鉄華団のありったけのモビルスーツがイサリビを守る。イサリビもモビルスーツより遅いとはいえ、戦艦とは思えない速度で動いている。しかし
「押されているな」
圧倒的な物量に押されだんだんイサリビへの直撃が多くなってきた。しかもアリアンロッドはまだ切り札が残っている。ここで出さないということはやられた可能性もある。しかし団長に聞けば罠でも罠ごと噛み砕くとザ・脳筋な事を言い出した。今回は自分より団長さんの方が立場的に上なので仕方がない。
狙い撃つだけだ。
ラフタとアジーが当たっているレギンレイズを撃ちながら切り札を出す瞬間を待つ。レギンレイズはコックピット辺りに爆発を起こしてそのまま減速していった。
「ゆーちゃん!」
ラフタがまた一機葬りながら接近してきた。見る限り損壊しているわけでも弾切れしたわけでもない。となると答えは限られてくる。
「ここは大丈夫だから反対方向よろしく!」
そう言われて反対方向を見ると鉄華団のエースであるバルバトスさんが何処かで見たモビルスーツと戦っていた。大型のシールドに細身、緑色でトゲトゲしたモビルスーツ。
あいつには見覚えがある。大切な物を失った戦いで敵として出てきて、そして直接的な被害はあまり出さなかったものの、死ぬ原因となったモビルスーツ。
母さんを苦しめた奴だ。思い出してみれば動きも似ている。奴だ。頭の中が煮えたぎるように熱くなる。まだ生きていたのか。あのときはアンドラスに暴走を抑えられたからといって止めはさした筈なのだが。やはり甘いようだ。
「わかった」
確かに彼女だって生き抜く為に戦ったのかもしれない。しかし、家族として母親が死ぬ原因となったものを見過ごしたくはない。僕だって人間だ、恨むし妬む。だからその感情を内に隠しながらも戦う。
それが狙撃手だ。それが出来てこそ狙撃手なんだ
そう思ってバルバトスの邪魔にならないように通信を繋げる。普通ならタッチパネルをなんとかしなければならないが、此方にはアンドラスがいるため、そこら辺の操作は簡単だ。
するとどこからやってきたのかレギンレイズが二機、回りながらバルバトスに接近していく。
しかし周りながらもその肩に青に線が二本入っているのを見た。あんな風に付けられるのはエース機のみだろう。アリアンロッドは大きいからそんなカスタムもし放題だろうと思うかもしれないが簡単なものとは言え、少ない数のみやってしまっては同じもの量産する量産性に欠ける。しかもあのカラーのレギンレイズをまだ見ていない。
おそらくアリアンロッドでも選りすぐりの兵だ。
試しにコックピットを狙ってみようとするとその機体はバルバトスの方へと急いで向かった。
気付かれた。それは違う。元々僕の売りは誰にも気付かれないことなのだから。それはライルと戦うときだってそうだった。彼はいつも僕が狙っていること前提で動いているのだ。だから止めどなく動いて撹乱する。
ライルがそこまでやるのにエースとはいえ、一端のパイロットが出来るはずないのだ。
「エイハブ・ウェーブか。やり手だな」
アンドラスのエイハブウェーブを探知してそれに当たらないように動いているだけ。文字だけではじつに簡単な事だがこんな乱戦をしている最中にエイハブウェーブを見ることが出来るのはエースの証拠。
そう思いながらも適当にそこら辺をうろついていた一機を撃ち落とした。
普通ならこうなるのだ。戦闘は当たり前だが自分だけではない。相手がいるのだ。しかも相手だけではない。気温、気圧、風向き、天候、障害物...等など多数の状況により成り立っている。それを見るのは狙撃手として必要なスキルの1つなので自分もあのパイロットより持っている自信はある。しかしそのパイロットも普通以上に持っている。それに加えてダインスレイヴという兵器を全滅させたとはいえ、たった一人の兵、そのモビルスーツを狙撃手として危険視する。そこから先程のエースパイロットの情報力も伺える。
