第58話 宣戦布告
「つまり僕らに地球に行けと?」
「ああ。テイワズに戻る事が確定したとはいえ、お前の足場もまだ危ういだろ?だったらしっかりとしたものにしてやる」
JPTトラスト討伐から一夜あけた今日。
マクマードから呼び出しがあった。何でもお偉いさんがお前さんを指定してきたとのことだ。この言葉を聞いたときはじめは何らかの罠かと思ったのだ。それほど僕の事を気にかける人間なんてもうタービンズ以外にはいないだろうと。だからといって行けませんとはいえない。今さっきマクマードが言ったようにテイワズに戻ったとはいえ、0からのスタートなのだ。周りの女性を守れるだけで強いとはとても言えない。せめて、そこら辺を整えなければなんともならないのだ。
とはいえ、ここまで早く仕事が来るとは流石に想定外だった。そして気になるのはマクマードのしてやるというか言葉。まるでこの依頼は100%成功...いや、失敗したとしてもマイナスに傾かない。そんな風に感じられた。勿論必ず成功する依頼があるなら喜んで突っ込むだろうが逆にその安定が不安を煽る。
マクマードが言う事を簡単にいうと。
ギャラルホルンのお偉いさんを護衛して地球にいけ。他の組織にも声をかけているらしいが僕の場合は半強制的だ。まだタービンズ全員で行けと言われるよりかはいいが、半強制的というのがまた首をかしげさせる。クーデリアの時を思わせるような言葉でしかし、裏があるとは僕でもわかった。それをわざと感じされるような振る舞いだったのだ。しかももう一つ僕の頭を悩ませる物があった。それは一度テイワズを抜けて終わったら残った全員仲良くテイワズに戻る。つまり一時的とはいえ、テイワズとは無関係の組織になるのだ。テイワズの風評被害を若干抑えるためだろう。そう考えながらももしかしたら勝利を期待されていないのではないかと思ってしまう。
「マクマードさん。今回の依頼、何か裏がありますよね?話してください。包み隠さず」
僕がタービンズのメンバーを守りたいようにマクマードにだって事情があるのはわかっている。最悪の場合タービンズも鉄華団も簡単に切り捨てられると。だからこそテイワズという組織のNo.2であるジャスレイがいるJPTトラストもすぐに切り捨てる決断をしたのだ。しかし、今回の件も僕が必要かと言われると首を横に降らざる終えない。確かに最後の狙撃も戦争にするために整えたのも僕ではあるがその場に僕がいなくても遅かれ早かれこうなっていただろう。JPTトラストなんて頑張れば鉄華団だけでも倒せそうな組織だ。そのときにわかったのだ。今回の件のみに僕の利用価値があるわけではないと。タービンズという違法組織の人間を取ってマイナスなのにたったこれだけでプラスになると自惚れるほど僕も短絡的な思考ではない。それに今回は嫌な予感がするのだ。
「名瀬に頼まれたのもある。だが勿論それとモビルスーツパイロットとしては押しがまだ弱い。ガンダムフレームだってオルガの野郎達が持ってきたりどっかから発掘したりでテイワズの中では価値としては下がる。まぁ、それとテイワズの物流を任せる人間としてというのを加えるととても手放せる人材じゃない」
「では、僕の価値というよりタービンズとしての価値で僕を助けてくださったのですか?」
勿論不服な訳ではないが、自分の価値がとても低い事を痛感する。確かに助けてくれたのはとても嬉しい。もし駄目だったらレヴォルツ・イーオンとかに頼るかそのまま傭兵にでも身を落とすしか無かったが特に後者はみんなを守るのが難しくなる。多分無理だろう。それくらい切羽詰まっていたのだ。
「...まーそんなもんだ。けどな、
