機動戦士ガンダムテイワズの狙撃手   作:みっつ─

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最近感想欄でどうせ気付かれないだろうなと思いながら書いたユウのミスとかをポンポンと暴かれて草バエル。

意外とこの作品って愛されてる...?


というかサブタイトルが不安すぎる。


第51話 タービンズ

「イオク様、よろしかったので?」

 

乱入してきたモビルスーツの内一機に狙いをつけられた挙げ句、煽られた無能代表イオク・クジャン。

元々この作戦は通常通り行ってもラスタルの許可無しに勝手にやっているのでそれですらお咎めなしになる筈無いのに、ライルまで引っ張ってきて、そして自分の命に大きな損傷を起こすピンチ。

そのショックで伸びていたのだが部下に起こされて今に至る。

なんとか時間をかけて落ち着いて行くその姿に一代前のクジャン公を重ねたものは誰一人としていなかった。

中には何故イオクはこのような男なのかこのような男として生まれてきたのかという疑問が頭の中から出てきたものもいるほど。

どちらしろこの危機的状況を何とかするのに手はなかった。

 

「何故なんだ!私は...」

 

イオクもとりあえず慌てながら応じたものの、通信がきれると同時に項垂れた。オペレーターはその様子を見ながらモビルスーツ隊に武器をおろすように伝える。もうピクリとも動かない上官に頼るものなどいない。

十数秒たったあとにイオクはゆっくりと頭を上げる。絶望に満ちたその表情はまるでこれから世界が終わると告げられているようだ。 

  

「こんな野蛮人に...屈するなど...私はラスタル様の隣にはたてないのか...!!」

 

自身の無能さに少しは気付いたのか涙を流しながらまたうなだれる。

しかしこの件の責任等が何処へ行くかということはわかってないらしい。ただ、自分が無能だと思っていた相手にここまで損害を広げられるとは思ってなかった。

 

「ラスタル様の隣に立つために、時には己のみを守る覚悟が必要...」

 

ボソボソと呟きながらもイオクは落ち着いていく。

あの一言で敵の攻撃は止まったのでオペレーターはひとまず安心するがこのあと自分達にも責任が来ると考えるとゾッとする。

やはり倒しておきたい。しかし今の力では難しいこともまだ事実。

 

「イオク様、タービンズからの使者が来ます。どうなさいます?」

 

そう言いながら振り向いたオペレーターはとりあえずモビルスーツデッキでも開けておくかと思いながら一応イオクにいう。

その瞬間イオクの頭に一つの案が浮かんだ。

いままで無能と言われ続けたイオクだと考えれば頭の使いかたがわかったと取れるだろう。

 

「そうだ!内部通信でダインスレイヴ隊に言え!今、私が言葉で敵に武器をおろさせた。そして...」

 

我々に向かう悪を殺せ(撃て)とな」

 

そのときのイオクの顔はまだ撃ってすらいないのに勝ち誇っている顔だった。

その顔にオペレーターは恐怖を抱き、それがダインスレイヴ隊に伝わることとなった。

最悪の案が伝わった。

 

 

 

「いってぇ...」

「ハイハイ。ジョーカー、お疲れ様」

 

相変わらず扱いが悪い男を開けたコックピットから見る。機体の損傷度はすごく本人の身体も結構限界だった。この機体ではフュンフに戻ることすら難しいだろう。というか不可能だ。誰かに引っ張って貰うしか無さそうだ。

 

「良く生きてる...」

「悪口か?」

「ええ」

 

戦闘も終わったのでシュインもジョーカーの扱いが軽い。対するジョーカーもやりきったからか、それを悪く思わなかった。もう思うほどの余裕もないと言った方が正しいか。

 

「どちらしろ。あいつはやりやがった」

「うん。やるよ。だってゆーちゃんだもん」

 

そういうシュインの顔はこの上ないくらい輝いていた。

 

 

束の間の希望もすぐに潰えた。

 

 

「ダインスレイヴ隊!発射!」

 

数多の数のダインスレイヴから火花が飛び散った。

 

ハンマーヘッド周辺。

何か悪いイメージをアンドラスから受信したユウは回りを見渡す。

今からアリアンロッドへ行こうとするのになんというイメージを送ってくるのだろうか。

まさか嫉妬...等もないだろう。アンドラスがそのような事をするのは初めてだ。

そう思ったその時、今度はアンドラスからではなく、戦士としての勘が働いた。 

その時避けていればすぐにアリアンロッド艦隊に発砲出来ただろう。しかし今回は悪く、気づいただけだった。

 

「ユウ!」

 

何かがアンドラスを蹴飛ばした。衝撃が来ると同時に物凄い轟音が轟いた。目の前でミサイルでも着弾したのではと思うほどの音。

鼓膜はやられなかったものの、衝撃で一瞬気を失った。

そこから目を開いたそこに飛び込んできた映像を見て、自分の目を疑った。見慣れたピンク色の装甲。そしてピンク色の百錬の左腕。

 

