ライル、ユウの最終決戦が始まる
ライルが速すぎてユウ防戦一方
しかし刀が折れる。
ここまで幾度となくライルの剣技に耐え続けてきた刀がついに限界を向かえて半ばで折れた。
これで流れが変わる。そう確信した。
2本しかない刀なんだ。それで二刀流を行っていたライルからすれば戦闘方法の変更から始めなければならない。そしていままで2本で慣れたのだ。1本でも戦闘している回数で言えば経験が多いのだ。やれる。
「チャンス!」
ライフルで牽制しながら1度離れる。あいつの長所はなんと言ってもスピードだ。耐Gをどれだけかけているのかわからないが多分間に合ってないだろう。それでも耐えられるパイロットの強靭な肉体。刀が折れたところでそれは変わらない。それを精一杯利用されて、叩かれたら終わりだ。ここまで来たのに負けられない。
とは言ってももう一本の刀も限界はそう遠くない。関節など弱い所を庇いながら攻撃してたので刀もボロボロな筈だ。対するこちらの盾もボロボロだが追加装甲で防げればいい。最悪追加装甲にはパージという段階がある。あいつのもう一本の刀が折れてしまえばもうリンチでもなんでも出来る。
「やるな...それでこそ!」
ライルはまだ諦める印象もなく、真っ直ぐ当たってくる。シールドを重ねて防ぐがアンドラスから嫌な金属音が聞こえる。シールドの限界を再現させたのか。
本当にわざわざ面倒なことをする。しかし限界を迎えようとどうしてもここで仕留めなければならないのだ。その為には無理をする。何度も心に決めたことだ。今更変えたりだなんてしない。
「僕はまだ死ねない!死んじゃいけない!」
心に決めたことを繰り返しながらベリアルに攻撃をする。生きたいではなく、死ねない。という事を。
「戦場で死ねないというのは甘えだ。なら来るな!」
対するライルもまだ諦めてはいないようで刀で弾を弾きながらも距離を保つ。ベリアルが急接近することを考えるとどちらとも危険な距離だ。ここを保つのも難しく、保てば瞬間的に接近される可能性がある。懐に入られたら斬られるしかないので何がなんでも抑えるしかない。
「それでも!僕は戦うことしか!」
ベリアルの双腕から後で埋めたと思われる遠距離武器が顔を覗かせる。しかしそれでの射撃はそこまでうまいという程でもなく、十分あしらえるレベルだ。でもそれが接近の為の布石と考えるとどうも動きずらい。
「守るものがある!好きにすればいい!しかしな!」
ベリアルとアンドラスの射撃する対決はアンドラスの方に軍配が上がる。ベリアルの被弾が増えて装甲の隙間から煙のような物が出てくる。
そこで射撃戦は不利だと感じたのかベリアルは折れた刀を投げた。
躱すか防ぐか一瞬迷った。折れた刀といえど殺傷能力がない訳では無い。躱すことで隙が生まれるとその隙をつけ込まれる。しかし防ぐは防ぐでそれも危険だ。考えをめぐらせている時間はない。その刀をギリギリで躱す。その間もベリアルを見失わないようにベリアルを見たが、迂闊だった。
ベリアルは刀を投げると共に、アンドラスの脚側へと回り込み、死角へと逃れた。
「アンドラス!」
「それが自分の脚を引っ張っているということを!忘れるな!」
咄嗟に取った防御姿勢も虚しく懐に入られる。その瞬間死を覚悟した。それほどの力をベリアルから感じた。ゆっくりと機体と後ろへと傾けるにしかし、ベリアルの刀はアンドラスの追加装甲を意図も容易く斬った。。弱くない衝撃で機体が揺らぐ。これでほぼ、追加装甲は役目を果たさない、ただの飾りとかした。
シールドを動かそうとするが内側から刺されてシールドに穴が開く。
「うわぁぁ!」
強引でありながら丁寧な刀の扱い。一つ一つの動きに圧倒的な技量を感じさせて、怯む。
これがライル・バレルなんだと。自分が挑んでいる相手がどれほどのものなのか自覚をした。勝てると思った。それなりにいい戦いもしてきたから、刀を折ったから。しかし、ベリアルは怯まずに戦ったのだ。強い。圧倒的すぎた。
「諦めろ」
刀のように鋭い言葉。それは僕の心に突き刺さる。
分かっている。僕は勝てないと言うこと。強い強いとイキって本当はただの男嫌いなだけだということ。甘えることしか出来ない、情けない男だということ。分かっていた。分かっていたのに、悲しい。悔しい。
