機動戦士ガンダムテイワズの狙撃手   作:みっつ─

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ユウ君、ジャスレイの部下を狙撃する。
ジャスレイ、慌てて逃げる。
ユウ君追う

次回でJPTトラスト編は終了です。
そして次は...バエルは蘇った!


第56話 変革

あの後、ジャスレイが歳星からいなくなったことと、ジャスレイがテイワズを乗っとるのではないかという疑惑の浮上。その二つの件からテイワズの幹部が集まって集会を開き、今後の対策を練っている。現地にはアガーテをいかせた。というのは建前で、ゆーちゃんは来なくていいと言って行ってしまった。

そのアガーテからメッセージが来たのは先程の事だ。今現在、ジャスレイを向かい撃つという派と、中立派の二つに別れている。

その勢力の中で一番大きいのは中立派だ。ボスが誰になろうと関係ないのだろうか、と少し頭を悩ませる人達。

しかし、その中立派の中にも嫌な連中がいる。今回の狙撃手等はジャスレイの判断ではないのではないかという連中だ。おそらく、ジャスレイに金でも握らされているのだろう。そして嫌なことにそれが殆どらしい。

少なくともこの歳星で人殺しをしようとしている時点でボスが責任をとって辞めるくらいあってもいいと思うのだが。そこら辺はNo.2だからなんだとかあるのだろうか。

 

「やっぱり...マクマードさんが高齢だから次のボスになる可能性が高いジャスレイの肩を持つ勢力も結構いるね」

 

それにこのままじゃテイワズが半分どころか三つに割れる。中立派が何も行動しないだろうとはいえ、残りの二つがここで潰し合いなんてしたら生き残ったもう片方も長くは持たないだろう。すぐに動き、ジャスレイを孤立させて叩く。

それが今、重要な事だ。

未だに何故マクマードがこれほどジャスレイを殺させようとするのか僕には良くわからないがわかる必要もいつか無くなる。

 

結局あの後男を一人捕獲、残り二人は拳銃を向けてきた為、過剰防衛ということで方がついた。その過剰防衛というので終わったというのは少し意外ではあったが残りの一人との関係性そして、ジャスレイとの関係が浮き彫りになったのでそこら辺はなあなあにして済まされるだろう。

それにしてもそういう時のみは此方に時の運が回りすぎている。都合が良すぎて逆に不自然。しかし、不自然だからといって退けないのも事実。動かなければならないのは変わらない。

 

「父さんなら...どうしただろうな」

 

もし彼処でタービンズの救援を鉄華団のように違法組織ととられないギリギリを攻めれ行けばどうなっててただろう。少なくとも、マクマードの依頼を断れた。

しかし、どちらにしろ受けていただろう。

復讐の為に。

 

「多分名瀬さんなら自分の家族を守ることのみに徹していたと思うよ。名瀬さん、そういう人だし」

 

僕の一人ごとに隣に座っているシュインが答えた。その彼女も疲れた表情をしている。

今、ジャスレイを討てばどうなるのか。僕にとってはテイワズの力が弱くなるので少し心配程度で落ち着くが依頼してきた本人であるマクマードからしてみれば大打撃だろう。しかし、また何処かの組織を斬られたり寝首をかかれるよりは充分ましだが。

 

今進んでいるのは今回の件はジャスレイが指示したのか他のJPTトラスト職員が指示したのか。そのどちらかの判断ということで、この件がJPTトラストのせいだと言うことはもう、自分が撃ち殺した狙撃手と観測手からわかっている。つまり、ジャスレイの判断でないのではないかと考える連中が頑張ってジャスレイがもし、直接的な罪を回避できたとしてもそれなりの圧がかかる筈。社会的なイメージも滑落し、ジャスレイは自分で自分の首を絞めることになっただろう。