だからといって逃がすという訳では無い。逆だ。それだけ強いから逃がしては姉さん達に影響が出る可能性がある。それにバルバトスさんをここで死なせては後々面倒だ。
レギンレイズ2機がバルバトスさんを拘束する。バルバトスさんでも2機の相手を押しのけるのは難しいだろう。援護するしかない。強い相手に巡り会えた事を喜びながらも落ち着いて狙う。それも時間はかからない。ただ危険だと思う原因を取り除くだけ。
「防御姿勢」
バルバトスさんに言うとその瞬間に機体が揺らぐ。それを認識する前に引き金を引いた。弾を大型のレギンレイズに当てるのはそこまで難しい問題でない。あの時は正気ではなかったとはいえ、苦手な接近でなんとか出来た相手なのだ。
大型のレギンレイズのバックパックに弾を当てるとその瞬間に拘束を解いたバルバトスさんが大型のレギンレイズに追撃をする。大型のレギンレイズの盾が崩れてバルバトスさんから離れていく。
どうやらここは大丈夫なようだ。
もしレギンレイズのエースが本当に2機のみだったらそこまで問題はなかった。そしてやってしまった大きなミス。それは狙撃をした後にバレた可能性が高いというのに移動をしなかったことだ。
移動もせずにまぁ大丈夫だろうで、切り捨てた。それが大きな問題だ。
一瞬だけ激しい頭痛を感じた。この感覚はアンドラスからの反応。そしてそれを考えているとアラートが鳴る。
反射的にシールドを構えるとそこにグレネードが当たり爆炎を上げながら衝撃が来た。勿論耐Gが働いているのでそこまで重い訳では無いが位置を知られたこと、そしてそこに撃ち込まれたことに驚く。
爆炎で視界が隠されながらも撃ってきた機体を確認する。先程のレギンレイズと同じ肩パーツに青い二本の線が入ったレギンレイズ2機。先程の状況判断と言い、エースであることは間違いない。
「やられた!」
グレネードの嵐が収まったのを見計らって1度そこから離れる。撃ってきたレギンレイズ2機の位置を再確認しながらライフル付きシールドを調べる。一応、爆炎などで銃身は歪んではいないようだ。こんな所で銃身が歪んでしまうと泣くに泣け無い。それに今からこいつらを倒すと考えると難しい。僕はライルというアリアンロッド側の切り札に対して対抗するための最後のカード。エース機とはいえ、ここで長い時間は立てられない。
「アンドラス!」
愛機の名を叫びながらそちらへと突っ込む。格闘戦で勝てるなど毛頭も考えない。勿論ここで命を投げ出すつもりもない。2機のレギンレイズはまるでこちらがそう来るのを分かっていたように一瞬も遅れずに刃を振るってきた。それをシールドで抑える。
完全に先程のバルバトスルプスと同じ状況となった。バルバトスルプスという格闘に重心を置いたカスタムを行った機体が切り抜けられなかったのにアンドラスという射撃に重心を置いたカスタムを行った機体が切り抜けられるわけない。
普通ならそうだろう。パイロットで考えてもバルバトスさんと僕で格闘戦を行ったらバルバトスさんが勝つ。それは当たり前だろう。阿頼耶識システム自体が格闘線に強くなりやすいというのもあるが。
しかし完全に同じになったと先程言ったがそれは外見のみで実はこの押さえられている状況は実は先程のバルバトスルプスが押さえられている状況とは違う。先程のバルバトスルプスは押さえる前提なのに対し、こちらは攻撃されているのだ。しかも刃をぶつけているのでグレネードやライフルを使ってもこちらには当たらない。
そちらは僕は狙撃手だから射撃に全てをかけたモビルスーツで全てをかけた戦い方をするとでも思っていたのだろう。実はアンドラスは汎用機であり射撃に対する補正などはほとんど無い。実はフラウロスより弾が当てにくい機体なのだ。
