機動戦士ガンダムテイワズの狙撃手   作:みっつ─

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すみません...時間ズレました。



第62話 思いの交差(後編)

革命軍側も着々と戦闘準備を進めていた。

革命軍は勿論、鉄華団の方もその組織の規模にしては多すぎる量のモビルスーツの整備に動いている。

その中で元タービンズメンバーもそれぞれの船で動いていた。

 

「アンドラスの予備パーツ急いで!」

 

いままで接近することがなかった為か損傷が少なかったアンドラスもエイハブリアクターさえあれば二機三機作れそうなレベルのパーツは余っている。今回はその全てを持ってきているだ。

この作戦の要となるであろうアンドラスのコックピットの中でパイロットであるユウ・タービンが端末を慣れた手つきで操作している。

勿論それだけではない。大量の獅電が全てを閉ざした状態で隙間なく綺麗に並んでいる。

 

「4番と5番に弾薬を詰めといて!」

「イオフレームとガンダムフレームとあれのパーツは分けておいて!」

 

沢山の女性の大声が飛び交う中で大型のアームにフレームのパーツや弾薬を入れたケースが運ばれていく。

まるで団体行動だ。色々な方向に飛び交いその間をアームや弾薬が入っていく。なのに誰一人接触していない。それも打ち合わせしていたわけではない。三次元の団体行動とは流石に凄い。しかしそんなことを考える余裕があるのはおそらく僕だけだろう。

怪我から復帰したばっかりのエストでさえ、今回はメカニックとして動いている。彼すらも世話なく動いている。とても回りを見る余裕なんて無さそうだ。

 

「ユウ!手を止めるな!時間ないぞ!」

 

訂正。どうやらそれなりの余裕はあるようだ。しかし、医者から聞くと戦場に出せない。出せたとしても最早足手まといだ。

 

「ハイハイ。とりあえず鉄華団とお話してこなくてもいいの?」

「行ってきたよ!参謀さん曰く戦闘準備は整っている」

 

どうやら鉄華団と話をしてきたらしく、鉄華団の情報も伝えてくれる。参謀さんというのはおそらく、美味しそうな名前をした人、ビスケット...とかだった気がする。何度か共に戦っているというのに、鉄華団のメンバーの名前はあまり覚えられない。どちらにしろもう後には引けないのは変わらない。

するとラフタが寄ってきた。どうやら伝言を持ってきているようだ。

 

「ゆーちゃん!レヴォルツ・イーオンっていう組織の人が会いたいって!」

 

レヴォルツ・イーオン。反ギャラルホルン組織でありながらギャラルホルンに協力すると言う変わった組織。

自分が会った訳ではないが何処か変な感じがする。

 

「そんなのアガーテ姉さんか、エスト兄さんに行かせて」

 

僕はこの組織では代表ではない。タービンズの事件の事を反省して人の上には立たないようにしているのだ。

それにめんどくさいし、それが出来る人間に任せた方がいい。

 

「どうせお前は暇なんだろ?システム面だって大体整備長が言う彼女がやってくれるだろ!」

 

するとエストが少し怒りながらも、そう返す。しかしそれよりも問題なのはエストが彼女と言う言葉を出したこと。おそらくアンドラスの事だろう。隠す気はなかったがこんなにも早く当たり前のように出てくるとは予想外だった。

 

「それに!名指しなんだって!」

 

そう言いながらラフタに引っ張られる。端末を投げ出されてコックピットから無理矢理引き出される。

ラフタにしては強引すぎる。つまり、それほどのレベルで重要と言うことだ。少なくともアンドラスがやってくれるアンドラスのシステム面の整備よりは優先度が高いのだろう。

 

「わかっ...ごぼっ!」

 

わかったと言おうとした瞬間ラフタに襟首を引っ張られる。これはかなりきつい。抱き締められた瞬間の倍は空気が吸えない。

 

「あぁ!い...き...」

 

腕をバシバシ叩くがラフタは何の反応も示さずに引っ張る。アジーと言うストップ役がいない今は呼吸だけでもと、戦場にいないのに命に危機を感じていた。

というか死の危険が目の前にあった。

 

 

「本当に。お前は優秀に見えて馬鹿だよ」

「私は期待しているんですよ。ユダ様にもいつかわかります」

 

