したが気にしない。

 

「最期まで付き合ってもらうぞ」

 

獅電のメインカメラが輝いた。

それは安心等を与えた訳ではないが力を感じた。

機体のコックピットにめり込んだ斧はもうそこにはない。今さっき、グレイズルデンが持ち上げた。そこまで長い時間あの空間にはいなかったらしい。

どちらしろ、意識がしっかりしている今しかチャンスはない。この一瞬にすべてを賭ける。

出てくる代償を想像すらしなかった。

もう警報(アラート)は聞こえない。今しかない。

グリップを握り直す。そして、それを前に倒した。

 

「あぁぁぁぁ!!!」

 

パルチザンが動いて敵モビルスーツのコックピットを打った。敵モビルスーツのコックピットは凹みはしたものの、外傷はそこまでないようだ。

それでも止まらない。

スラスターのガスも気にせず突っ込む。

パルチザンで突く一度の攻撃。

 

「(それに全てを)」

 

世界がゆっくり流れていく。 敵モビルスーツは退きもせず非常にゆっくりとしたスピードで斧を振り上げている。

それが振り落とされるということを頭から抜き去り、パルチザンを当たれば一撃の所、ユウが一番最初に狙う、コックピットの開閉部に合わせる。

 

パルチザンはそのまま吸い込まれるようにグレイズルデンに当たった。

 

「(ありがとう。名も知らぬパイロット)」 

 

俺はもう一歩先に進める。

 

そのパルチザンはそのままグレイズルデンのコックピットの上部を破壊して強引に動きを止めた。

同時に獅電の両腕がもぎ取れた。

グレイズルデンのパイロットの安否は確認しなかった。しかし戦闘不能にするという条件なら

引き分けだろう。

今度は勝つと誓いながら意識を手放した。




主人公空気...ま、いっか。
もうユウ君がスナイパーだから前衛として作品を盛り上げる人が必要だし(メタい)
これでエストが機体を気遣わなくても良くなったらもっと強くなれる。例えば...厄祭戦時のモビルスーツ...
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