そして僕らの地球行きが決まった。その時に感じた嫌な予感は当たっていて、これによって引き起こされる戦いが今後のテイワズ...いや世界を動かす結果になるとは僕は思わなかった。そしてこれを後悔してもすることが出来なくなることも。
地球圏。
そこでは反ギャラルホルン組織の一つレヴォルツ・イーオンが歳星の方へと向かっていた。
彼らの仕事はテイワズからの使者と共にギャラルホルンの護衛。ギャラルホルンに反するものがギャラルホルンの護衛を行うなど普通ならあってはならないことだ。そう、普通なら。しかし勿論彼らはギャラルホルンに屈した訳ではない。自分達の目的を達成するために最短で進んでいる。だけだ。とはいえ、その護衛している側からすればギャラルホルン内であーだこーだ言われそうな内容、そして此方も説明しているとはいえ、他の反ギャラルホルン組織にギャラルホルンに屈したと思われたくはない。
ということで護衛といえどついていくだけだ。しかもそれなりの距離をとって。しかしこれにも大きな意味がある。
その中にて。
「ユダ様、マクマードさんからの連絡です。彼が動くと」
「そうか...しかしあの男に注目しているのはお前だけだぞ」
あの男、彼というのはテイワズの狙撃手、ユウ・タービンである。確かに彼等にとってテイワズ(一度抜けた扱いなのだが)の救援はとても嬉しい。しかし、一人の男にそこまでは注目していない。元々テイワズの精鋭達しか来ないので彼らからすれば数がほしいのだ。その中で一人、しかもその組織の長が一人の男に期待していては疑問が残るだろう。一騎当千が出来る強さなのではと疑ってしまうほどだ。
「狙撃手なら此方にもいるが確かにあいつには遠く及ばないだろう。しかしたった一人の男。お前はやはりあの女の息子だからと見込んでいるだけだろう」
「おっしゃる通りでございます。しかしそれは即ち彼女の意思をついだ存在。ということです。ユダ様がアグニカ・カイエルの意思を継いで立ち上がったように」
今回レヴォルツ・イーオンはユダというカイエル家の男が立ち上がったのでそれに協力するというスタンスになっている。つまりカイエル家の人間がギャラルホルンの革命をする。ということになる。これはあくまで推測だが、アグニカ・カイエルもこの状況を見たら見て見ぬふりなんて出来ないだろうし手を貸すなんてもってのほか。なので少し勝手だがユダが先祖であるアグニカの意思を継いで立ち上がった。そこがユウという少年と彼女の関係に似ていたのだ。
「俺は彼女の事をよく知らないがお前から見た彼も似ているのか」
「...まぁそれはおいおい説明するとしましょう」
彼はそういうとその場に片ひざをついてひざまつく。ユダも顔が引き締まり、緊張感が出てくる。
兵も数はある。中でもアーラを捕まえられるほどの戦力がこちらにはある。未だにエースにしか配っていないとはいえ、マッドナッグなど厄祭戦時のモビルスーツ。それも高性能量産機を使える。
強い。それにもとより負けてやるつもりなどない。しかし当たり前のことだがギャラルホルンも強く、アリアンロッドはその中でも一番の組織だ。それを引っ張るラスタルに勝利を飾るために。
「時が満ちました。我々レヴォルツ・イーオンは再び貴方に忠誠を誓います。お受け取りください。ユダ・カイエル」
そう言うとユダがいつもとは全く違う口調で返す。まるで式典のように。その声は優しくそして強かった。
「受け取ろう。そなたらの
そして地球に行くために出発する当日。
マクマードが声をかけたメンバーがゾロゾロと集まる。その中で一際目を引くのは鉄華団。バルバトスこと三日月・オーガスを始めとした戦闘員、他にもJPTトラストの残党の傭兵、海賊達。テイワズの中でも武道派に入る組織のパイロット。
テイワズの精鋭達だ。特に鉄華団とJPTトラスト関係は自分達が持っている戦力のすべてを用意してきた。