そして押さえられているのではなく、攻撃されている。
「今だ!」
攻撃ということはつまり、一点に力がかかっているということだ。バルバトスルプスが押さえられている時は完全に腕を掴まれていた為、抜け出せないが攻撃なら盾をずらすだけで抜けられる。そしてその抜けた瞬間は隙となる。
勿論攻撃に出ると言うことは分かっていた。押さえるということはトドメ役がいるのだがここにそれはいない。何処からか呼んできたとしてもこれだけ大きなシールドだ。パージされることを考えているに違いない。掴むことは正直リスクが高い。それを知った上で挟み撃ちなのでこうした方が意外とやりやすかったりするのだ。
体制が崩れたレギンレイズが立て直す前に射撃して破壊する。パイロットがいなくなったであろうモビルスーツを蹴飛ばしてバルバトスの方向を見る。
その横をイサリビが通過していく。それが晴れた時、そこには黒色のモビルスーツが佇んでいた。両腕を斬られたグシオンリベイクフルシティが気を失ったのか全然動かない。そのままグシオンリベイクフルシティはイサリビから離れていく。本人が生きているかどうか確認する必要があるが今はそれどころではなかった。2機のガンダムフレーム。それも鉄華団のエースと戦って勝てる奴なんて世界にはそうそういない。勿論この戦場にも。そして黒いモビルスーツ。二本の刀を持ち、スラリとしたフォルムを持つ。
「ベリアル...」
この戦場にいるガンダムフレームの機体の内の1つ、ガンダムベリアル。パイロットはライル・バレルだ。こんな短期間でしかも専用機のパイロットを変えるとは思えない。ガンダムベリアルの同型があるとは思えないし、まずまずあの2人を軽く倒せる相手なんてそうそういない。
あいつに噛み付いて行けるのは僕だけだ。僕がやるしかない。しかし、勝てる見込みは無い。どちらかというと時間稼ぎだ。勝てる可能性など元から考えてないし、死ぬ前提の話が殆どだ。勿論死にたくなんてないし、死ねない。ここで挑まずに分かりませんでしたーですませれば負けても生き残れる可能性が高い。
しかしそんなのでいいのか。僕はテイワズの狙撃手。今の戦いは狙撃手とは言えないがそれでもテイワズとしてプライドもすくならからずある。それに僕が逃がせばみんなが危険だ。死人だって増える。その中にタービンズのメンバーを入れたくない。ならやるしかない。殺るしかない。
ライルだって今は僕が来ることは分かっているのだ。分かっていて、佇んでいる。イサリビに追いつく必要はもう無いのでイサリビの方に1度だけ視線を送る。姉さん達は大丈夫だろう。そんなヤワな人達ではない。
深呼吸をする。それと同時にアンドラスが話し掛ける。
─私は行けるよ
僕を安心させるように暖かい何かが包み込む。それどころでは同時にみなぎってくる自信。行ける。スティックを握り直してそのままの勢いに任せて突っ込んだ。
それにベリアルが反応して目にも止まらぬ速さで突っ込んできた。
すんでのところでシールドを構えて防ぐ。それすらも貫き、耐Gを突き抜ける重い衝撃。身体が反応をする。ビリビリと何かが震えて緊張感が高まる。
しかしそれは瞬間的な物だ。頭に閃光が流れる。それと同時にアンドラスが行った思考が言葉として流れてくる。それを加味した直感とは言えないだろう直感でベリアルの位置を読み取り、シールドを合わせる。
火花が発生してシールドに傷がつく。また来た重い衝撃に揺らされながらも目を見開いて相手を見た。黒いベリアル。
「これで最後だ。ライル・バレル」
2人の戦士の戦いが再び始まった。
さてとつぎからは何話かに渡るライバル最終決戦です。
勝者はどちらか。
そして鉄華団の特攻はアリアンロッドにどのような効果をもたらすのか。次回!ライバルその1お楽しみに!