機動戦士ガンダムテイワズの狙撃手   作:みっつ─

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今回余裕あったら2話投稿したいですね。


ユウがチート級射撃した後はライルですね。
本当はこいつここまで掘り下げる気はなかったんだよなぁ...(しみじみ)


第64話 最後の指導

双方共にアリアンロッドのダインスレイヴが一斉に爆撃された事に度肝を抜かされた。

革命軍側は喜び、雄叫びを上げて。モビルスーツを前に出した。消耗していた筈の空気が一気に変わった。

アリアンロッド側はダインスレイヴで終わるだろうと推測していたものが多く、対処に遅れた。ダインスレイヴを操作していたパイロット達は命に別状はないがダインスレイヴが全て使えないと知ったその瞬間、絶望した。

未だにアリアンロッド側が有利だが流れが変わった。アリアンロッドはその数を持ちながらもゆっくりと潰されていく未来しか無かった。

もし、彼女がいなかったら、だが。

 

「モビルスーツ隊に陣形を取らせてください。私の隊のメンバーを前面に出します。負傷者をすぐに下げて。流れは敵の物ですが物量なら此方が上です」

 

父親であるラスタルが絶句している横でそんなこと想定していますと言わんばかりの表情と声のアメリアがファフニールの中で命令する。

 

「お父様。指揮、変わりましょうか?」

「いや、いい。今回の戦いはお前の出る幕はない」

 

そう言いながら二人は戦場を眺めた。また膠着状態となるのか、ダインスレイヴのダメージがまだ響くかわかった物ではない。

 

 

 

「ライルさん!」

 

モビルスーツデッキ。アリアンロッドの中では早すぎるが文句なしの撃墜王となったライルが補給を終えたらしいベリアルに乗って戦場に行こうとした。その時だった。

クリーム色の毛を持ち、ギャラルホルンの制服を軽く羽織った男が出てきた。その体は傷だらけで立っているのもおそらく奇跡だろう。

 

「ニールか。傷は?」

「主治医には寝てろと言われました」

 

彼はそう言いながら笑う。この前の戦いでニールは敵のパイロットに深手を負わされた。俺の方も色々あったので結局拾ってやるのに時間がかかったので傷が膿んでないか心配ではあったが全然大丈夫なようだ。

となるとまた新しい問題が出てくる。トラウマだ。2年前、ニールは今回のようにアンドラスというテイワズの狙撃手のガンダムに深手を負わされた。そこでまたアンドラスに出会った瞬間に錯乱したのだ。

またあのときのように錯乱するのだろうか。

しかし彼は自分がそんなことを考えているとはいざ知らず、淡々と言う

 

「聞きましたよ。ライルさん。これが終わったらギャラルホルンを辞めるって」

「止めに来たのか?」

「いえ、止められないことなど十も承知です」

 

ギャラルホルンにとってライル・バレル、もしくはライル・アインストという男は最強の兵として位置付けされている。

なのでギャラルホルンは離すとめんどくさいのだ。お偉いさんであればあるほど俺の価値を知っている。(イオク?そんなもん知らん)戦闘における圧倒的な力。あの日から何度も模擬戦を行ってきた。中には一対三等も普通にあったが負けることなど一度も無かった。戦争を一人で動かした男に勝てるはずもないのは仕方ないが。

そして阿頼耶識という技術。ギャラルホルンは禁忌と言うがその力は特にセブンスターズのような者達は十分知っている。勿論やろうとは思わず、先祖がやって来た物としてだが。しかし安心安全に出来るのなら着けてもいいと思うものもいる。その実験台として利用価値もあるのだ。この背中にある阿頼耶識はヒューマンデブリ等が使うものよりは少々ましではあるが、流石に厄祭戦時代となると性能は同じでも反動が違う。それでもそれなりの阿頼耶識保持者ということで研究期間が注目している。早かったのはマクギリス・ファリドだ。傭兵の如くあらゆる部隊を転々としていた自分をすぐに引き抜き、阿頼耶識搭載機を送ると共にその戦闘データ等を取っていった。そうして彼などの特にギャラルホルンの中でも優秀な人間には俺のような力がある人間が必要なのかもしれない。なのでアメリアも本当に良いのですか。等数えきれないくらい言われた。