つまり、ジャスレイからすればマクマードを討てる最後のチャンスとなりかねない。そのチャンスをみすみす見逃すような男なら今回の件は起こらなかった。

だとしてもその力は圧倒的に強い。まず、数が桁違いだ。テイワズを支えてきたといっても過言ではない経済力とそれだけの数をポンと集められる人脈。加えてその傭兵はジョーカーのような変わり者でありながらも強かった戦士。

テイワズのNo.2も伊達ではない。 

今後、マクマードがもういいと言うかジャスレイがテイワズをやめるかしなければこの仕事は終わらない。しかし、この様子だとジャスレイは本気でマクマードを狙うつもりだ。もう後には退けないのだから。死を覚悟したものより強いものなどこの世にはいる筈がない。

もうジャスレイも僕らも賭けるしかない。自分達が持つ純粋な力一つに。ジャスレイからすれば僕らを殺せば中立となるであろう者達が一斉にジャスレイの味方をする。そうすれば、マクマードが捕縛されるのも時間の問題。それに比べて僕らはただ、ジャスレイ達JPTトラストを必要以上に痛め付けるだけでよい。

 

でも、出来る訳じゃない。

先程の考えたようにジャスレイの資金力と人脈は物凄い。それこそ父さんですらも足元に及ばないくらいの。そして、戦場での勝敗は数によって勝利するという事がほとんどなのだ。戦争は数だよと言うことだ。

 

「...そう。だよね...やっぱり遠い」

 

遠い。そう。遠いのだ。名瀬・タービンという存在は数多の女性の居場所となり、支え続けその間に僕やエストのような子供が産まれてもその子の居場所共なり、そして仕事を行っていた。

ずっと支えられることしかできず、ただモビルスーツ射撃が少し上手いだけでチヤホヤされている僕とは全く違うのだ。

その差は毎日感じていた。嫉妬していた訳ではない。イプシロンとしてその中の女性の居場所になろうとしても、そこには大きな壁があった。結局その壁を越えようとしても越えられずにそのままなのだ。今出来る事はいままでと同じ、支えられること。つまり、成長していないのだ。モビルスーツの扱いは少し上手くなったかもしれないがそういう問題でもない。

だから名瀬という大きな存在が必要だった。支えられて、守れて、居場所となれる大きな器を持った男が。いなければいけなかった。だから助けようと。勿論親孝行もしたかったが一番として、名瀬がいないとタービンズ、そしてイプシロンの女性は守る物を失うから。僕は勿論エストも今の状態だと名瀬ほど沢山の女性の居場所にはなれない。このままでは意味がない。

マクマードにこの仕事を充分に出来たらテイワズとしてのこってもいいという話はしたが、だからといってジャスレイが倒せるとも思えないし、ましてや沢山の女性の居場所になれるとは思えない。

 

どうすればいいのかなんて僕の頭では思い付かない。元々頭を使うのは別の人に回している筈なのに、自分がやるべき事もやれずに現状に甘えているだけ。

 

「流石に届かないよね。名瀬さんには」 

「うん」

 

素直に頷く。こうしている間も幹部の意見は纏まる。...と思ったがいっこうに纏まらないらしい。ジャスレイにテイワズを辞めることを強制。聞かないのならその場で処刑。今回の件が本当にジャスレイの指示か不明なのでとりあえず呼んでその後、もう一度会議を開く。

そうこうしているうちにジャスレイが傭兵を率いて攻めてくるかもしれないというのに。中立派の人間は頭の中お花畑ではないだろうかと疑ってしまう。

 

そう思いながらもため息をつく。

シュインとの会話も止まり静寂が流れる。僕はジャスレイとの抗争はいつかあるものだと考えている。だとすると勝てるのだろうか。

そんなことを考えてしまう。

そんな自分を察したのかシュインが横から声をかける。

 

「ねぇ、ゆーちゃん」

 

僕の手の上にそっと手をのせて、優しく言ってきた。その雰囲気からなんとなく察した。

何か秘密があるのだろう。それを打ち明けようと。

 

「何?」

「その...もし、もしもだよ...ジャスレイと戦うってことに...なるんだよね。なったら...」

「なったら?」

「...」

 

