機動戦士ガンダムテイワズの狙撃手   作:みっつ─

62 / 85
テストだー(棒)
嫌だー!ドンドコドン!

本当にイオクが嫌な奴になっている...気を付けないと変なところから狙撃されるぞ。





第54話 もう一度

元気に鼻歌を歌いながら、側に部下をつけて後ろに歩くのはイオク・クジャン。

禁止兵器を使用しながらも勝利は勝利なので若干の怪我をしていながらも機嫌が良い。

そのイオクの道を塞げるように一人の女性が一人の部下をそばにつけて立ち塞がる。

赤い髪を持った女性。アメリア・エリオン。その姿を見てイオクは誇りたくなって胸を張りながら進む。しかし、アメリアは苦いコーヒーを飲んだ子供のような表情をしながら動かない。

 

「聞きましたよ。イオク様、ダインスレイヴを使用したようですね」

 

出来るだけ怒りを抑えながらもアメリアはイオクに言う。まるで何をしたのかわかっていない子供を諭すように。

 

「ああ。どんな相手であろうと本気を出す。それにタービンズにはお前が目をかける程のパイロットがいるのだろう?」

 

確かにそう言う事を言った記憶がある。しかしそれは呟いた程度の事で彼がそれの情報を拾ってくるとは思えなかった。

ユウ・タービン。それが自分が目をかけるパイロットの名前だ。ギャラルホルンでも最強を誇るライルに食らいつき、ライルにもアイツとは出来るだけやりあいたくないと言わせる程のパイロット。

年はとても若くライルからしてみれば自分が一番最初にモビルスーツに乗った時くらいの年齢で1度ではあるが会ってしっかりと見たこともある。とはいってもライルの説明からの予想ではあるのでそっくりさんの可能性もあるにはあるのだが。

とてもモビルスーツに乗って人殺しをするような少年には見えなかった。人殺しをする覚悟もないような無垢な少年と感じた。なので間違いなのかもしれないがあの子がユウ・タービンという男ではないのかと思っている。

理由は特にない。誠に恥ずかしいことだが、今更ロークスに行ったところで会えない確率の方が高い。しかしまた会いそうな気がしないこともない。

どちらにしろ、彼に目をかけていたことは本当だ。しかしそれは秩序を乱してまでとは思えない。

 

「ですから、ライルとニールを送ったのです。確かにあの子は強いです。それにアリアンロッドとして貴方にも捜査をして違法組織なら制裁を下す権利があります」

 

隣にいるライルを一瞬だけ見て、すぐに視線をイオクに戻す。ライルは扱いは難しいがギャラルホルン最強のパイロット...いや、()()()()()()()()()()()()()()()()()と言えば世界中の人間が頷くだろう。それほどの人間を送ったのだからダインスレイヴなんて使う必要は無いのだ。なのに、敢えてなのか不明だが、イオクは違法兵器を使用した。イオクにこの行いの意味をわかってもらわなければならない。

 

「ならば良いだろう。貴様がいうガンダムフレーム...我々の先祖である高貴な方々の機体を冠した紛い物の機体にも私は勝利したのだ。それも!紛い物ならば当然だな」

「でも、ダインスレイヴという一つ間違えれば違法兵器となる兵器を使ってグレーゾーンを越えて貴方は違法な行動をしました。それが許されることですか!例え、違法組織の調査であろうと...!」

 

そこまで言うと流石にイオクも怒りの沸点に達したようでいままで以上に重く、そして武器となりそうな声で言った。

 

「いい身分になったものだな。アメリア」

 

いつもの馬鹿っぽいイオクとはかけ離れた姿とその言葉に流石のアメリアも驚く。

プライドの強さからかここまで言われるとその感情も力となるのか。

 

「ぐっ...」

「私はタービンズという組織がダインスレイヴを所持しているのを確認した。だから違法組織とし、ギャラルホルンの力を用いて崩壊させたのだ。それを違法ととるか。甚だしいぞ」

 

その言葉に側についていたライルが怒りを隠せなくなったのかイオクの目の前に出る。

 

「止めなさい。ライル」

 

そう言うとライルはピタリと止まり少々躊躇したあと、元に戻る。その顔から此方にその怒りは向いてはいないようだが、邪魔をするなと言っているように感じた。

おじさまが死んだとき慰めてくれたその姿といつものふざけた姿、そしてこの鬼のような姿。どれが本当の彼なのだろうかと関係ないことを考える。

 