どうして。どうして僕はこんなに弱い。あれだけ人を殺して来たというのに、何故弱い。どうして。僕は強いからと親を安心させるように言ってもなんにも変わらない。
何度も繰り返した。心の中で嫌という程繰り返した。それでもまだ止まらない心が壊れてしまうのではと思う位の何かが僕を潰そうとする。辛い。
強くありたいと、何度も願った。そのたなら、多少のことは犠牲にできる心の強さも必要だ。
僕は、まだ強くなりたい。強くなって大切な人たちを自分の手で守れるようにしたい。だから賭けさせてくれ。どうせここで動かなければ死ぬのだ。強いから。そう嘘をつき続けたい。だから少しだけ。
「フルパージ」
全ての追加装甲を一瞬でパージする。切り刻まれた装甲がバラバラになりながらもベリアルに無理矢理下がらせる。
ここが勝負だ。ここで相手に何らかの障害をおわせれば勝てる確率が出てくる。
ライフルを構える。いちいち狙いを付けている時間はない。感覚に頼って撃つ。ベリアルが少し下がったとはいえ刀の間合いより少し遠いくらい。馬鹿でなければ撃って外す距離ではない。
それもテイワズの狙撃手が外す所か装甲の厚い所には当てない。
直感と知識を一瞬だけ総動員させて引き金を引く。弾はそのまま真っ直ぐ飛んでいき、頭に当たり跳弾、コックピットの薄い部分へと命中。これでコックピットに侵入した弾がライルの身体をひき肉へと変える。
──筈だった。
アンドラスが確認したのは弾かれた弾だ。一瞬だけの判断とはいえ、狙いは完璧だった。あの瞬間ベリアルが意味不明な挙動をしたわけでもなく、すんなりと弾の侵入を認める筈だった。
「二重装甲か、また同じミスを!」
ライルが僕と戦う時に用いられた方法だ。自分の技術を上げるだけでなく、他人の状況。そして相手がどう考えるかまで考えなかった結果だ。
必殺の一撃は容易く弾かれてベリアルのバランサーが機体を整える。
ベリアルが視界から消える。宇宙の色がないから黒いベリアルを見失う確率が高い。それもあるがあれだけ痛手を負っておきながらまだあの速さが保てるとは計算外だ。全てに対して柔軟に対応する必要があるようだ。
兎も角、これを防がなければ終わりだ。ここまで思考が追いついたのも、恐らくライルとの戦いに慣れてきたからだ。そうでなければ思考どころか急に回り込まれて一刀両断っと言うことになっていただろう。若干ではあるが僕も成長しているのだ。
「...っ!」
若干ではあるが頭が動いたのでそれなりの対応ができる。ベリアルの速さはアンドラスで追いつける自信はないが、それに対応することは慣れた。刀を
シールドはまだ耐えられる筈だ。そこら辺の学習は全くしてないのでどれだけ耐えられるかということを感覚でしか予想が出来ないがもうそろそろ壊れてくるだろう。先程突かれただけで穴が空いたことから簡単に推測できる。
穴が空いた。刀で突いた訳なのでおかしくはないがそこに何かおかしい物を感じた。確かに刀とは突くことも出来るしかし、ライルがやるように斬ることだって出来る。何故この盾は砕けずというか何故斬られる心配ではなく、砕かれる心配をしていたのか。
そこまで考えるとシールドから圧力が来た。流石に脳がライルのスピードについていけているとはいえ、余所事を考える時間はない訳だ。
乾いた唇を舐めながら、ここで余所事を考えるのはやめておこうと考える。気になったら最悪この戦いが終わったあとでもアンドラスに聞くなり、兄さん達に聞くなりすればいい。僕のチンケな頭で考えるより、とそちらの方が正答率が高いだろう。
「防いだところで!」
「なんの!」
ベリアルの2本目が無いため、鋭い追撃は来ない。そしてスラスターを使い果たしたのか高速移動もあまりしてこない。スピードが持ち味のライルからすればスラスターのガスは自分の命だと言ってもいいものだ。狙撃手はあまり動かないのでスラスターのガスが無くなっても動かないかそこら辺をプカプカ浮いていればいいので問題ではないが高速移動のための機体がこれだとかなりきついだろう。ここまで追い込んだのだ。誰でもない、この僕が。
「ちっ!どこか補給出来るところ...」
「逃げるな!アンドラスの餌になれ!」