「あぁ...」

 

止めるもののないその破片がアンドラスに当たり明後日の方向へと行く。

フレームはネジ曲がり、そこから破片が散らばり、その回りに電撃が走る。ネジ曲がったフレームはヒビがはいり、身体能力最強の人間の力でも折れそうな勢いだった。

勢いが強すぎたのか当たったとは思えないメインカメラにも損傷が見れる。無理に動いたのだろう。もう人形ではなかった。

 

「あぁ...」

 

意味のない嗚咽がまた口から漏れた。

驚きという感情どころか悲しみも生まれなかった。

ただアンドラスにやられたときよりも多数の情報が頭のなかを巡り、そして動かなくなった。

ろくに頭が動かない状態でポカンとすることしかできない。

普通ならすぐに駆け寄っただろう。助け出そうとしただろう。けど真っ白になってしまった頭には何も入ってこなかった。

 

そしてゆっくりと頭の機能が戻ってくる。

真っ白になって動かなかった脳に感情というものが出てくる。

 

「母さん!」

 

まだ完全に戻ってはいないが必死に百錬にしがみついた。アンドラスのアームでコックピットを抉じ開ける。

コックピットもひしゃげていて中身は確認しなくても読めていたのかもしれないが、今は頭がそこまで回らなかった。

アンドラスのコックピットから出て、百錬のコックピットに侵入する。

何もない状態であってくれ。と無理なことを願う余裕が出てきた。しかし、その余裕もすぐに奪われた。百錬の側に浮いていた破片を手で押し退けると、そこには当たり前だがパイロットのアミダがいた。

 

しかしそれは酷い有り様だった。

コックピットの所々がひび割れ、その隙間から電子部品が見える。

アミダの身体には何処かのパイプが土手っ腹を貫いていたのだ。そこから赤黒い血が止めどなく溢れてくる。そのパイプはコックピットシートにまで突き刺さっていた。ノーマルスーツの赤くなり、いつもは着けないはずのヘルメットのバイザーはひび割れていた。そこから本の少しではあるが空気を感じる。顔も気があるのかないのか確認出来ない。パイプを引き抜けば運べるだろうがそうしてしまうと、血の量が増える。

どうすることも出来なかった。

 

 

何故だ。

後1秒。あと1秒だけ早く気づけていれば!

医療スタッフじゃないからって軽い応急措置だけではなく、これほどの重体患者の応急措置を知っていれば!

僕がすぐにイオクとやらを撃っておけば。殺していれば!

殺す事が出来るのなら、それを守る力に変換できた筈だ。出来るはずの力はたっぷりあった。何故出来ない!いや、何故しようとしなかった!

アグニカ・カイエルという英雄に憧れるだけ憧れてその力を得るために何故全てを投げ出そうとした。

僕が殺したような物だ。

親孝行をしたいなどとほざいておきながら結局は親に守られている。

 

 

そう思って何も動くことができない。その僕に何かが当たる。アミダの手だった。そして優しく言う。

 

「ユウ...かい?悪いね。ちょっとよく見えないよ」

「...っ!僕だ。僕だよ。ユウだよ。母さん!」

 

ノーマルスーツにある空気もそこまで多くはない。すぐに限界を迎えるだろう。そしたら待っているのは、死だ。

 

「ごめんなさい...僕のせいで」

「大丈夫。あんたはよくやってくれた。私こそごめんね。あんたに...教える事が出来...たのはのはひとごろ...」

「そんなことない!僕は沢山貰った。人として一番大切な物を家族に貰った。人殺しなんて教えてもらってない!」

 

涙が溢れる。それを拭うこともせず、はっきりとアミダを見た。アミダのかき消されそうなその声一つ一つを聞き逃さないように。

 

「ああ...そうだね。ユウ。今度はあんたが与えるんだ...。生きて、与えるんだ。あんたなら出来る...。なんたって...名瀬と私と...あの子の子供なのだから」

 

わかっていた。アミダは子供が産めない身体。なのに何故自分に私がお母さんだと言ったのか。

それは自分の本当の母親がもういないということ。

 

「うん...」

 

アミダの手から力が抜けていく。血がバイザーに付いた。視界が歪むがそれすらもわからなかった。

 

「僕はいつか父さんを越えるような立派な人間になるよ。そして(とき)すらも支配して見せる。だから...」

「ああ。あんたなら出来る。気がする...よ。あんたが目指...すアグニカすらもなし得なかった事を...行きな。生き抜くんだ。負けちゃいけないよ。あんたはもう最強の...」 

 

アミダの言葉がどんどん小さくなっていく。手の力が抜けて僕をコックピットから出す。

 

狙撃手(スナイパー)なのだから」

「くっ...」

 