「では。私はラスタル様にマクギリスの火星での活動に楔を打ち込むことが出来た事を報告にいく。お前にはラスタル様も私も期待しているのだ。頼むぞ」

 

イオクも怒りが収まったのかもしくは、ライルにビビったのか、いつもの声で此方に言う。

肩を叩きながら、優しくしているつもりなのか耳元で言われる。囁くではない。本人はそうしているつもりだと思っていると想像したが此方は嫌気がした。

その後こちらが何も動かないことを良いことに頭をさらっと撫でながら通りすぎていった。

 

「イオク様」

 

その通りすぎた姿を人目も見ずに声に出した。イオクがゆっくりと勝ち誇った表情で見る。

ライルも驚いているのか、目を見開きながら見る。しかしその二つの視線のどちらとも無視をする。

 

「なんだ?」

「まさかタービンズの件、免罪、もしくは嵌めたなんて...言いませんよね」

「勿論だとも。タービンズは絶対的な違法組織。私はその情報を得て、捜査をし、見つけたのだからな」

 

そう言って通りすぎていくイオクを見ようとはしなかった。ただ、歯を食い縛る事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

「よう。ユウ。ひでぇやられようだな。どうだ?」

「...」

 

地味に怪我していた自分の身体を擦りながら目の前の相手を見た。マクマード・バリストン。ここ、歳星を運営するテイワズのボスでお祖父様等呼んでいた相手だ。

何故、タービンズの救援に行くためにマクマードの命令、つまりテイワズの意見に背いてギャラルホルンを攻撃、つまり反社会組織となりかけた組織の長である僕がこの場にいるのか。

それはギャラルホルンのアリアンロッドとの抗争に敗れた後の事だった。

 

マクマードから言われたのだ。

 

早く歳星に帰ってこい。

 

と。

怒るのでもなく、ほかるのでもなく、何処かあきれたようなため息混じり声を出しそう言ったのだ。

気遣ったとは思えない。元々マクマード・バリストンとはそう言う男だ。しかし僕をテイワズにいさせておくメリットはあまり浮かばない。

結局、これはマクマードの気遣いということで考えている。だからただ、感謝することしかできなかった。

出来の悪い孫でごめんと何度も頭の中で繰り返した。

 

「んんっと。俺はよぉ本当はお前をテイワズから出すつもりだった。お前の行いは褒められたものではない」

「わかっています。許されないのなら、僕が今ここで腹を斬ります」

 

覚悟はしている。僕が今ここにいるという事は殺されるということだろう。そこまで社会は甘くない。せめてみんなが無事に生きていけたらと思いながら、深呼吸をした。

しかしマクマードはそれを望んでいないようで扱いにくい機械の使いかたを悩むような顔をして、首を回す。

 

「けど、今回ばかりは許してやらんでもない。お前さんがテイワズにもたらしたものは以外とでけぇ。その経歴と名瀬の頼み、そして依頼があるからな。その依頼をやれるという自身があるのなら今回の不祥事許してやらんこともない」

 

その言葉は望んでいると同時に不可能とわかっていた言葉だった。

激しい感情の起伏に沿うように立ち上がる。

 

「お祖父様...ありがとうございます!」

 

頭をおもいっきり下げる。

希望が見えた。今ここでテイワズのボスにここまで言われたということはテイワズに残ることが認められたということ。これでみんなを守るための地固めは出来たような物。後はちゃんと組織を作り直すのみ。

 

「忘れるな。俺は依頼をやれるならと言った。あとそのお祖父様ももうやめろ。名瀬と俺はもうなんの関係もない」

 

マクマードは軽く手を降ってそう言う。

忘れていた。今ここで認めてくれる訳ではない。ちゃんと果たさなければならないことがある。

 

「では、その依頼とは?」

 

出来るだけ落ち着いてそう言うとマクマードはニヤリと笑いながらどこから出したのか端末を机に置く。

そして、何故かドヤ顔をしながら言った。

 

「裏切り者の成敗だ」

 

そこにはJPTトラストの情報が書いてあった。

勿論、ジャスレイ・ドノミコロスの名前も。

 

 

 

 

 

 

「あの、七光り野郎が!嘘ばっかりじゃねぇか」

 