ベリアルも補給ができる場所を探しているようで鋭い攻撃が減ってきた。とりあえず盾を斬るような事はされないだろう。
補給することで刀を新しく手に入れられたらそれこそ面倒どころの騒ぎではない。刀1本持ってくるだけでアンドラスの敗北は必死だ。
アンドラスはスラスターのガスを増量しているから今問題があるかと言われればそうではない。シールドは大問題だが、補給して余りがあるとは言えない。元々無かった物を適当にしいれてきただけなのだ。恐らくこれで最後。逃がしてはならない。
元より遠距離勝負は此方の方が有利なことなどライルからすれば宣告承知だろう。ここまで痛めつければ帰る可能性も低い。
「ここでお前を落とす!」
「舐めるな!」
アンドラスの射撃を射線を見ながらかわして行くベリアル。その様子を見ながらベリアルの行動パターンを見る。スラスターのガスを出来るだけ節約しながらかわしているのがわかる。だからといってここで銃口を移動させても無駄だろう。タイミングは知られてないが、銃口は完璧に把握されているのだから。現在は銃口を隠すことなどできないし、隠れるというのは以ての外。隠している銃もない為ここで無理に攻めない方がいい。弾の無駄遣いはさせるべきだ。
すれ違いざまに切り込んでくるベリアルを確認しながらバックステップを踏み、直後にスラスターで回り、躱す。刀を中心として、円を書くように躱したので、後ろを取る。しかし、そこでは狙うだけで引き金は引かない。引いたところでライルはそれくらい読んでいる。その通りに動くのはなんか癪に触った。刀が1本になった、そしてスラスターのガスが少なくなったことでライルが戦法を変えてきた。その為、余裕を持って、躱すことが出来るようになった。しかし、これでも同じ土俵に引きずり落としただけ。結局ライルの方がパイロットとしては優秀なのでここまで引きずり落とす必要があった。双方の攻撃が上手く決まらない状態。先程まで抑えれていたとは思えない。
「俺にもプライド程度ならある!」
「当たり前だ!だからこそ、お前を越えたい!越えて、その先に行かなくちゃいけないんだ!」
まだ粘った方がいいのか、それともここで仕掛けた方がいいのか。粘れば時間がかかるがもし、耐えられれば簡単に仕留められる。仕掛ければやられる可能性が高い。が時間もかけずに済む。
ライルの方は少し様子見をしているようだ。無理に攻めたところで無駄だと気づいたか。もしくはそれ自体が罠で仕掛けてきた瞬間に終わらせるつもりか。相手の心が読み取れないため、めんどくさい。
頭の回転ならライルの方が速いだろう。モビルスーツで高速移動しながら攻撃するというのはGに耐えられる身体は勿論、動体視力、そして頭の速さが重要なのだから。
つまりここで高速戦闘は不利。確実に仕留めるには、隠れて狙撃が1番良いのだがここで隠れる時間はないし、隠れてもベリアルが補給に行ってしまい今までの行為が水の泡と成り果てる。ベリアルの刀が届かず、急接近しても耐えられる距離を保つしかない。仕方ないが粘るしか無さそうだ。
そう思い、アンドラスとベリアルの距離を離した。
ベリアルはそれを良しとするはずなく、瞬間的な加速で詰められる距離を保とうとする。
あちらも限界な筈だ。この戦い、終わりは近い。
そのまま、2機のモビルスーツが攻め手を温存するあまり、適当な距離を保ち続けるという不思議な空間が完成した。
目の前のモビルスーツのコックピットを開き中に入る。端末を接続して細かいところを見直す。システム面は問題なし。武器は適当に獅電の物を持っていくことにする。丁度いいのか武器庫には武器がまだ余っている。ライフルも弾を詰めれば使える。スラスターガスは何故か最初から入っている。短時間であるならば、十分に動けそうだ。
「機体名は...スピナロディ・リペア...か」
スピナロディと言えば海賊などでも使われるほど流通されているロディフレームの一種で、民間のコロニーでも使われるほど安価なモビルスーツだ。ロディフレームは際立った特徴こそ無いものの、フレームそのものの剛性が高くペイロードもかなり余裕があるために優れた拡張性を有したロディはとにかく大量に生産され、厄祭戦の後にも相当数が稼働状態で残り、とにかく様々な組織へ流れていった。 父さん曰く、アミダ母さんが父さん達に出会った時に使っていたモビルスーツ。これを持ってきたユウ曰く、ナノラミネートアーマーにマトモな塗装すら塗られなかったオンボロで中距離戦ですら不利になるモビルスーツだったらしい。結果、四肢は切断されてエイハブリアクターも不安定な形で保存されていた。
