機動戦士ガンダムテイワズの狙撃手   作:みっつ─

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JPTトラスト編へ突入。
さて落とし前。つけに行きましょうか


地味にアフターストーリーの伏線出すの楽しい。
しかし同時にアフターストーリーの内容がバレそうで怖い

知り合いがこの作品を読んでオリジナルの主要キャラの絵を書いてくれました。(イメージです)
え?結構前に感想で返した物と全然違う?イメージですって
(実は僕もそこまで深く考えていない)


JPTトラスト編
第52話 遺されたもの


一人の女が死んだ。一人の男が死んだ。美しきつがいの死は愛の名のもとにあった。しかし残された者にとって彼らの死は冷たく重い鉛の十字架となる。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

彼には失った物が多すぎた。

これまでの記憶が一気に頭に突っ込んできて、それと同時に悲しみの感情が支配する。

結局泣き叫ぶことしか出来ない少年はただ泣いていた。

しかしこれで終わりではない。

 

 

「そんなアミダさん...名瀬さん...」

「あの火力...やりやがったな。アリアンロッドめ」

 

端から見ることしか出来なかった二人も。

まだ終わりではない。

 

まだアリアンロッドは健在なのだから。

すぐに、ダインスレイヴの次弾が装填される。

それに一番早く気付いたのはジョーカーだった。ボロボロの機体を動かして体制を整える。ノーマルスーツを即座に整えてペダルを踏む。

 

「シュイン。すぐにエストを回収後フュンフに戻れ」

「どうするつもり?」

 

シュインが離れていくジョーカーに問う。アリアンロッドとの対戦に敗北したのだがそのトーンはいつもの変わらなかった。少し安心というのは違うが戦場にいないように感じた。

 

「ユウをここから逃がす」

 

逃がす。その言葉からまるで自身をここで投げ出す。という風に聞こえた。それに気付くが確かにそちらの方が確実だろう。

 

「ジョーカー。それってつまり...」

「どうせもう限界だ。なら託したい物がある」

 

ジョーカーも死ぬ覚悟をしている。ならばここでそれを駄目というのは彼にとって失礼にあたるし、どちらにしろ行くだろう。ユウに生き残る可能性があるならそこに掛けたい。

 

「...わかった。すぐにフュンフを発進させてこの宙域から逃げるからそれまでにゆーちゃんだけは助けて」

「わかっている」

 

ユウはこんなところで死なせてはならない。ろくな話し合いもしてなかった救えなかった後の話だがその二人の意見は一致した。

 

「なかなか楽しかったよ」

「俺は嫌な目で見られただけだったけどな」

 

 

 

「うぅっ...僕は...この...!」

 

どうして僕は。ユウはずっとその言葉を繰り返した。

僕は自分の事を強いと思っていた。はじめての操縦でアンドラスの加護があったとはいえ、正規兵に勝利したのだ。モビルスーツを操縦したことのない僕が訓練した兵に勝つ。才能という物を信じた。それと同時に現状では満足していなかった。だから僕を越えたアミダやライルを越えたいとずっと思っていた。僕より強い人間がいるならもっと強くなりたいと。

その中で力の...強さの象徴であるアグニカ・カイエルに憧れた。彼になる...事は不可能だが彼のような人間になることでもっと強くなれる。そして誰が出てきても倒せる。そんなパイロットになりたかった。

得るのは嬉しいのに、失うのは嫌う、わがままな人間だから。だからこそ、家族も誰一人として失いたくなかった。

そのわがままな感情があるから僕は強くなれないのか。わがままとはただの甘えだ。僕は甘いから、弱いのか。

強いと勝手に思って思い上がった罰なのだろうか。だとしたら僕は...それを決定した神を憎む。目の前に出てやってこの世で一番残酷な事をして殺してやりたい。僕は...嫌いだ。

罰をするために僕を殺すのではなく、僕の大切な物を狙った物を。結局は他人から奪うことしか出来ない者を。

許さない。許してはいけない。

殺したい。

殺してやりたい。

自らが神と思っている、アリアンロッドを。たとえ神であろうと殺してやりたい。殺す。コロスコロスコロスコロス!

 

「殺せ、アンドラス。醜い者をこの世から排除しろ!」

 

アンドラスに命令を下す。

アンドラスのその両目は死んだように輝かないが先程とは違いアンドラスが動いた。

その時駄目という声が聞こえた。その声の正体を探る余裕はない。

 

「駄目だと...何が駄目なんだ!いままでだって!さんざん殺してきた。何を今さら!...もういいよ。僕は殺すだけだ」

 

アンドラスを動かす。アンドラスは何も答えてはくれないがその身体は容易に動いた。システム的な補助も消えたがただ、他のモビルスーツと同じ状態になっただけ。

逝ったのか。と一瞬考える。ならばその願いも乗せて、殺す。

 

目の前に入ってきたのはアミダとやりあっていたモビルスーツ。おそらくアリアンロッドの新型。そうだ。母さんはこいつに殺された。こいつが無駄な事をしなければ死ななかったのかもしれない。

こんなやつに...こんなやつのおかげで。母さんは...死んだのだろうか。

 

「ははっ」

 

乾いた笑いをしながら殺気を出さないそのモビルスーツに飛び付く。レールガンでスラスターを即座に破壊してミサイルでコックピットを炙る。

中身のパイロットにも熱が伝わって...死ねばいいのに。

 

「お願い。死んで」

 

少しづつ、感情が消えていく。

憎悪も、怒りも感じなくなっていく。

あるのはただ、殺さなければならないという使命感だけ。

アンドラスに殺せといったが、そのために動いているは自分だ。でもそんなの関係ない。誰でもいい。誰でも良いから殺さなければならない。

接触回線が開かれる。

そこから聞こえたのは一人の女性の声だった。若い女の声だった。家族の中にも沢山いる世代だ。

しかし感情は出てこなかった。感情のままに殺す訳ではないのだ。勿論多少感情はある。しかしそれは少しづつとはいえ、なくなっていく。

 