そして隣にラフタとアジーに並びその中に入る。
「ゆーちゃん...凄い気迫だね」
「でも僕らもその中に入る」
軽い会話をしながらも確かにこの中には歴戦の戦士が多数いる。流石最強のマフィア。これだけの気を放つパイロットがゴロゴロいる。しかもこれが全部潰れてもテイワズが回るレベルということはまだいるといってもいい。これだけ入ればアリアンロッドも怖くない。その半分ほどがJPTトラスト討伐に手を貸してくれた者達だ。今回も借りるしかあるまい。
そう思いながら鉄華団団長オルガ・イツカの目の前に立つ。
近づいてきた僕達に数人のパイロットが頭を下げる。団長さんは僕が近づいたことに疑問を感じたのか。此方の方を向いて尋ねた。
「ん?どうした?ユウ」
「地球に行った後完全な私事を達成するために
「あ?いや、別にいいけどよ...何をするつもりだ?」
団長さんがそう言ったを確認すると何人かが戦艦の中に入っていく。出発の時らしい。もう後には引けない。
残した者達の為にも、僕は必ず生き残る必要がある。絶対に。
「世界を変える」
その声を聞いたアジーとラフタは顔を見合わせて笑った。
そしてその1ヶ月後。マクギリス・ファリド率いる、地球外縁軌道統制統合艦隊が行動を起こした。
まずセブンスターズを召集し、ヴィーンゴールヴを制圧。アリアドネを通じて声明を発表した。その中にはイオクが起こした罪、タービンズを違法組織に仕立て上げて強制捜査。その後ダインスレイヴを自ら使用したということとSAUとアーブラウの国境での戦争。それをコントロールしたガラン・モッサとラスタル・エリオンとの関係。どちらともユウと鉄華団に関係するものだった。
そしてクーデターという形でこれを成し遂げたマクギリス。ギャラルホルンのヴィーンゴールヴの部隊を三日月に無力化させた。しかしそこにはマクギリスが把握していない少年がヴィーンゴールヴを走っていた。三日月の方には大体の地形しか渡っていない。なのに少年は迷うことなく、目的の場所へと走る。
「ユウ...ちゃんとやってるかな?」
「はぁはぁ...後少し...間に合えっ...」
ゆっくりと時計の針は進んでいく。
しかしそんなことを知らないマクギリスはテイワズ精鋭部隊とレヴォルツ・イーオンに対アリアンロッド用の防衛網を作らせる。
そして仕上げとしてとある施設に入る。
今回のクーデターをギャラルホルンの謀反ではなく、正しい行いだとするために。
バエル宮殿。
それがその施設の名前。
そこにあるのはセブンスターズ各主席のガンダム。パイモン、ヴィネ、ベリアル、キマリス、アモン、アスモデウス、プルソン
しかしベリアル、キマリス、ヴィネ、アモン、プルソンについてはそこには無い。...いや、違う。一機、帰ってきた。
外装をつけヴィダールと名を変えて。300年前クリウス・ボードウィンが使用したモビルスーツ、ガンダムキマリスが。
そして今に至る。
ヴィダールのコックピットから出た仮面の男はその仮面をゆっくりと外す。そこにいたのはガエリオ・ボードウィンその人だった。マクギリス・ファリドの親友で当たり前だが後にセブンスターズの一席を担うはずだった男。それが今、バエル宮殿に降り立った。
そしてそこには二人の因縁とは全く関係ない男がいた。
「まぁそんなに燃え上がるな。燃え上がったって尽き果てたときに悲しくなるだけだ」
その男、ライル・バレルは拳銃を引き抜きながらマクギリスにそれを向けた。つまり、マクギリスと敵対するという意思表示。
「バエルは貰うぞ」
今回のユウのセリフ...誰かに似ている気がするなぁー(棒)
イッタイダレダロウナ?
次はマクギリスVSライル...ではなく、皆さんもう忘れたかもしれないあの男についてです。