しかしその反対も押しきってきたのだ今更ニール一人の制止で止まるわけがない。

 

「私は部隊の中でも劣っているとわかっていたから貴方の力が欲しかった。誰にも比肩することの無い圧倒的な力。結局その端くれをもらっただけですが」

 

そう言ってニールは笑う。

彼の頭の中ではどのような情景が出ているのか。彼女を失った悲しみをそのままぶつけていた自分に手をさしのべるのではなく、手をさしのべてくださいと願う一人の男。自分と同じ力を持った人間がもう一人いれば出来ることが広がり彼女の意思を継ぐことが出来ると。結局そうとしか思わなかった。それでも彼にとっては俺が先生なのだろう。ならば最後に言うべき事がある。

 

「ニール。最後にこれだけは言っておく。一度しか言わないから、よく聞け」

「はい」

 

ニールから顔を反らす。出撃準備をしろと言われて結構な時間が経っている。どうせ辞めるので少しくらい遅れてもいいかと勝手に思いながら言った。

 

「自分の才能を理解しろ」

「才能...ですか」

「ああ。人間誰しも向き不向き、得意不得意がある。その中で才能という光るものが誰しも一つはある。殆どの人間がそれを見逃すがそれだと気づかないまま、その人生を終える。しかしその才能というものは圧倒的な力だ。人間が行える努力では覆せないほどの。努力に勝る才能は無い?ふっ、笑わせるな。そもそも努力に負けるような才能ならそれは才能ではない。個性だ」

 

才能。人との差。

ある人は努力すれば才能を持った者に対抗できると言った。しかしそれはその人もある程度その分野に才能を持っているからそれに努力という積み上げたものがあるから出来る行為。元々才能の欠片もない人間が努力したところで人である限り不可能だ。例としてイオク・クジャンが上げられる。

しかしそんな彼ですら才能がある。それさえ輝かせればそれに気付かずそれを使えない環境にいる人間に対し、大きな差を作れる。自分のように。

過信しているわけではない。確信しているのだ。

 

「ちゃんと俺は肥料をくれてやった。後はお前がお前の力で成長しろ。自分の才能を活かせ。それこそがお前が強くなれる唯一の道だ。んじゃあな」

 

ニールの返事も聞かずにそのまま歩く。ニールは声の一つもかけなかったが最後に礼をしているように感じた。

これでお別れだ。もう二度と会うことは無いだろうお前が俺が行くコロニーに行ったりしない限り。

そのままモビルスーツデッキへと出向きベリアルを見る。もし貸すではなく渡すであったら俺はこいつを持ってコロニーへ帰ったのかもしれない。それほどのモビルスーツ。何度かシミュレーションを行ったが圧倒的な性能だ。自分の思い描いたように動いてくれる。ベリアルに阿頼耶識のコネクタを刺しながらモビルスーツデッキから切り離す。

得物はバックパックにかかった二本の剣と右手に持ったマシンガンそして両腕にある腕部100㎜砲。無さそうに見えて意外と持っている。

 

 

「ライル・バレル。ガンダムベリアル、出るぞ!」

 

ベリアルがファルニールから飛び出し青い閃光を上げながら近くのモビルスーツを潰して進んだ。

 

 

 

 

 

「あの男...サイオンの読みがあっていたのか...」

 

アリアンロッド側に起こる幾つもの爆発を見届けながらマッドナッグのコックピットでユダ・カイエルは呟いた。

敵方の作戦、ダインスレイヴで一網打尽にするという作戦のお陰で今この宙域に敵モビルスーツの反応はない。

それで安心してため息をつきながら自分が破壊したダインスレイヴの特殊な、弾というより矢といった方が正しい気もする弾を手に持った。

今さっき自分はこれを切り落としたのだ。大剣をその特殊な弾の腹に突っ立てて向きを強引に変える。そうすることで自分と今後ろにいる戦艦を守ったのだ。

 

「大丈夫か?」

「あ、感謝します!ユダ・カイエル!」

 