ライルが部屋に着くや否や、壁をおもいっきり殴った。

おそらく音からライルの手は赤くはなっているだろう。しかし硬い壁は人間の力で凹んだりする筈もなく、ただライルが痛がるだけでおわった。

 

「...そんなことしたって痛いだけですよ」

「ちっ」

 

ライルは舌打ちしながらも意味ないとわかっていたので引き下がる。

確かにこの頃のイオク・クジャンはおかしい。馬鹿なところはあったがそれでもまだ可愛い物であり、十分許せる範囲だった。

 

「というかなんでお前はラスタルに言わなかった」

「口止めされました。あの時から気づくべきでしたね」

 

邪魔をするなと言われて、持ち込む予定の武装からダインスレイヴを見つけたその瞬間にライルとニールを送るのではなく、約束を破り、ラスタルに報告したほうが良かったと今さら後悔する。

 

「あのダインスレイヴは充分違法です。マクギリスはそこら辺を嗅ぎ付ければ無事ではすまないでしょう」

「そんなこたぁどうでもいい。問題は俺たちの身だ。さっさとマクギリスに白旗降って政権上げた方がいいんじゃねぇの?」

 

ライルが軽く笑いながら先程殴った壁に凭れた。

咳払いしながら、ライルを睨む。しかし最強の戦士はその程度でビビる筈もなく、何処から出してきたヤスリで爪を研ぎ始めた。

 

「貴方はマクギリスの狙いに気づいているのですか?」

 

そう言うと音が消えた。ライルの動きがピタリと止まり、そしてゆっくりと動き出した。

爪を研ぐ音がよく聞こえるほどに他の音がなくなった。

 

「まーな。力を振るえば支配できる...力があればのしあがれる世界。偽りの平和がない分ましじゃねぇか?」 

「そう言うのは貴方みたいに力がある人か戦争屋、戦闘馬鹿のような方だけですよ」

 

そう言いながらライルを見ると爪を研ぐことに夢中なのか空気椅子の状態で爪を研いでいる。

彼の小さな素顔を見たような気分になり、慌てて顔を背ける。

 

「かもな。けど、生まれはどうやっても変えられない。けど、力はゆっくりとだが変えられる」

 

才能の前には無力だけどな。と繋げてライルは笑う。

本当に不思議な人だ。沢山の顔があり、どれが本当なのか全くわからない。もしかしたら全てが違うのではないのかと思うほどに。

 

「どちらにしろ、こっちも動く必要がありそうだな。どうする?あのラスタルだったらテイワズと交渉するだろう。もしかしたらそこに」

「彼がいるかもしれない...上手く良好な関係になればマクギリスの大きな手札が一つ...いや二つこちらに来ます」

 

マクギリスはモビルアーマー討伐時からわかるように鉄華団、つまりテイワズと良好な関係を作っている。

今回は此方が違法兵器と数で勝った物の、彼の力は充分強い。鉄華団という多数のガンダムフレームの機体を保有する組織も大きなカードになりうるだろう。

つまりテイワズという組織の奪い合いがこれから発生するのではないか。

 

「どちらにしろ、あいつとは戦いたくねぇな。ときどき、こっちが殺られそうになる」

「戦場とはそういう所でしょう」

「特にって意味だ。無駄に子供らしかったり、冷静になれなくなったりするのがあいつの悪いところだが上手く直せれば俺も越える。そう確信している」

 

そう言いながら空気椅子を止めずにしまいには脚をくみだすライル。

彼が俺も越えるという事は現在この世に生きている人の中で最強になるということ。しかしロークスの時に見た二人はその強さのベクトルが違うようにも見える...がそれは今、関係ないだろう。分かっているのが彼は強いという周知の事実のみ。全く変わらない。

 

「随分と肩を持つんですね。珍しい。何かあったんですか?」

「...さぁな。可能性、とかなのか?」

 

ライルはそう言いながらもヤスリの手は休めずに爪を削る。

そのあやふやな答えにため息をつきながら近くにあった端末を手に取る。そこにはとあるモビルアーマーの情報があった。

 

──ガンダムベリアル。

自分の父であるラスタル・エリオンの先祖、ドワーム・エリオンのモビルスーツ。

それが何故この端末に写し出されているか。

 