そう言いながらレヴォルツ──サイオン・ジェーンは笑う。その笑みを気味悪く感じてユダは顔色を悪くした。

深い傷がある頬を撫でながら目の前の端末を片手で兵と連絡をする。

 

「血なら俺がいるぞ」

「ええ。そうですね...これが終わったらそれを使って女性を引っ掻けるおつもりで?」

「当たり前だ」

 

そう言いながらユダは笑う。それに釣られてサイオンも笑いながら「そうですね」と一言返す。

モビルスーツの整備等の戦闘準備は鉄華団等の小さな企業と比べて順調に進んでいる。

 

「私もそろそろ妻の方へいかなくては。愛想をつかれてしまいます」

「なら生き抜くとするか」

「ええ」

 

そういえばユダは身を固めていない。カイエル家という血が良くも悪くも彼の人生を動かしている。いままで彼はその波に流されて続けただけだった。あるときはギャラルホルンにおわれ。あるときは奴隷にされかけて。あるときは目の前で家族を奪われ。そしてあるときはこのレヴォルツ・イーオンで匿われて戦闘訓練ばかりを受け、カイエル家の人間だからと後ろ指指されながら生きてきた。

その彼が今回初めて自分の道を自分で決めた。ギャラルホルンに対する復讐ではなく、自分のような人間が二度と出ないようにするために、ギャラルホルンの革命を行う。

 

「失礼します。客人をお呼びしました」

 

すると一人の兵がそう言って部屋に入ってくる。

呼んでいたテイワズの精鋭の話だろう。

 

「ありがとうございます。では私はこれで」

「ああ」

 

こちらを見向きもせずに片手で端末を操り続けるユダを片目で見て、部屋を出た。スーツを整えて小型の端末を起動する。そこには一人の女性が写っていた。

 

「確かに、期待のしすぎかもしれませんね」

 

──貴方口汚い。ちょっと直しなさいよ

──はぁ?いいんだよこれで!アイデンティティーとかいうやつ!

──そんなこと言っているから奥さんと喧嘩するの!ほら!さっさと仲直りしなさい!

 

奴隷として買い取った筈なのに奴隷として利用した事は一度もなかった。なんか、そのように利用するのは気が引けたのだ。

場合によっては怒られたし、殴られだってした。喧嘩もした。

本当に娘のような存在だった。

ならば彼は孫か。孫に期待するくらいは許してほしい。才能があり、あの血が通っているあの子の息子だ。大丈夫。我々なら勝てる。

そう確信しながら、待たせている部屋の扉をノックした。

 

 

 

 

レヴォルツ・イーオンの船にいくと、大男に囲まれながら、とある部屋にラフタと共に呼び出された。

聞くとこによるとこの組織の代表は多数の名前を名乗っており、アガーテ達に言ったレヴォルツというのもその一つらしい。

ここまで僕らを運んできた大男は一礼のみして部屋から出ていった。腰のホルダーにかかっている拳銃はおそらく抜く必要性はない。

 

 

「まずは突然の呼び出し。申し訳ない」

「いえ、これから戦場に行くので不安要素は無くした方がいい」

 

部屋に入ってきたレヴォルツは丁寧な口調でそしてこっちがつなぎだというのにきれいにスーツを着ている。慣れているなと感じる。確かにアガーテ等が言っていたとおりの人間だ。身だしなみは正しく、言葉使いも丁寧。紳士という男だ。

 

「...よく似ている」

 

不意にそういう声が聞こえた。男の声なので消去法的にレヴォルツであることは確かだ。しかし、何が何に似ているのだろうか。わからない。レヴォルツが何を見ていたのかが分かれば良いのだがレヴォルツの顔をその瞬間見ていなかった事からよくわからないがその言葉からおそらくラフタか自分だろう。

しかしあまり気にしなくてもいいだろう。似ているからと言って何も起こらない。

 

「そちらの準備は整っていますか?」

「順調とは言えないまでも進んではいます。おそらく戦争の前には終了するかと」

 

まず最初に聞いたのは此方の状況。レヴォルツ・イーオンという組織はモビルスーツの数も少なくはない反ギャラルホルン組織の中でも一、二を争うとは言わないものの上位の軍事力を保有している。