「私は!ラスタル様の剣!ラスタルのために!」

 

ふいに口が動いて音を発した。

 

「もういいよ。喋らなくて」

 

その言葉が善意から来たものではないだろう。何処か自分を客観的に見るようになった。まるで自分が自分でないみたいだ。ただ、殺さなければならない。破壊しなければならないという使命感ばかりが前に行く。

まるで死んだ魚のような目をしながら目の前のモビルスーツを少しずつ破壊していく。その様子は悪魔のように映った。

 

「あっ...うっ!悪魔め...」

 

敵モビルスーツパイロットの少女も恐怖にからだが動かなくなっていく。その声を聞いて一瞬誰かを想像した。その影響かかわいそう。苦しそう。と思い、感情が出てくる。

 

「待ってて。すぐに楽にしてあげる」

 

しかしそれはすぐに薄れていった。ゆっくりと薄れていく敵モビルスーツのパイロットよりも早く意識が消えていく。

その時誰かが問いかけてくる。

──何故彼女が苦しんでいるか、わかる?

 死にそうだから?痛いから?怖いから?

──じゃあ、それを与えているのは誰?

 僕だ。殺そうとしているのも、苦痛を味会わせているのも。怖い思いをさせている奴も。みんな僕だ。

──貴方がしたいことは何?復讐?彼女を攻撃することが復讐になるの?

 なんだろう?わからないや。僕はただ、奪われたのが悲しかった。お母さんが、お父さんが目の前で無様に奪われていくのが悲しかった。

──だから彼女に当たった。彼女に同意を求めたの?彼女が苦しめば貴方の悲しみは無くなるの?

 無くならない。なんで?どうして無くならないの?彼女だって死にそうなのに。どうして?同じ状況にしなくちゃならないの?

──相手に苦しみを与えたってあなたに来るのはそれでも晴れない虚無感よ。考えなさい。自分がどうするべきか。死んだ人達が貴方に何を望んだのか。

 生きること。そして、家族を守ること。父さん達が命をかけてそうしたように。僕は守りたい。守らなくちゃならない。

──そのために彼女を殺すの?

 違う。それは違う。今必要なのは危険なここからの脱出。

──やっとわかったようね。そこまで分かれば充分。後は守りなさい。大切な人たちを。その為にはすべてを犠牲にする覚悟をつけなさい。

 わかったよ。

 

「アンドラス」

 

ゆっくりと薄れていったものが戻っていく。

まだ悲しいが、それよりしなければならない事が頭に出てきた。ずっと目から出てきていた涙を拭き取る。

 

「ユウ!」

 

ジョーカーが寄って来る。それに気づいた瞬間にアリアンロッドの新型を蹴り飛ばす。その影響でパイロットが生きてようが死んでようが構わない。此方には関係がない。それより大切な事をしなくてはならない。

 

「大丈夫か?」

「うん。父さんと母さんはもう死んだ。軍配はあっちに上がった。でもまだ終わらない。終われない。僕はここから出たい」

 

ゆっくりと落ち着いていく中でジョーカーにそう言う。

結局僕はわがままなようだ。

いつだってそう言うわがままをみんなに聞いて叶えてもらった。ならもう少し、あと少しだけ甘えるか。そう思いながら操縦幹を握り直した。

 

「...なぁユウ」

 

ジョーカーが話し掛けてきたのでそちらの方を見る。ジョーカーの機体はもう限界だった。なんだかんだ言って機体に無理をさせなかったジョーカーだが、今回ばかりは損傷が酷い。

 

「俺の機体は限界だ。そして、今の状況。わかるか?」

 

なんとなくその次の言葉を察した。

その事にOKをするかどうか。それが今僕にかかっている。

ここで僕がいいよと一言いえばジョーカーは特攻か、攻撃を仕掛けてその間に逃げろとでも言うだろう。つまり囮だ。ジョーカーの事だから殿を勤めるとでも言うのだろうが死ぬことにはかわりない。しかしその機体の損傷では、フュンフにいれないと戻ることすら不可能だろう。あの位置にいたとしてもそれで今ここに来た。つまり...もう生きる気がないということだ。

 

「ごめん。ジョーカー...僕が弱いせいで」

「お前に責任はねぇ。あるとすればそれはあいつの剣技を避けられなかった俺だ。でも戦場ならよくあることだろ。気にするな」

 

今から死にに行く人間の台詞ではない。そう他人事のように一瞬感じた。

しかし彼は最初からイプシロンの一員だった。今だってそうだ。これからも。死んだって変わらない。

 

「ジョーカーいままで事、感謝する。そしてすまない。本当は酒でも交わしながら交流したかったが」

「結局そんなことは一度もしなかったな。まぁいい。お前があの女たちを愛しているのはよーくわかった。守ってやれよ。守れなかった俺の代わりに」

 

最後は何か思わせるような言葉を言ってアンドラスを押した。その軽い衝撃が最後だと言うことを理解してアンドラスを頷かせた。後は任せろと言うように。

 

「しっかりしろよ」

 

僕が聞いた彼の声はこれで最後だった。

もうこれ以上構うと彼の行いが無駄になる可能性もあるのでそのまま見捨てるように...というか実際見捨てているが、そのままフュンフへと戻るためにアンドラスを駆った。途中で浮いていた百錬の左腕を回収して。

振り向かずに戻った。

 

 

 

 

「さてと。最後の仕事はとても充実しそうだな」




最後だけはカッコいい男

次回ジョーカー・クロウド
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