先日ラスタルに言われた言葉が彼女の中で思い出された。

「もうそろそろお前に継いで欲しいんだ。セブンスターズも、ガンダムも」

何故このような言葉が彼の口から出てきたかはわからない。しかし、私に継がせるということはアリアンロッドも私が継ぐことになる彼女らが高いということだ。

ラスタルも充分高齢なのでおかしくはない。死んでいないのに役職を継がせるというのは少し珍しいが、ファリド家の事もあるのでそこまで不思議にはとられないだろう。

 

しかし自分はこの事に関してあまりいいイメージをもたなかった。

 

「おもい...」

 

小さな声で呟きながら顔を埋めた自分とは対象的にライルは顔と手を上げて言った。

 

「出来た」

 

 

 

 

 

 

「逝ったか。タービン」

 

彼とあった回数はあまり無い。彼も自分の事はあまり覚えてないだろう。

しかし自分はよく覚えている。

今でも脳裏にちらつく一人の女性。奴隷商に格安とはいえ、無理矢理買わされた一人の女性。赤い髪は埃をかぶって、白い肌は傷だらけで、蒼い目に生気は全く見えず、痩せ細っていた。打撲の後もあり、酷い様だった。

回されたのだろうか。そういう事は一度も聞かなかったが聞いてもはぐらかされただろう。

 

「おい、大丈夫か!?」

「貴方なんか...嫌い」

 

最初手を出した時は手を噛まれた。手当てをさせようと部下を呼んだ時にはタックルされた。

父性というものが出てきたその時にはその女性は傭兵として独り立ちした。その後も何度か連絡を取った。

名瀬・タービン。その名は連絡の時に何度か出てきた名前。愛していた訳ではないが子供が好きな彼女は彼との子供を期待して...妊娠したと聞いたとき、嬉しくて泣いた位だ。

しかしそれから連絡は一度も来ていない。おそらく死んだと思われる。それからだった。偽の名前で偽の組織を立ち上げてタービンズと接触したのは。

名瀬・タービンは義理堅い男であった。

信用深く、多数の女性を愛しながら愛される大きな器を持っていた。偽物でしか接することが出来ない此方が悪いと思う程に。

ある時、こう言った。

 

「とある女性を探している」

と。

そして、彼女の事を話した。すると彼は答えた。

 

「子供を産んだと同時に死んだ」

 

それから彼とは会っていない。その子の名前も聞かずただ、そうかと一言だけ言ってその場から離れた。

 

その事から後悔がないと言うと嘘になる。ギャラルホルンに潜入してスパイ活動をしている仲間からアリアンロッドがタービンズを違法組織として抹殺すると聞いた時からそう思った。

 

すると後ろから声がかかる。

 

「おい、サイオン。誰だ?タービンってのは?」

 

赤い髪と黄色の目を持つ長身の男。左頬には傷が出来ている。

彼は今の世界を壊しかねない存在。だからこちらにいるのだ。

優雅に座って紅茶を飲みながら此方を向くその目は殺気は感じられないが此方が恐怖を感じる程強い力をもつ。

 

「昔の友人ですよ。ユダ様」

「そうか。残念だったな」

 

しかしそれも慣れたので落ち着いて対応する。

ユダは服を正して、端末の操作を始める。

 

「マッドナッグの量産化計画は?」

「予定通り、進んでおります。ユダ様の分も勿論」

 

UGR-G74 マドナッグ。

厄祭戦時にオセアニア連邦が開発したガンダムに似せて造られた機体。現在は部品などは回っているものの厄祭戦時の物はギャラルホルンすら作れなかった。

その機体の量産化計画が今進んでいる。

そう言うとユダは端末になにかを打ち込んだ後、椅子から立ち上がり空を見る。

 

「じゃあ見せてやろうか。カイエル家の力、ユダ・カイエルの力を」

 

──そう。彼の名前はユダ・カイエル。

アグニカ・カイエルの本物の子孫だ。




ユダ...
カイエル家の人間やっと出すことが出来ました。
実際本物。っていうか何でそんなところいるんや。ユダ君よ。
強いのか弱いのかはお察しの通りです。
ユダって名前似てますね()
ユダが事態を変えるのか変えないのかはその目で確認してください。
って言うかサイオンって誰や。車かよ。劣等生かよ。

しかもベリアル御披露目。
不安しかない。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。