百錬のコックピットから身体が出ていく。その自分を包み込むようにアンドラスが自身のコックピットに入れた。

 

そうしてアミダの動きが止まった。

アンドラスも何も言わなかった。

静寂が訪れ、そしてしっかりとした声が聞こえた。いや、感じた。

 

 

「名瀬...私らがいなきゃあんたは咲くことができない。だったら私は...名瀬、見せてやるよ。とびっきりの輝きを」

 

百錬がライフルを握りそしてその引き金を抜いた。

その衝撃に耐えられず百錬は崩壊した。

爆発にアミダは呑まれてもう死体すら回収出来ないだろう。

 

「母さん...ううっ...ぐっ!」

 

すぐにハンマーヘッドに近寄って通信を開く。

今さっきした誓いを訂正するわけにはいかない。

死んではいけないんだ。もうこの命は僕だけのものじゃない。

涙を拭くこともせずにハンマーヘッドと通信を開く。

 

「父さん!すぐにハンマーヘッドを出て!ランチ位あるだろう!脱出を!」

 

そう呼び掛けるが名瀬の反応は薄かった。

 

「いや、アミダを一人で逝かせる訳にはいかねぇ。行けよ。ユウ」

「何言っているんだ!こんなときに!」

 

無理矢理でもアンドラスを捩じ込ませて名瀬を救出しようと考えたが名瀬がノーマルスーツを着ているとは思えない。それに...さっきの言葉。

彼には命より大切な物があるのだ。それを守るための時間としてそして、愛する人のそれを守れなかったから。自分もそこへ行きたいと。それを止める術は僕にはない。

けど

 

「僕はまだ、何もしてやってないよ!親孝行くらいさせてよ!」

「もう充分だ。ユウ。お前には沢山貰った。親孝行なんて考えなくていい。もし考えるなら俺達の家族を守ってやってくれ。それがお前に出来る唯一の親孝行だ」

 

ハンマーヘッドは止まらず、動かないアンドラスの横を通り、アンドラスを隠す。

この次に待っているのは親の死だ。そんなの許してはいけない。そうだ。抗わなければならないのだ。しかし身体がうまく動かない。

 

「父さん!待って...!」

 

手を伸ばすがアンドラスに阻まれる。コックピットのその壁を越えて伸ばしたいのに、何も変わらない。コックピットの中でもがいているだけだ。

何で守れない。何で力をつけられない。何で弱い。何で動かない。

何で。

 

「うう。うおおおおおっ!!」

 

雄叫びを上げる。これならアンドラスは動いてくれる。いつもの彼女なら僕に力を与えてくれる。

しかしいつまでたってもアンドラスは動かない。操縦幹を動かしてもアンドラスは動かない。

 

「どうしたんだ!アンドラス!僕はもう何も失いたくないのに!動け!動いてくれ!」

 

アンドラスは沈黙して何も言わない。

もがいても、唸っても。何も変わらない。

どうして。どうしてなのだろうか。どうして、僕はこんなにも。

 

 

無力なんだ。

 

「父さん!」

 

 

ハンマーヘッドにダインスレイヴの槍のような形をしている特殊弾丸が突き刺さる。一発ではない、二発、三発。何発も刺さりハンマーヘッドは黒い煙を上げる。それでも止まらずに真っ直ぐ突っ込んでいる。

また声を感じた。今度は父さんの声。

 

「女は太陽なのさ。太陽がいつも輝いてなくっちゃ男って花はしなびちまう。いつも笑っていてくれよアミダ。強く激しく華やかに笑っていてくれ。そうすりゃ俺はどんなときだって顔を上げることができる。お前って太陽に照らされてりゃあ俺は...」

 

それ以上は聞こえなかった。

ハンマーヘッドはギャラルホルンの戦艦にかすった後、そのまま一つの戦艦に当たり、爆散した。

それはハンマーヘッドがよくやる、突貫に似ていた。

いや、それだ。最後の最後に船を一つ沈めてハンマーヘッドはその生涯に幕を下ろした。操縦席にいた名瀬・タービンと共に。

最後のあがきで船を一つの沈めたのだ。

 

「あ、ああ...僕は...僕は...ああ。ああ....」

 

涙が止めどなく溢れてくる。それを止められる者はこの世界を探しても誰一人とていない。

 

何人もの人が泣いた。悲しんだ。

それほど愛されていたのだ。彼らは。

そしてもう二度と会えないという喪失感を感じる。そして...無力さを。

 

 

「うっ...うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

ただ泣き叫ぶことしか出来なかった。

助けに来て、何も出来ずに...終わった。

 

「逝ったか。タービン」




名瀬、アミダ死亡。
これはこの作品を書くときから決めていました。二次創作だから救いを!ではなく、大切なキャラが死んだ後の残されたメンバーの成長等を書きたいので



と言うか最後のセリフあれいったい誰が言ったんだ?(棒)
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