「本当に柊の言った通りになったな」
「当然だな、伊達に焦凍の幼馴染だった訳ではない」
「それだと幼馴染だった事実を誇ってるようだぞ?」
「そうだがどうかしたか?」
全力で誇っている姿を見て、こりゃ駄目だと言わんばかりに頭を抱える障子。だが喋りながらでも"剣を振るうと炎を出す宝具"で凍った足場を溶かす葵羽と相手の場所を常に探る障子。この辺りはしっかりとしているのだろう。
「想定通り轟は一人で狭い部屋をしらみ潰しに探しながらこっちに来るぞ。飯田は一階で待機しているようだな」
「ならばこちらも作戦通りいくぞ」
作戦というのはまず、轟が一人で攻めてきた場合、戦闘向きな葵羽が迎撃。その間障子は飯田の場所を逐一報告、もしも飯田が遅れて攻めてくる場合は一時撤退し態勢を立て直すという作戦。だがこの場合飯田が遅れて来る可能性は低いと踏んでいた。
逆に機動力の高い飯田を尖兵として起用してきた場合、機動力の落ちる狭い通路へ引き寄せ葵羽の鎖で確保、この際飯田とタイミングを合わせて轟の奇襲が来る可能性があるので空飛ぶ絨毯でなるべく高い位置にいることが前提だ。
そもそもこちらは五階建ての建物の四階、ここに辿り着くにはまだ時間があるためじっくりと準備をすることが出来る。この部屋に来るためには必ず中央にある部屋を通らなければならない。
本来ならば窓から侵入することも出来るのだがその選択肢は本人が無くしているため迎撃するのはその部屋がうってつけなのだ。
「……やはり簡単に凍ってはくれないか。それにその姿、普段とは違うな。一対一はあっちの姿じゃなかったのか?」
「そうか、そうだな!この姿で焦凍と戦うのはこれが初だな!ーーだが決して慢心では無いぞ。むしろ逆だ、格の違いというものを教えてやる」
「やはり俺の前にはお前が立ちはだかるか。だが俺はお前を超えていくぞ」
その言葉を合図に戦闘が始まる。焦凍は最初から全力で葵羽を凍らせるつもりで攻撃をしている。一方の葵羽は"振るうと氷を出す宝具"で向かい合っていた。
「てめぇ、はなっから倒すつもりがねぇな。俺の個性の弱点を、俺の決意を知った上でその攻撃か」
「ふん、当然であろう。そんな
「……っ!お前は、お前はあの日俺を、俺の決意を、それでもいいと認めてくれたんじゃなかったのかよ」
「…?あぁ、あれはあの小娘が勝手に許しただけだ。この我は貴様を認めてはいない。いや
「それ以上喋んじゃねぇ…!俺は「母さんの力だけで一番のヒーローになって、クソ親父を完全否定する、か?笑わせる。自分の過去を克服出来んやつがヒーローになんてなれるとでも?それこそそのクソ親父の炎を使わん限りは無理だろうな!」
まるで意味がわからないというような顔でこちらを見つめている焦凍、だがここから先の道は自分で決め自分で進まなくてはならない。
「鎖よ、焦凍を捕らえよ」
その言葉と共に黄金の鎖ーー
「なっ?!しまった、油断した!だがこの程度なら」
「やめておけ。貴様の体には既に確保テープを巻いてある。何をしようと無駄だ」
本人は相当悔しいのだろう。俯いて体を震えさせている。
「確かに親を超えるのは立派だがな、過去のしがらみに囚われていたら目の前のものすらまともに見れなくなるぞ。それは貴様の個性だ、それをよく考えろ」
〆〆〆〆〆〆〆
その後葵羽は障子と合流し、難なく飯田を確保し訓練は終了した。
「それじゃあ講評に移るぞ!何と言っても今回のベストは柊少女だ!相手の行動を予測し対策を考える、これは実際の現場でも求められるスキルだ!実際に対峙した時も弱点を的確に付き、しっかりと攻めていったのも加点だ!だが対峙してから必ず余裕があるとは限らないぞ、それに柊少女はヴィラン側だ。その点ではあの話は減点だな」
「すいません」
確かに現場ではそんな余裕は無いだろう。だがこの話については今しなくてはいけなかった。そんな気がしたのだ。
「轟少年はもう少しペアの意見を聞くべきだったかもな。柊少女が奇襲を予測してると考えた上での行動をしなくては意味がないからな!あとは相手の挑発に乗ってしまい自分を見失ってしまったのも減点だ!」
その後の講評は障子くんと飯田くんについてだった。お互いもう少し意見を述べてもいいだろう、とのことだった。私的には障子くんはしっかりと意見を言ってくれていたと思うのですがオールマイトには何か思うところがあったのでしょう。
〆〆〆〆〆〆〆
戦闘訓練が終了したあと切島くんに「今回の戦闘訓練の反省会しようぜ!」と誘われたのだが断っておいた。
何せ焦凍にあんなことを言ったのだ。そのまま無責任に終わらすことは出来ない。なので私は早々に帰ってしまった焦凍を急いで追いかけていた。
「焦凍!さっきの訓練の時、焦凍の気持ちを知っていながらあんなことを言ってしまい……」
「別に構わねぇよ、それにあれはお前自身の本心じゃなかったんだろう」
「しかしそれでも!焦凍を苦しめてしまって…私も一緒に頑張ると言ったのに…!」
「もう大丈夫だ、これは俺の問題だ。俺だけで決着をつけなくちゃならないことだったんだ。それを教えてくれたのは他の誰でもないお前だ、葵羽」
どうやら無駄な心配だったようだった。今の焦凍の表情はいつもより穏やかで、しかし何かを決心したような顔をしている。きっと今の焦凍なら大丈夫なのだろうーーそう思える表情だった。
初2000字突破!戦闘シーンの難しいですね…結局ただ氷を撃ちあっただけに…まぁわかりやすい伏線もしっかり入られたので満足です。
結構早いですが焦凍にはしっかりとお母さんと向き合ってもらいます。(行くとは言ってない)