いつになく歯切れが悪い。不思議な事にシュインは特にこういうときはいつもより流暢に喋るのだ。用意してきたように。いや実際用意していると思うのだが。

それほどの問題なのではないかと緊張感が増す。

彼女の口がゆっくりと開く。緊張感がゆっくりとだが、強くなっていく。

 

「私を出さないで欲しいの」

 

そしてはっきりと言った。

私を戦闘に出さないで、と。

色々思うところはあるだろう。アミダが死んだのは自分のせいだと思っているのかもしれない。自分のモビルスーツの操縦技術に問題を感じたのかもしれない。ジョーカーの事、責任を感じているのかもしれない。

わからない。しかし、彼女がこうはっきりと言ってくれた。夫として答える必要がある。

 

「わかった」

「...え?」

 

しかしシュインはその答えが意外だったらしく、目を丸くする。この答えは外れだったのかと少し他人行儀で考えた後にじゃあ正解はなんだろうと再び考える。

いや、僕の戦闘にはお前が必要だ!と言って欲しいのだろうか。しかし、雰囲気からそうとは思えない。なんか深い物を感じる。

そう思っているとシュインが慌てながら言う。

 

「え?いや、何でとか...聞かないの?」

「ん?ああ、なんで?」

 

理由なんてあんまり考えてなかったが本人からするとそれが一番大切らしい。

咳払いをして緊張感をぶち壊すようにいつもの声で言う。

 

「ゆーちゃんはね。確かに名瀬さんに劣るよ。でも、そこまで悲観する必要は無いんじゃない?」

 

なんで?と聞いたのにいきなり話の内容を変えてきた。

でも、落ち着いて聞くことにした。彼女の一言一言を逃さないように。

 

「そう?」

「うん。それに私はそんなゆーちゃんが好きだよ。名瀬さんよりも。だから胸を張って。ちゃんとしてなきゃ守れるものも守れないよ」

 

シュインは遠くを見るように僕から目線を外した。

そして歳星ではない別の場所を見るように視線を送ったシュインは言葉を選ぶように小言を言ったのか何度か口を動かしてそして此方に振り向いて言った。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

「...は?」

 

その瞬間頭の中が真っ白になった。何を考えているのかもわからず、というか何も考えていなかっただろう。

どんだけ自分が危機的状態なのかも忘れるほどの。

戦場だったら素人でもプロを殺せそうな程の時間が流れてやっと状況が掴めてきた。とはいっても冷静さは失ったが。

 

「お父さん?」

「うん」

「僕が?」

「うん」

 

そう掛け合いをするとまた情報を整理していく。

まず、一つ僕がお父さんになる。つまりそれはタービンズの誰かが妊娠したと言うこと。そして僕ということなので僕が相手をした女性の誰か。そしてそれは先程の言葉から言って、シュインだ。

シュインが妊娠したと言うこと。しかし、彼女は妊婦特有のぽっこりお腹ではない。ではまだ出来て日が浅い...のだろうか。

そう頭の中で思考がぐるぐる回り、混乱しているとそれを見かねたシュインが僕の手をとった。

 

「ちょっ!待って!シュイン!」

「ほら!」

 

そう言いながらシュインは自分のお腹に僕の手を押し付けた。そのお腹は意外と膨れていた。

 

「あっ...」

 

暖かい。その温度で少し安心した。

妊婦さんの事はよくわからないが姉さん達が妊娠しているときに何度か触った事がある。ふくよかな感じとは違うこの不思議な感覚。まさにそれだった。

 

「わかった?」 

「うん。いつ...って...あっ」

 

完全に理解をした。鉄華団地球支部への救援の時のあれだ。ゲイレールのおっさんを殺したあとだ。その後のあれで...本当にこの人は。

そう何やってんのといいたくなる気持ちを抑えながらも、とりあえず簡単な状態を聞いていく。どちらにしろ、暫くの間戦場には出せない。出せたとしても船の中で何かをしている程度だろう。

それほどだった。

 