しかし周りの人間も急いでいる印象は全くなかった。もう終わっていると考えてもいい。

 

「マクギリス・ファリドから連絡が来ました。アリアンロッドと戦争を始めるポイントを決定したそうです」

 

こっちにはそんな情報は届いていない。今回此方の立場は傭兵のような物だ。そこまで重要ではないのだろう。俺についてこい。戦って勝て。その二つさえ言えれば充分だろう。

しかしここまで聞くと気になるのは仕方ない。

 

「何処です?」

「地球の近くです。それも相当近いです。おそらく地球外縁機動統制統合艦隊を動かしやすい位置だからでしょう」

 

地球圏で戦う。火星で地固めをしたというのに火星の兵は使わないつもりなのだろうか。

 

「フォーメーション等の戦略はどうですか?」

「元々それを送るためにここまで呼んだんです。なんたって君は...いえ、それは愚問ですね」

 

何か思わせ振りな一言を言いながらレヴォルツは端末を渡す。そこにはレヴォルツ・イーオンは勿論、革命軍の動き等がある。いままで当たって砕けろ、もしくは目の前の敵を蹴散らせとしか言われなかった此方からすれば複数の動きが書いているものはこんがらがってウザく感じる。

 

「私は貴方に頼みがあるのです」

 

そう思っているのがバレたのかレヴォルツが笑いながらその端末を見ずに操作して新しい画面を開く。

 

「貴方にしか出来ない事ですから」

 

 

 

そして時は経ち、戦争が始まる。

戦闘準備が整った双方は威嚇しながら牙を剥く。

 

「久しぶり。母さん」

 

アメリアに貰いながらも利用することは少なかった自室でそう言った。端末から見える顔は正真正銘、母親の物だ。俺がギャラルホルンに行く前に脚を悪くしたと聞いたが何も変わらない。それどころか少し老けたように見える。

結局あんな事件があったというのにアインスト一家はあの場を離れなかった。

 

「あんたも何やってたの」

「ごめん、ギャラルホルンってさ意外と忙しいんだよ」

 

母さんでも今回の戦争の事を知っているだろうが自分の部隊の名前は知らないだろう。アリアンロッド。今ニュースは見ないようにしているためどちらが正義ととらえられているのかは知らないがアメリア曰くどちらとも大きく取り上げられているらしい。

 

「それで今日はいきなりなんだい?」

 

母さんの声はゆっくり、そして今にも消えそうな声で。もう永くは無いだろう。悲しい現実が胸に刺さる。もう、覚悟していた筈なのに。それ以外の事は切り払うと決めたのに。準備が終わったら他の情報が入り込んできて、悲しく感じた。

 

「俺、ギャラルホルンを辞めようと思う」

 

俺ははっきりと決意した言葉を言った。アメリアの行くべき場所。彼女ならいつかたどり着ける。この戦争に勝てれば彼女の優位性は急上昇する。彼女ならそれを土台に使い、ギャラルホルンを支配することも夢ではない。

 

「...そう」

 

仕事を辞めると言った息子に対する親の返答と言えば、転職は決めたか等の次どうするかを聞くか、ふざけるな等のやるべき仕事を放棄した怒りの言葉だろう。

 

「だからさ。そっちに帰るよ。あいつらの親父代わりにでもなるよ」

「あの子達はもう残さず成人しているよ」

 

母さんが小さく微笑んだ気がした。また死ねない理由を増やしてしまったことを少し後悔した。

 

 

 

 

 

一度鉄華団に行ったことがあったが中にいるみんなが口々にこれで終わりだ。これで最後だからと言っているのが何故か物足りなく感じた。

アンドラスの方を向くとそこにはいままでとは違うアンドラスがいた。一際目に付くバックパックには大型のミサイルポットが二つバランスが悪い形でついていた。その両腕にはレールガンとミサイル付きのシールドではなく大型の二門のライフルとそれを覆い隠す白と青のシールドが両腕にそれぞれ一つついている。ライフルとシールドは接続されているので手は空いている。肩、膝等の間接部等には灰色の装甲がくっつき、コックピットには普通の装甲に加え灰色の特殊な装甲を着けた。

 

「なんかずんぐりむっくりになっちゃったな」

 