自分と同じくらいの年齢の男がそう言うのを片目で見ながら良いと一言返した。男は革命軍側の司令官の一人とも言うべき男で名をライザ・エンザという。

自分がここにいなければダインスレイヴに貫かれて死んでいたであろう人間に対してもあまり感情をもたない。

そんなことより重要なことがある。ダインスレイヴを潰されたということはアリアンロッドも動き出す。

 

「とりあえず船を下げろ。敵モビルスーツをいくつさばけるかなんてわからない。あっそうだ。仲間に言っといてくれないか?カイエル家は未だに途絶えていないって」

 

そういうとマッドナッグがエイハブウェーブを捉えた。機体数が多い。ダインスレイヴで痛手を負ったからこのまま押して潰すつもりか。

機体はおそらくレギンレイズとか言う最新鋭の機体。しかしこちらは厄祭戦にて消えたモビルスーツ、マッドナッグ。負ける気はしない。

 

「行け!」

「了解しました!」

 

そう言ってライザ・エンザが乗る船が遠くに逃げていくのを片目で見ながら敵のモビルスーツ隊を睨んだ。

 

数多の爆発にて破壊されていくダインスレイヴを見届けながらサイオンは艦長席から立ち上がりたい衝動に駆られたがすんでのところで押さえた。しかし笑みは隠しきれずにそっと漏れる。

彼はやってくれたのだ。自分もまさかあんな無茶な事を実現できるとは夢にも思っていなかった。元々翼として展開していた部隊を向かわせてダインスレイヴを潰すつもりだったのだ。その事を伝える必要性も無くなったので今では単なる無駄だが。

 

「やはり彼は...そうですね。君の息子です...ヘスティア」

 

サイオンはアンドラスを見ながら口角を上げた。そのときのオーラは無気味だった。彼の近くに浮いている端末にはとある情報が記してあった。

 

 

 

数分後、彼の視界にあったのはレギンレイズの残骸だった。他のモビルスーツの残骸は欠片も無い。つまり彼一人でこれだけの数を仕留めた。

 

「はぁ...うっ。ライフルの残弾は殆ど無い。大剣でどこまで切り抜けれるか」

 

先程敵機を持ち帰った僚機は無事だろうか。増援は来るのだろうか。モビルスーツの首パーツを動かせば見える地球を片目で見ながらそう思った。まず地球外縁機動統制統合艦隊の増援は見込めないだろうが、レヴォルツ・イーオンからはもうじき来るはずだ。

あのサイオンがここで自分を置きっぱなしにしておくなどあり得ないのだ。指示も何もないのにここで大切なカイエル家の人間を置いておく筈がない。

 

すると遠くから二種類のモビルスーツの反応があった。一つは援軍、この機体コードはおそらくグウィデオンのもの。来ないかと思ったが意外と来るもんだ。まさかサイオンがそこまで指示できるとは思えない。マクギリス辺りが俺の存在価値を理解したのだろう。

そしてもう一つは敵機。

通常のモビルスーツの三倍の速度で接近してくる。

 

敵機は遠くからだったのであまり気には止めていなかったがあまりの早さに対応が遅れる。

 

「っ!!来るかぁ!」

 

大剣を一度凪ぎ止まることを知らないであろう敵機が視界に入った瞬間に降る。素人ならこれで一度下がるか受けるか。しかしその機体は下がりもせず滑なかな動きで避けて、蹴りを食らわしてきた。マッドナッグが軽く吹き飛ぶ。

体勢を整えながら蹴ってきたモビルスーツを見た全体的に黒が多く、所々に灰色のパーツがある。左腕にはマシンガンが握られている。アリアンロッドから出てきたことも踏まえるとおそらくガンダムベリアル。

 

「お前が...ライル・バレルか」

 

敵側のエースを見ながらユダは呟きそれと同時に大剣を構える。

その意図を察したのかベリアルもマシンガンを放棄してバックパックから一本の剣を引き抜いた。

二体のモビルスーツは睨み、そして援軍が到着する前にその状態を崩してぶつかり合った。




ニール!生きとったんかいワレ!
というのは置いとくとして地味にレベルの高いアグニカ・カイエルの先祖とライルと...燃え上がりそうですね。何かが。次回!先祖VS再来
勝つのは血統か、真似物か。

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