「なんで」

「ん?何かな?驚いてくれた?」

「なんでこれをもっと早く言わなかった!わかってからすぐに言えばそれなりの対処はとれただろうに。」

 

 

本当に、本当に何をしているのだろうか。父さんと母さんを救うための戦いだって本当はそれなりの葛藤があった筈だ。なのに僕はさも当たり前のようにシュインをモビルスーツに乗せて戦闘をさせた。もしかしたらもうお腹の胎児は死んでいるかもしれない。

そう思いながら察しの悪い自分を自虐するのと今までの時を悔いているとシュインが察したのか頭を撫でながら言う。

 

「んーと驚かせたかった...というかね。ゆーちゃん、難しそうだったから。安心して()()()()()

 

いままで甘えながらずっと繰り返させていた。言葉それをまだ繰り返す。僕だって時が立てば大人になるかもしれない。けどこのまま甘えていていいのだろうかと思ってしまう。

 

「でも、僕はちゃんとみんなの居場所に...なれなきゃいけない」

「うん。そうだね。でも、そんなに気にする必要は無いんじゃないかな?」

 

今、彼女は気にする必要はない。とそう言った。

全く気にするなという意味でないのはわかるがそこまで意識しなくても良いという事になる。気を楽にさせるための一時的な嘘か。しかしそうとは思えない。

意外と考えれば簡単な事なのかもしれない。

一人でやらなくてもいい。居場所になるというのは意外とあやふやな物で人によって対応の仕方が違う。だから、僕の考える居場所とシュインの考える居場所は少し違うのかもしれない。

そう考えている時だった。

 

「ゆーちゃん!」

 

端末に時折送られてくるメッセージが通信に変わった。

慌てて端末を拾い上げるとそこにアガーテの顔が写し出される。その顔には汗が出てきて、余裕の無い状態と伺える。会議で何かあったのか。

 

「とりあえず落ち着いて、深呼吸...どうしたの?」

 

そういうとアガーテは深呼吸をして多少落ち着いたのかゆっくりと話始めた。

 

「ジャスレイが攻めてきた。しかも中立派の殆どが動こうとしない。多分...」

「動けないように細工されたか、それとも脅されているか、金かなんか握らされているか」

 

そういうとアガーテは頷く。結構大変な話になった。最悪だ。戻ってきたばっかりのテイワズがいきなり真っ二つ。流石に事を大きくし過ぎたと反省する。

とにかく、動かなくてはいけない。

ジャスレイよりも早く。もう迷っている時間なんて無い。

 

「動かなきゃ。今動かなきゃ間に合わない」

「ああ。わかってる」

 

ジャスレイがそこまで動くということは動けるメンバーは自分達の力で倒せると思っていると言う事だ。つまり、増援は期待できない。最悪鉄華団も来ないかもしれない。

それでもやらなくてはいけないのだ。

 

「シュイン!」

「大丈夫。任せて」

 

シュインは僕が呼んだだけでやって欲しい事がわかったのか自分の端末を持って通信を始めた。今は一秒も惜しい。

戦力も足りなければ時間も足りない。イプシロンに至ってはもうマトモに戦えるパイロットが僕しかいないのだ。でも、だからといってハイそうですかと引き下がれるものではない。これにみんなを守れるかどうかがかかっているんだ。

そう思っている瞬間、頭痛がした。痛い筈なのにそれが嬉しさへと変わる。別に痛いのが嬉しい訳ではなく、それが相棒からの合図だと気付けたから。

 

「行こう。アンドラス」




【悲報】ユウ、お父さんになる
現在の彼の年齢16
いや、まだシュインは大丈夫ですよ。けどね、ユウ君は速すぎるでしょ。
実はシュインは変態キャラにする予定でしたというかしたかったが無理でした。本当なら純粋な少年をピー(自主規制)する予定だったんですよね...駄目だ!僕にはこれが限界だ!

そして、ユウついに頭痛(アンドラスの乱入)を嬉しく感じ出す。
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