リペア。つまり修理されたということで共に眠っていたマンロディと鉄華団が仕留めたガルムロディの装甲を切り貼りしてとりあえず形にはしたモビルスーツ。勿論ナノラミネートアーマーの塗装も万全でカラーはスピナロディが水色(勿論業者によって違うがユウが拾ったは水色だった)に対し、黄色と蒼のツートンカラーとなっている。
コックピットも替えられたのか肌触りがいいい素材になっている。どうでも良さそうで地味に大切な所を抑えている。
「まぁマトモな機体が余っているだけマシか...これでどれだけ対応できるか」
マトモな機体ではあるが、ギャラルホルンでエース用に配備されているレギンレイズは勿論、グレイズ、そしてテイワズで配備されている獅電、辟邪。そしてその前に配備されていて、今は傭兵などが使っている百錬、百里、漏影等よりも兵器としては弱いだろう。補正も弱いし、スラスターが出せる最大のガスも少ない。反応が弱いので無駄が多いと大きな隙ができる。余裕はあるため、無理しても壊れることは無いが性能が低いため、無理して動くことすら出来ない。
こんな機体でも利用価値はある。それにドクターストップがかかるレベルで身体がボロボロな自分と見ると背丈にあったモビルスーツでは無いのかとまで思う。
そこまで考えて直角ステックを軽く触る。反応はなし。これは獅電と同じ要領で動かすと接近戦で不利になる。慣れるまで遠距離で戦わなければならないようだ。
すると後ろから怒号が聞こえた。
「おーい!そこのお前!勝手にモビルスーツに触るなぁ!」
どうやらお怒りのようで額にミミズが這っている。鉄華団曰く、臭くないらしいがタービンズと比べると明らかに異臭がするその腕を避ける。恐らく鉄華団は鼻でも曲がってしまったのだろうと失礼な想像をしながら漂うおっさんの腹に蹴りを加える。
「わりぃなおっさん。今日の俺は...最っ高の仕上がりなんだよなぁ!そこでそのくせぇ指咥えて見てな!この俺が!ギャラルホルンを駆逐していく姿を!そして怯えろ!」
盛り上がっていく感覚を収めようとすることなく、そのままスピナロディ・リペアに乗り込む。計器等の異常は無し。
あと心配な点といえばパイロット、つまり自分のコンディションだけだ。見た目や動きから想像出来ないが、医者から止められるほど自分の身体はボロボロらしい。実際動いている自分ですら、まだ行けるんじゃないのか?と思ってしまう。
しかし限界というのは意外と行かないと気付かない物だ。それが目の前に立っても自分をよく見れてなかったりすると気付かなかったりする。
「まあ、なんとか出来るだろ。笑いものにはされたくないしな」
コックピットのハッチを閉じながら周りを見渡す。先程蹴りとばしたおっさんは子供達に回収されているようだ。その少年たちを含めて全員が目を真ん丸にしながら此方を見ている。その動きが準備でもしたように一緒なので笑えてしまう。
流石鉄華団。息ぴったりだ。
その事はどうでもいいとして、問題はどうやってここから出撃するかだ。まさか正直にカタパルトまで誘導してくれるとは思ってない。一応乗り込んでくるモビルスーツの為に開けているため、ぶっ壊しておっさん達を宇宙に放り込む必要は無いが、乗り込んでくるモビルスーツと鉢合わせは普通に気分が悪いし、こんな所で事故なんて起こせない。
仕方ないが、無理矢理抜けるしか無さそうだ。間を見計らってイサリビから出る。
「スピナロディ...エスト・タービン!出る!」
ライルとユウ君の力が意外と均衡している。これにはお母さんもニッコリ。
しかしユウ君の思考がほんとうに危ない。名瀬さんとアミダさんが死んでから思考回路がおかしくなってる。
というかこのエスト...どこかで見た記憶があるなぁ...何かを助ける為に無茶な行動に出る。うん、どっかで見たね。
というかユウ君二重装甲に弱すぎ問題。