ハイスクールD×D 〜百手の魔人〜 作:トゥメル
薄暗い石の牢獄の中、紅の髪の男性が足場の下に捕らえられた男に声をかける。
「ハンプティ、ここから出たくはないか?」
四肢の先を鎖で繋がれた男が口の端を歪ませた。
「ガラガラガラ… ようやくかよ、サーゼクス。」
奇妙な笑い方をしたその男は鎖を引き千切り、立ち上がった。
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先の大戦、悪魔、天使、堕天使の3大勢力が盛大に争ったその大戦の中で、悪魔側で開発された技術があった。
それが、ゴーレム。 ただの魔獣や使い魔の類ではなく、術者自体が直接作り出す人形だ。 様々な姿形を取り、悪魔側の強力な武器となった。
しかし、そのゴーレムを恐れた他の勢力や戦争終結後の悪魔がそのほとんどを破壊してしまった。 大戦により術者が少なくなっていたこともあり、監獄に囚われたただの一体を残してゴーレムは居なくなった。
「ガラガラガラガラガラ、サーゼクス。 ずいぶん大きく書かれてるじゃねえか。 俺らゴーレムが活躍したのなんてほんの一部じゃねえかぁ?」
「いや、それでも十分すぎる貢献だったよ、特にハンプティ、君はね。」
蝋燭で照らされた書庫の中には、椅子に腰掛けテーブルに足を乗せ書物を読み漁る男と、その向かいの椅子に座る紅髪の男がいた。
サーゼクスと、そう呼ばれた男が一冊の本を手に取る。
「しかし、自分で鎖を千切って出てこれるならそうそればよかったじゃないか。 何故わざわざ釈放を待っていたんだい?」
サーゼクスは手に取った本を開き、ペラペラとページを捲った。
その目に付いたのは『唯一残ったゴーレム、ハンプティはバアル領の監獄に幽閉され、決して壊れることのない鎖に囚われている。』
サーゼクスはその一文を読んだあと、吹き出した。
「全く、大嘘じゃないか。 いとも簡単に千切っていたというのに。」
「そりゃあ、俺ァただのゴーレムじゃないんでね。 こんぐらいしなきゃ名の折れさね?」
「…ユミルの魔人、というだけはあるようだ。」
サーゼクスはまたページを捲りそこに書かれた文章を読み上げる。
「『ギリシア神話のヘカトンケイルに習って作られた。 ユミルの魔人、
「あぁ? ガラガラガラ、百じゃ効かねえなぁ。 その本は俺を過小評価し過ぎているようだぜぇ?」
手元の本から目を離したハンプティが、背中から黒い腕を生やしサーゼクスからその本を取り上げ、その黒い腕で握りつぶしてしまった。
辞書ほどの厚さだった本がビー玉程のサイズになり、黒い腕に弾かれて何処かへ飛んで行ってしまった。
「…一応、ここは僕の書庫なんだけどなぁ…」
「ガラガラガラガラ! 俺とお前の中じゃァねえか? 気にすんのはクールじゃねえぜ?」
「ハア、しょうがない。」
やれやれ、とため息をつきながら立ち上がるサーゼクス。
「じゃあ、僕は戻るよ。 君もバレないように気をつけて、用意した部屋に戻ってくれ。」
「ガラガラ、んなヘマァやらかさねえさ。」
背を向けながらのサーゼクスの言葉にハンプティは笑いながら返し、次の本を手に取った。