仕方ないでしょ。といつもの声が聞こえて来たので。そうだねと呟いてコックピットに入る。

何度も入ったアンドラスのコックピットすら何か物足りなく感じる。中に入れている栄養バー等も準備万端な筈だ。不意に近くにある救助用のキットが見つかった。

その瞬間蘇るのは母さんの最期の姿。ここにあるものではあの状態になったとき、無力だろう。しかしあのときみたいになにもしないでいるのはもう嫌だ。

そう思いながらそれをシートの裏に強引にぶちこんだ。

結果、アンドラスには怒られた。

 

そうしているとアガーテが近くに来た。戦闘が始まれば仕事が無くなるわけではない。それどころか仕事が急に増えるのだ。辛い戦いになるというのにアガーテが余裕があるように近づく。

 

「ゆーちゃん」

 

いつもの声でアガーテが言った。いつもとは違う戦場でアガーテはそれでもいつもの調子でいう。

 

「私達未亡人になっちゃった。だから変な奴等が来ると思うよ。守ってね」

「わかってるよ」

 

父さんが守ってきたかけがえのない家族を守るのは僕の役目だ。父さんを救う事ができなかった僕が守るんだ。

わかっている。そう何度も口の中で繰り返す。その度にやるせなくなるが過去は変えられないのだ。

 

「だから!シュイン達を同じ気持ちにさせたら許さないから!」

 

そう言って小突いた。力は優しかったが死にたくない理由ではなく、死んではいけない理由としては強く刻み込まれる。

 

「ああ!」

 

そう言うと何処からかアンドラス下ろすよ!と声が聞こえた。アンドラスがゆっくりと降りていく隣で沢山の女性達が離れていく。

コックピットを閉じると画面にエストが出てくる。管制室から通信をとっているようだ。パイロットが出来ないからって動きすぎたのか包帯の量が増えている気がするがそれは今良いだろう。

 

「兄さん、もし僕が死んだら。みんなを頼む」

 

先程は死んではいけない理由ができたが戦場に絶対はあり得ない。エストだってわかっているだろう言葉を言った。

 

「わーかってる。行けよ」

 

そう言うとエストからの通信が途絶えた。

視界を前に向けるとカタパルトが出てきた。出撃の瞬間だ。

その時大丈夫か?と一言聞こえた。懐かしい声。もう二度と聞けないと思っていた声だ。何故聞こえるかは今は愚問だろう。必要の無いことを考える頭は僕にはない。

 

「父さん、母さん...大丈夫。僕は強いから」 

 

もう手放さない。救う。自分が救いたいの思ったもの全てを。その為に全てを捧げる。この声が途切れて、四肢が体から離れて、魂すらもこの世から切り離されるその瞬間まで。

 

「ユウ・タービン!ガンダムアンドラスtypeβで出撃します!」

 

変わったアンドラス──ガンダムアンドラスtypeβがカタパルトから元気よく飛び出した。青い閃光を放ちながらその役目を果たすため戦場へと向かう。

 

 

それぞれの思いが交差しながら戦場は輝く。




アンドラスの強化形態のデータ乗せときます。ベリアルは次の機会に



フルアーマーガンダムアンドラスtypeβ
全高18.5m
本体重量38.8t
動力源エイハブリアクター×2
使用フレームガンダムフレーム
武装
シールド付きライフル×2
背部ミサイルポッド×6
胸部バルカン
脚部ナイフ×2

概要
全てで3つあるフルアーマー案の内の1つ。その中でも長期戦を主として考えた形態。
肩、脚などのパーツに灰色の追加装甲をつけている。 特に胸の追加装甲はリアクティブアーマーとなっている。
簡素な作りだったバックパックには2本のサブアームがつき、反動が弱い武器なら扱うことが可能。他にも装填など幅広く扱える。他にもガスのタンクがほかの機体より大きい。その為かフルパージした時の速度は通常のアンドラスより早い。
主兵装としてあるシールド付きライフルはシールドの裏に二門のライフルを付けており、シールドで守りながら射撃するのが基本的な戦い方。最悪シールドを破壊されても2丁のライフルとして扱うことが出来る。















次回からいよいよ最終決戦です。


次回!アベック・スナイプ
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